人工内耳友の会−東海−
演劇鑑賞会:小学校体育館

平成15年6月

「演劇鑑賞会:小学校体育館」

『難聴児童の座席の前にノートパソコン表示』

記/☆宮下あけみ☆ akemizo@beige.ocn.ne.jp

みなさま、こんにちは。☆宮下あけみ☆です。
今日は、6月にお伺いさせていただきました、「小学校での演劇鑑賞会」の様子を記させていただきたいと思います。

この文章は、今回パソコンノートテイクをご利用くださった、MちゃんとRちゃん。そして、そのご家族の方々のご了解を得て、「人工内耳友の会:東海」のホームページ内に掲載していただいているものです。

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<当日までの、準備段階>

【保護者から学校へ】
・ここの小学校では、前年度3月の「卒業式」で、はじめて「パソコン要約筆記:ノート表示による個人利用」を行った。 よって、「学校側」は、「ノート表示によるパソコン要約筆記」について知っている。
・今回、「演劇鑑賞会」が行われるにあたり、難聴児の保護者より学校側に、同じ方法での情報保障を伺った所、快く「OK」をいただけた。
・ここの小学校には、2・3・4・6年生に1名づつ、難聴の児童がいる。 保護者を通じて、それぞれの児童に、「ノートP.C.表示のパソコン要約筆記を利用するかどうか?」を聞いてもらう。 結果、「2・3年生の計2名」が利用することになった。

【位置】
・本来であれば、自分のクラスメイトの中に座り、ノートP.C.を置く事を想定していたが、「児童&劇団の方々の動線」等のことを考え、クラスメイトとは離れてしまうが、1箇所に集まってもらった。
・利用する児童同士(MちゃんとRちゃん)が“仲良し”で、以前から知り合いだったのが良かった。
・一人1台、ノートP.C.を置く。

【表示方法】
・文字は低学年にあわせることで、上級生のお子様にも了解を得る。
・通常の映画字幕のように、「セリフごとに文字が切り替わる」方法を取ろうか考えたが、演劇を「見て」楽しんだあとでも、「今のセリフ、何だったのかな?」と思ってパソコンを見た時に文字が残っているほうが良いかもしれないと思い、数行出しておく、「スクロール方法」にした。
・画面は7行表示。セリフとセリフの間は1行あけ、「話者」がハッキリわかるよう、表示。

【台本の入力】
・今回、数日前に劇団のかたが保護者あてに、「台本(紙媒体)」を送ってくれた。 それを、利用難聴児2名の保護者が手分けして入力、2日前に私にメールにて送ってくださった。
・着信後、それを「パソコン要約筆記用」に加工し、本番で使用。
・保護者の協力のお陰でとても助かりました。 ありがとうございました。
・ここの区では、同一小学校内に限定されず、「区」としての「難聴児親の会」としての「児童同士&保護者同士」の結びつきがとても良い。 常に連絡&勉強しあっている。

【入力者よりお子様へ】
・お子様への「ノートパソコン表示=個人表示」の場合は、事前にFAXでお子様に、「こんにちは。よろしくネ!!(^o^)丿」と、挨拶文を送っている。
・これは、お子様が、スクリーン表示でのパソコン要約筆記利用の経験はあっても、「自分だけへのノートパソコン表示」がはじめての場合、以下の2点において、“いいかなぁ〜(^o^)丿…”と思っているので、行っているものである。
(A)簡単な説明/「どんな感じになるのかな?」、「みんなと違っちゃうけど、ヘンじゃないのかな?」という疑問を、少しでも和らげる事ができるよう、絵やサンプル画面を描いて、簡単な説明をする。
(B)緊張の緩和/中学生以下の場合、私に連絡を下さるのは「保護者or学校」。 「子供の会」等の集まりで、お会いした事のあるお子様もいれば、はじめて会うお子様もいる。 “はじめてお会いするお子様”の場合、お子様自身が、「今度来る、大人の入力者(私)って、どんな人だろう?」と緊張してしまうといけないので、少しでも緊張を和らげることができたらな・・・と思っている。
・お子様の中には、FAXでお返事を下さるかたがいる。 すると、その文字で、「漢字の使用状況」等を垣間見る事ができる。 勿論、「書くことができる漢字」と「読む事ができる漢字」は違うが、本のように、「止まっている文字」を見る(読む)のではなく、「流れているor切り替わっていく文字」を安心して気楽に見ていただくためには、お子様が「書くことができる漢字」を使用しているほうが良いのではないかと思っている。


<当日>

【保護者と合流→ご挨拶】
学校へご挨拶/「席は準備してありますので会場(体育館)へどうぞ。」と案内していただいた。
劇団の方々へご挨拶/「台本」を事前にお貸ししていただいていたので、まず、そのお礼。

【劇団の方に説明】
・簡単に、「パソコンノート表示」について、「こんな感じです。」と説明。 その際、照明などについてお伺いする。
・今回「照明」は「明るいままなので、何も気にしなくて結構です。」とのこと。 とても好意的に受け止めてくださった。
・学校体育館行事の場合、「音響(マイクやスピーカー)」については、「その場の環境」が「与えられた音環境」となる。

【位置を決める】



1)事前に保護者が学校に、「表示用P.C.を置く机」をお願い。
2)場所は、学校が用意してくださった位置。
3)当初、入力者席は体育館の端に座る予定だったが、演劇の中で役者が会場を走り回る事がわかり、観客と別の位置に「入力者席」を設けることが、場所的にキツクなった。 そこで劇団員のアドバイスを得て、子供と並んで座ることにした。
4)演劇中、役者さんは、この「すぐ後ろの通路」を走った。
5)座席は後ろに行くにしたがって高くなっていたのと、ちょうど、この席の後ろは「保護者席」になっていたので、「大人の入力者」がココに座っても、他の児童への演劇鑑賞に支障はなかった。
6)パソコンは、児童一人に対し1台。今回は2名の難聴のお子様が利用。
7)お子様のスグ隣に座った事により、それぞれの「表示用P.C.」の画面の出具合の様子、お子様がパソコンを利用されている様子などがわかって良かった。

【後ろから見た風景】



1)舞台:緑色の円形部分
2)児童座席:舞台の近くの黒いゴムマット部分、緑の低いイス、折りたたみイス
3)役者が走る通路:赤線

【延長コードの固定】



1)児童の移動に支障がないよう、コード類はしっかり固定。
2)小学校にお伺いする場合は、「ママさんたち」が、いつも協力して下さいます。
3)ガムテープをはがしたあと、ケーブルがベタベタにならないように、ケーブルに新聞紙を巻いて、その上からガムテープを貼る。 (「ベタベタしないガムテープ(緑色)」があるが、粘着力が弱いため、お子様が多く移動される場所では、その上からも再度、普通のガムテープを貼っている。)
4)今回コードはパソコンの電源のためだけ。

【表示具合の確認】



1)文字の大きさ、文字色、背景色、表示範囲、文字と舞台の視線等を確認。(文字:白、背景色:濃紺、デスクトップ:黒)
2)今回は、「セリフごとに字幕が切り替わる方法」ではなく、通常の「スクロール」にした。
3)その方が舞台に集中していて、ふと画面に視線を落とした時残っているセリフの量が多いからである。
4)全部で7行出るようにし、セリフとセリフの間は、1行、あけた。
5)実際には、お子様の身長に合わせて、1つを高いイスに取り替えた。
6)保護者のご了解を得て無線LANを使用(人工内耳へのノイズ等の心配がない事は既にご存知)。 右端に切れてしまっているが、白い四角いのが「アクセスポイント」。 各パソコンに「無線LANカード」が差し込んである。 全てが無線LANの場合はアクセスポイントを使用しない「アドホックモード(無線LANカードを装備したP.C.同士で通信をおこなう方式)」という方法があるが、万が一、P.C.を動かし、無線LANの範囲からはずれてしまった場合、アクセスポイントを使用していた方が、再度つなぐ時、さがしやすいので、アクセスポイントを使用している。

【舞台を見るお子様】



1)さぁ、「演劇」がはじまりました! みんなと一緒に楽しもうね!!

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【早く会場入りすることの大切さ】
・普通にパソコンをセッティングして、コードを貼り付けて…という「準備」だけであれば、児童が入場する30分前でも可能です。 しかし、「体育館での行事」、或いは大きな会場での「イベント」の場合も同様ですが、早く会場入りする事により、「リハーサルを見る&聞く」ことができます。
・リハーサルを見せていただけるというのは通訳者にとって、とてもありがたいことです。
・これは、「内容の把握」だけではなく、話者や進み方のテンポ、セリフの速さ、他の効果音との兼ね合い…等々、多くの情報を得ることができるからです。
・特に「演劇」の場合、台本はいただけても、それを、どの程度の速さで読むのかわかりません。 「歌(メロディー)にのせてセリフをいう場合もあるかもしれない…。」、「一部、外国の言葉が出てくるかもしれない・・・。」というような、「通訳者にとって」の、いろんな「どんな感じなんだろう???」と言う疑問や不安が、リハーサルの時間帯に入場させていただける事により、少しでも緩和され、雰囲気がつかめ、本番での情報保障に役立つ(であろう)ことが沢山あるのです。
・今回も、「学校がご了解いただける中で、一番早い時刻」に会場入りしたい旨、保護者の方々にお願いしました所、保護者の方々も、その時刻に来て下さいました。 本当にありがとうございました。

【多くの方々のご協力】
・いつもそうですが、今回は特に、多くの方々の暖かい協力を得る事ができました。(^o^)V
保護者/学校への説明、事前の「台本」の入力、当日のガムテープ貼り等々。
学校/劇団への交渉、位置。
劇団/台本の事前貸し出し、当日のご了解。
担任の先生/児童が体育館へ入場し、難聴のお子様がパソコンの前に座ると、「Mちゃん達とお話するときに使ってください。」と、いつも担任の先生が使っている「FMマイク」を私の所まで、わざわざ、持って来て下さいました。
他の児童/今回も、誰一人として、パソコンを触るお子様はいませんでした。 しかし、「興味」を持って下さるお子様は多く、「おぉ〜!! ここに字が出るんじゃん!!」と口々に言ってくださいましたので、降りに触れ、「そうだよね。(^_-)」と、利用難聴児のお子様達とお返事しました。 

【お子様の様子】
・今回、利用してくださったお子様のうち、1名はお会いしたことのあるRちゃん。 もう1名は初めてお会いするMちゃんでした。 しかし、事前にFAXで、「こんにちは。よろしくネ!!(^_-)」とご挨拶しておいたのが良かったのか、お子様自身の可愛い性格もあると思いますが、二人とも着席するなり、スグに、話し掛けて下さいました。 (ありがと!! (^o^)丿)
・お子様が座った時には、既に、文字表示の「例」をかねて、簡単な挨拶文を表示しておきます。 この時の漢字には、全てに「フリガナ」がふってあります。 すると、低学年のお子様が、それを声に出して読みながら、スグに、「これ、なんて読むの?」と、ある漢字を指差して聞いてきてくれました。 ですから、「ここに『フリガナ』が書いてあるんだよ。」と、説明する事ができました。
・何がわからないのか、どんな事が疑問や不思議なのか、その場で「質問してくださる」と言う事は、通訳者にとって、とてもありがたいことです。

【安心感のための、文字表示】
・“演劇”をとても楽しんでくださった様子です。
・今回の演劇は、内容は、1年生〜6年生を対象としているものですので、とてもわかりやすく、楽しいものだったのですが、時折、「人形劇」になったり、「楽器との歌」、「役者がお面をつけてのセリフ」等がありました。 
・お子様がパソコンでの文字表示を「見る・見ない」に関わらず、「何て言ったのかな?」と思った時、「いつでも、そこに文字がある。」と言う安心感につながれば・・・と思っております。

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♪Mちゃん Rちゃんへ♪
「トッケビ」が 大きくなったり 小さくなったり、おもしろかったね!!
いろんな楽器(がっき)があったね。
わたしも はじめて見る楽器(がっき)が ありました。
ジョンくんは お顔(かお)を見ても、大きくならないよ。
だって、「トッケビ」じゃ ないモン!! (^_-)
わたしも たのしかったです。
ほんとうに ありがとう!! (^.^)/~~~

☆みやしたあけみ☆  akemizo@beige.ocn.ne.jp



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