人工内耳友の会−東海−
蘇る人体機能


NHK総合:ナビゲーション
【よみがえる人体機能】


【皆さまへ。】

こんにちは。☆宮下あけみ☆と申します。

東海北陸7県(=富山 石川 福井 愛知 三重 岐阜 静岡)で、2001年2月2日(金)午後7時30分〜7時55分に放送されました、『NHK総合:ナビゲーション【よみがえる人体機能】』の【文字版】を作りました。

「聞こえてくる限りのもの」を「文字化」させていただきましたので、会話もそのままです。また、聞き取りにくい声や音は、自分に聞こえたまま、打たせていただきました。

また、「映像」と【文字版】を照らし合わせやすいように、この【文字版】の中には、「(映像:歩行訓練をする男性)」のように、カッコ書き( )で、「画面の状況」を入れさせていただきました。

この番組の【文字版】のホームページへの掲載、ML及びFAXでの配布は【NHK名古屋】より了解を得ております。【著作権】は、【NHK名古屋】です。聴覚障害者の方々がこの番組を視聴なさる時には、ご活用下さいませ。

この文字版は【NHK名古屋】より、私、宮下が個人的に了解を得たものです。

しかし、著作権を持つ【NHK名古屋】より、「字幕を付けたかったのですが、諸般の事情により、付ける事が出来ませんでした。今回、この様な形(M.L.、ホームページ及びFAX)を通して、多くの方々に番組をご覧いただける事は、こちらとしても嬉しい事です。」と、お言葉をいただきました。

従って、この【文字版】の個人、団体等への【メール及びFAX、印刷での配信・配布】、【ホームページへの掲載】は「自由」です。自由ですが、もし、「団体あて」に転送、或いは「ホームページへ掲載」されたような事がございましたら、恐れ入りますが、宮下まで、ご一報下さいませ。

今後とも、宜しくお願い申し上げます。


【放送予定表】
<本放送>
・東海北陸6県(=富山、福井、愛知、三重、岐阜、静岡)2001年2月2日(金)午後7:30〜7:55

<再放送の予定>
・ 東海北陸7県=2月4日(日)朝8:00〜8:25
・ 全国=2月7日(水)夕方5:00〜5:25 衛星第一(BS1)
・ 石川県(NHK金沢局を受信)=2月2日金曜日の7:30〜の放送なし。日曜日の再放送のみ。
・ 静岡県(NHK静岡局を受信)=日曜日の再放送、なし。

<文字版作成>☆宮下あけみ☆ 
【E-mall】 akemizo@beige.ocn.ne.jp  【FAX】  048−774−8387
・・・・・・・・・・・・・・・・・


NHK総合:ナビゲーション
【よみがえる人体機能】


2001年2月2日(金)午後7時30分〜7時55分

画面:タイトル「名古屋発 ナビゲーション」(音楽)

(映像:行訓練をする男性)

小見誠広(=司会):事故や病気で失われた体の機能をよみがえらせる。テクノロジーの進歩が、今、その夢を叶えようとしています。

(映像:頭蓋骨のレントゲン写真)

小見:マイクで拾った音をコンピュータで処理し、直接脳に伝える人工内耳。全く音の聞こえなかった人が、音を感じる事ができるようになりました。

人工内耳装用女性:大感謝です。これほど聞こえると思いませんでした。

(映像:目に装置をかけた男性)

小見:人工の目を作り出す研究もはじまっています。名古屋大学では、カメラに写った映像を脳に送り込み、光を取り戻す研究が続けられています。

医学とテクノロジーの連携によって、人体の機能をよみがえらせようとする、「医療工学の最前線」を追います。

(画面:よみがえる人体機能〜医療工学の最前線〜)

小見:「ナビゲーション」です。ピュータや機械などテクノロジーの進歩は目覚しく、その成果は医療の現場に次々と導入されています。その技術によって、病気や事故で体の一部を失ってしまったり、動かなくなってしまった人たちが、少しづつ、体の機能を取り戻す事ができるようになってきました。かつては「不可能」と考えられていた治療が、実現しはじめています。

今日の「ナビゲーション」では、テクノロジーの進歩によって失われた人の体の機能が、どこまでよみがえろうとしているのか?その可能性を探っていきます。

はじめにご覧いただきますのは、愛知県の病院での取り組みです。「医療」と「もの作り」の技術の技術が連携して、両足がマヒして動かなくなった人たちが、再び、歩きはじめようとしています。

(映像:車椅子を車から出して、降りようとしている男性)

ナレーター(=以下、「ナ」と記す。):12年前、脊髄を損傷した、田中和幸(かずゆき)さんです。事故以来、両足がマヒし、自分の意志で、曲げ伸ばしする事ができません。通院や通勤など、日常の移動は、全て車椅子に頼っています。

(映像:愛知 豊明 藤田保健衛生大学病院)

ナ:愛知県豊明(とよあけ)市にある、藤田保健衛生大学病院です。田中さんはここで6年あまり、歩くためのリハビリを続けてきました。リハビリでは、まず、両足に「装具(そうぐ)」をつけます。「装具」は田中さんのヒザを伸ばして、足を固定します。「装具」の中で最も重要なのが、両足をつなぐ、「接続部品」です。去年、この病院で開発され、両足がマヒした患者、11人が使っています。

(テロップ:“歩行”への挑戦  映像:歩行訓練をする、田中さん。)

ナ:接続部品には、小型モーターが取り付けられています。モーターは、田中さんが踏み出そうとする足を、交互に前へ押し出します。

男性:状態の負担が少ないのでしょう?

白衣の男性:そうです。

ナ:短い距離であれば、田中さんは歩く事が可能になりました。車椅子バスケットのチームに所属している田中さん。「装具をつけて、自分の足でバスケットを楽しむ事が夢だ。」と言います。

田中:これ使って、外に遊びに行けるくらいになれば…と思いますけどね。

(映像:歩行訓練。画面の中央上部のみ、明るく装具が映し出されている。)

ナ:田中さんが使っていた、従来の装具です。「立つこと」が主な目的のため、「歩こう」とすると、上半身の力で足を踏み出す必要がありました。

(映像:画面上半分が明るく、バーを持っての歩行訓練。)

ナ:この病院で開発された装具は、「歩くこと」を重視して作られました。両足を楽に踏み出せるため、上半身への負担が減りました。この装具に使われている接続部品は、前後に滑らかにスライドします。モーターは、患者が足を踏み出そうとした瞬間に作動するしくみです。交互に足を押し出し、歩行を助けます。より自然な動きを目指し、コンピュータで制御する研究も進められています。

(映像:歩行訓練する田中さんと、白衣の医師。)

ナ:新しい装具を考え出したのは、田中さんの主治医の、才藤(さいとう)栄一さんです。両足がマヒした人が歩く機能を取り戻す方法がないか?…10年近く研究を続けてきました。

藤田保健衛生大学 教授 才藤栄一さん:車椅子ではやっぱり、平地を動くものですから、どうしても、段差とか、特に我が国の場合には、非常に狭くて、車椅子の幅だと歩けない。そういう意味で、二本の足で歩くという事は、捨てられない。

ナ:才藤さんは、5年前に、新しい装具のアイディアを思いつき、歯車を使った接続部品の模型を作りました。そして実際に製品化しようと、医療福祉機器メーカーに設計を依頼しました。しかし、接続部品に歯車を使うと小型化が難しく、両足の間におさまらないと言う理由で、メーカーは製品化を断ってきました。

(映像:名古屋市 緑区 立松製作所)

ナ:そこで才藤さんは、名古屋市にある、自動車部品メーカーに設計を依頼しました。このメーカーは車のドアやトランクなどの「ちょうつがい」を生産しています。才藤さんは、部品同士をつないで動かす、この、「ちょうつがいの技術」に目をつけたのです。

当時、自動車部品メーカーは事業の多角化を模索していました。社長の立松賢(まさる)さんは、医療機器分野に参入できれば…と、設計を引き受けました。技術者達はまず、歯車が使えないか?、検討しました。しかし、どう、設計しても、接続部品は両足の間には入りませんでした。

そこで歯車をあきらめ、横にスライドするドアの「ちょうつがい」の技術を使う事にしました。3年余りの開発期間を経て、去年の11月、小型の接続部品が完成しました。

社長 立松賢(まさる)さん:リハビリ機器というものが、その、どれくらい充実しているかという意味から言いますとですね、まぁ、まだまだ分野としては、あるだろうと。自動車でつちかわれました技術をどう活かすか?また、十分活かせるという手ごたえを十分感じていますので。

(映像:歩行訓練をしている女性)

ナ:藤田保健衛生大学病院では、多くの人が「歩くこと」に挑戦しはじめています。脊髄炎が原因で、2年前、両足がマヒした二十歳の短大生、鈴木さやかさんです。装具をつけ、「立つこと」ができるようになりました。そして今、再び、自分の足で歩きはじめようとしています。

鈴木さやかさん:みんなと一緒に動いてても、見下ろされるほうが、下向きに話される…。で、自分は上向きで話さなければいけなくって。それが友達といるので、一番、結構つらかったんですけど…。だけど、歩いている時は友達とは一緒にいないけど、先生とかとも、同じ高さで喋れるようになって。それが一番、立てた時に、もともとの高さだったから、それに戻れて、嬉しいナって、思いました。

(映像:スタジオ)

小見誠広(=司会):スタジオにゲストをお迎えしています。東京女子医科大学名誉教授の桜井靖久(やすひさ)さんです。宜しくお願いします。桜井さんは、「人工臓器の研究開発」にはじまり、人の体の機能のかわりとなる機械ですとか、医療用ロボットの開発など、医学、医療と工学を結びつけた、「医療工学」がご専門でいらっしゃいます。「再び立って歩ける」という事の素晴らしさが伝わってきますよね。

東京女子医科大学名誉教授 桜井靖久さん:そうですよね。今のV.T.R.拝見して。もともと、あの、人間っていうのは、二本足で歩く動物なわけですね。それで、あぁいう、車椅子で生活している、両足がマヒした方、そう言う方が「立って歩く」という事は、いろんな点でメリットがあるんですね。

今もおっしゃってましたけども、精神的に目線が同じになるから、非常に、こう、精神的にも楽になるという事もありますし。それから、体の方の機能の中でも、例えば、血液の循環が良くなるとか、或いは、筋肉の衰えが防げるとか。或いは、立って歩く事によって、神経の情報が脳に伝わって、脳が活性化されるとかですね、ま、いろんなメリットがあるんですね。

小見:そういう所に、機械の技術が上手く応用された例と言えそうですね。

桜井:そうですね。で、これは、実は「マヒした両足を立って歩かせる」というのは大変な技術でして。私も前に、ちょっとやった事があるんですが、結局、その平衡バランスを崩して、次の倒れないような安定した動作につなげる…、つなげていくという事ですね。これ、非常に難しいんですよ。実はね。だから、まぁ、非常に、なんて言うんでしょうか、現場のお医者様のニーズと言いますか、患者さんの要望と言いますか、そういうものと、自動車産業という、今まで医療とあまり関係ないようなあれが合体してですね、それで、あの、こういう素晴らしい、人を助けるような技術に発展したという事は、非常に素晴らしい事だと思いますね。

小見:そう言う意味では、こういう形の連携というのは、やはり、あまり例はない、少ないわけだけれども、非常に上手くいったものとして…。

桜井:そうですね。これから非常に必要になりますね。

小見:はい。今、V.T.R.では、両足が、全体がマヒしてしまった人が歩けるようになるための器具をご覧いただきましたけれども、足の一部の機能についてはですね、高性能の「義足(ぎそく)」が開発されています。ちょっとご覧下さい。

(映像:義足をつけている、外国人男性 マサチューセッツ工科大学)

小見:これは最新のコンピュータ技術が活かされている「義足」です。アメリカ・マサチューセッツ工科大学の研究グループが開発したものです。

義足で一番難しいのは、ヒザの間接の制御(せいぎょ)です。踏み出す時には適度に曲がり、着地の時には伸びて、体重を支えなければなりません。この機能の制御を、義足に内蔵されたコンピュータが行います。

開発された義足は、歩く場所に応じて、その人にあった歩幅ですとかスピードを自分で計算します。歩けば歩くほど、義足は人の動きを学習して、ぎこちなさがなくなっていきます。斜面や階段、デコボコ道、想定される様々な場所でテストが重ねられていまして、今年中には商品化される予定だという事です。

(映像:スタジオ)

小見:はい。「義足」もここまで進んでいるんですね。

桜井:そうですね。あの、「義足」は前は形の模倣(もほう)だけだったのですが、今、まぁ、こういうハイテクが応用されてですね、動く事ができる事になったと言う事で。これも、素晴らしい事だと思います。

実は、日本でも昔、ちょっと開発された事があるんですが、結局、こういうものが、広くだんだん実用化してきますとですね、私が思い浮かべるのは、例の「パラリンピック」で、非常に活躍されたですね、素晴らしい事ができる可能性があるんですね。

小見:こうした機械の技術によって、多くの人が、元の生活を取り戻す事ができる…。

桜井:そうです。そうですね。

小見:はい。あの、こうした「義足」の他には、技術が活かされているものとしては、どのようなものがあるのですか?

桜井:同じようなものは、「義手」ですね。「手」があります。これは、「電動義手」と言ってですね、モーターその他で動くんですが。ただ、その「手」の場合は、やはり、あの、「感覚機能」がないと、例えば、「生たまご」をつかんで、つぶしちゃったり、「紙コップ」を上手くつかめなかったり…というのがありますね。最近は、そう言う、「感覚」も含めたよな「電動義手」も出ているのですが、その「感覚」が自分の脳に伝わって感じ取る…というところまでは、まだ、行かないですね。

小見:なるほど。今、「感覚」というお話が出ましたけれども、医療と、そして、急速に進歩しているテクノロジーは、その、「人の感覚」をも、よみがえらせようとしています。

(映像:東京 港区 虎ノ門病院)

ナ:東京の虎ノ門病院です。毎週水曜日の午後、耳鼻咽喉科では、聴覚に重い障害がある人だけを診察する外来が設けられています。

(映像:待合室で話しをしている女性、2名)

ナ:去年、聴力を失った、児玉房子(ふさこ)さんです。外に出るのが怖くなり、家から一歩も出られない日々が続いたと言います。

(映像:耳から脳への断面図)

ナ:耳に入ってきた音は鼓膜にぶつかり、鼓膜を振動させます。鼓膜の奥にある蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる器官は、この振動を弱い電気に変えます。この電気が脳に伝わり、人は音を感じます。

ところが、病気などで蝸牛が機能を失うと、鼓膜の振動を電気に変えることができません。児玉さんは中耳炎が悪化し、蝸牛の機能を失ってしまいました。そこで児玉さんは去年の11月、「人工内耳」の埋め込み手術を受けました。

(映像:診察室)

熊川医師:台所の音とか、○○とか、昔のように聞こえますか?

児玉:はい。

(映像:人工内耳)

ナ:「人工内耳」はここ数年、急速に進歩した医療機器です。コンピュータ技術を駆使した人工内耳により、これまで世界で、およそ25,000人、日本でも1.900人が音を取り戻しています。

「人工内耳のしくみ」です。「耳にかけたマイク」と、「頭に埋め込まれた集積回路」、そして「聴神経につながる電気ケーブル」で構成されます。耳にかけたマイクは音を電気に変えます。電気は、機能を失った蝸牛の先にある聴神経へ、直接伝えられます。この「人工内耳」で、児玉さんは音を取り戻しました。

(映像:児玉さん  テロップ:よみがえる“聴覚”)

児玉:お陰様で、自分の大好きだったミュージシャンの音楽が聞こえるようになりました。

熊川医師:何が好きなんですか?誰が好き?

児玉:私、小田さんが大好きなんですね。小田和正さんが。(笑)恥ずかしい…。で、小田さんの歌が聞こえて来た時は、もう本当に、一番初めと二番目に、涙が出てくるほど嬉しかったです。

ナ:人工内耳を通して聞こえる音は、自然な音に近づいています。児玉さん達に聞こえている音を、コンピュータで再現しました。

「再現した音」:「このテープを皆様がお聞きになる頃には、日本では、桜の花が咲き始める頃かと思います。」(※宮下→しわがれたような声。言葉の1つ1つは、はっきり聞こえる。男性の声だと思う。)

ナ:最新式の人工内耳では、音をコンピュータで更に調整する事ができます。

S.T.(スピーチセラピスト)熊谷:今、大きい音を合わせましたけれども、やっぱり結構、変ってるみたいですよね。何とか、音としてわかる?

児玉:わかります。

ナ:聴神経に送り出す電気の量を調整して、心地よく感じる音を作り出すのです。

機械の音:プー、ピー(※宮下→2つめの音の方が、高い。)

児玉:下の音がちょっと…。

ナ:児玉さんは月に一度、専門の技師に、人工内耳の調整をしてもらいます。

機械の音:プー、ピー、パー、ポー、ピー。(※宮下→だんだん、音が高くなる。)

ナ:人工内耳にパソコンを接続して、高い音から低い音まで、送り出す電気の強さを細かく調整します。

調整中の音:あ、い、う、え、お。(※宮下→男性の声。)

児玉房子さん:やぁ〜、もう、スゴイも凄いも、いいところだと思います。大感謝です。これほど聞こえると思いませんでした。現に、こう、お話できるんですものね。全く聞こえなかったんですよ。それが、この機械があることによって、普通の会話でしたら不自由ないです。

虎ノ門病院耳鼻咽喉科 医長 熊川孝三さん:今まで外科的に、そういう高度の難聴の方を治す手立てというものを、僕らは持っていなかったわけですよね。「人工内耳」の出現によって、はじめてそれが可能になったわけですね。

(映像:名古屋 千種区 名古屋大学工学部)

ナ:人の感覚をよみがえらせようという試みは、「目」でも行われています。名古屋大学では、半導体で人の「網膜」の機能を作り出す研究がはじまっています。研究メンバーの代表、八木透(とおる)さんです。専門が医学ではなく電子工学です。ロボットの目の技術を役立てようと、研究をはじめました。

(映像:目から脳への断面図)

ナ:人の「目」のしくみです。映像は角膜(かくまく)と水晶体(すいしょうたい)を通して網膜(もうまく)に映されます。網膜はその映像を電気に変えます。この電気が視神経を通じて脳に伝えられ、人は映像を感じる事ができます。

角膜や水晶体は傷ついても、移植などの治療が可能です。じかし、事故や糖尿病などで網膜が機能しなくなった場合、これまで治す方法はありませんでした。

工学研究 助手 八木透さん:失明の治療法っていうものが、あの、全くない状況です。失明しないように、或いは、失明を遅らせるような治療っていうのは、あるらしいんですけれども、まだまだ、根本的な解決には、まだ、至っていない。

(映像:研究室→目から脳への断面図)

ナ:八木さん達は今、半導体で作る網膜で、この問題を解決しようとしています。八木さん達が挑戦している失明の治療法です。傷ついた網膜にかわって、目の中に半導体を埋め込みます。そこに、カメラが捕らえた映像が送り込まれます。半導体は送られてきた映像を電気に変えます。電気は半導体と繋がれた視神経に伝えられます。その電気が脳に伝わり、映像を感じるしくみです。

実験室では半導体と、人の視神経をつなぐ研究が進められています。半導体の上に神経細胞を培養します。これは、半導体の上で培養された神経細胞の写真です。神経細胞が視神経と半導体を結ぶ、“つなぎ目”の役割を果たします。映像を捉える超小型のカメラは市販のものを利用します。実用化すれば映像を光の点の集まりとして感じる事ができると考えられています。  

八木:私もよく、E-mailですとか、或いは、視覚障害の方の集まりとか出たりする時にですね、「何とかならないか?」という事を言われるわけですね。で、今、何かやろうと思っても、まだ全然モノができていない状況なので、なんともしがたいんですけれども、そういう方々の声を一刻でも早く、まぁ、実現…、叶えてあげるためにも実現して一刻も早くしたなぁ…と考えています。

(映像:スタジオ)

小見:凄い事が今、行われてるんですね。こうした事を可能にする中心となる技術というのは、どんなものですか?

桜井:まぁ、やっぱり、半導体が小さくなって、それで情報処理能力が増えて、それが人間の体に埋め込まれるほどになったと言う事で。私はこれ見て、やはり、これこそ、「I.T.」情報技術ね。それの、なんて言うでしょうか。人間に役立つ技術かな、という感じがしました。

小見:本当に人のためになる、I.T.のあり方の一例ですかね。

桜井:そうですね。例えば「人工内耳」。大人の方が出られましたけど、あれ、実はこどもさんで先天的に耳が不自由な方がいて。そうすると、喋る言葉も上手く喋れなくなりますね。従って、まだ、小さいうちに人工内耳を埋め込んでトレーニングをします。そうしますと、聴覚が回復をして、言語機能も、ちゃんとできる…、喋れるようになる。これは素晴らしい技術なんですね。

小見:網膜なども、やはり将来的には実現化されてくるんですね。

桜井:そうですね。あれは高齢で網膜の色素変性という病気がありまして、これは、高齢化とともに増えますから、そういう人にとって、非常に福音になると思いますね。

小見:あの、ただですね、見て、単純に思うのは、そうした半導体などを直接、神経を、こう、くっつけて、或いは、目の中に入れてしまうという事で、大丈夫なのかな?というふうにも思うのですが、どうなんでしょう?

桜井:そうですね。実はそこが非常にキー・テクノロジーでして。その、人間の組織に触れる、“直接触れる材料”ですね。この開発というのは非常に重要なんです。最近、非常にいい材料ができてきましたので、こういう事が実用化した…という事ですね。

小見:あの、こうしたテクノロジーを、“人に役立つテクノロジー”として、これから更に育てて行くには、どんな事が必要でしょうか?

桜井:一つにはですね、「医学」と「工学」と「産業技術」。これが融合するような「場」が必要なんですね。日本はとかく「縦割り」なもんですから、そういうものが一緒になって、密接に交流してやる事が大事だと思いますね。

これから、その、高齢化社会が進んでまいりますと、どうしても体の機能が衰えます。その、衰えた機能を自分だけの力で回復しようというのは、なかなか難しいので。

小見:これ、「人機共生」「ジンキキョウセイ」と読むのですか?(フィリップを示す。)

桜井:はい。「人機共生=ジンキキョウセイ」。要するに、人間と、それから機械が一緒になって生きてですね、それで、まぁ、その、Q.O.L.というか、いわゆる「生活の質」を上げてこうと。普通の…そういう生活ができるようになるという、それで「人機共生」という言い方を僕は言ってるんですが、是非、その技術をこういうように使っていただきたいと思いますね。

小見:どうもありがとうございました。「21世紀は人機共生の時代」になる…という事ですね。

不可能だと思われていました難病の治療ですとか、様々な体の機能の回復というのが、次々と実現される時代になっていきそうです。「医療」と「テクノロジー」の更なる連携が求められています。

以上
【文字版制作】*宮下あけみ*
【E-mail】akemizo@beige.ocn.ne.jp 【FAX】048−774−8387




メールはこちらへ

各種情報メニューへ