人工内耳友の会−東海−
夢をかなえるために

平成15年3月17日(月)
NHK総合 『首都圏ネットワーク』

夢をかなえるために
歌手めざす聴覚障害者


♪(音楽あり)
タイトル【夢をかなえるために】

(スタジオ)
男性アナウンサー / 月曜日にお伝えしております、「夢をかなえるために」。 今日の主人公は、この女性です。 東京足立区の25歳、『中村清美(なかむら きよみ)さん(25)』です。

女性アナウンサー / 幼い頃の病気が原因で聴覚に重い障害を持っている中村さんは、手話を交えて歌う、「サインボーカル」と言う表現に打ち込んでいるんです。 プロのミュージシャンを目指す中村さんの活動を、ご覧下さい。

(VTR)
(路上で歌うアツキヨ)
アツキヨ / ♪ふりかけぇ〜 ふりふりぃ〜 ほかほかぁ〜 ごはんにぃ〜♪

ナレーション(以下、「ナ」と記す。) / 東京足立区北千住の駅前。 毎週金曜日の夜、路上でライブを行う二人組みがいます。 コンビの名前は「アツキヨ」。 手話をまじえて歌うのは、中村清美さん、25歳です。 歌詞をわかりやすい手話に置き換えた独特の表現を、二人は「サインボーカル」と呼んでいます。 

アツキヨ / ♪どぉよぉーび にちよぉーび、ねーてばーかりー いないでぇー♪ (=土曜日、日曜日、寝てばかりいないで)

ナ / アツキヨの歌の魅力(みりょく)は、シンプルで親しみやすい歌詞です。

アツキヨ / ♪ふりかけぇ〜 ふりふりぃ〜 ごはんをパクパクぅ〜♪

佐々木(男性ボーカル) / 元気がたりないー!!

アツキヨ&周りの人達 / ♪ふりかけぇ〜 ふりふりぃ〜 ほかほかぁ〜 ごはんにぃ〜♪

ナ / 大人から子供まで、金曜日の夜はいつも人垣ができるほどの人気です。

男性 / すごく引き込まれるというか、楽しかったです。

女性 / キヨちゃんの、手話している姿もきれいじゃないですか。 なんか、「洗練(せんれん)された」じゃないですけど。 そういうところがスゴイ好きです。

中村清美 / お客さんの笑顔が見れることが一番嬉しいですね。 私が歌ってるのを、ま、エネルギーとしてみんなに伝わってくれたら、すごい、嬉しいなぁ〜と思います。

(中村さんの部屋)
ナ / 中村さんは民間のシンクタンクに勤めながら、都内のアパートで一人暮らしをしています。 生後間もなくわずらった病気が原因で、聴覚に重い障害を持ち、耳元で大声で話しても、かすかに聞き取る事しかできません。 友だちとコミュニケーションがとれず、悩んだこともありました。 

中村 / 1対1ならなんとか話ができても、大勢で話をする時に、わかんないんですよ。 だから、学級会とか、そういう話し合いの場では、全然、入れないんです。 中に。 わかってたら、いろんな意見を言える…と思うんですよ。 でも、わからないから意見は言えない。 そう言う時は一番つらかったですね。 

(中村さんの写真、数枚。)
ナ  /  そんな中村さんが障害を気にせず暮らせるようになったのは、母、泰子(やすこ)さんのお陰だと言います。 唇(くちびる)の動きで言葉を読み取る「読唇術(どくしんじゅつ)」や、発音の訓練を、つきっきりでしてくれたのです。 中村さんは、いつしか、「歌手になりたい。」と言う大きな夢を持つようになりました。 

しかし、中村さんにとって音楽の世界は遠いものでした。 そんな時、自分の可能性を広げてくれたのが手話でした。 

中村 / 手話を知ったときに、「あ!! 手話でだったら、音楽にかかわれるかも!!」って。 音楽がそこに加わったら、もっと手話の、あのぉ、表現って、広がるんじゃないかな?って、すごい思ったんで、「あ!! 手話でだったら、私、表現できるかもしれない!!」って思ったんですね。

(路上で練習をするアツキヨ)
ナ / アツキヨの練習は、毎晩、仕事から帰った9時ごろからはじまります。 ボーカルとギターを担当しているのは佐々木厚(ささき あつし)さん(27)。 以前は一人でライブ活動をしていました。 中村さんに、「隣で手話をやらせてほしい。」と声をかけられ、驚いたと言います。 しかし、中村さんの表現力あふれる手話を見て、活動をともにする決心をしました。 

佐々木 / 「元気良く!!」

中村 / 「にこやか!! タイミングはいつでもいい?」

佐々木 / 耳が聞こえないというふうに、あの、知らされてたんですけれども、まぁ、よく喋るし、テンション高いし。 で、来てくれているお客さんと僕以上に、その、僕以上にコミュニケーションをとるので、それで、ビックリですね。 手話でここまで歌を、ここまで表現できるっていうのはスゴイなぁと思いますよね。

ナ / 中村さんの一番の課題は、歌の音程を取れるようにすることです。 練習は二人三脚。 まず、中村さんが自分がイメージする音を発生します。 佐々木さんは手の動きで音の高低を知らせ、正しい音になる様、導きます。 こうしてメロディーを頭に刻(きざ)んで行くのです。

佐々木 / 「キーの、声の高さはいいけど、もうチョット…。」

中村 / 「だよねぇ〜…。」

佐々木 / 「ボリュームを下げて。」

佐々木 / 「どうやって、下げんだよぉ〜!!」(「出せんだよぉ〜!!」かもしれない。)

中村 / 「なんか、『キーン、キーン』って言ったら、もっとこう、まろやかに。」

(駅前路上ライブ)
ナ / 先週の金曜日、北千住駅前。 アツキヨのいつもの姿がありました。

アツキヨ / ♪『奇跡』作詞・作曲 佐々木厚♪ ♪きっとー だれーもがー きーせきーを…。(きっと 誰もが 奇跡を)♪

ナ / 二人がこの日歌ったのは、新曲の『奇跡(きせき)』 障害を乗り越えて、夢へと向かう中村さんへの応援歌として、佐々木さんが作ったものです。 

アツキヨ / ♪夢見る瞳 夢追う姿 まぶしいくらい輝いているよ もうすぐ起こる奇跡を信じて〜♪

中村 / 自分の持っている夢を、「あぁ、ムリなんじゃないかなぁ…。」ってあきらめるんじゃなくって、やっぱり、あの、無理かもしれないけれども、でも、近づくことはできる。 もしかしたらね、「うまく歌える日が来るかもしれない。 練習していけば…。」 そう思ったから、負けないでがんばろう!!って。

アツキヨ / ♪まぶしいくらい輝いているよ もうすぐ起こる奇跡を信じて〜♪

(VTR終了。→スタジオへ。)
女性アナウンサー / ん〜。 ね、いわば、音のない世界に住んでいる中村さんが、音楽と言う手段で表現しようとするには、やっぱり、努力と意志の強さが必要だと思うんですけど、すごいですね。 +++ますねぇ〜。

男性アナウンサー / 歌も親しみやすいですよね。 ♪ふりかけ ふりふり ごはんを パクパク♪(と、座ったままサインを真似る。) 覚えちゃいますよね。(笑)

女性アナウンサー / そうですね。(笑)

男性アナウンサー / アツキヨは実はですね、先月、C.D.を出しました。 インディーズレーベルからはじめてのC.D.。 『kiseki〜もうすぐおこる奇跡を信じて〜』と言うアルバムですね。 で、勿論ね、『ふりかけのうた』も入ってます。 中村さんのソロも収録されていると言う事なんですね。 プロになりたいと言う夢は、着実に一歩を踏み出していると言うことですね。

女性アナウンサー / そうですね。 で、アツキヨのライブなんですんが、毎週金曜日は北千住の駅前で。 毎週日曜日は、原宿駅前と赤羽駅前で行われています。 で、今後はですね、福祉施設や学校などでもライブ活動をしていきたいということです。 

男性アナウンサー / ♪ふりかけぇ〜♪ 覚える子供が+++かもしれないですね。

女性アナウンサー / そうですね。 

男性アナウンサー / 以上、『夢をかなえるために』でした。

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 【文字版】制作 ☆宮下あけみ☆ akemizo@beige.ocn.ne.jp
       協力 人工内耳友の会[ACITA](アシタ)
      掲載 人工内耳友の会「東海」
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