平成14年9月12日
【文字版】日本テレビ ズームイン SUPER
「ズームアイ!!【
聞こえなくてもダンスは出来る
〜ある少女のひと夏の挑戦〜
】」
【文字版】 制作&配信 ☆宮下あけみ☆
【協 力】 人工内耳友の会 [ACITA(アシタ)]
【皆さまへ。】
2002年9月6日(金)午前8時00分〜8時20分に放送されました、日本テレビ「ズームイン SUPER」の中の、『ズームアイ!!【聞こえなくてもダンスは出来る〜ある少女のひと夏の挑戦〜】』の、【文字版】を作成いたしました。
「聞こえてくる限りのもの」を「文字化」させていただきましたので、会話もそのままです。また、聞き取りにくい声や音は、自分に聞こえたまま打たせていただきました。不明な点は、「+++」と記しております。
【制作・著作権】は、【日本テレビ】様です。
聴覚障害者の方々がこの番組を視聴なさる時は、ご活用下さいませ。
この文字版は、私、宮下が個人的に作成し、掲載していただいているものです。
最後になりましたが、【文字版】として文字化する事に対し、ご相談に応じてくださった【日本テレビ】様に、心から御礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。
尚、【文字版】に対するお問合せ、ご意見、ご感想がございましたなら、宮下まで、直接ご連絡下さいませ。
なお、インターネットによる【文字版】の転送・転記はできませんので、こちらのURLをご紹介するという形でお伝えくださいませ。
今後とも、宜しくお願い申し上げます。
<文字版制作&配信> ☆宮下あけみ☆
【E-mail】 akemizo@beige.ocn.ne.jp
聞こえなくてもダンスは出来る
〜ある少女のひと夏の挑戦〜
平成13年4月1日
8:00a.m.【タイトル映像:「Wild Zappersワイルド・ザッパーズ」】
(映像:スタジオ)
スタジオアナウンサー:福沢 朗 氏 / さ、続いては8時の特集、「ズームアイ!!」です。
(映像:特集、はじまり。)
ナレーター:伊藤奈穂子(以下、「ナ」と記す。)/ワイルド・ザッパーズ。 躍動感(やくどう かん)あふれるダンス。 実は彼らは全員、耳が聞こえません。 ワイルド・ザッパーズは全米初の聴覚障害者だけの、プロのダンスグループです。 アメリカのショービジネスの世界で認められ、黒人音楽の殿堂(でんどう)と言われるアポロシアターでも上位入賞。 彼らのダンスは耳に障害を持つ人々に、「やればできるんだ。」と言う、夢と希望を与えてきました。
(映像:成田空港 2002年7月28日)
ナ / この夏、彼らは三度目の来日公演を計画。 7月末、グループのリーダー、フレッド(フレッド・ビーム)と、サブリーダのワワ(ウォーレン・ワワ・スナイプ)が、他のメンバーより一足早く来日しました。 彼らには公演までの1ケ月間に大きな目的があったからです。 それは、耳の不自由な子供達を中心にダンスを教える事。 日増しに輝いて行く子供達。 その中で私達は一人の少女に出会いました。 この夏、ワイルド・ザッパーズは彼女に何を残したのでしょうか?
【聞こえなくてもダンスは出来る〜ある少女のひと夏の挑戦〜】
ナ / この夏来日した、全米初の聴覚障害者だけのプロのダンスグループ、「ワイルド・ザッパーズ」。 彼らが1ケ月間、日本の聴覚障害児を中心に開いたダンス教室では本当に踊りだけではなくて、あたたかな心の交流があったんです。
ワイルド・ザッパーズのダンス教室の初日。 集まったのは聴覚に障害を持つ子供を中心に5歳から15歳までの18人でした。 二人が最初に訴えたのは、「耳が聞こえなくてもいろいろな事に挑戦できる。」という事だったんです。
レッスンはまず、音を感じる事からはじまりました。 会場に響く太鼓(たいこ)の音。 ほとんどの子供達がかすかに聞こえるだけです。 全身の神経を研(と)ぎ澄(す)まして、音の振動を体で吸収します。
フレッド / 子供達にダンスの指導をする事で、耳が聞こえる聞こえないに関わらず、同じようにダンスができるという事を、この教室を通じで知ることができるんです。
ナ / 子供達にダンスの面白さを知ってもらいたい。 だから一緒に過ごす時は楽しい時間を作りたいんです。 でも、その輪に加われない少女がいました。 本当は先生と気軽に話したい。 でも、自分から飛び込んで行くには、ちょっと照れくさい…。 引っ込み思案のその子は、岡田 千里(おかだ ちさと)ちゃん7歳。 聴覚障害児です。
(映像:千里ちゃんの自宅) /
千里ちゃんは東京大田区に親子3人で暮らしています。 今回のダンス教室をインターネットで見つけたのは、母親の万里子(まりこ)さん。 千里ちゃんはおかあさんのすすめに喜んで参加を決めました。
千里ちゃんの耳は、補聴器をつけても、ほとんど聞こえません。 唇(くちびる)の動きを読み取って言葉を理解します。 千里ちゃんが生まれたのは平成6年11月。 結婚7年目に授かった、待望(たいぼう)の女の子でした。 しかし、いくらお母さんが呼びかけてもこたえてはくれません。 悩んだあげく保健所を訪ね、聴覚障害がわかったんです。 「ハンディーに負けないで、可能性を広げて欲しい。」 お母さんの今の願いです。
お母さん:万里子さん / 何か一つね、「これだけは絶対できるんだ!」って言うものをね、持ってもらいたいかな…って。 そんな簡単に身につくものではないけれども、それだけ努力してでも、そういうものが必要なんじゃないかな…って。
ナ / 何か一つできたら、自身を持って生きていける。 耳が聞こえなくてもダンスが踊れたら、千里の中で何か変わるに違いない。 そう信じて決めたダンス教室です。
(映像:ダンス教室2日目)
ナ / 2日目。 いよいよ本格的なダンスのステップの練習が始まりました。 意外とリズム感がいい、千里ちゃん。 次は手と足を組みあせたステップの練習です。 でも、千里ちゃん、なかなか飲み込めません。 足を逆側の手で交互にタッチするステップが上手く行かないんです。
駆けつけてあげたい! でも一人の力でやりぬいて欲しい…。 複雑な母心が揺れ動きます。
お母さん / ちゃんとお稽古(けいこ)の時なんだから、終わったら、「ありがとうございました。」って言わなくちゃいけないんだよ。 ちゃんと、「ありがとうございました。」って言ってらっしゃい。
千里ちゃん / ありがとう。
主催者:高村真理子(たかむら まりこ)さん / はい。 どういたしまして。
千里ちゃん / 「ありがとう」って言うの、英語で「サンキュー」って言うでしょ? それを手話でどうやるの?
高村さん / 「サンキュー」って。 キッス。 投げキッスのマネ。 「サンキュー」って。
千里ちゃん / (「あぁあぁ…。」とうなずく。)
高村さん / 一緒にやってみよう。
(映像:千里ちゃん、フレッドの所へ行く。)
千里ちゃん / サンキュー。
フレッド / サンキュー(アメリカ手話)。 アリガトウ(日本手話)。
千里ちゃん / とっても楽しかった。
ナ / 気持ちが伝えられた。 千里ちゃん、小さな壁を乗り越えられました。
(映像:千里ちゃんの自宅)
ナ / でも、難題が持ち上がりました。 足を後ろにあげるダンスのステップです。 この日から家庭の中がレッスン場に早がわり。 さぁ、座っていないで一生懸命練習をしなくては…と思いきや…。 千里ちゃん、フテ寝です。 こんな時、母親の万里子さんは、千里ちゃんに真剣に向き合います。
おかあさん / (4回だけの)短い時間でさぁ、練習の時間がいっぱいあるんだったらいいけど、短い時間で踊れるようになるんだったら、頭の中で、「どうやって踊るんだったけな?」って考えないと、覚えられないよ。
ナ / 障害があるからといって甘やかすわけには行かない。 いつかは千里自身が一人で生きていかなくてはならない時が来る。 母やいつしか強くなっていました。 この夏も、いろいろな思い出を積み重ねてたくましくなって行って欲しい。 ダンス教室も、その1つ。
(映像:ダンス教室3日目)
ナ / 3日目のレッスンです。 この日、フレッドとワワは、自分の気持ちを素直に表現する事の大切さを伝えました。 楽しい気持ちで踊れば、自然に体が動き出すはずだと言います。 これがワイルド・ザッパーズのダンスの原点。 千里ちゃんには果たして伝わっているのでしょうか?
リーダー、フレッドには、ダンス以外にも伝えたい事がありました。 それは、心と心のふれあい。 千里ちゃんもしっかり受け止めてくれたように見えます。
そして、いよいよ、あの難題だった、手と足のステップの練習の時間。 なんだか今日は生き生きと、体全体でリズムを感じているようです。 楽しい気持ちで踊れば自然と体がついてくる。 千里ちゃん! はじめて、あのステップが踏めました。
レッスンを終えて、ワワとフレッドから、突然の提案。 それは子供達を東京の公演に立たせるというものだったんです。
1,300人の観衆の前で踊る。 千里ちゃんに、またまた大きな課題がのしかかってきました。
<C.M.>
(映像:ダンス教室3日目)
ナ / 耳の聞こえないダンスグループ、ワイルド・ザッパーズが開いたダンス教室。 音楽が聞こえなくても体全体で振動を感じればダンスは踊れる。 笑おう、楽しもうというレッスンは、聴覚障害児、岡田千里ちゃんの心にも、届き始めていました。
それは突然の提案でした。 ワワとフレッドが、1,300人の観客で埋まる東京公演のステージに立たせたいと言い出したんです。 大観衆が見つめ、スポットライトを浴びる。 千里ちゃんには想像もつきません。
フレッド / 彼らが舞台と言う特別な場を体験する事で、自身と誇りを持つ事ができると考えたのです。
(映像:残りのメンバーも来日。合流し練習を行う。)
ナ / ワイルド・ザッパーズも公演に向け、練習に余念がありません。 順風満帆(じゅんぷう まんぱん)に見える彼らですが、かつては聴覚障害のハンディーに悩み、もがき、苦しんだ時もありました。 そんな時、ダンスに出会い、観客に認められることで大きな自身をつかんだんです。
(映像:ダンス教室最終日)
ナ / 千里ちゃんたちにも、自身と誇りを勝ち取ってもらいたい。 メンバーの強い思いです。
レッスン最終日。 千里ちゃんの笑顔が、ひときわ、輝いていました。
この日、千里ちゃんは、ワワとフレッドと過ごした、この夏の思い出を、絵日記にき記(しる)しました
千里ちゃん / 「きょうで ダンスのれんしゅうは おしまいです。 ちょっと むずかしいダンスもあったけれど、いっしょうけんめいに がんばりました。 ワワが、『むずかしいことも がんばれば、できるようになるよ。』と いっていました。 8月31日、ぶたいで おどるの たのしみだなぁ〜〜〜!! 」
(映像:8月31日東京公演当日)
ナ /そして、ついに、千里ちゃんが舞台に上がる日がやって来たんです。 ワワとフレッドと過ごしたこの夏の成果を発表する時です。 ひと夏の子供達とのふれあい。 フレッドとワワにとってもこの日の舞台は、感激ひとしおです。 <本番直前、子供達の楽屋を、フレッド、ワワ、ロニーが訪問。>
この日のために覚えた日本の手話で語りかけます。
ワワ / みんな練習で、何度も頑張っていて、とても感動した。 アメリカに帰るのが寂しいよ。 ありがと!!
子供達 / (笑い声+拍手!!)
ナ / 手話で語ったワワとフレッドの思いは、今日のステージと、これからの人生に対するエールにうちりました。
お母さん / ねぇ、ちーちゃん。 頑張って、大きく踊ってね。 (笑)
子供達 / (円陣を作って) ガンバルぞ!! オーッ!!
(映像:ワイルド・ザッパーズ東京公演)
ナ / ワイルド・ザッパーズと子供達の公演の幕は、切って落とされました。 ステージに立ったフレッドやワワ達は、自信と誇りに満ちていました。
「僕達の光り輝く姿を、よく、目に、焼き付けておいて欲しい。」
「共に過ごした日々を、心の片隅に残しておいて欲しい。」
ダンスを通して語りかけます。
気が付けば千里ちゃん。 体全体で音を、そして、リズムを感じ取っていました。
さ、いよいよ、千里ちゃんの出番です。
♪(曲名:Back To Life)
ナ / 父とは母、固唾(かたず)を飲んで娘を見守っていました。 ワワとフレッドは、「最後まで笑顔で。」と、みんなに語りかけます。
「間違っても構わない。 楽しく踊りきる事が大切なんだよ。 それが君達の明るい将来につながるはずなんだ。」
ワワとフレッド達は、共に過ごす事ができる残りわずかな時の流れの中で、子供達にもう一度、呼びかけていました。
千里ちゃん、あのステップも、バッチリ決まりました。
わずか4分間のステージでしたが、千里ちゃんにとっては大きな思い出になったに違いありません。
千里ちゃん、ステージが終わって両親のもとへ、急いで駈け戻りました。
父は、「よくやった!!」とねぎらい、母は黙って娘を抱きしめました。
そして視線の先には、大好きなワワの渾身(こんしん)のステージがありました。
ワイルド・ザッパーズ、2002年日本公演は、大成功で幕を閉じました。 千里ちゃんは、ワワとフレッドに、感謝の気持ちをこめた手紙を渡します。
千里ちゃん / どうぞ。(花束と手紙を渡し、ハグする。)
ナ / そして、最後の別れの時を惜しんでいました。
フレッド / ガンバッテ!! OK?
ナ / (千里ちゃんへ)全部終わって、今、どんな気持ち?
千里ちゃん / 楽しかった気持ち。
ナ / 楽しかった?
千里ちゃん / ワワとフレッドとロニーが一番カッコよかった。 大きくなったらダンサーになりたい。
ナ / ダンスするんだ!
(映像:ワイルド・ザッパーズ楽屋にて)
ナ / 千里ちゃんが何度も何度も書きなした手紙。 手話で、千里ちゃんの気持ちを読み取ります。 熱い思いのその文面には、この夏、彼女がつかんだ自信と希望がにじみ出ていました。
千里ちゃんの手紙 / 「ワワとフレッドへ。 ダンスをいっぱいおしえてくれて ありがとう☆ とてもたのしかったです。 まだ いっしょに おどりたいのに、あとちょっとでアメリカへかえっちゃうから、さびしいなぁ〜〜。 また らいねんも 日本にきてね。 ばいばい。 ちさとより。」
ナ / 千里ちゃんの手紙はどう思いました?
フレッド&ワワ / 感動しました。
フレッド / 胸が熱くなりました。
ナ / 千里ちゃん、一生の思い出になる夏休みとなりました。
シャッターを切る音 / カシャ!! ☆
(映像:ステージ)
ナ / 今朝は、そのワイルド・ザッパーズ、リーダーフレッドさんと、メンバー3人の皆さんに、朝早くからお越しいただきました。
来ていただきましたのは、つい4日前に素晴らしいステージを見せてくださった、東京葛飾の「シンフォニーヒルズ(東京都葛飾区)」です。 そして、通訳を頼みますのは、この公演の主催者でもありました高村さんです。 よろしくお願いします。
主催プロデューサー:高村真理子さん / よろしくお願いします。
ナ / あの、フレッドさん。 日本の子供達に、その、ダンスを教えたこの1ケ月、いかがでした?
フレッド / とっても素晴らしいと思いました。 最初はとても恥ずかしがってたんですね。 でも、最後になったら、自分に自信を持って自分を表現してたんです。 とっても感動しました。 素晴らしかったと思います。
ナ / 引っ込み思案の千里ちゃんも、本当に最後は積極的になっていましたからね。 そして、千里ちゃんは実は、この夏の思い出を絵日記にしてくれたんです。 ご紹介させていただきます。
千里ちゃんの絵日記 / 「8月31日 今日は、ほんばんの ぶたいでした。 ワワとフレッドとロニーと おともだちと いっしょにおどって とてもたのしかったです。 大きくなったら、ワワとフレッドとロニーみたいになりたいなぁ。 らい年のなつやすみ、またみんなに あいたいなぁ〜。」
ナ / 本当にね、千里ちゃん、踊りだけではなくて、将来の夢まで与えてくれた、その、ワイルド・ザッパーズの皆さん。 その素晴らしいダンスをお願いいたします。
★ダンス★
ナ / 本当に短いのが残念なんですが、限りない自信を与えてくれた皆さんのダンス、いかがでしたか?
スタジオ:福沢アナウンサー / いやぁ〜、本当にハンディを感じさせませんね。 本当に堪能(たんのう)してしまいましたが。 あのぉ、本番当日の子供達の踊りはどうだったんでしょうか?
ナ / 本番当日の子供達の踊り、皆さんから見てていかがでしたか?
フレッド / (子供達のステージは)とても感動しました。 いろんな聴衆者(観客)の中には、感動して涙を流しているのもみました。 (それは、ろうの子供達がステージであのように踊るのを、はじめて見たからかもしれません。) 子供達は、将来そのもの。 重要なのです。 それを信じています。
福沢アナウンサー / で、来年もまた、お越しいただけるんですか?
ナ / そうですね。 来年も皆さんにはお越しいただけるんでしょうか?
フレッド / そうですね。 (皆さんから希望があれば、)また来たいと思っています。
ナ / あぁ、是非、よろしく願いします。
福沢アナウンサー / どうも、朝早くからありがとうございました。 これからも素晴らしい活動を続けて下さい。
この後は、最新の気象情報、ならびにニュースをお伝えします。
(8:22a.m.)
平成14年9月6日(金)放送
「ズームイン SUPER」
『ズームアイ!!【聞こえなくてもダンスは出来る〜ある少女のひと夏の挑戦〜】
制作・著作 : 日本テレビ
<文字版制作&配信> ☆宮下あけみ☆
【E-mail】 akemizo@beige.ocn.ne.jp
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