人工内耳友の会−東海−
娯楽に関する字幕

2010.06.19

 三田フレンズPC要約筆記サークル・企画 

■娯楽に関する字幕(ご意見お伺いの会)■

日時/6月19日(土)13:30〜16:30
場所/東京都障害者福祉会館 1階「A1」(三田会館)
情報保障/手話通訳、PC文字通訳
参加/無料、予約不要

はじめに…/
日本映画や演劇の日本語字幕付き日程は限られています。
「自分の都合に合わせて、映画を観に行きたい」
「自分の好きな席で、観劇したい」
「DVDやビデオを、好きなときに自由に見たい」

全体に見えるよう舞台上に表示された字幕、
まわりに気兼ねなく自分だけが見ることができるポータブル字幕、
いろいろな事例や工夫を、みんなで共有しましょう!


ゲスト1:
NPO法人 メディア・アクセス・サポートセンター(MASC)
事務局長 川野浩二様 http://npo-masc.org/data/index.html

映画を観るとき、聴覚障害者には字幕、視覚障害者には音声ガイドがないと楽しめません。
字幕と音声ガイドがあればどんな障害があっても映画を楽しむことができるのでは…と、2009年昨年の6月に「感動をみなのものに」をキャッチフレーズに設立したNPO法人です。
新しいことにチャレンジしながら、映画のバリアフリーに取り組んでいます。

2009年度、DVDは邦画とアニメで5383作品発売されています。
その中で聴覚障害者字幕付きは448作品、うち、視覚障害者用音声ガイド付きは数作品で約1%、聴覚障害者字幕付きもたったの11%です。
日本の映画、アニメを観たいと思っても、その中から選択するしかありません。
これを何とか解決できないかと、パソコンにDVDに入れると字幕が出てくる仕組みも作っています。

【MASCでは、何をしているのか?】
1:アーカイブ事業(日本語字幕、音声ガイドのアーカイブを行う)
映画を製作すると、それをテレビ放送やDVD,インターネット配信用など、いろいろな形に展開していきます。
このとき、各媒体がそれぞれに字幕・音声ガイドを作るとムダになるので、最初に映画を作るときにMASCも製作側に加わり、様々な技術を使って字幕・音声ガイドを作り、それを我々が預かる、アーカイブすると言う事業です。

2:養成事業(日本語字幕、音声ガイド制作者の養成)
聴覚障害者用字幕制作講座 http://npo-masc.org/pg75.html
視覚障害者用音声ガイド講座 http://npo-masc.org/pg67.html
ボランティアスタッフ募集 http://npo-masc.org/data/pg65.html

字幕制作者だけでなく、字幕校正者として聴覚に障害のある方も大歓迎です。完成した字幕を映像と一緒に鑑賞して、適切な字幕かどうかのチェックをお願いします。

3:開発事業(携帯端末による字幕表示、音声ガイド送出の研究開発)
ソフトウェア等を開発しています。

4:普及促進事業(バリアフリー視聴などその普及を促す)

【パソコンでDVDを見る時、字幕を付けて再生する】
web-shake http://web-shake.jp/01/

家族でDVDを見るとき、字幕がないと聞こえない自分一人だけがそのDVDを楽しむことができません。
そこでweb-shake(ウェブシェイク)という字幕を表示するサイトがあります。
現在、web-shakeのサイト内に約60作品の「字幕データ」があります。
この中の作品であれば、DVD自体に字幕が付いていなくても、DVDの映像とweb_shakeの字幕を一緒にパソコン画面上に表示して楽しむことができます。

「硫黄島からの手紙」は、日本語部分に字幕がついてません。
「ラストサムライ」日本語が出てくるたびに日本語字幕が消えてしまいます。
このような作品でも、web-shakeサイトからの字幕配信では、映画全体に字幕を付けています。
リクエストも受け付けているので、観たい映画があたらリクエストをお願いします。

【ヘッドマウントディスプレイ(HMD)に字幕を表示させて、観る】
ヘッドマウントディスプレイ(ここでは「メディアサポートUP(ユー・ピー)」)に字幕が表示されるので、その字幕を通して、映画を「字幕付き」で観ることができます。
但し、この方法で「字幕と映画」を同時に楽しむには慣れるまで時間がかかります。そのことと実験中であることを理解していただいた上で、現在はNPO会員のみへの貸出としています。

[利用者の感想(動画)]
|映画は字幕がないので、ずっと見にいかなかった。
|しかし、ニコンUPで字幕と同時に見ると、映画を楽しむことができた。
|このようなシステムの映画館が増えてくれれば、私も映画館に行きたい。

【なぜ、邦画・アニメに聴覚障害者用字幕が少ないのか?】
コストがかかる、製作側の言葉で「お金がないので付けられない」。
字幕チェックに手間がかかる、製作側の言葉で「一文字でも間違っているとDVD全体を作り直さなければいけないという、メーカー責任が生ずる」。
これらに対して「コスト&手間の解決策」をMASCが提示しています。
テキストデータをパソコンベースで作るので、コストは安くなります。
手間も「私どもがやります」ということで、1つの解決方法を思案中です。

【携帯端末で字幕を配信すると?】
実は字幕にもいろいろと要望があります。
「私は要約がいい」、「私は要約しないほうがいい」、「全部ルビがほしい」、「外国人のセリフなら英語の字幕が出ればいい」など。
個々に持っている携帯端末を使うと、切り替えて自分にあった字幕を表示させることができるので、これらの様々な要望に対応できます。

また、「字幕データがある」ので、パソコンとプロジェクタを通して、スクリーン上の映画に字幕を載せて表示させることもできる。

【映画館で携帯端末を持込可能にする!】http://npo-masc.org/pg83.html
蒲田の映画館で毎週日曜日、iPhone 3G対応(無線LAN不要)で、
各自が持ち込んだiPhone画面に字幕が表示させています。
文字色を映画館の真っ黒な中で見やすいオレンジにしています。
iPhoneではなくiPadに表示させると、文字はもっと大きくなりますが、手に持って見続けるのはツライでしょう。しかし、iPhoneでもずっと持っているのはツライですね。
画面を前の座席の後ろに貼り付けられるようにすると楽になるのではないかと思います。また、メディアポートUPであれば目の前に文字が浮かんでくるように見えます。進化すればもっと軽くなるのではないかと思います。(メディアサポートUPにはヘッドフォンも付いていますが、補聴器使用の場合ハウリングしてしまうのが欠点です)
iPhoneなどは、真っ暗な中で使っていると、隣の人は「チラチラして気になるので、隣は嫌だ」と思う人がいるかもしれません。
そういうことを今後どうしていくか、機器の方をもっと進化させることができるのか、今後実験していきたいと思います。

【鑑賞サポート上映館】http://npo-masc.org/pg59.html
「テアトル蒲田」「蒲田宝塚」で1年間鑑賞サポートを実施中です。2010.6.19現在上映中のものは「孤高のメス」と「劇場版TRICK」です。
iPhoneを持っていなくても、大きなディスプレイにも表示しているので字幕を視聴可能です。
アメリカの劇場のような「アクリル板を置き、そこに字幕を出す」形も実験中です。

【メディアサポートUP】http://npo-masc.org/pg70.html
右目、左目のどちらかに切り替えて表示可能です。
メディアサポートUPを付けて少し下に位置させると、両目で映画を観ながら目の前に文字が浮かんでいるように見えます。
メディアサポートUPの良い点は、舞台などで役者が左右に動いた場合、どの方向に顔を動かしても、(メガネと同じような感じで)字幕もその方向に付いてくることです。
今はスクリーンの手前に文字が浮かんで見えますが、もっと技術が進めば、奥のスクリーンに字幕が張り付いて見えるようになると思います。
マーケットや要望があって利用者が広がるのであれば、開発するメーカーもあると思います。

【最後に】
映画に関する字幕は「娯楽」というとで、各省庁と話をしていても後回わしにされてしまいがちです。
しかし娯楽は重要です。人が生きていく上で感動は重要です。
どんな映画も、障害のあるなしにかかわらず、誰でも楽しむことができるよう、今後も活動していきますので、よろしくお願いします。


ゲスト2:
株式会社イヤホンガイド プロジェクト推進室 浅野恵様
http://www.eg-gm.jp/g_mark/index.html

【会社概要と字幕サービスをすることになった経緯】
潟Cヤホンガイドは元々、歌舞伎・文楽など日本伝統芸能の舞台で、「解説のための音声ガイド」をイヤホンを通して流す会社です。
伝統芸能から始まり、今ではオペラ、ミュージカル、バレエと、多くの舞台に音声ガイドをつけるようになりました。
また、ミュージカル、クラシックコンサート等は“音”を楽しむものなので、「目で取得できる情報があったほうがいい」ということから、15年程前より「字幕事業=Gマークシステム」も行うようになりました。

【Gマークシステム】http://www.eg-gm.jp/g_mark/aboutgmark.html
舞台全体に見える字幕表示です。
主に外国語劇に日本語の訳を表示します。舞台を見ている全員に大きな字幕が出ます。
この方法でずっと行ってきましたが、欧米のオペラハウスや舞台で今主流になっているのは、座席の後ろにディスプレイがついている形です。

【座席型字幕機…座席の後ろにディスプレイ】
http://www.ntj.jac.go.jp/gekijo/nou/jimaku.html
http://www.ntj.jac.go.jp/topics/news061117.html

なぜ欧米ではそれが主流になっているのでしょうか。
欧米、特にヨーロッパでは、いろいろな言語を使う人が多いからです。
日本は一ヶ国語対応ができればよいのですが、ヨーロッパでは多言語が必要になります。
その場合、座席の後ろにディスプレイを付けるものであれば、一人一人が自分に合った言語の字幕チャンネルを選ぶことができます。
私たちの会社でもパーソナルに個々に使えるものがどんどん流行っていくのではないかと、5年程前に国立能楽堂に「座席型字幕機」を導入しました。
今まで能を観ていているだけでは内容が分からなかった外国人も、英語の「字幕・歌詞」が表示されることにより、内容を理解することができるようになりました。
Gマークシステムは4チャンネルあるので、夏休みの「親子鑑賞教室」では、お子さん向けに簡単なことばで説明する字幕・英語・歌詞などを表示させることができます。

潟Cヤホンガイドという会社は、ハードウェアを作って入れていく会社ではなく、舞台をいろいろな方々に楽しんでいただくための「中身を作る会社」です。
そこで、ソフトウェアやハードウェアについては、アメリカのオペラハウスに座席型字幕機を入れている会社と連携し日本に導入しました。

全ての座席にディスプレーを入れるには、字幕表示システムのための配線を入れ込まなくてはならないので、全ての座席(イス)を交換しなくてはなりません。
しかし、「そこまでのお金をかけられない」ということで、国立能楽堂に導入以来、日本国内の劇場ではまだ一箇所も入っていません。

【携帯端末iPodタッチに字幕を表示し、聴こえない方への貸出を考える】
http://www.eg-gm.jp/g_mark/index.html
これはフィガロ社が開発した無線システムを利用するため、椅子への配線は必要ありません。端末はiPodタッチを使っています。
パソコン1台を持参し、お客様に小さなiPodタッチを渡すだけで済みます。
今までは、私たちの発想としては皆様に見ていただける大きなスクリーンを想定していましたが、これであれば劇場にくる少数派の人たちに貸し出せば済むという、素晴らしいアイデアだと思いました。

当初は外国人のお客様のためへの「外国語字幕」を考えていました。しかし、アメリカでは障害者へのサポートとしていろいろな支援を行う動きが盛んです。提携しているフィガロ社からも、「この方法はアメリカでは耳が聴こえにくい方にも喜ばれているシステムである」と聞き、私たちにも出来ないかと考え始めました。

去年9月、東京芸術劇場で野田秀樹さんの「ザ・ダイバー」という劇がありましたが、その中で、耳の聞こえない方や目の見えない方へ工夫をしながら公演を行う日がありました。
野田さんは台本を配ることを考えていましたが、「これ(iPodタッチへの字幕表示)を使ってみませんか?」と相談したところ、「やりましょう!」となり、この「ザ・ダイバー」が、はじめてポータブル字幕機を貸し出す公演となりました。

【聴こえない・聴こえにくい方への字幕を考える】
今まで作っていた全体に見えるような字幕とは違うと思いましたが、私共も勉強不足で何の知識もなかったので、とりあえず劇場の人とも相談し「台本を一言一句入れていく」字幕にしました。
すると次に、耳が不自由な方は、「効果音や音楽が聞こえないのだ」ということに改めて気づきました。
この「効果音や音楽」を、どうやって書き表したらよいのか。
「風の音」は『風の音』でよいのか『ヒュー ヒュー』と入れるのか?
そんなこともよくわかりませんでした。
従来私たちが行ってきた字幕は、外国語劇を日本語にするためのもので、「一場面で1回に目に入る文字は、このくらいの文字量」ということに基づき作成し、パッパと出していた。
また、音楽にあわせて、文字もフェイドインしたりフェイドアウトしたりと、舞台の雰囲気に合わせることが大切だと考えていました。
しかし耳が不自由な方には“音の説明”も表示しないと雰囲気も伝わらない。効果音などいれると文字もたくさん必要になる。
すると、1回に入れられる文字は限られているので、急いで出さなければならないときもあります。
「こんなにはやくても読んでもらえるだろうか…」と心配していました。

わからないことがたくさんある中、試行錯誤して字幕を作り本番を迎えました。
貸出数は、1日に2〜3人程度でした。
はじめての試みではありましたが、実際に利用された方に詳しくお伺いした結果、いろいろなことが分かってきました。
実際に感想を聞いてみると、速くても読めるのかという心配に対して「一度に沢山の文字が見られる」という意見がありました。
また、「セリフは男女で色分けをして欲しい」など、いろいろな意見をいただいた。

その後、2009年11月「奇跡の人」Bunkamuraシアターコクーン、2010年1月「ウーマン・イン・ホワイト」青山劇場、2010年3月「農業少女」東京芸術劇場と実施を続けています。
今後も、2010年7月「ザ・キャラクター」、2010年8月「ピーターパン」、「ガラスの仮面」彩の国ファミリーシアターと、行っていきます。

皆様に見ていただく字幕の内容を改善することも大切な仕事の1つだと思っています。しかし、それだけではありません。
基本的に私たちの仕事(字幕配信・イヤホンガイド)は、劇場や興行主に付随しているサービス形式で、プロモーションや告知などは、すべて興行主、劇場にお任せしていました。
しかし今では、「こういうサービスがあることを早く教えて欲しかった」と、私たちの耳に届くようになりました。このサービスを行っていることをどう伝えるか、今後はそれをどうするかも探っていきたいと思います。

つたない私たちの仕事ですが、皆さんに喜んでいただいていることが励みになっています。
そんな中、字幕に取り組んでいる方たちに知り合う機会もあり、少しずつ勉強しています。
これからも皆様のご意見を伺いながら、すすめていきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いします。
この機会をいただき、ありがとうございました。


ゲスト3:
文字通訳Luna(ルナ) 塩濱ひろみ様
http://www.page.sannet.ne.jp/mgoto/kiroku.html

大阪は、ろう運動が盛んです。
2005年2月13日大阪城ホールにてアイ・ラブ・チャリティー・1万人コンサートが開催されました。
これは、ろう高齢者施設の建設資金のためのチャリティーコンサートでチケットを協会がいろいろなところに、通訳者を同行して頭を下げて1枚ずつ売っていきました。

【下見】
ピンクレディは、たまたまその年、復活コンサートをしている最中で、本番は大阪城ホール」でコンサートを行うとのことでした。
私たちは6ヶ月前より情報保障に関する準備を進め始めました。

まずは下見です。
大阪厚生年金ホールでは、どういうイベント構成か、劇場で見ている方はどういう反応をしているか、しっかりと見に行きました。
このとき、聴こえない人や手話通訳者も一緒に行きました。

終わってからろうのみなさんに「どうでしたか?」と聞くと、「う〜ん、ピンクレディだったな」だけ。
きっと一般的に50歳前後の方々だとピンクレディ世代のど真ん中なので、とても懐かしかったハズなのにとふと疑問に思いました。。
ピンクレディのコップ、お弁当箱やカバンを持ったり、テレビに出れば一緒に踊ったりしていた年代だったはずなのに。
一緒に行った人もそれぐらいから、もう少し年上の人たちだったのですが、「楽しい」という雰囲気とも違う感じでした。
例えば「歌:UFO」の場合。
イントロが聞こえてくると、聞こえてる人は思わず「UFO!」とやってしまいますよね。
聞こえない人も「確かにそうだったよね」とは言うのですが、何というのか、ちょっと引いた感じに感じました。

【字幕を作る】
チケットが売れ始めると、字幕に対する私たちへの責任が重たく感じられました。
たとえ字幕を付けても、1枚4〜5千円のチケットを買った人が本当にコンサートを楽しんでもらえるのであろうか…と、不安になることもありました。

舞台の左右に、上から吊す形のスクリーンが2つ(スクリーンの裏からプロジェクタを投影)。プロジェクターはレンタル代だけでも数百万というものでした。
字幕の位置は「左下側に4行、横15文字」。テロップと文字カラオケモードを使用しました。

私たちはピンクレディ世代なので、最初の1音が聞こえると、何の歌なのかわかります。
「チチチ…」と電子音が聞こえたら、それだけで「UFOだ!」とわかります。
しかし、聞こえない人には、わからない。
照明がぐるぐる回ってもわからない。ライトがあたって衣装でわかる。

それではおもしろくないし、その前の音があることも伝えたくて「UFO!」と言う前、イントロで「チチチ…」の電子音のとき、無限大マーク(∞)をUFOに見立て、『∞ーーーーー』と、画面の端から端までテロップで走らせました。
すると、どっかん!、皆大盛り上がりで踊り始めました。
聞こえる・聞こえないに関係なく、ファンの人達も、みんな、1万人で踊ることができました。

「モンスター」は『お化けの笑い声(わっはっは)』で始まります。
それを聞いてピンクレディーが「キャー」と叫ぶ。
聞こえない人は「キャー」が何の意味を表すのは、それまではわかりませんでした。
最初に怖いおどろおどろしい笑い声があって、「キャー」が生きてくる。
そこで、お化けの顔文字「ヘ(`w´ヘ)〜」をデザインしました。これもテロップで右から左へ走らせました。
その他にもいろいろな「顔文字」を工夫してコンサートを盛り上げることに少しは加われたかなと思います。

終了後、入力者席に多くの人が来てくれました。
「はじめて踊りの意味と歌詞が結びついた」
「踊りの意味を知らなかった」
「『渚のシンドバッド』も、あれは水に入るから、耳に水、唾を入れ、鼻をつまんでもぐるんだね」
「『サウスポー』にも何でも、ピンクレディの踊りには意味があったんだね」と大興奮。

私たちよりずっと年上の方々が、「踊れたわー。ありがとう!」と。
いっしょに楽しんでいっしょに踊れる字幕が少しは実現できたかもしれないと思いました。
「共に楽しみ、踊れる字幕」。

歌詞「UFO」 http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=35601
歌詞「サウスポー」 http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=37262
歌詞「渚のシンドバッド」 http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=37279

【落語に字幕を付ける】
2007年難聴者団体の福祉大会での字幕のこと。
その時の目玉として「落語」をかけるのは良かったのですが、そこに「字幕を付ける」となると大変でした。
大阪府と大阪市の両難聴者団体の長が会社に行き、交渉していただきました。

そのとき会社から言われたのは「落語」には、座位や噺家の顔が向く方向など、全てに理屈がありルールがある。ひとつひとつの所作と話から想像させる等、とても知的で高尚な芸であると説明をいただきました。
そのため、字幕を正確に付けることができるよう、事前に師匠とお弟子さんがかける演目を3つ、私たちだけのために舞台を作りビデオを撮るというご協力をいただきました。

そして字幕を付ける作業に入るのですが、その時「一言一句、このビデオからことばを変えないように」と注意されました。
しかし古典落語は、普段私たちが使っているような言葉とはちがい例えば、「おまはんは」「おますか」など古い言い回しを使いますし、今では身の回りにないようなものも登場します。
これらは全て落語の“味”のひとつではあるが、それを一言一句字幕にして出しても、その意味が伝わるか…悩むところでした。
また、落語は生き物なので、同じ演目でもそのときにより話の順番が違ってきます。
それも含め、一緒に楽しめる方法を現在も研究中です。

このような感じでやってきました。
ありがとうございました。

【おまけ:関西弁と字幕…“笑い”や“オチ”は?】
大阪人はオチがないとしゃべってはあかんのですわ。
方言は、その人の味。その人の味は伝えたい。
オチや笑いは、関西では“おいしい”ところ。
おいしいところは、必ず入れる。他を削ってでも必ず入れます。

“お約束”が多いので、こう振ったら、こうぼけて、というのがあります。
関西人なら打てますが、他から来た人には難しい。

方言が誤解してとられるとき。
大阪弁で「それほっといて」は「捨てる」ことですが、穴を掘ることだと受け取られることがあります。
方言はその土地の人じゃないと、ニュアンスを正しく掴めないのでいじれないですね。

例えば、NHKの朝のドラマで「だんだん」という言葉があります。
大阪弁で「ありがとう」は「おおきに」などといいますが、島根の場合は「だんだん」。
その言い方も、男女や年代で、言い方が違いますよね。
女の人が言うと、優しく「だんだん」だったり、でもお父さんが言うと、厳しかったり、ドラマでは寂しそうだったりしながら「だんだん」と言っています。
標準的な話し方ができるのにわざわざ方言で話をしているのはなぜか。
ニュアンスの伝え方が難しいですね。
手話だと出し方や表情でニュアンスを伝えたり変えられますが、文字は固く伝わりにくい性質があります。
わざわざ方言を言っているときは、なぜなのかを考えながら今後も大事に伝えていきたいと思います。


会場指定発言1:
宝塚PSP字幕観劇の会  藤城様 柳澤様

人工内耳友の会のメンバーの中の「宝塚ファン」が集まり、「PSPに字幕を出して宝塚を観に行こう!」というグループをつくった。

初めて見たのは、2008年の宙組の演目。
PSPで字幕を見ながら演劇を観ると、本当に内容がよく分かって、素晴らしいと思った。
その後も、星組の「スカーレットピンパーネル」など、いろいろなものを観に行っている。

耳が聴こえないので、歌も聞こえないし、セリフもわからない。
たとえ宝塚に行ったとしても、ただきれいな舞台の踊りや舞台をながめるだけだと思っていた。

しかし今では聴こえない私も、宝塚を楽しんでいる。
こんな方法や機械があるのかと、とてもびっくりしている。

初めて舞台のセリフが私のPSPに字幕で出たときは、本当に感動して、泣きました。
もう年ですが、改めて長生きしたいと、今は思っています。
ありがとうございました。

※宝塚のお芝居のセリフは、一般に市販されている「ル・サンク」に全て載っています。


会場指定発言2:
手話通訳同行で歌舞伎を鑑賞するグループ 茂木様

日本の古典芸能には狂言、歌舞伎、文楽、能などがあります。
能は面をかぶっているので、口が見えず表情がわからないので、聴こえない人には難しいと思います。狂言は、衣装が同じで、舞台を対角線に歩きながら台詞が述べられます。

一方、歌舞伎は悪役か善役かで衣裳も違うし、顔の隈取りも違います。
江戸時代から大衆のために始まった芸能なので、役者がしゃべるときに大体前を向いてしゃべります。
そのため、聴こえない人にもわかりやすいはずだから観てもらえればと思い、希望者を募って観に行くようになりました。
前もって劇の台本を読んできてもらい、オペラグラスも使用してもらいました。
皆、口々に、「はじめてだがおもしろかった」、「よくわかった」と言ってくれました。

国立劇場での「歌舞伎鑑賞教室」、6月と7月の開催で、7月だけ字幕が付く。
しかし、全てに字幕が付くのではなく、義太夫が三味線を弾きながら語るところだけに字幕が付きます。
また、毎回「歌舞伎の見方」という解説があります。
しかし「歌舞伎の見方」には台本がないので、手話通訳者を連れて行っていいかと問い合わせるとOKが出ました。
劇場側もはじめてのことだったので、とても心配をしてくれました。

手話通訳は、本音としては舞台に立っていただくのが一番いいのですが、他の観客のことを考えると、それは難しいことです。


舞台や役者をしっかり観るには前の席が良いのですが、縦置きの字幕版は舞台の両端に出るため、一番前に座ると真横を向かないと読むことができなくなってしまいます。
そのため「中央で前から5番目ぐらい」の席がベストなのですが、「手話通訳を付ける」ことを希望すると、どうしても他の観客に迷惑の掛からない「端の方で」となってしまいます。

そこで今年は、午前と午後の2回あるときに、午前の回にロビー入場させてもらい、で「歌舞伎の見方」をモニターテレビを観ながら手話通訳をやってもらう方法を初めて試してみます。
それを観た後に、午後もう1度入って、手話通訳ナシで生の舞台を観る…という方法でやります。
 
また、歌舞伎座(松竹)に、「役の情報として、その役の衣装や化粧をしている写真がほしい」とお願いしたことがあります。なぜかというと、いろいろな人が出てくるが、誰が何の役なのか台詞が聴こえないのですぐ掴めないからです。チラシでは、幾つかやる役のうち1つの写真情報しか載りません。
しかし、断られました。どうしてかわからなかったのですが、後日、劇場内の店でブロマイドを売っている事がわかりました。これがあるので個別の提供が難しいのでしょう。
しかし、聴こえない人は役者の写真が欲しいのではなく、役を判断するのに必要な情報掴むために必要なのです。1人の俳優がいくつもの役をやりますが、チラシに載っているのは、2〜4つの演目のうち1つの演目の衣装のみです。また、端役の情報まで載りません。全部の情報ではないのです。
こういうことも、今後は求めていこうと思っています。

最後に、聴こえない人が歌舞伎を観るとき。
必ず事前に台本を読んでおくといいと思います。
字幕表示があっても昔の言葉なので、前もって読んで流れがわかっていたほうがいいからです。
その場で初めて見ると、現代にない言葉があったりして字幕を読むのに気をとられ、舞台がはっきりわからなくなると思います。
以上聞いていただきありがとうございました。


直したが、乗せないほうがいいと思われる部分
また舞台前のスペースも狭く、消防法との関係でイスを置くこともできません。
そこで、劇場が特別に用意してくれた「簡単な小さい箱」に厚い座布団を敷いたものに座って、手話通訳をしてもらいました。


参加者の感想等
・演劇や映画は「楽しめないもの」と思ってきたが、皆さまの活動を聞き、「これから私も一緒に楽しめるかな」と希望が出てきた。

・当事者の1人として舞台などに興味があっても聞き取りにくいと思い、足が遠のいていた。
ヘッドマウントディスプレイに字幕を表示させる話は、とても興味深かった。

・歌の雰囲気を顔文字で表現することについて。
文字だけの情報保障にとどまらず、その場の空気感も提供することが大事だと思った、
今後とも楽しませていただきたいと思います。

・字幕システムのご苦労には感謝の念が絶えません。大変勉強になりました。

・「ガラスの仮面」が大好きで読んで育った世代です。
地域の区役所ではじめてこのチラシを見たときには「字幕」に関する情報がありませんでした。
その後、ホチキスどめで「字幕公演日」のお知らせが付いていた。
はじめのチラシのときに付けてしまえば、皆に広がりますので、そのようにお願いします。

・20年前、聞こえなくなった時に、テレビ放送に字幕をつける会という運動をしました。
私自身、テレビに字幕がついたとき、どんなに嬉しかったか。
しかし、そのあとがなかなか進まなくて残念に思っていましたが、ここ数年で、舞台や映画の字幕に対していろいろな試みがされていることを知り、うれしく思いました。

・私にとって舞台を楽しむのは贅沢だと思っていましたが、そうではないんですね。
これからもみんな平等な立場で楽しめるよう、お願いしたいと思っています。

・今までは、情報を伝えるというのは、基本的な必須な情報部分のみという発想がありました。
しかし、今日、特に塩濱さんの話を伺っているうちに、シチュエーションなどを伝えることも大切だと思いました。

・最近、視覚障害者のための映画音声ガイドライター講座を受けました。
やはり聞こえない方に対するサポートにしても、目の見えない方へのサポートにしても、基本の「伝える」ということは同じだと感じています。
いかに客観性を保ちながら、かつ必要な情報を伝える難しさを実感しています。

・最近は情報保障が進歩、発展したのですごく期待しています。

・現場で入力しているとき。
東北の方は、比較的頑張って東京弁や標準語で話そうとされますが、関西の方はそのまま話されます。
関西弁はとてもいいのですが、私たちは、それをどう標準語にすればいいか、ニュアンスがわからないときがあって、わからないと、そのまま「 」でかこいます。
関西の方の独特の言い回しなどあったら、そちらも話していただきたいと思いました。

・要約筆記の文字通訳をされている方たちが、方言を標準語に変えるという話しがありましたが、方言は方言なりにそのまま伝えて欲しいと思います。
方言を標準語にかえると、ニュアンスがかわるし、話し手の持ち味と違ってしまします。
見る人が判断すれば良いと思います。
要約筆記には期待していません。
できるだけ話し手の持ち味、言葉の味をそのまま伝えるようにして欲しいと思います。

・落語の場合。手話通訳を見てしまうと、話す本人を見ることができないので、手話通訳では落語は楽しめません。

・日本テレビの「笑点」という番組を字幕付きで楽しんでいます。
お笑い関係の字幕の場合、リアルタイム入力ではどうしても遅れてしまい、全然楽しくありません。
落語というのはタイミングを合わせないと楽しめないと痛感しました。
そのあたり、実際に字幕を出される側は大変だと思います。
筋がわかれば良いのではなく、一緒に楽しめることが大切だと思います。

・ネットの動画に字幕を付けて欲しいです。
例えば、ニコニコ動画や事業仕分けの中継など。

・アメリカにはADAがあり、聴覚障害者のアクセス権として字幕を付けることが必須となった。
字幕がつくことによってそれを電子的データにおきかえて点字データにする。これは視覚障害者も役立つ。
また、一般の方にとっても、画像をセリフによって検索できるようになった。
このように「文字情報」というのは、聴覚障害者に必要性があったが、結果的にすべての人にとり役立つものであったということが歴史的理解だと考えています。

・博物館、美術館で、いろいろと電子機器を使って情報が得ることについて。
日本では町全体にICを埋め込み、障がい者をガイドするという実験が神戸で行われました。
手話で情報を読み取る。文字で音声で情報を読み取るという実験でした。

|【上野動物園】
|携帯端末を使った動物情報サービス
http://www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/uc/index.html

|【東京ユビキタス計画】 http://www.tokyo-ubinavi.jp/
|【自律移動支援プロジェクト】 http://www.jiritsu-project.jp/index.html


さいごに…
川野様/
継続性は大切です。
私どももNPO法人で非営利でやっていますが、映画館や配給会社も権利者も、「字幕音声ガイドをつければ人が入るんだ」と思ってくれば、すべての映画につきます。
見たい人が動くというか、見たいと言うことを押し出して行くことが大切です。
そして今、蒲田でやっていることも、人がそこに集まって賑わわないと継続できないと思っています。
1つのビジネスとして成立しないと継続しません。
単なる福祉、ボランティアでは、エンターテイメントの世界は成り立たちません。

携帯端末はこれからも進化していいものができると思います。
今は映画に絞ってやっていますが、潟Cヤホンガイドさんが舞台でやっているように、今後連携をしながら、いいものを、必要な人が必要なものを端末で保障できるようにしたいと思います。

浅野様/
潟Cヤホンガイドとして、舞台を楽しんでいただくためにはどうすればいいのか考えてきた中で、今回、耳が不自由な方のために一歩を踏み出しました。
しかし1つの企業が事業としてまわせるように、継続していかないといけないと思います。
私たちがひとつ工夫することで、聴こえない方にも舞台を楽しんでいただけるようになったと実感しています。
主催者の方たちに、新しいお客様を呼び込むために協力体制を作ることが第一歩だと思います。

塩濱様/
知的、精神の方にも字幕があることで、映画やその場が楽しめます。
社会参加というか階段にエスカレーターやエレベーターが付くのと同じで、字幕が付くことでユニバーサルになります。
全国どこでもどんな時間でも字幕を見られる。そういう世の中になればいいと思います。
そして、野球の「ワンアウト」が「ワンナウト」と言うことや性別によって使う言葉が異なる事など、TPOに応じて活かして伝えたいと思います。
ありがとうございました。

三田フレンズ代表:酒寄/
私も以前、落語や歌舞伎に文字をつけたことがあります。
アトラクションで、ライブだったと思います。
途中で出てくるMCは、普通の司会より少しくだけた感じで、かなり笑いをとる方でした。

「ここはおいしい!」と思い私は一生懸命入力してしていましたが、そのMCの方は「そんなことは打たなくていいから。(^_^;)」と、繰り返し言っていました。

今日は舞台や映画の字幕の話にとどまらず、幅広い話を伺うことができました。
私の話にはオチがないのです。東京人の悲しさです。
ありがとうございました。

☆また会おうね!☆ (^.^)/~~~



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