声を失った議員 発言権は |
2007年3月
【文字版】2007.3.12(月)「TBSイブニング・ファイブ」 【文字版】 制作&配信 ☆宮下あけみ☆ 【協 力】 人工内耳友の会 [ACITA(アシタ)] ■皆さまへ■ 2007.3.12(月)「TBSイブニング・ファイブ」の中で放送されました、「『代読』の可否で対立 〜声を失った議員 発言権は〜」(17:16〜17:26の10分間)の【文字版】を作成いたしました。 「聞こえてくるもの」を「文字化」させていただきましたので、会話もそのままです。また、聞き取りにくい声や音は、自分に聞こえたまま打たせていただきました。不明な点は、「+++」と記しております。 【制作・著作権】は、【TBS】様です。 聴覚障害者の方々がこの番組を視聴なさる時は、ご活用下さいませ。 この文字版は、私、宮下が個人的に作成し、掲載していただいているものです。 最後になりましたが、【文字版】として文字化する事に対し、ご相談に応じてくださった【TBS】様に、心から御礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。 尚、【文字版】に対するお問合せ、ご意見、ご感想がございましたなら、宮下まで、直接ご連絡下さいませ。 今後とも、宜しくお願い申し上げます。 《小池公夫ホームページ》 http://www.geocities.jp/chocoball1018/ <文字版制作&配信> ☆宮下あけみ☆ 【E-mail】 akemizo@beige.ocn.ne.jp ***************************************************** 2007.3.12(月)TBSイブニング・ファイブ 【「代読」の可否で対立 〜声を失った議員 発言権は〜】 ***************************************************** ※現在の小池議員の発言や声は、家族による音声通訳及び字幕表示されているものを記させていただきました。 (17:16 開始) 【「代読」の可否で対立 〜声を失った議員 発言権は〜】 女性キャスター/ 病気で声を失ってしまった議員の発言方法をめぐって、ある地方議会の対応が訴訟(そしょう)にまで発展しています。 代読(だいどく)を認められず、質問が出来なくなってしまった議員の声なき叫びを取材しました。 -------------- ナレーション/ 岐阜県中津川市で、今日、市議会の一般質問が行われました。 普段は注目されることのない議会に、多くの傍聴者や報道陣の姿が。 実はこの議会で、ある問題が起きているのです。 一般質問を静かに見つめる一人の議員。 共産党会派の小池公夫(こいけきみお)議員です。 「中津川市議会 小池公夫議員(67歳)」 |(2002年7月の映像) |小池/(ハッキリとした当時の声・肉声) |1万人以上の署名をしてくれた市民がいるということが、 |私を前へ押し出してくれる、支えてくれる。 ナレーション/ 大きな声と議会への鋭い質問が持ち味だった、小池議員。 しかし…。 |(今年7月) |小池/+++ +++。(とても聞き取りにくい) |家族/おじ? ナレーション/ 5年前、喉(のど)のガンが見つかり声帯を切除。 小池議員は声を失いました。 「食道発声」という特殊な方法で声を出すものの、その言葉は、はっきりしたものではありません。 |「食道発声」 |飲み込んだ空気を吐き出し、食道を振動させる。 |小池/ |なかなかね、自分の思いが伝わらない。面倒くさい。 ナレーション/ 声を失って以来、小池議員は障害者の視点に立った政治に取り組み始め、その後の選挙にも当選しました。 しかしその先に、予期せぬことが待っていました。 市議会の一般質問で、小池議員が代わりの人に質問書を読んでもらう「代読」を願い出たところ、議会がこれを認めなかったのです。 各会派の代表議員からなる議会運営委員会は、「パソコンの会話補助装置を使うこと」と決定。 以来10回に渡って「代読」での質問が拒否され続けました。 |小池/ |なぜ代読がだめなのか。 |全然説明できない。 ナレーション/ 代読を認めない理由は何なのか。 議会運営委員会の議事録には、こんな記録が残っていました。 |【議事録より】 | |/代読となると、選挙で選ばれていない人が演説をすることになる。 | 本人が意図する発言内容と異なった発言が行われる可能性がある。 | |/学歴詐称で立候補・当選した議員が辞職しなければいけない事態がある。 | しゃべれることを前提に立候補されて | 「(リハビリが)予定のように行かなかったのは大変だ」と言われても | そう簡単にはいかないと思っています。 |小池/ |これは障害を持った人に対する、いじめ。虐待(ぎゃくたい)。 ナレーション/ 岐阜県の弁護士会は、「参政権や表現の自由を不当に制限するもの」として、議会に是正勧告(ぜせいかんこく)を行いましたが、議会はこの勧告を受け入れず、ついには小池議員が「障害者への差別だ」として、反対派議員を相手に裁判を起こす、という事態にまで発展しました。 |【小池議員】 |「障害者への差別」として反対派議員に損害賠償を求め提訴(ていそ) ナレーション/ 反対派議員に取材を行うと、多くが言葉を濁(にご)します。 |取材スタッフ(電話取材)/ |どうしてこれはダメなんでしょうかね? | |反対派議員/ |それのことは代理人のほうにですね、お任せしておりますので |あの…、私のほうからは申し上げられませんけど…。 ナレーション/ そこで私たちは議会運営委員会の委員長を務める議員に、直接質問しました。 |議会運営委員長・楯 公夫 議員/裁判に持ち込まれたことなんですよね。 | |取材スタッフ/はい。 | |楯議員/係争中(けいそうちゅう)ですんで、 |「あまりコメントはすんな」ということで |弁護士に言われているもんですから。すんませんけど。 | |取材スタッフ/どうして代読が認められないんですかね? | |楯議員/「認められない」のはなくて、そういうこと(妥協案)を |共産党市議団が言ってきたので、それを了承しただけですよ。 |我々は。 ナレーション/ 議会でルールを決めた以上、それを守るべきだと主張する、反対派議員。 しかし市民の多くは小池議員に同情的です。 |【中津川市民は…】(街頭インタビュー) | |男性/代読は認めていいと思うけどね。 |なんでそんなややっこしい、難しい機械を使わなくてはいけないのか。 | |女性/もし自分がそうなった時、「代読ではダメ」と言われたら |どういうもんかということも考えて欲しいと思うね。 ナレーション/ 障害者の発言方法をめぐる問題は、中津川市だけの問題ではありません。 電動車いすに乗る男性。 神奈川県鎌倉市議の、千 一(せん はじめ)議員です。 |【千議員】重度障害者で、手足・言葉に障害 ナレーション/ 重度の脳性まひで、手足や言葉に障害を持つ千議員は、自由に動く左足で、日常生活の様々な動作を行います。 |取材スタッフ/体調のほうはどうなんですか? ナレーション/ 会話を助けるのは足元に置かれた音声キーボード。 |千/まあまあです。(音声キーボードからの音声) ナレーション/ 千議員は6年前に鎌倉市議会議員に当選。 質問は代読で行うことを希望し、議会はこれをすぐに認めました。 以来、鎌倉市議会では、議会スタッフが千議員の質問を代読していますが、問題は全く起きていないと言います。 |取材スタッフ/代読を認めた理由と言うのは何ですか? | |鎌倉市議会・松中健治議長/権利ですよ、それは。 |その人の考えを、要するに、そこで発言する権利ですよ。 |良いとか悪いとか言うより当然だと思っているから。 ナレーション/ 千議員は、「障害者が“自分の希望するやり方”で発言することは、当然保証されるべき権利だ」と話します。 |千議員/どんな形であれ、本人の意思を尊重すべきだと思いますね。 |(中津川市議会に対しては) |「自分がそうなった場合どうするか?」と言いたいですね。 ナレーション/ 小池議員は声帯を切除する前日、病院の前の公園で、1本のテープを収録していました。 |【手術前日の小池議員の“歌声”】 |小池/♪山の畑の桑の実を 小籠(こかご)に摘んだは まぼろしか… ナレーション/ 歌を歌うのが好きだったと言う小池議員。 声を失ったことで肉声の大切さをより重く感じるようになったと言います。 |小池/声が出たときの感動、そういうことを思い起こすと、肉声… |機械の音ではなく肉声に勝るものはない。 ナレーション/ 今日、議会運営委員会の委員長は会見を開き、会話補助装置の性能の高さをアピールしました。 しかし「人としての権利」を求める小池議員にとって、機械の性能は問題ではありません。 |記者質問/もしご自身、声がなくなったら(失ったら)どうされます? | |議会運営委員長・楯公夫議員/はい。僕は議員やめると思います。 |市民の皆さんの付託(ふたく)に応えられないから僕は多分辞めると思います。 |小池/障害者の生き方を第三者が決定することは、 |絶対にあってはいけない。 ナレーション/ 今月で議員生活を終える小池議員にとって、今回の議会は一般質問の最後のチャンス。 声なき叫びは議会には届かないのでしょうか。 ----------------- (スタジオ) 三雲孝江/代読でいいと私は思うんですけどね。 杉尾秀哉・TBS特別解説委員/そうですよね。 地方自治法上もですね、議員の発言方法について特段の何の定めもないんですよね。 現に鎌倉とか他の自治体では認めているわけですよね。 やはり政治家が発言権を奪われるというのは、政治家として死んだも当然ですから。 しかもいろんな人が議員・議会にいて、だからいろんな政策ができるわけですから。 三雲/いろんなかたの代表ですものね。 杉尾/はい。 それを排除の論理でやりすごすというのは、あんまりだと思いますよ。 三雲/はい。 このあとは「本日の瓦版」です。 (17:26 終了) 以上。 |
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