人工内耳友の会−東海−
あなたも参加する刑事裁判

2007年2月

【文字版】2007.2.

【文字版】 制作&配信 ☆宮下あけみ☆
【協 力】 人工内耳友の会 [ACITA(アシタ)]

【皆さまへ。】
<裁判員制度 広報ビデオ>の中の、「1.あなも参加する刑事裁判 〜裁判員制度が始まります〜(15分)」の【文字版】を作成いたしました。

「聞こえてくるもの」を「文字化」させていただきましたので、会話もそのままです。また、聞き取りにくい声や音は、自分に聞こえたまま打たせていただきました。不明な点は、「+++」と記しております。

【制作・著作権】は、【最高裁判所】様です。
聴覚障害者の方々がこの番組を視聴なさる時は、ご活用下さいませ。

この文字版は、私、宮下が個人的に作成し、掲載していただいているものです。

最後になりましたが、【文字版】として文字化する事に対し、ご相談に応じてくださった【最高裁判所・広報】の皆様に、心から御礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。

尚、【文字版】に対するお問合せ、ご意見、ご感想がございましたなら、宮下まで、直接ご連絡下さいませ。
今後とも、宜しくお願い申し上げます。

《「裁判員制度」ホームページ》 http://www.saibanin.courts.go.jp/
《広報ビデオ》 http://www.saibanin.courts.go.jp/news/video.html

<文字版制作&配信>  ☆宮下あけみ☆
【E-mail】 akemizo@beige.ocn.ne.jp


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【文字版】
あなたも参加する刑事裁判
〜裁判員制度が始まります〜

http://www.saibanin.courts.go.jp/news/video1.html
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辰巳/
みなさん、こんにちは。辰巳琢郎です。

長澤/
こんにちは。長澤奈央です。

辰巳/
我々は今、東京地方裁判所の前に立っております。
実は私、ここに来るのは初めてなんですけれども、
これからこの場所がもっと身近になってまいります。
皆様は平成21年までに導入される、
裁判員制度をご存知ですか?

裁判員制度とは、
国民が裁判員として刑事裁判に参加する制度です。
裁判官と一緒に被告人が有罪かどうか。
有罪の場合、被告人をどのような刑にするか決めていくんですよ。

長澤/
そうなんですか。
私、裁判員制度についてあまりよく知らないんですが、
どのようなことを知っておけばよいでしょうか。

辰巳/
はい。
実は裁判員制度も、現在行われております
刑事裁判の手続きがベースになりますから、
まずその流れを確認しておきましょう。

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≪あなたも参加する刑事裁判≫
〜裁判員制度が始まります〜
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解説(辰巳)/
刑事裁判とはどのようなものなのでしょうか。
ここで、刑事手続きの流れを簡単に説明しましょう。

裁判ではまず、検察官が起訴状(きそじょう)を朗読します。
その上で、被告人と弁護人から起訴状に書かれている事実について
言い分を聞きます。

続いて「証拠調べ」の段階に入ります。
冒頭に検察官が、証拠によって証明しようとする事実を主張します。
次に、その主張を証明するため、証拠を取り調べるよう、
裁判所に求めます。
そして裁判所は、必要な証拠を調べます。

同様に被告人(ひこくにん)側の請求により、
立証(りっしょう)に必要な証拠も取り調べられます。

そして証拠調べが終わると、その結果を元に、
検察官、弁護人、被告人が意見を述べる
弁論手続き(べんろん・てつづき)がおこなわれます。

そして裁判官は、これらの証拠調べや意見を踏まえて
判決内容を話し合う「評議(ひょうぎ)」を行い、
判決が宣告(せんこく)されます。


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辰巳/
刑事裁判はこのような流れで進められます。
それでは法廷の中へ参りましょう。

長澤/
はい。
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解説(辰巳)/
3人の裁判官が入廷(にゅうてい)しました。
殺人事件など重大な事件では裁判官3人が裁判を担当します。

裁判官/
それでは開廷(かいてい)いたします。
被告人、前へ出てください。

検察官/《起訴状の朗読》
被告人は平成17年3月25日、午後9時ごろ、
東京都千代田区所在の被告人方において
殺意を持って果物ナイフで1回、被害者の胸を突き刺し、
全治三ヶ月の傷を負わせたが、
殺害の目的を遂げなかったものである。

裁判官/《黙秘権(もくひけん)の説明》
被告人、あなたには黙秘権があります。
あなたは終始(しゅうし)、この法廷で黙っていたり、
答えたくない質問に対しては、答えを拒むことができます。
もちろん質問に対して答えたいときは答えてもよいですが、
あなたがこの法廷で述べたことは…。(音声フェイドアウト)

では被告人。
検察官が今読んだ事実について何か述べることはありませんか?

被告人/
間違いありません。

弁護人/
被告人が述べたとおりです。
しかし被告人の行為(こうい)には、何ら計画性はありません。

裁判官/
それでは証拠調べに入ります。
検察官、冒頭陳述(ぼうとう・ちんじゅつ)をどうぞ。

検察官/《冒頭陳述》
まず、証拠によって証明しようとする事実について説明します。
被告人が犯行の1時間程度前から酒を飲み始め、
その後被害者と口論になりました。
口論の途中で家を出ようとした被害者に対し、
被告人は、「てめぇ、逃げるのか」などと怒鳴り
被害者の肩をつかんだのですが、振りほどかれました。
それで果物ナイフで被害者の胸を刺し、
被害者に全治三ヶ月の重傷を負わせました。

(音声のみ)/
検察官は以上のほか、量刑上、考慮していただきたい…。
(音声フェイドアウト)


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辰巳/
冒頭陳述が終わったら、検察官は証拠を調べるよう裁判所に求めます。

長澤/
でも証拠ってたくさんあるから大変なんじゃないですか?

辰巳/
心配いりません。
検察官も弁護人も証拠を厳選(げんせん)するんですね。
しかも裁判所はその中から必要な証拠だけを調べることになるんです。
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検察官/
以上の証拠を証明するために、証拠の取調べを請求します。

裁判官/
弁護人、ご意見は?

弁護人/
全て同意いたします。

裁判官/
それでは検察官請求の証拠を採用し、取り調べます。
検察官、その要旨を告げてください。

検察官/《証拠調べ》
えー、証拠番号4番は、
実況見分調書(じっきょう・けんぶん・ちょうしょ)です。
被害者の血痕(けっこん)や、
凶器(きょうき)の果物ナイフが発見された地点を示した
犯行現場の見取り図です。
同じく5番は犯行に使用された凶器の果物ナイフです。
証拠物を被告人に示したいのですが。

裁判官/
被告人、前へ出てください。

検察官/
それでは証拠番号5番の果物ナイフを示します。
この果物ナイフに見覚えはありますか?

被告人/
…はい。

検察官/
あなたが被害者の胸を刺したときに使用したものです。

被告人/
間違いありません。

解説(辰巳)/
この事件では犯行のいきさつや、
果物ナイフで刺したときの様子を証明するために
被告人や被害者の供述調書(きょうじゅつ・ちょうしょ)が
取り調べられました。

裁判官/
それでは弁護人の立証をどうそ。

弁護人/
被告人の妻を証人として請求します。
被告人の性格、生活状況などを立証します。

弁護人/《証人尋問(しょうにん・じんもん)》
証人は被告人の妻ですね?

証人(被告人の妻)/
はい。

弁護人/
今回被告人がこのような事件をおこした理由は
どこにあると思いますか?

証人/
普段はおとなしくて、真面目で、ひかえめな人なんですけど、
ちょっとでもお酒が入ると、人が変わったみたいになるんです。
お酒さえなければ本当にいい人なんです。
でも… 申し訳ありません。

裁判官/《被告人質問》
それでは被告人は前へ出て座ってください。
弁護人、どうぞ。

弁護人/
今回、あなたがこの事件をおこしたことは間違いありませんね。

被告人/
はい。

弁護人/
犯行の原因となった口論とは、どんなものでしかた?

被告人/
はい。
うまく行ってなかった仕事のことを言われて腹が立って。
今考えれば他愛もない話しです。

弁護人/
はじめから被害者を果物ナイフで刺すつもりがあったんですか?

被告人/
いいえ。
口論している時にカッとなって刺してしまいました。

裁判官/
双方、立証は以上でよろしいでしょうか。
それでは検察官、ご意見をどうぞ。

検察官/《弁論手続【論告(ろんこく)】》
本件は被告人が平成17年…。(音声フェイドアウト)

解説(辰巳)/
これは検察官の「論告」です。
論告とは、検察官が証拠調べの結果に基づいて
主張をまとめたものです。

論告と同時に、被告人に対して
どのような刑にするのが適当かと言う意見を述べる
求刑(きゅうけい)がおこなわれます。
「求刑」という言葉は我々もニュースでよく耳にする言葉ですよね。

検察官/
以上、取り調べられた各証拠により、
本件の立証は十分であると考えています。
よって被告人を、懲役(ちょうえき)8年に処する(しょ・する)。
押収(おうしゅう)してある果物ナイフ1本を
没収(ぼっしゅう)するのを相当と考えます。

裁判官/
弁護人、どうぞ。

弁護人/《弁論手続き【弁論】》
本件の事件の要因は…。(音声フェイドアウト)

解説(辰巳)/
かわってこちらは、弁護人の「弁論(べんろん)」です。
弁論とは、検察官の行う「論告」に対して
弁護人の主張をまとめたものです。

弁護人/
今まで述べたとおり、
被告人の行為にはなんら計画性はありませんし、
被告人は十分に反省していますので、
寛大(かんだい)な処分を望みます。

裁判官/
被告人、前へ出てください。
最後に何か言うことはありますか?

被告人/
被害者の方には大変申し訳ないことをしたと思います。

裁判官/
それでは次回、判決宣告期日は、6月10日、午前10時とします。
これにて閉廷(へいてい)いたします。


解説(辰巳)/《評議》
閉廷すると裁判官たちは取り調べられた証拠に基づいて
被告人が有罪かどうか、
有罪の場合はどのような刑にするのかを話し合います。
これを「評議(ひょうぎ)」と言います。

有罪であると確信がもてない場合には
「疑わしきは被告人の利益に」という原則があって、
「無罪(むざい)」と判断することになります。


裁判官/《判決の宣告》
それでは被告人は前へ出てください。
これから判決を言い渡します。

主文(しゅぶん)。
被告人を懲役6年に処する。
未決拘留日数(みけつ・こうりゅう・にっすう)のうち
二十日をその刑に算入する。
押収してある果物ナイフ1本を没収する。

これから判決の理由を述べることにします。

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辰巳/
刑事裁判の流れ、理解していただけましたでしょうか。

長澤/
はい。
裁判って結構時間がかかると思ってたんですが、
意外とスムースに行くんですね。

辰巳/
そうですね。
ただし、被告人が検察官の主張を認めなかった場合、
裁判にはもう少し時間がかかることもあります。

しかし、裁判員の参加する裁判では法廷を開く前に
必ず、裁判官、検察官、弁護人が予め打合せをして
事件の争点や証拠を整理し、予定を立てておきます。
これにより多くの裁判は
数日間で終わることが見込まれているんですよ。

長澤/
それなら参加しやすいですね。

辰巳/
裁判員は20才以上の国民から
無作為(むさいくい)にクジで選ばれた候補者が、
裁判所での選任手続きを経て、裁判員に選ばれるんです。

これは(12分40秒)裁判員裁判用のモデル法廷です。
裁判員裁判では6人の裁判員が、
3人の裁判官と並んで審議(しんぎ)を行います。
弧(こ)を描くような形で座ります。

裁判官と裁判員の間で
意思の疎通(そつう)が図りやすいような配慮です。

また裁判員は法廷の審議を聞いた上で評議に参加して、
裁判官と一緒に判決内容を決めることになります。

長澤/
法律家でなくても、きちんと判断できるんですか?

辰巳/
大丈夫です。
裁判員に求められていることは、
事実を認めるに足りる十分な証拠があるかどうかを
常識に基づいて検討することです。
特別な専門知識は必要ありません。

それに裁判員は一人で判断するのではなく、
裁判官と裁判員の全員で知恵を出し合い、
1つのチームとして結論を決めていきます。

長澤/
平成21年には私も裁判員として
こちらの席に座っているかもしれませんね。

辰巳/
そうですね。
この裁判員制度は、一般市民の普通の感覚を
裁判に反映させるという目的を持って作られた制度です。
ですから皆さんも是非、自信を持って
積極的に刑事裁判に参加してください。

辰巳・長澤/
よろしくお願いします。

長澤/
詳しくは裁判所のホームページをご覧下さい。
( www.courts.go.jp/ )

♪〜

 企画制作 最高裁判所
 協力 法務省 日本弁護士連合会


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 【文字版】制作 ☆宮下あけみ☆  akemizo@beige.ocn.ne.jp
       協力 人工内耳友の会[ACITA](アシタ)
      掲載 人工内耳友の会「東海」
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