人工内耳友の会−東海−
スピーチプロセッサーと電池

スピーチプロセッサとそれぞれの電池
―特性の比較と使用上の注意−

鞄本コクレア 副社長 渡 辺 真 一




スピーチプロセッサに使われている電池は、携帯型では単三電池、耳掛け型ではボタン型の空気亜鉛電池についてお話をさせていただきます。今日の内容は昨年の夏とほぼ同じですが、その後新しい空気電池が発売されたりしたので、少し変更されています。どうかよろしくお願いいたします。



まず、携帯型スピーチプロセッサ用の単三電池からお話ししたいと思います。単三電池と聞いてまず思い浮かべるのがアルカリ電池ではないかと思うくらい一般的になっており、コンビニでも駅でも手に入りやすい一次電池です。一次電池というのはアルカリやマンガンなどの材料を使った乾電池のことで、充電式の二次電池と区別されています。一方、電気店などでまとめて販売されているものにマンガン電池があります。ラベルに「アルカリ電池」と書いていないものはマンガン電池と考えていただいて良いかと思います。マンガン電池の特徴は値段が安いと言うことです。つい買いたくなりますけど、この図でおわかりのように性能的にはアルカリよりはるかに低レベルなので、お勧めしません。まるきり違います。ですから、電気を食わないような用途にはいいかも知れませんが、スピーチプロセッサに使う電池としては、性能的にまるっきり異なるので使わないようにして欲しいと思います。その方が結果的には経済的だと思います。
こういう図はこれからも出てきますが横軸が時間で、縦軸が電圧で、要は時間がたつとどんどんこういう風に電圧が下がってくるわけです。で、ある程度の電圧まで行くとそれは寿命が尽きたということになるわけです。このようにアルカリ電池では1ボルトになるまでにマンガン電池の5倍以上の寿命を持っているわけです。



充電式の二次電池です。これは皆さんもよく使っておられると思いますが、ニッケル水素電池です。ニッケル水素電池が開発されるまでは、ニカド電池がよく使われておりましたが、しかし、ニカド電池というのはメモリ効果によってだんだん性能が落ちてくるなど問題がありました。ニッケル水素電池にも多少メモリ効果はありますが、約500回の繰り返し使用が可能です。非常に経済的です。そして年々高性能のものが発売され、現在では一番高容量のものでは1900mAh(今年の4月に発売された物です)というものがパナソニックから出ております。ニッケル水素電池の弱点は、その電池に合った充電器を使用しなければならないことと、過放電に弱いことで完全に使い切ってしまうと働かなくなってしまいます。しかし、スピーチプロセッサで通常に使用する分には過放電が起きることはありません。



これはちょっと余分ですけど、最近、新しく発表された電池にニッケル乾電池というものがあります。非常に高価なので、たぶんまだどなたも試されたことがないと思いますが、デジカメなどでは(アルカリ電池に比べて)5倍くらいの性能が発揮できるそうです。これは東芝電池からギガエネルギーという名前で発売されています。もし、使われた方がおられましたら、性能をぜひ教えてください。



それではボタン電池の方にいきます。次は耳掛け型スピーチプロセッサ用のボタン電池についてです。これには空気亜鉛電池(通常は空気電池と言う)が使われます。残念ながら充電式の二次電池はありません。今までPR44Pと言う型名のものをお勧めしてきましたが、昨年12月に東芝電池とコクレア社とで共同開発した空気亜鉛電池が発売となりました。その後今年の2月には価格も下げることができました。音切れなどのトラブルを極力少なくするために、是非この電池を使っていただきたいと思います。型名は675SPで1パック6個入りです。5個以上ご注文いただいて1パック当たり750円です。



次に、空気電池の性質についてお話ししたいと思います。耳掛け型スピーチプロセッサをうまく使いこなすコツは、空気電池の性質をよく知ることです。有効な電池の使い方を知らないと音切れなどのトラブルの元になるからです。まず、温度の影響ですが、上の図を見て頂きたいと思います。空気電池は(0度と書いてありますが、)凍るような温度ではわずかな性能しか発揮できません。少なくとも室温程度の温度(20度)が必要であることがおわかりかと思います。真冬のうんと寒い屋外では毛糸の帽子を頭にすっぽり被るようなことが対策として考えられます。電池が電圧を発生するのは化学反応ですから、温度は高い程有利と言うことになります。ですから温度が高いと寿命が延びているわけです。また、湿度に対する影響も大きく、これが通常の60%、これが一番寿命が長いんですが、高湿度や低湿度では30%という乾燥した状態・・湿度が高かったり低かったりすると寿命が短いです。空気電池を入れたまま乾燥機に入れると性能が落ちてしまいます。これはぜひ気を付けて頂きたいと思います。



このグラフでは電流と刺激レートの関係を表しています。刺激レートというのは電池の寿命ですね。電流というのは電池の寿命に関係してくるので、この図をお示ししています。SPEAKコード化法の2000Hzでは5mAですが、ACEやCISの最高値である14kHzでは6倍の30mAに達します。5mAと30mAというようにですね、非常に電流値が大きく異なってきます。すなわち、刺激レートは電池の寿命に深く関係してきます。



これは空気亜鉛電池ではなく、酸化銀電池での刺激レートと電池寿命の関係です。ご覧のように個人差がありますが、4000Hzで7時間〜12時間持っていたものが、9000Hzになると急に4時間〜6時間へと、 4000Hzの時の約半分の寿命となってしまいます。



同様にですね、これは先ほど申し上げた空気電池675SPを使ったときの、新しい空気亜鉛電池での刺激レートと電池寿命の関係です。先ほどと同じく個人差がありますが、4000Hzで30時間〜60時間と酸化銀電池の数倍の能力を持っています。しかしこれでも、9000Hzになると10時間〜18時間へと 大きく寿命が減少してしまいます。2個の新しい電池が丸1日持つか持たないか・・と言うことになってしまいます。



電池の寿命というのは電池の電力ですね、どこに使われるかというのがこの図に表されています。速い刺激、14kHzというような速いレートでの刺激を行った場合、消費電力の7割までが信号送信。電磁誘導の信号送信に使われています。皮弁の厚さが影響するのはそのためです。実際の機器そのものを動かすパワーはそのごく一部にしか過ぎません。2割程度です。



電力消費に影響する因子はこのようなものです。皮弁の厚さ、刺激レート、それからTレベルおよびCレベルの大きさ。パルス幅。周囲の音環境。と言うことで個人差が大きい要因が大きいわけです。



ここでまた、空気電池についてお話しをしたいと思うんですが、2種類の電池を紹介します。PR44が一般の空気電池、PR44Pが高出力型です。このように一般型のPR44の方がPR44Pよりも寿命が長いように見えます。それから先ほど紹介した675spです。ゆっくりした電流を流したときの寿命を表しています。これを見ますと675spの寿命が一番短くなっています。一般型のPR44が一番寿命が長いということになります。



ところが、これがパルス放電特性といって非常に大きな電流を流す場合にはPR44Pはこのように全然寿命が低いです。ですから、こういう物を使った場合には音切れなどの症状が出てきます。元々PR44tとか675SPというのは大電流を流せるように設計されたものです。空気と反応するための穴も5つ明いています。ここで申し上げたいのは、電池はその用途によっていくつかの種類があるので、きちんと目的に合った電池を使用する必要があると言うことです。異なる種類の電池では、形状が同じでも性能が発揮できません。



もう一つ注意して頂きたいのは、空気電池は動作する際、空気と反応して性能を発揮しますが、完全に空気と反応するのに多少時間を要します。この図を見ていただいてもおわかりのように5分間待つ必要があります。シールをはがしてから使用するまでの時間が短いと、音切れなどの障害を起こすことがあります。これは時間が経てば解決する問題でありませんので、必ず最初に5分おいてください。これは空気電池の特性ですので、ぜひ守って頂きたいと思います。



ちょっと話が変わりますけど、今度はESPrit22装用に際しての問題点をお話ししたいと思います。装用者の方全員がESPrit22を使用できるわけではありません。このような理由で10%位の方は、ESPrit22の装用が困難と言われています。
それはまず、皮弁の厚さです。これがあまりに厚いと電力の限界があってうまくいかないと言うことがあります。それから、マップですけど、非常にTCレベルの高い方の場合には、電流が沢山必要ですので、限界に達してしまう可能性があります。



このESPrit22には新しいパワーコントロールという技術が付加されています。このパワーコントロールはこのような2種類の機能を持っています。
一つは皮弁の厚さ。一応皮弁の厚さに合わせてエネルギーを調整しています。ですから、必ずつけてから送信コイルを付けてから、電源を入れるようにしてください。
それからですね、刺激レートに関してですが、電圧が一定以下になると、すぐに電源が切れてしまうということではなくて、刺激レートを下げて省エネをはかって寿命を延ばします。ただしこのときに音質がかわりますので、気になる方はこの時点で電池を替えて頂いた方がいいかも知れません。刺激レートを変えるために音質が悪くなる可能性があります。



よくいただく質問として、電池代のお話しですが、先ほど申し上げたように新しい空気電池を開発しましたので、これをぜひ使って頂きたいという風に思います。他の空気電池と較べて決して高い値段ではないと思いますので、ESPりtを使っておられる方は是非使ってほしいと思います。
それから、音切れの原因ですが、こういう場合に音切れがおこりますので、注意して欲しいと思います。一つは極端に騒がしいところ。それからコイルがはずれかかったとき。このときには一旦はずしてから、付け直し、電源をきって付けなおしてほしいと思います。電池が無くなりかけたときにも音切れがおきます。先ほど申し上げたようにレートを変えることで寿命を延ばしますので、しばらくの間は使用が可能です。



最後に電池の一般的な注意をお話ししておきたいと思います。電池は必ず、特性の合ったものを同時に使ってください。もったいないからと言って古いものと新しいものを併用するとかえって不経済ですし危険です。違うメーカや違う種類の電池も同様に混ぜることは不経済ですし危険です。発熱とか破裂という危険もあります。同じ理由でメーカーの違うものや種類の違う電池を混ぜないでください。特性が違うと、非常に速く消耗してしまったりあるいは危険が生じるからです。乾電池は・・1次電池ですが充電しないで下さい。やはり発熱・破裂の危険があります。
それから特にボタン電池ですが、これは小さいお子さんがおられるときには、必ず手の届かないところに保管してください。誤って飲み込んだ場合は、手術をして取らないといけないこともあるからです。是非、そのようなことをご注意頂いて、電池を正しく使って頂けたらと思います。



ご静聴ありがとうございました。ご質問がありましたらお願いいたします。




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