人工内耳友の会−東海−
携帯電話の利用について

平成16年4月25日(日)
愛知県産業貿易会館西館9階第3会議室
人工内耳友の会−東海−第1回勉強会

携帯電話の利用について
(株)日本コクレア 石黒裕康

皆さん、こんにちは。日本コクレアの石黒です。本日は携帯電話についてお話させていただきます。座ってお話させてください。

まず、携帯電話というと医療機器に影響を及ぼすため、人工内耳装用者に対しても危険性があるのではないか、と心配される方がいらっしゃるかも知れません。確かに、医用電気機器が誤動作する恐れがあるため病院内では携帯電話の電源は切らないといけませんし、心臓ペースメーカからも22cm程度以上離すようにとのガイドラインもあります。



では、人工内耳の場合はどうでしょうか。結論から申しあげますと、人工内耳を装用されている方にとっては、まったく危険性はありませんのでご安心ください。
ただし、携帯電話を自分で使用したり、あるいは使用している人が近くにいると、雑音が聞こえる可能性があります。これは携帯電話から出ている電波の影響によるものです。もしも電車の中などで他人が使用する携帯電話からの雑音が気になる場合には、そこから離れるかスピーチプロセッサの電源を切ってください。そうすれば大丈夫です。
では、携帯電話をご自身でご使用になる場合についてはどうでしょうか。実は、一口に携帯電話と言ってもいろいろな通信方式があり、それぞれ電波の出力や波形が異なるため、それによって人工内耳に及ぼす雑音の程度が異なることがわかっています。



この図は、携帯電話の通信方式と人工内耳への影響についてまとめたものです。
テレビや雑誌のCMで「第3世代ケータイ」という言葉を最近よく耳にしたり目にしたりしますが、実は携帯電話は通信方式によっていくつかの世代に分けることができます。
まず、第1世代はFDMA(周波数分割多元接続)という方式による、いわゆるアナログ式携帯電話です。これは人工内耳に及ぼす雑音が非常に少なく音質も良かったのですが、盗聴されやすい、電波の使用効率が悪いなどの問題があり、デジタル方式に取って代わられ、サービスも既に完全に打ち切られています。
第2世代はデジタルで、大きな分類としてはTDMA(時分割多元接続)という方式に属するものです。日本ではNTTドコモ、ボーダフォン(旧J−フォン)、ツーカーセルラーが、TDMA方式のひとつであるPDC方式でサービスを行っています。このPDC方式は、人工内耳に及ぼす雑音の影響がやや大きい傾向にあります。
一方、これらと同時期にau(KDDI)はcdmaOne方式でサービスを行ってきました。実はこれは第2世代のTDMA方式ではなく、後でお話しする第3世代のCDMA方式に類するため、第2.5世代と呼ぶこともあります。CdmaOne方式はPDC方式に比べると人工内耳への雑音の影響は少ない傾向にあります。
そしていよいよ世の中は、第3世代ケータイの時代に入ろうとしています。第3世代はCDMA(符号分割多元接続)という方式によるもので、大容量のデータを高速で転送できるためテレビ電話なども可能になります。NTTドコモとボーダフォンはCDMA方式に属するW−CDMA方式を用いてFOMA、および、ボーダフォングローバルスタンダード(VGS)というサービスを展開しています。このW−CDMA方式も人工内耳への影響が非常に少ない傾向にあります。
一方、auはCDMA方式に属するCDMA2000という別の方式を採用して、CDMA 1X と CDMA 1X INというサービスを展開しています。実はこのCDMA2000方式については実験による確認が取れていないのですが、人工内耳への雑音の影響が少ないcdmaOne、FOMAなどと同様のCDMA方式であることを考えれば、基本的にはこれらも影響は少ないだろうと推定できます。
また、PHSはこれらの携帯電話とは一線を画しますが、音質も非常に良く、人工内耳への雑音の影響はほとんどありません。なお近い将来、新しい携帯電話会社が参入しTD−CDMAという方式を採用するという話もありますが、これについては人工内耳に及ぼす雑音の程度は現時点ではわかりません。



以上の話をまとめてみます。第3世代および第2.5世代のCDMA方式を用いたものであれば、まずは問題ないと思われます。具体的なサービスでは、NTTドコモであればFOMA(フォーマ)、auならばcdmaOne、CDMA 1X、CDMA 1X WIN、ボーダフォンならばボーダフォングローバルスタンダードが該当します。また、PHSも雑音の影響は少なく、音質も良いのでお勧めです。
第2世代のPDC方式についてはやや雑音の影響が大きい傾向がありますが、使用できる可能性も大いにあります。人工内耳の体外装置にも電磁波対策が強化され、携帯電話自体も雑音源の電磁波を減少させるよう改良されつつありますので、数年前に比べて使用できる可能性も広がっていると思われます。実際に先ほど会場でお聞きしたところ、NTTドコモのPDC方式の携帯電話をご使用になっている方がたくさんいらっしゃいました。
いずれにしましても、通信方式が同じであっても携帯電話機の製造メーカやモデルによってもその影響の程度は異なります。また雑音に対する感じ方の個人差などもあります。ご購入にあたっては可能であれば、その携帯電話機のモデルを事前に試聴されますことをお勧めいたします。



ご参考までに、米国での携帯電話に関する動きをお知らせします。米国連邦通信委員会は昨年7月に、補聴器装用者でも携帯電話を快適に使用することができるようにするために、携帯電話メーカと携帯電話事業者に対して次のようなことを義務づけたそうです。1つ目が、携帯電話からの電磁波妨害のレベルを一定水準以下に抑えることです。これによって補聴器に及ぼす雑音は減ります。2つ目が、音声信号をテレコイルで補聴器に伝送できる携帯電話機を数種類準備することです。これによって補聴器のTモード(テレコイル機能)で携帯電話を使用できるようなります。このような動きは補聴器だけではなく人工内耳にとっても福音でありますから、日本でも早く始まることを祈っております。



ところで、昨年9月にNTTドコモが携帯電話の障害者割引サービスを開始し、その後他社も同様のサービスを開始しましたことを、皆さまご存知でしょうか。身体障害者手帳などの交付を受けている人が対象で、申込みが必要です。サービス内容は各社で異なりますが、かなりの割引が受けられます。例えばボーダフォンを例に取ると、(1)基本使用料は50%割引、(2)ボーダフォンまたは一般電話向けの通話料は50%割引、(3)メール送受信も割引....などとなっています。もしも携帯電話を既にお使いで、この割引を知らなかったという方がいらっしゃればすぐに申し込まれることをお勧めします。



最後に、携帯電話の機能の進化について見てみたいと思います。携帯電話はその名前の通り元々は通話をするための機械でした。ところが1999年にNTTドコモのiモードサービスが始まって事情は一変しました。インターネットを経由してメールの送受信やホームページへのアクセスもできるようになりました。また、携帯電話にカメラが付いて、撮った画像はメールに添付してすぐに送れるようになりました。GPS機能も付いて人工衛星を介して自分の現在位置を知ることもできるようになりました。第3世代になると大容量のデータを高速で転送できるようになり、テレビ電話や動画の送受信も可能となりました。それほど遠くない将来にはきっと、携帯電話が財布代わりになって電子マネーが使えるようになったり、クレジットカードやプリペイドカードの代わりになったり、定期券の代用もしたり、あるいは携帯電話を使って外出先から自宅にある家電製品のコントロールもできるようなるでしょう。つまり、携帯電話はもはや電話機ではなく、高度な情報端末になりつつあります。

携帯電話と言っても、電話で会話をするのが苦手な方もいらっしゃると思います。でも、メールでコミュニケーションをしたり、カメラで写真を撮ったり、最近ではテレビ電話もできるようなるなど、携帯電話の活用方法や楽しみ方はたくさんあります。
今日のお話が少しでも皆さまのお役に立って、携帯電話をいっぱい活用していただければ幸いです。

ご静聴どうもありがとうございました。




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