人工内耳友の会−東海−
最新機器の情報

平成16年2月29日(日)
愛知県産業貿易会館西館9階第3会議室
人工内耳友の会−東海−総会兼懇談会

最新機器の情報

日本コクレア 石 黒 裕 康



皆さまこんにちは、日本コクレアの石黒です。本日はお招きいただきましてありがとうございます。実は私は名古屋の中村区で生まれまして、高校卒業まで住んでおりました。今でも実家がありまして、ときどき里帰りをしております。このような縁のある地で、人工内耳で聞こえを取り戻された皆さまにお目に掛かれますことを、大変嬉しく思っております。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

さて、本日は「人工内耳の最新情報」と題しまして、エスプリ3Gのお話をさせていただきます。お陰様で昨年12月中旬に厚生労働省より輸入承認がおりまして、今年の1月1日元旦からはめでたく、新しく手術をされてエスプリ3Gを希望される方に対して、他のスピーチプロセッサの場合と同様に健康保険も適用されることになりました。既にご使用いただいておられる方も多いかと存じますが、皆さまには長い間お待たせして申し訳ございませんでした。
ちなみに、エスプリ3Gは「エスプリ・さんじい」ではなく「エスプリ・スリージー」と読みます。第3世代の耳掛け型スピーチプロセッサという意味を込めています。



まず、この度発売されましたエスプリ3Gは、ニュークレアス24人工内耳に対応しています。スピーチプロセッサで言うと、携帯型のスプリントや耳掛け型のエスプリをご使用いただいてきた皆さまが対象になります。今回のエスプリ3Gは従来のエスプリの後継機種となります。ちなみに、携帯型のスペクトラやMSP、あるいは耳掛け型のエスプリ22をご使用いただいている方々は、残念ながら現時点では対象になりませんのでご注意ください。



さて、エスプリ3Gには、ここに書いてあるような5つの大きな特色があります。センセーションというのは、噂になるようなビックリするような話題という意味です。では、順に見ていきたいと思います。



まず、センセーション1は「ささやき音設定」です。今まではささやき声のような小さな音を聞く場合にはマイク感度を上げていましたが、そうすると通常会話が大きくなりすぎて聴き取りにくくなります。ささやき音設定をオンにするとマイク感度はそのままで、通常の会話の声もささやき声も同時に聞くことができるようになります。



センセーション2は「内蔵テレコイル」です。文字通りテレコイル機能が完全に内蔵されましたので、今までのように外部入力ソケットにいちいち付属品のテレコイルを装着する必要はなくなりました。磁気ループのある場所に来たら、補聴器のように本体のスイッチをTのモードに設定するだけでOKです。



センセーション3は「スマートな見栄え」です。特に、本体はベージュ、茶、黒、グレーの4色、また本体カバーには12色のバリエーションがあり、とてもカラフルです。本体カバーはその日の気分や衣服とのコーディネートで自由に付け替え可能です。



センセーション4は「すべての音声処理法が可能」になったことです。従来のエスプリではCIS(シス)がまったくできない、ACE(エース)も高い刺激頻度ができないなど、携帯型のスプリントと比べると音声処理方法に一部制限がありましたが、エスプリ3Gではスプリントとほぼ同等の音声処理方法を実現できるようになりました。



センセーション5は「本体は軽量、電池は長寿命」ということです。エスプリ3Gではボタン型の空気電池を3個使用するため、従来のエスプリに比べて若干大きくなりましたが、それでもわずか15グラムです。また、そのお陰で電池の連続使用時間はかなり延び、電池交換の手間が減りました。



電池寿命について表にしました。SPEAK(スピーク)コード化法のマップの場合、平均で約110時間近くもちます。ACE(エース)やCIS(シス)の場合には、刺激頻度が低ければ60時間程度、刺激頻度が高ければ30時間程度となっています。



次に携帯型のスプリントと耳掛け型のエスプリ3Gの比較をしてみました。外観は耳掛け型であるエスプリ3Gに軍配が上がります。生活場面でも、レジャーにおいてはやはり耳掛け型でしょう。しかし、操作の自由度という点ではボタンが押しやすい携帯型のスプリントの方が優れていると思われます。ただし、耳掛け型のエスプリ3Gはスイッチの数が少ないので操作自体は簡便です。さらに、経済性の観点からは充電可能な電池が使用できる携帯型のスプリントの方が優れています。ライフスタイルやご使用になる局面によって、適した方をお選びください。



そして、おまけのセンセーションです。人工内耳を装用されたお子さまの学校での授業においては、FM補聴システムを人工内耳に接続して使用される場面が多くなってきています。従来のFM受信機はかなり大きかったのに対して、エスプリ3Gではこのような形の小さなFM受信機を使用できることになりました。エスプリ3Gにブーツを履かせるようなイメージです。これでエスプリ3Gでは、耳掛け型スピーチプロセッサの特色をここでも活かせることになりました。



もちろん、従来からのFM補聴システムである、パナソニック社製の「パナガイド」もご使用いただくことができます。こちらの受信機は携帯型で、残念ながら耳掛け型というせっかくのスピーチプロセッサの魅力を半減させてしまいますが、ボディが大きいだけあってパワフルで、電波の飛距離や音質の点では先ほどご紹介したブーツタイプのものよりかなり優れています。用途や使用環境に合わせてご選択ください。



なお、いちばん最初に、このエスプリ3Gはニュークレアス24の方々だけを対象にしていると申しあげましたが、ニュークレアス22用のエスプリ3Gも現在、オーストラリア本社で開発中です。こちらは、音声処理方法はSPEAK法のみですが、ささやきモード設定や内蔵テレコイルなどその他の優れた機能はそのままご使用いただける予定です。時期はわかりませんが近い将来には、スペクトラやエスプリ22をご使用いただいている皆さまにもエスプリ3Gをご使用いただけるようになるはずです。今しばらくお待ちください。



さて、耳掛け型スピーチプロセッサ、あるいは補聴器をご使用の皆さまのために、この場を借りまして冬場における空気電池の使用上の注意点をお話いたします。



耳掛け型スピーチプロセッサをうまく使いこなすコツは、空気電池の性質をよく知ることです。有効な電池の使い方を知らないと音切れなどのトラブルの元になるからです。
まず、このグラフからわかるように電池寿命は湿度の影響を受けます。高湿度や低湿度では性能が低下し、寿命が短くなることを覚えておいてください。
また、温度によっても大きな影響を受けます。上のグラフが20℃での測定に対し、下のグラフは5℃で測定したものです。このように空気電池は低い温度ではわずかな性能しか発揮できません。少なくとも室温程度の温度が必要になります。真冬のうんと寒い屋外では毛糸の帽子を頭にすっぽり被るようなことが対策として考えられます。



こちらのグラフは電池工業会という電池メーカの集まりの団体から発表された、空気電池の使用環境と電池寿命との関係に関する調査結果です。
まず、通常状態、すなわち気温20℃、湿度60%で二酸化炭素濃度が2000ppm以下のという、理想的な環境で使用した場合の電池寿命を100%として表してあります。
2段目のグラフは、室温と二酸化炭素濃度は通常でも、湿度を15%まで下げた乾燥状態で使用した場合の電池寿命です。電池寿命は最悪83%になってしまいました。空気電池の寿命は湿度に影響を受けることが分かります。
3段目のグラフは、室温は20℃、湿度は15%で依然として乾燥状態の上に、二酸化炭素濃度を今までの倍以上にしたときのものです。空気が乾燥する冬場に石油ストーブやガスストーブで暖房して、換気を十分に行わないときの状況と似ています。電池寿命は54%程度にまで短くなってしまいました。空気電池にとって二酸化炭素は大敵であることが分かります。
最後のグラフは、昼間はいちばん上のグラフと同様に理想的な湿度や二酸化炭素濃度の環境で使用しているのですが、夜間だけスピーチプロセッサと一緒に電池を乾燥ケースに入れて保管してしまったときのケースです。電池寿命はやはり54%程度しかもちません。空気電池にとっては過度な乾燥も大敵であることもわかります。



これらの実験結果から、冬場における空気電池の使用上の注意としては、以下のようなことが挙げられます。
まず、空気電池は、使用環境の乾燥状態と二酸化炭素によって本来の電池寿命より短くなることがあります。この状態は空気が乾燥する冬場に換気を十分に行わないで、石油ストーブやガスストーブなどで暖房をすると発生します。二酸化炭素によって短くなってしまった電池寿命は、十分な酸素を送り込んでも二度と元には戻りません。暖房時には健康のためにも、お部屋の換気を十分に行ってください。
また、乾燥ケースに空気電池を入れた場合、電池寿命が短くなることがあります。乾燥ケースに空気電池を入れないでください。
電池の正しい使用方法で、人工内耳を快適にご使用いただければ幸いです。



以上でお話を終わります。ご静聴ありがとうございました。





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