人工内耳をよりよくお使いいただくために |
平成15年8月24日
人工内耳友の会−東海−第2回勉強会 成人装用者分科会講演 (ウィルあいち2階セミナールーム6) 人工内耳をよりよくお使いいただくために 日本コクレア社 菅 原 康 二 日本コクレア テクニカルサービス課、修理担当の菅原と申します。本日は、ここにあります機器及びMSPの修理、メンテナンスを中心にお話をさせていただくことになりました。 こういった場所、形でお話するのは不慣れで、聞き苦しいところがあると思いますが、どうか宜しくお願いいたします。 本日はまず修理依頼症状の上位項目、概算費用、概算納期についてお話をさせていただきます。 症状の上位項目は全体の70、80%をカバーしています。なお、症状と修理費用について調べましたが、故障箇所が複数にわたるため残念ながら関連づけることはできませんでした。次に、機器のお手入れと注意事項、故障の切り分け方法そして修理依頼の手順について、お話を進めさせていただきたいと思います。それでは各々、製品毎に進めます。 まずSPECTRA、MSPです。修理依頼症状の上位項目は、ケース類破損、感度ボリュウム、スイッチ、外部入力ソケット、聞えない、雑音です。 修理費用は平均で¥8000+消費税、上限で¥25000+消費税です。 修理納期は通常約3週間ですが、約20%は本社修理となり、その際は約2ヶ月となります。 次に、SPECTRA、MSPのマイクロホンです。症状の上位項目は、感度低下、検査の上、不具合あれば修理、ケース破損、傷、聞えない、音切れ、見積りです。 修理費用は平均で¥16000+消費税です。 修理納期は約3週間です。 次はSPrintです。症状の上位項目は、ケース類破損、液晶ゴミ、クリーニング、雑音、聞えない、です。 修理費用は現在まで99%保証内で無償です。 洗濯機で洗ってしまったというようなケースが有償となっていますが、こういった有償のケースでは、上限は¥25000+消費税となります。 なお、保証期間を過ぎた場合の修理費用は、SPECTRA、MSPと同様に平均で¥8000+消費税を予定しています。 修理納期は通常約3週間ですが、約40%は本社修理となり、その際は約2ヶ月いただいています。 そしてESPrit、ESPrit22です。症状の上位項目は、(時々)スイッチが入らない、(時々)聞えない、スイッチ陥没、雑音、音切れ、です。 修理費用はSPrintと同様です。現在まで99%保証内で無償です。 同じく洗濯機で洗ってしまったというようなケースが有償となっていまして、上限は¥25000+消費税となります。 なお、保証期間を過ぎた場合の修理費用は、SPrintと同様に平均で¥8000+消費税です。 修理納期は100%本社修理のため約2ヶ月をいただいています。 次に機器のお手入れと注意事項ですが、まずは、改めて、全機種にわたりまして乾燥、清掃をお願いしたいと思います。 特にSPrintでは液晶部に砂ぼこりが入り込んでいるケースが増えてきました。 SPECTRAの依頼症状のトップはケース類の破損ですが、内部のほこり(土、砂、綿、木屑)等によります感度ボリュウムの故障が非常に多い状況です。 次にESPrit及びESPrit22でご使用になる空気亜鉛電池についてお話したいと思います。まず、シールテープをはがし5分間以上おいてからご使用ください。図は縦軸が電圧、横軸が経過時間ですが、空気と反応する時間をおきませんと図のように所定の電圧に達せず、音切れ等を起こす場合があります。 次は、電池を保管するためにシールテープを貼る必要があるというお話です。図は縦軸が持続時間、横軸が放置日数ですが、空気孔を密閉せずに放置すると図のように数日間で電池の持続時間が約三分の一に低下する場合があります。なお、シールテープは特殊な糊ですので、他のセロテープ等は使わないでください。 次に使用環境における温度についてお話したいと思います。一般の電池と同じように低温では使用時間が短くなります。この図では縦軸は電圧で横軸は持続時間です。図のとおり気温20℃に比べて気温5℃では約3分の1に低下する場合があります。 次は湿度との関係ですが、この図も縦軸は電圧で横軸は持続時間です。図のとおり高湿度、低湿度で性能が低下します。高湿、低湿度での使用及び保管は避けてください。乾燥ケースにも入れないようにご注意ください。 その他としまして、電池を交換する場合は必ず2個共に新しい電池と交換してください。新しい電池と使用中の電池や古い電池、銘柄や種類の異なる電池などを混ぜて使用しないでください。 また、漏液により機器を傷める恐れがありますので、長期間機器を使用しない場合には、機器から電池をとり出してください。 次にESPrit、ESPrit22の取扱いですが、先程お話しましたように、スイッチノブの陥没を含めスイッチに関する故障がほとんどです。過去、スイッチ及びケースがより強度をもったタイプに変更されました。しかし、皆さんがお感じになっていますように、不十分といわざるをえません。残念ながら次回の設計変更までには時間がかかると思われますので、担当レベルとしては、少しでも故障を減らしたく、、お願いばかりになりますが、現在の故障軽減に寄与する注意事項を改めてお話したいと思います。 まず、ESPritは電池から十分な電力が得られない場合、自動的にスイッチが切れます。静かな場所から騒音の多い場所へ移動したり、温度、湿度が急激に変化したり、電池が寿命に近づくとこれらの状況が発生します。こういった何も聞えない状態になった場合取扱説明書には、スイッチを一旦オフにした後、再びオンにするように記載されていますが、その際、オフの状態で1秒以上待ってからオンにしてください。いわゆる 「カチャカチャ」 切り替えることはお止めください。瞬間的に切り替えますと復帰しない場合があり、従いまして、さらに「カチャカチャ」が続くことになり、スイッチを傷めることにつながります。 次に電池の交換ですが、電池切れの警告音が聞えましたら歪、音切れ等が頻発しますのでなるべく早く、先程の繰り返しになりますが、2個同時に交換してください。音切れ等が起きますとスイッチのオンオフを頻繁に切り替える必要が生じ、スイッチを傷める可能性が大きくなります。 次に送信コイルを装着するときの注意です。ESPrit(22)の電源をオンにする前に、送信コイルを頭部の所定の位置に取り付けてください。逆の順番ですと音切れが起きる場合があります。取り外す場合は、電源をオフにしてから、取り外してください。 最後に改めて、乾燥、清掃の徹底をお願いしたいと思います。特に電池や電池端子は微少なゴミ、汚れでも影響がでますので、清掃をお願いいたします。 昨年は非常に暑い夏でしたが、電話で「スイッチが全く入らないので修理品を送付する」 という連絡を受け、受取次第、電源オンのチェックをすると、スイッチが入る ということが1件、2件ではありませんでした。これは、機器内部の汗などの湿気の違いによる可能性が高いと考えられます。 従いまして、電池、電池カバーを外して毎日必ず乾燥するようお願いします。 次に故障の切り分けに移りたいと思います。 装置の構成は、スピーチプロセッサとヘッドセットに分かれています。ヘッドセットは接続ケーブル、耳掛けマイクロホン、送信ケーブル、送信コイルの4点で構成されています。ESPrit(22)は内部にマイクをもっていますので、送信ケーブルとコイルのみです。 スピーチプロセッサとヘッドセットのどちらに問題があるかを診断します。 この診断をするためには、故障状態を再現できなくてはいけないので、準備としまして、故障発生時に、頻度とともに故障の状況をメモするようにお願いします。例えば、聞えないという問題で、常時聞えないのか、1日に1回聞えなくなるのかなど、又、それは、家の中だけで起きるのか、逆に外だけで起きるのか等です。 次に電池を交換します。空気電池はさきほどお話しましたように5分間空気にさらしてください。そして、電池端子を清掃します。 準備ができましたら、ヘッドセット一式を正常品と交換してください。そして再現テストを行ってください。 問題が解決しない場合はスピーチプロセッサの故障となります。 逆に解決しましたら、ヘッドセットの故障です。 この場合は、さらに故障部品を特定するために順番に部品を交換し、都度、再現テストを行います。 ある部品を交換したときに問題が解決すればその部品が故障です。 故障診断の基本は、ステップバイステップで確実に1歩ずつすすめます。わからなくなりましたら、確かめられたステップ(部品)まで戻り、再度すすめばOKです。 次にSPECTRAの接続ケーブル、長いケーブルですが、耳掛けマイクへの接続に向きがあります。逆に接続しますと全く聞えません。 次に聞こえのチェック時送信コイルは頭部の所定の位置にしっかりついていることを確認してください。 また、ケーブル、マイク、コイル間の接触不良も注意してください。 ケーブルが断線しかかっている場合、 このように繰り返し折曲げチェックを行います。少し位力を入れても構いません。この位で断線するのであれば断線しかかっています。両端付近の断線が多いため要チェックです。 最後に、複数の部品が故障している場合があります。また、ほとんどはケーブルと耳掛けマイクロホンの故障です。 次は視覚によるテストについてお話したいと思います。携帯型のSPECTRA、MSP、SPrintにはこの機能がついています。また、ESPrit、ESPrit22は補助具によりテストできます。 まず、SPECTRA、MSPのMランプ、Cランプです。 CランプはスイッチをNまたはSにして送信コイルをプロセッサの正面上部に置きます。コイルからの出力信号が正常ならば点灯します。 Mランプはマイクを含めた入力ラインをみています。正常ならば入力音、声などに応じて点滅します。 また、スイッチをTにすると、電池が正常であれば点灯、消耗してくるとゆっくり点滅、完全になくなると点灯しません。 次はSPrintです。液晶表示となっただけで、機能はSPECTRA、MSPのMランプ、Cランプと同じです。但し、マイクを含めた入力ラインをみるレベルメータは、音の大きさにより横に振れますので、非常に判断しやすくなっています。 Cランプに相当します無線信号テストコイルはこんな記号です。 ESPritはこのようなコイル信号チェッカを使います。これを送信コイルの上に置きチェッカの赤ランプが点灯すれば正常です。コイルの両側どちらでも結構です。 その他、モニターイヤホンは健聴者がマイクの音を聞けますので、マイクの状態のチェックができます。また特にESPritでは、マイクの音を聞くことにより電源がonしているかどうか確認できます。スイッチが入っているにもかかわらず、チェッカのランプが点灯しない場合、ヘッドセットの故障の可能性が大です。 装用者が小児の場合特に有効です。 最後はラペルマイクロホンです。耳掛けマイクまたは内部マイク及びその入力ラインのチェックができます。 最後のスライドとなりました。修理依頼の手順についてお話したいと思います。 故障はヘッドセット、ケーブル、コイル以外となりましたら、リハビリの先生または弊社へご連絡いただき必要であれば代替機を要請いただきます。 弊社より代替機を病院へマッピングのため送付、マッピング後の代替機をお受取り、問題のないことを確認できましたら、弊社宛修理品を送付いただきます。 弊社にて修理が完了しましたら病院へ送付します。その際装用者へFAXまたは郵便で完了連絡をします。マッピング後の機器をお受取いただき問題のないことを確認できましたら代替機をご返却いただきます。 耳掛けマイクロホンは、マッピング不要ですので、代替機、完了品は直接ご自宅へ送付いたします。 さて、長らくお話してきましたが、以上で終わります。 ご静聴ありがとうございました。 |
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