人工内耳友の会−東海−
小児成人別(リ)ハビリテーションのポイント

平成15年2月2日
人工内耳友の会−東海−総会兼懇談会講演
(愛知県産業貿易西館9F大会議室)

小児成人別(リ)ハビリテーションのポイント

大阪大学耳鼻咽喉科 井 脇 貴 子





みなさん、こんにちは。大阪の枚方でろう教育フォーラムがあり行ってまいりました。皆様にはお待たせして申し訳ありませんでした。わたしのコンピューターの調子が悪いようですので、時間がもったいないですから調整いただいている間に、リハビリのポイントからお話しさせていただきます。
本日、いただいたお題が「成人と子どもの(リ)ハビリテーションのポイント」ということで成人子どもの両方で1時間というのは少し厳しいですが、日頃装用者の方に接して感じたことをお話させていただきます。

人工内耳を装用された成人のみなさんが希望されることの第1は電話での会話です。
はじめに、電話でのやりとりのポイントをお話しさせていただきます。
電話をする際に、自分からかける時には相手が誰だかわかっていますが、かかってきた場合、一番問題になることは相手が誰だかわからない、表情が見えないことです。本日お見えの方々の聞こえの程度は一様ではないと思いますが、最も簡単なかけ方を、リハビリでやったことがあるかもしれませんが、今からご紹介したいと思います。

例えば来週の土曜日、青山さんがわたしと一緒に映画に行きなぁと思っていると設定します。青山さんが私に電話をかけてくれます。私の方はどうするかというと、「はいはい」か「いいえ」だけを使うわけです。相手に話をされればされるほど何を言っているかわからなくなりますので、相手に話をさせないのがポイントです。相手に主導権を握らせない、自分が主導権を握る、相手に話させることを制限する、何でも自由に話させない、というのが一番大事なポイントです。日頃から、電話では「はいはい」か「いいえ」のどちらかしか使わないでほしいと取り決めをしておきます。
それでは、青山さんがわたしに電話をします。

青山「もしもし、井脇さんですか?」
井脇「はいはい」
青山「今度の土曜日に一緒に映画にいきませんか」
井脇「はいはい」
青山「ハリーポッターはどうですか」
井脇「いいえ」
青山「ハリーポッターはいやですか」
井脇「はいはい」
青山「マイノリティーはどうですか?」
井脇「はいはい」
青山「マイノリティーは、いいですか?」
井脇「はいはい」
青山「では、土曜日の10時にマリオットで待ち合わせはどうですか」
井脇「いいえ」
と言いますね。ここでピンときてほしいわけです。土曜日はいいと言っている、10時はいやだといっている。次の質問としては
青山「午前中は都合が悪いですか」
と聞くわけです。
井脇「はいはい」
そしたら、
青山「午後はどうですか」
井脇「はいはい」
青山「午後2時にマリオットで待ち合わせしましょう」
井脇「はいはい」
青山「電話を切りますよ」
井脇「はいはい」

ということで、無事青山さんと私は土曜日に映画を見に行くことができます。ポイントは、相手にしゃべらせない、装用者が会話の主導権を握るということです。

この話を聞いて、もうちょっと電話はいけるかなという方は自由にお話していて、わからないところが出てきたら、ポイントは、そこでまず慌てない、「わぁ、どうしよう!?!」と思わない。相手に迷惑をかけると悪いと思わないことです。「私は聞こえにくいけれども・・時間をかけたらある程度わかる」と自信とひらきなおりを持っていただくことです。

知人とお電話していて「りんごをたくさんもらったから少しどうですか?」と相手の方が言ったとします。でも、どうしても「りんご」というのが聞き取れなかった場合には、まず「もう一回いってください」と、繰り返して言ってもらいましょう。もう一度言ってもらってもやはりわからない。でも慌てないでください。そうしたら次には「言葉を変えていってください」と言います。

こういう風に「言葉を変えていってください」と言ったときには、上位の概念、カテゴリーの大きい方から言っていただくように相手の方に約束事をしておくわけです。たとえばりんごでしたら、「果物で・・赤くて丸いりんごよ」と言ってもらったら、果物で赤いとか、果物で丸いとか、丸くて赤いとか、この中の何かが聞けたらぴんと来るわけです。それでもわからなかったら、また言い換えてもらう。それでもなおわからなかったら今度は「はいはい」「いいえ」のサインに入っていくわけです。

そのときに自分がもうリーダーシップをとってください。
「今ね、何かを持っていこうかと聞こえましたがそれでいいですか?」
「はいはい」
「それは食べ物ですか?」
「はいはい」
「それは果物ですか?」
「はいはい」
「色は赤いですか?」
「はいはい」
「りんごですか?」
「はいはい」
こういったように下の概念に降ろしていくわけです。これでも実際の電話による会話場面では、なお難しいことはたくさんあると思います。でも、勇気を持って自分で工夫をして前に前に進んでいくことが、自分でいい聞こえをつかむきっかけになると思います。

よく聞こえている方でも、電話の場合はわからなかったらどうしようとか、とにかく電話というものが恐ろしいとか、勇気を持てないでいる方がたくさんいらっしゃると思うので、まずは一歩踏み出してみて、失敗しても元々とご家族の方を相手にはじめてみたらどうかと思います。

スライドが出ましたのでご覧ください。これは装用者の方に電話についてアンケートに答えていただいたものです。



連絡の必要があるとき使用するのは、ファックスが大半を占めますが、それでもやはり電話を使っている方が1/3ほどいます。



電話の相手としては、主にご家族、親戚のかたとお話しすることが多いようです。後は知人、友人、仕事仲間、その他となっております。ご家族の中でも、皆さんどういうわけか女性のほうが話がしやすいとおっしゃいます。健聴の相手が男性の場合はおそらく照れくさいとか面倒くさいということがあるのかもしれません。奥さんとか娘さん、姉妹といった方から試しに始められたらいかがでしょうか。



電話の内容は、連絡事項、依頼、確認というのが2/3を占めております。あとは余裕のある人ですねぇ・・・世間話。この前もうちに来た患者さんが2時間も電話で世間話をしたとおっしゃっていました。あとは緊急時、仕事、その他という結果になっております。

ちょっと話はそれますが、装用者で今まではどこかに出かけるとき、タクシーを呼んでも本当に来てくれるかどうかわからなかった。お客様が来たときにお寿司の出前を注文しても何時に持ってきてくれるのかもわからなかった。でも、「イエス/ノー サイン(はいはい/いいえ)」を理解しておいてもらえれば、持ってきてくれるのか来ないのかということや何時くらいに来てくれそうか、わかるようになったので、便利だという風におっしゃっている方もいます。

電話の次にテレビについてお話をさせていただきます。テレビに関しても、みなさんから「どうしたらいいでしょうか」とよく聞かれます。

まずは天気予報から見始めるのがいいと思います。天気予報は「晴れ」とか「雨」とか「大阪」とか「名古屋」など決まったことしか言いませんし、地図やお天気マークも出ているので、何を言っているかという予測がつきやすく、自信がつきます。
次にNHK教育テレビの聴障者の時間。これも文字もあれば声もあり、手話もついていますから、わかりやすいと思います。
3番めがニュースです。NHKがわかりやすいとみなさんおっしゃいます。また、アナウンサーにもよると思います。
それから水戸黄門や大岡越前など、おおよそストーリーがわかっている番組は、少し聞きのがしても、大体この話はこうなっていくという安心感があります。
あと熱心な人はNHKの朝の連続ドラマを朝は字幕をつけてみます。そしたら、ストーリーがよくわかります。そして、お昼の再放送は字幕をはずして見ます。どのくらい聞き取れるかを1週間に6日練習できますので、非常にいいリハビリになります。
お時間のある方は、是非実行してみてください。



次の話題に移ります。
これは、障害受容の過程をあらわしています。
難聴、失聴の宣告を受けたときに、非常に大きなショックを受けます。
そして、「そのことを認めたくない。これは何かの間違いだ。」もしくは、「一時的なことでどこかに行けば治るはずだ。」「あの先生はあんなこと言っているけど、いやいや、そんなはずはない。何かの間違いだ。」というのがこの時期です。
次に悲しみと怒りの時期。「何で自分だけ」、親御さんは「何でうち子どもだけ?」というような時期がやってきます。
そこからだんだん昇華していって、それを受け入れないと次には進めないという、もっと細かい過程があるんですが、そこから再起が始まります。
人工内耳の患者さんは病院に来るとき、失聴後の時期はばらばらです。ですから、この時間経過、反応の強さ、どの段階で病院に来てらっしゃるかということによって、私たちの対応も変わってきます。

この受容の段階がどこにあるかによって、皆さんの期待度や満足度が異なってきます。
これは、よくあることですが、例えば聞こえの検査をして20%の正答率の人で「手術前には0%だったのに20パーセントもわかるようになった、これからもリハビリテーションを頑張っていこう」という明るい前向きな方もいらっしゃれば、一方、90パーセントの正答率で「え?100%じゃなかったら、わからないのも同じだ。100パーセントわかるマップにしてください」と暗い人もいます。こういった方たちと接していて、聞こえの状態と装用者の心の安定は比例していないとつくづく感じます。私たちは皆さんの受容の段階がどのあたりであるかによって、受容を促せるようさまざまなお話をさせていただいております。

次にコミュニケーションを円滑に行うポイントについてお話をいたします。
話し相手により、非常にわかりやすい方とわかりにくい方がいらっしゃいますが、わかりやすい話し方を相手に望むときにはまず、自分自身がお手本を示してくださいということです。
話し相手の中には、どんな風に話していいかというのがわからない方もたくさんいらっしゃいます。そこで、このくらいの大きさでこのぐらいの速さで。このぐらいの区切り方でという、お手本をまず自分が示してください。

コミュニケーションはキャッチボールです。中途失聴の成人の方は話すのは問題がありません(送球は豪速球でもOK!)が、早口で話すと、同じように早口で返ってきてしまいます。しかし、装用者のミットは万全ではありませんので受け止めることができません。速い球を投げると早い球が帰ってきてしまいますので、まず、自分自身が聞き取りやすい話し方を心がけるのが一番相手に心地よく話してもらえるポイントだと思います。

次に、人工内耳の限界についてお話いたします。
■雑音下での聴取が困難
■複数の会話における話者の同定、内容の理解が困難
■音楽の旋律は知覚困難
■電話で不特定多数の人と話すのはむずかしい
■テレビ・ラジオ・マイクの言葉がわかりにくい
こういった限界を克服するためには工夫が必要です。
余談ですが、戦時中に「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ。」というポスターの、(工)という字を誰かが隠していたらしいです(^_^;)
で、この工夫が人工内耳もあたるかと思います。さっきの電話もイエスノーさえわかれば工夫次第で電話が可能になるわけです。

たとえば、レストランや喫茶店で話をするときに、壁側を向いて、背もたれの高い椅子に座るだけで後ろの雑音は入りにくいです。
また、スピーカーの近くは避けて腰掛けるだけでもひとつの工夫になります。



次に子どもの話題に移ります。
これはブースロイドの図ですが、聴覚障害という、1次的な機能障害があることによって、学力とか職業、社会性、情緒、感覚知覚等に2次的な制約が出てまいります。
家族、教育、医療、社会の働きかけをすることによって、これらを軽減していきます。



これは、聴覚障害児の指導目標です。これらの小目標といっても実現は並大抵ではありません。いわゆるコミュニケーションを成立させる、円滑に行うというのが中目標になっています。大目標は、子どもさんの場合、自己を尊ぶ心を持ちながら自己実現、自己選択、自己決定できるような自立した成人になるいうのが大目標かと思います。この中では聞こえの何パーセントというのはちっぽけな問題になってくるわけですが、そのちっぽけな何パーセントかによって、成人も子どもも人生の岐路において選択肢が増えるのであれば、その数パーセントを伸ばすために、わたしたちは最大限の努力を払いたいと思っております。



これは、情報を雨に例えていますが、与えられる情報量が同じでも、その受け口である聴力レベルによって入ってくる情報量が制限されてしまうということを表しています。



補聴器で十分な聴力の難聴児の場合は、ある程度の時期で補聴器を付けて生活をしていきます。でも、人工内耳をつけるくらいの聴力の子どもは、この年齢で手術をしても、全く音を聞いていないブランクが必ず出てきます。このブランクをどう補うい、しかも同年齢の子どもの言語発達に追いつくか。これが子どものハビリテーションにあたります。手術をしたらすぐに聞こえる・・名前をよんだら振り向く・・手術をしたらすぐにしゃべりはじめる・・というように考えられる方もたくさんいらっしゃいます。でも、子どもの場合にはブランクがあるわけです。これをどう埋めていくかというのがひとつの課題です。



これは、「ことばの氷山」です。皆さん、ご存知のように氷山というのは体積の9/10が海面下にあり、海上に顔を出しているのは1/10です。これをことばに例えているわけですが、この海の中にある部分というのがわかる事柄とか、わかることばです。この基礎があってこそ、聞いてわかるし、しゃべれることばがあるわけです。

ですから、親御さんの気持ちはわかりますが、この部分だけをつついても、それは結局壊しかねません。海面下の部分を育てていってあげないと海上の部分も大きくならないわけです。

健聴者というだけでフランス語を聞いてわかりますか?わかりません。タガログ語を聞いてわかりますか?わかりません。内言語を持ってないと、聞いてもわからないわけです。
で、このことは成人の方にもいえます。リハビリテーションをしていると、どうしても外来語・・カタカナの言葉に弱いかたが多いようです。これは馴染みがないということが大きな原因です。聞こえているんだけれど、なんといったかわからないというのは、自分自身の中にそのことばの辞書がないわけです。ですから30年ぐらい前に失聴した方に「ラストオーダーは何にしますか?」と聞いてもなかなかわからないわけです。



ことばを育てるために、ことばだけではまだいけません。規則正しい生活、それから十分な運動、情緒の安定、遊び、そして豊かな体験という日常生活があって、この上にさらに「ことばの氷山」があるわけです。だから、「ことばの氷山」の下にはまだまだ基礎があるということです。



子どもの聞こえ、ことばを伸ばしていくには、病院でやっていることだけでは不十分であるということがわかっていただけると思います。やはり、全人格的に全生活的に取り組んでいくというようなことが望まれるわけです。そのためには、今、日本に人工内耳をつけた子どもが約700人います。人工内耳をつけたということは聴覚を補償したということです。でも、それだけで聞こえますが、聞いてわかるところまではいかないかもしれません。そしたら、補償の次に必要なのがことばを育てる、はぐくむと言ったことばの獲得とそれに聴覚活用です。これは、誰がするのか。病院でも不十分、学校だけでも不十分、家庭だけでも不十分。ですから、その子どもをとりまくすべての人たちが連携し子どもにかかわっていくということが望まれると思います。

成人もそんなふうにみんながかかわってくれたらもっともっと楽ですよね。職場の人も近所の人も、理解を示して接してくれたらもっともっと楽になっていくと思います。

次の話題に移ります。聴覚活用プログラムでは、どんなコミュニケーションモードを使うか?いろいろな方法があります。海外で中心になっているのが単感覚法、オーディトリーバーバルメソッド(聴覚口話法)です。これが理想です。しかし、内言語も伸ばす必要もありますので、耳だけでは制限があります。親子関係を築いていく、そして本人の情緒を安定させていくということのためには、とにかくコミュニケーションが成立することが必要になります。だから、まずはじめのうちは、全て何でも使えるものは使ってコミュニケーションが成立するということが大事です。

でも、人工内耳をつけたということは全周波数にわたり30-40dBの聴力が補償されているので聴覚を活用してほしいわけです。だから、かかわりとしては何でもトータルに使っていくのですが、でもその子どもが既に習得した語彙やいいまわしは、視覚的な情報をはずしていきます。術後しばらく経過して、耳を活用する習慣が身についてきたら新しく覚える語彙やいいまわしも、もう耳から入れていくように心がけ、聴覚を活用していくことが大事です。ただ、その子どもの心理状態も考慮してください。

次に、聴覚活用法のテクニックについてお話します。
これは成人の方にも使っておりますが、まずは音響的な強調を用います。たとえば、「お母さん」と単調に言うのではなくて、そのときの感情をことばに乗せて、ちょっと大げさに発音を強調します。「お母さん!お母さん!」とか「おかぁ〜さん」とか・・という風にハイライトをつけていくのが、発音の抑揚を育てていくのには役立つと思います。

またハンド・キューも用います。手で口元を隠しますが、声がこもらないように注意します。口からことばが出て、これによってコミュニケーションしているということを知らない子どももいますので、「今出しているよ」とか、「次はあなたの番よ」ということを示すためと口元を見せずに聴覚だけでフィードバックしてもらうために、ハンド・キューを使います。

次は、ききとりの難易度についてです。
音響的手がかりが多い  ⇔ 少ない
意味的手がかりが多い  ⇔ 少ない
文法構造が平易     ⇔ 複雑
選択肢あり(closed-set) ⇔ なし(open-set)
視覚的情報の併用     ⇔ 聴覚情報のみ
静寂時         ⇔ 雑音下
話す速度が遅い     ⇔ 速い
特定の話者       ⇔ 不特定の話者 
皆さんが日常感じていることですが、左側が簡単、右が難しい状況です。

(リ)ハビリテーションプログラムについてお話いたします。
成人も子どもも、概ね同じ順序で(リ)ハビリテーションを進めていきます。
1番は、音の検知。音があるかないかがわかるかどうか。
2番は音の弁別。長さの違いがわかるかどうか、「『桃』といったか、『桃太郎』といったかどっちでしょう」とか、高さの違い、「『し』か『ん』か、どっちか」、それから大きさの違いがわかるかどうかということをやっていきます。これができるようになると行動としては音の模倣がでてきます。
3番に識別。音の認知ですね。これは音をことばとして認識して照合できるか。例えば、お鍋の蓋が落ちても「え?呼んだ?」じゃなくて、ことばはことばとしてわかるかどうかということも含まれます。この辺になると、ちゃんと音をことばのように話すようになってきます。
4番めの段階としては、繰り返すだけじゃなくて、文章を聞いて理解して問答ができるようになってきます。大人の方もこういう段階でリハビリテーションを進めていきます。



次に子どもが人工内耳を装用して得られたきこえについてお話しいたします。
これはきこえの変化をお母さん方にIT-MAISという質問紙法で尋ねたものです。手術前40点満点中の4点くらいですが、1年たった時点でほぼ安定してこのような課題ができるようになります。ただ、名前を呼ばれてわかるかとか、身の回りの音がきこえるだけではなく、音の意味もだんだんわかっていくようにならないと点数が上がりません。
「ピンポーン」とチャイムが鳴って「聞こえたよ」では1点くらい。でも、チャイムが鳴って、パタパタパタと玄関に走っていくようになれば4点になるわけです。また例えば、後ろからお母さんが「ひ〜ろしぃ〜〜」と呼んだら、「ふぅ〜〜ん?」と振り向く。「ひろしっ!!」と呼ばれたら、「へっ?」と慌てて振り向くというように、ことばに含まれている感情が理解できたら4点です。1年くらいたってきたら、そういうことばに伴う感情もわかるようになります。
成人のかたも後ろからよばれたとき、もしくは電話をしているときに相手の感情がこんななのかなと1年くらいたったら、わかってくるのではないかと思います。

これは発声・発語行動の変化をみるMUSSという質問紙法の結果です。これは先程の聴性行動に比べると点数が低いです。ですから、やはり海面下の氷山の部分、わかるということを増やしてからでないと話せるということにはなかなかいかないわけです。しかし、人工内耳をつけると途端に声がよく出るようになりますが、コミュニケーションに話しことばを用いるようになるにはしばらく時間がかかります。あまり親しくない人とでも言葉だけでコミュニケーションしようとするとか、なじみのない人と話をしたときに、発音が不明瞭なので「ん?」といわれてもう一回言い直しができるかどうかという設問はなかなか点数が上がってきておりません。

お約束の時間が迫ってきたようですので、皆さんのよりよいきこえと、子どもたちの明るい未来を期待して終わりにいたします。ありがとうございました。
(拍手)






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