No. タイトル システム 登録日 改稿日
0097 地下牢と竜 SW 01/08/29



はじめに

 このシナリオは、『ソードワールド』の使用想定している。ただし、“さいごに”に記してある通り、2001年夏に公開された映画『ダンジョン&ドラゴン』を下敷きにしているので、背景世界設定はオリジナルとなる。
 特に意味があって『ソードワールド』を選んだ訳では無いので、マスター諸氏が慣れたファンタジーのルールを使用して欲しい。

 PCの一部または全員は、特別な設定を与えられている。詳細は“PCの設定”を参照の事。

 半ば映画公開記念として作成したシナリオなので、ネタバレ等について“さいごに”の注記を確認して欲しい。



強制導入

 舞台となる国では、昔から貴族が強大な権力を持ち、民衆に圧政を強いていた。
 貴族たちを束ねる国王は、代々、“レッサードラゴンの杖”と呼ばれる魔法の杖を所持している。“レッサードラゴンの杖”は、所有者が念じるだけで多数のレッサードラゴンを召喚して操ることができる。この杖は他国の侵略に対する抑止力になっているばかりでなく、強欲な貴族たちの中で国王の地位を保証する役割も果たしていた。

 そんな中、若き国王が即位して、現行の体制を改革しようと言い出した。当然、既得権益を守ろうとする全貴族から総スカンをくらったが、頑として若き国王は意思を変えなかった。とうとう貴族たちは一致団結して王宮を急襲して、若き国王から“レッサードラゴンの杖”を奪い、幽閉した。

 牢獄の中で、若き国王は考えた。  「貴族たちが“レッサードラゴンの杖”を手に入れてしまった以上、それ以上の力を手に入れて復権しなければ、体制改革は適わない。ほとんどの貴族は敵だが、子供の頃に自分の教育係だった“賢者”ならば味方してくれるだろう。“賢者”ならば何か良いアイディアがあるに違いない」
 “賢者”の助力を得る為には、まず、牢獄から出なければならない。牢獄は離宮の中にある簡易な物だが、脱出する手段が思い付かなかった。

 そんなとき、とある盗賊が、離宮に盗みに入っていた。盗賊ギルドの面々は、貴族の建物に入る事をタブー視しているのだが、それを「面白くない」と感じていたので、警備の薄そうな離宮に忍び込んだのである。
 ここで盗賊は、秘密の通路を発見する。辿って行くと、離宮内の牢獄に続いていて、幽閉されている威厳のある人物(=若き国王)と出くわす。
 若き国王は、盗賊に事情を話した上で助力を求める。若き国王が改革を行おうとしているという話を聞いていた事もあり、盗賊は応じる事にする。秘密の通路を逆に辿り、外で待っていた盗賊の仲間(=戦士)と合流する。

 3人は、若き国王の提案通り、まず、“賢者”の館を目指す。しかし、既に“宰相”の子飼の部下である“暗黒騎士団”が、“賢者”の館を襲っていた。“賢者”は、最後の力を振り絞って館の外へ逃れ、運良く若き国王たちと出会う事ができた。
 “賢者”は、「ある場所に、“エルダードラゴンの杖”と呼ばれる魔法の杖がある。これを使えば、エルダードラゴンを召喚して操ることができる。そうなれば“レッサードラゴンの杖”など恐れる必要は無く、若き国王の復権が叶う。何故か“宰相”も“エルダードラゴンの杖”の存在を知って探しているので、先に見付けなければならない」と言い残し、“エルダードラゴンの杖”の在り処を探し出すヒントになるという書物を渡して死ぬ。



PCの設定

若き国王  即位したばかりの新しい国王。“事前状況”にある通り、「貴族による圧政」を改革しようとして幽閉された。両親兄弟は無く、血の繋がりのある者も敵に回っていて、頼れる人物は“賢者”しか思い付かない。
 種族は人間で、ソーサラー技能とセージ技能を持つ(レベルはマスターが決定)。その他、指輪型の発動体や適当な大きさの魔晶石2個を隠し持っている。
 絶対に復権して体制を改革しようという強い意志を持っている。
盗賊  若く野心的な盗賊。あくどい真似はせず、「金持ちからしか盗まない」といった信条を固持している。天涯孤独で、貴族嫌い。盗賊ギルドに所属しているが、“ギルド”という権力機構に所属する事がしっくりいかないと感じている。
 種族は人間で、シーフ技能とレンジャー技能を持つ(レベルはマスターが決定)。
 ある夜、たまたま忍び込んだ離宮で、偶然にも国王と出くわした。
戦士  盗賊の親友。忍びの技は不得手だが、荒事になりそうな“仕事”のときは盗賊に協力している。
 種族は人間またはドワーフで、ファイター技能とその他の補助的な技能を持つ(レベルはマスターが決定)。
 盗賊が離宮に忍び込む際に、いざというときのフォローの為、外で待機していた。



登場NPCおよび重要事項

宰相  既得権益を守ろうとする貴族たちのリーダー。策謀が実って若き国王を捕らえ、“レッサードラゴンの杖”を貴族の共同管理物とする事に成功した。しかし膨れ上がった野心はそれでは収まらず、他の貴族たちの上に立つ新たなる支配者になろうと企む。
暗黒騎士団  宰相の子飼の部下。建前上は警察・公安の任に就くことになっているが、実際は宰相の権益の為だけに動くので、一般市民からは嫌われている。
賢者  若き国王の教育係にして唯一の理解者。優秀な魔術師でもあり、ドラゴンを操る魔法の杖について研究していた。
エルフ  “エルフの森”に住む精霊使い。ドラゴンと大自然の関係の秘密を知っていて、PCに覚悟を問う。



セッションの準備

 このシナリオは、プレイヤー数3〜5人程度を想定している。4人以上の場合は、戦士に相当するキャラクターを複数用いる。

 上記“強制導入”に書かれた内容は、全てプレイヤーに伝える事。ちなみに赤い字で書かれた名前はPCを指す。この部分を印刷してプレイヤーに配布しても良いし、強制イベントである事に同意してもらった上でロールプレイを行っても構わない。
 まとめると、PCの目標・行動指針は以下のようになる。

最終目標  “宰相”の野望を挫き、国が平等な体制を築くようにする。
それを達成する手段  “暗黒騎士団”の手から逃れつつ、“エルダードラゴンの杖”を探し出す。
当面の指針  “賢者”に渡された書物を調べる。

 ここまでの経緯と今後の目標についてプレイヤーの理解を得られた事を確認してから、先に進む。



本編1:魔法の書物

 魔法の書物は、本の形をしているが開いて中を読む事ができない。触れると、頭の中である呪文が響き渡り、それを口に出して唱えてみると「本の中の世界」に入る事ができる。
 本の中は、荒廃した魔術師の研究室のような雰囲気の閉鎖された部屋になっていて、1人の亡霊と出会う。
 亡霊は、「“エルダードラゴンの杖”を操るには代償が必要だ。その覚悟はあるか?」とPCに問う。「ある」と答えると、「“ドラゴンの瞳”と呼ばれる宝石を捜して手に入れろ。“ドラゴンの瞳”を手に持って呪文を唱えると、かつて“エルダードラゴンの杖”を製作した大魔術師の研究所への道筋を指し示してくれる」と手掛かりを教えてくれる。
 用が済めば、本の外に出る事ができる。

 盗賊ギルドに所属している者ならば、誰でも“ドラゴンの瞳”について知っている。“ドラゴンの瞳”は盗賊ギルドの長が所有しているらしいが、今までそれを見せてもらった者はいないと言う。
 どのような手段を取るにしろ、盗賊ギルド本部に行くしかない。



本編2:盗賊の地下迷宮

 盗賊ギルド本部は町の地下にあり、比較的広い。数代前の長が築いたもので、本部施設に隣接してダンジョンがある。“ドラゴンの瞳”は、数代前の長によってこのダンジョンの奥に隠されている。この事は、現在の長や古株のメンバーは知っている。
 未だかつてこのダンジョンを突破した者は無く、現在の長は“ドラゴンの瞳”を手に入れたいと思っている。よって、PCがどのように交渉しようとも、ダンジョン突破の挑戦を許される。ちなみに、こっそりとダンジョンに入る事は不可能である。
 ダンジョン突破について、

「シーフ技能を必要とする罠で構成されている。モンスターの類は出ないので、シーフだけで挑戦した方が良い」
「ダンジョンは、外部から観戦できる構造になっている(仲間が外部から魔法で支援する事も可能で、言外にそれを許すと言っている。射撃武器は不可能)」

と教えられる。
 また、突破した際には“ドラゴンの瞳”をPCに渡すと約束するが、長はこの約束を破るつもりでいる。

 ダンジョンは以下のような構成になっている。

1の部屋  幅3メートル、高さ5メートル、長さ25メートルほどの通路状の部屋。部屋の反対側に扉(鍵穴付き)がある。部屋に入ると、入り口の扉が閉められ、外から閂がかけられる。
 5メートルおきに、外から強い光が入って“光の壁”となっている部分がある(計4ヶ所)。この光を避けて先に進むのは不可能だが、明らかに罠臭さを感じる。地面に落ちている人骨などを拾って“光の壁”に投げてみると、罠が発動する。罠が発動すると、先に刃物が付いた巨大な振り子が無数に天井から現れる。
 突破するには「シーフ+知力」判定(難易度はマスターが決定)をしなければならない。4回判定すれば、部屋の反対まで辿り付く事ができる。判定に成功すればダメージは無い。失敗すると1回につき10点のダメージ(冒険者レベルでのみ減点可)を被る。また、“光の壁”に自らの体を晒す事で罠を発動させた場合、最初の1回目は自動的に失敗となる。
 扉の錠開け(または仲間のアンロックの魔法)が成功すれば、次の“2の部屋”へ行く事ができる。
2の部屋  正方形の部屋で、床は8×8のマス目に区切られたチェス盤になっている。入口に「騎士として歩め」と書かれたプレートがあり、最初の1歩はナイトの初期配置の場所に出るようになっている。部屋に入ると、「ガチャ」という機械音がする。
 この部屋を突破するには、チェスのナイトの動きで進まなければならない。ただし、ナイトの動きをする為には途中のマス目をジャンプしなければならないので、「シーフ+敏捷度」判定(難易度はマスターが決定)をしなければならない。間違ったマス目に入ると下から槍が飛び出して、1回につき10点のダメージ(冒険者レベルでのみ減点可)を被る。反対側の8つのマス目の何れかに辿り着くと、次の“3の部屋”へ行く事ができる。
3の部屋  大金庫の中のようなガッチリとした部屋。中に入ると入口が自動的に閉まる。部屋には出口らしき扉もあるが、ノブも鍵穴も無く開けられない。部屋の中央には台座があり、“ドラゴンの瞳”が収められている。
 シーフ技能で部屋を調べれば、壁・床・天井の何ヶ所かに継ぎ目があり、何らかの条件で罠が発動するのだろうとの推測ができる。その条件とは「“ドラゴンの瞳”を取る」事なのだが、取らない限り部屋からは出られないので、結局は取るしかない。
 “ドラゴンの瞳”を手に取ると、けたたましく非常ベルの音が鳴り響き、ゆっくりと天井が落ちてくる。それと同時に壁から砂時計が現われ、砂が落ちきったときが死ぬときとなっている。
 突破の方法は、砂時計を壊す事である。そうすれば天井は元に戻り、出口が開く。プレイヤーが気付かない場合は、繰り返し「部屋にあるのは砂時計だけ」と強調する事。なお、砂時計は簡単に壊す事ができるが、“ドラゴンの瞳”は壊そうとしても壊れない。

 罠の難易度が適正で、仲間から魔法の援護が得られるならば、無事に“ドラゴンの瞳”を入手できる筈である。
 “ドラゴンの瞳”を手にして外に出ると、ギルドの長は満面の笑みを湛えてPCを賞賛するが、「ワシの為に取ってきてくれて御苦労だった」などと言い、PCから奪おうとする。しかしそのとき、ギルドに暗黒騎士団が突入してくる。
 PCは、適当な戦闘を行って勝利すれば、混乱に乗じて脱出できる。



本編3:エルフの森

 手に持って、魔法の書物の中にいた亡霊に教えられた呪文を唱えると、“ドラゴンの瞳”は一筋の光を発する。光の指し示す先は町から出て何日も歩いた所にあるようなので、PCは装備を整えて旅に出る事になる。
 町を出て数日経つと、閉鎖的なエルフたちが住まう森の入口に到着し、それと同時に数人のエルフが現われる。エルフたちはPCに「族長が面会を求めているので着いて来い」と言う。
 同行を拒否してかつ森に入らない場合、どの位置にいても“ドラゴンの瞳”は森の中を指し示すので、「求める場所は森の中にある」と分かる。グズグズしていると、暗黒騎士団の捜索隊と戦闘になる。
 同行を拒否してかつ森に入る場合、エルフたちと戦闘になる。エルフたちは地の利を生かして隠れながら矢を射るので、PCは反撃できない。ちなみに、本来は森の中に人間が入ると迷ってしまうのだが、“ドラゴンの瞳”のお陰で目指す方向に進む事だけはできる。
 結局、PCはエルフの族長と会って話をする事になる。

 エルフの族長は、「人間たちは知らないようだが、ドラゴンと大自然の間には密接な関係がある。1匹のドラゴンが死ぬとき、世界の何処かの自然が失われる。たくさんの数のドラゴンが死ねば、天変地異が起こる。“ドラゴンの杖”を使用してドラゴンが傷つけば、大自然も失われるのだ」と語り、PCの返答を待つ。
 PCが適当なロールプレイを行い、宰相の野望の危険性を訴えれば、族長は「PCを信じよう」と言い、“ドラゴンの杖”が隠されているという洞窟まで案内してくれる。
 洞窟の入口には目に見えない壁があり、普通は中に入れない。しかし、“ドラゴンの瞳”を手に持った者だけは壁を通過できる。洞窟に入る事ができるのは1人だけだが、魔法の本を利用して持ち物となって侵入するのは可能である。
 洞窟の中は研究室のような佇まいで、奥に豪華なローブを着て杖(=エルダードラゴンの杖)を抱えた白骨死体が見付かる。PCが近づくと白骨死体は動き出し、話し掛けてくる。白骨死体は、

「自分は“エルダードラゴンの杖”を製作した魔術師だ」
「杖を作った事は過ちだったと悟り、誰の手にも渡らないよう封印する為にこの洞窟を作った」
「杖の使い道を誤れば、代償を支払う事になる。肝に銘じておけ」

と助言すると動かなくなる。



本編4:竜の杖

 エルフの森の外では、暗黒騎士団が待ち構えている。実は宰相は、特殊な魔法でPCを見張っていたのである。PCを泳がせ、やっかいなエルフの森から杖を持って出た所で襲おうと企んでいる。
 PCの取り得る手段について下記に説明する。

@ドラゴンを数匹呼び出して、その背に乗って宰相の元に奇襲をかける。
 この場合、宰相(高レベル魔術師)と暗黒騎士団団長(高レベル戦士)それに数名の騎士(低レベル戦士)を相手に戦い、一定ラウンド内(マスターが決定)に宰相と団長を倒す事ができればミッション成功となる。

A“エルダードラゴンの杖”を目一杯使用する。
 レッサードラゴンとエルダードラゴンの戦いになり、エルダー優勢で進み勝利する。しかし暫く後にこの地方は大災害に襲われる事となる。
 ミッション失敗である。

B“エルダードラゴンの杖”を使用せず、正面から戦う。
 森は暗黒騎士団に囲まれており、脱出は事実上できない。PCが敢えて戦いを挑むならば、何ラウンドか後に「正面突破は不可能」と教える事。森の奥への撤退は判定無しでできる。
 改めて異なる選択をさせる事。

Cエルフの森に篭城する。
 数ヶ月〜1年間ほど経てば、宰相は「“エルダードラゴンの杖”は必要ない」と判断して森に火が放たれる。
 そうなってからでは、PCが“エルダードラゴンの杖”を使用して宰相を倒したとしても、既に宰相中心の政治体制が確立してしまっているので若き国王の復権は不可能である。その上、大災害に襲われるので、この国の人々は難民と化してしまう。
 ミッション失敗である。



結末

 選択肢@を選び、宰相と団長を倒すと、貴族たちも一枚岩ではなくなるので若き国王は権力を回復する。ドラゴンに被害が出ていないならば災厄の心配も無く、政治改革も断行できる。

 その後で各PCの取る行動をロールプレイしてもらい、セッション終了とする。



さいごに

 2001年夏に日本公開され、僅か2週間で打ち切られた映画『ダンジョン&ドラゴン』は、かなり酷い出来だった。ストーリー展開は辻褄が合っておらず、登場人物の配置も未整理で、ギャグは上滑りだし、主人公の成長も説得力が無い。ドラゴンのCGを始め映像表現や演出等にしても、せいぜい“並”としか評することができない。
 私はそんな感想を抱いた。
 これを劇場で一緒に観た友人と不満点を言い合いながら、ふと、「そうは言っても、ルールブックに添付された“初心者向け”を銘打ったシナリオって、こういう押し付けがましさを感じさせるゲームブック的なモノが多いのではないか?」と思い至った。
 そこで、“企画物”と割り切って、このようなシナリオを作って遊んでみた。

 ストーリーに関しては、映画で不満に思った点を“添削”した内容になっている。事前に映画を観ていたプレイヤーがいた場合は先の展開にそれなりに気付くだろうが、それが障害になるようなシナリオでは無いと思う。




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