No. | タイトル | システム | 登録日 | 改稿日 |
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0086 | 殻の中の小鳥 | 天羅万象 | 00/10/01 | 00/10/22 |
阿 | : | 複数の小国が睨み合う冷戦下の地方の一国。覇権を握る為、秘密裏に“高速機動が可能なヨロイ”の開発を進め、その為に“ヨロイ乗り・傀儡”を育てている。 しかし、傀儡の教育には成功したが、肝心のヨロイの開発に失敗してしまった。そこで“臥”の国にヨロイの共同開発を持ち掛けておいて騙し討ちにする計画に切り替えた。 |
臥 | : | “阿”と同じく、複数の小国が睨み合う冷戦下の地方の一国。この地方で最も優秀なヨロイ鍛冶を有している。 “阿”からのヨロイの共同開発の申し出をチャンスと捉え、罠を警戒しつつも話に乗った。しかし、その為のテストパイロットが傀儡であることは全く知らず、想像すらしていない。 |
コーラル | ||
高蘭流 | : | 外見は十代半ばの清楚な少女(少年でも可。その場合は内容を辻褄が合うように変更すること)。世間的には“阿”の国の傍流の姫君ということになっているが、ちょっとした事情通ならば「実はヨロイ乗り」であることを知っている。 しかし、その本当の正体は「<接合>技術を持つ“ヨロイ乗り・傀儡”」である。この事は、“阿”の国の領主を含めたごく一部の者しか知らない。 文字通り「ヨロイ乗りになる為に作られた」訳であり、それを当然と思うように教育されているが、最近はそんな自分に疑問を感じ始めていた。そんな矢先、“ヨロイ乗り”としてでは無く、“騙し討ちの道具”として使われる事になり、困惑の度合が深まっている。 |
導入1のPC | 高蘭流は心の底では一緒にいたいと思っているので、口では拒絶しつつも結局は付いて来れるように取り計らう。例えば、「今、怪しい人々が満ち溢れる所で別れるのは、彼(導入1のPC)にとって危険です。安心できる辺りに行くまでは、同道しましょう」などとフォローする。 |
導入2のPC | 導入2のPCは、裏道を知っているものとする。街道沿いを歩くのでは、NPCの波状攻撃を食らってとてもやっていけないので、導入2のPCの“好意”にすがるという形に誘導する(ないし、プレイヤーに協力してもらう)。 |
対象PC | 場所 | 内容 |
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導入1PC または 導入2PC |
荷馬車前 | 夜、一行が野宿しているとき、高蘭流が荷馬車を睨むようにして独り佇んでいるのにPCは気付く。PCが声をかけると、高蘭流は我に返って「何でもありません」と言い残して去る。このイベントは、複数回起こしても良い。 荷馬車には厳重にシートが掛けられている。中味は、表向きは嫁入り道具ということになっているが、実際はヨロイの甲腔(コックピット)部分である。導入2のPCまたは<接合>か<陰陽術>技能を持っている者が中味を見たならば、判定無しにそれが分かる。 |
導入3PC | テント | 見張りなどをしていると、夜に高蘭流が眠っていないことに気付く。注意すれば「寝付けなかったので」と言い訳して、必要ならば眠った振りをするがやはり眠らない。気を抜くと再び導入1のPCに対して“胡蝶の夢”を使ってしまいそうで、それで深い眠りにつけずにいるのである。 厳しく諌めるなどすると、言い訳しながらも導入1のPCに視線が向いてしまい、「眠ってはいけない理由が、導入1のPC関係があるらしい」と分かる。 |
全PC | 移動中 | 旅の半ば、昼に移動中、金剛機の襲撃を受ける。この金剛機は<兵法:金剛羅漢拳>を収得(PCの実力に合わせて、どのレベルまで使えるか決定する)した上にアーキタイプ級の能力を持っていて、飛行して空から高蘭流一行を捜索していたのである。原則的に問答無用で襲い掛かかり、気絶した者への止めよりも起きて戦っている者の無力化を優先する。 幾ら金剛機と言えども単機ではPCに勝てないだろうが、危ないようならば高蘭流を上手く使ってPCが合気を得易いように誘導すること。 金剛機の残骸を調べ、<事情通/知力>に難易度2で成功したならば、どの国の所属かが分かる。派遣した国にとって金剛機は失うことの許されない虎の子の筈なのに、単機投入という賭けに出たのは余程のことなのだろうと、PCは推察できる。 |
導入1PC | 戦闘直後 | 上段の金剛機との戦闘の直後、緊張が解けたことによりここまで睡眠を取らずにいた高蘭流は気絶する。或いは、「身を呈して囮になり、金剛機の攻撃を受けて気絶した」とか、「状況を説明するようにPCに問い詰められて、進退極まって失神した」でも構わない。 そしてその際、胡蝶の夢が発動して、導入1のPCを引き込む(抵抗に成功した場合は、高蘭流は夜まで意識を取り戻さないものとして、PCが眠ったときに夢を見せるとする)。夢の中で、高蘭流のより詳しい生い立ちをPCは知ることになる。 最初の場面では、ヨロイ鉢金に抱衣を着た姿の高蘭流が、ヨロイ乗りになる為の厳しい教育を受けている。それは人間を育むというより、高級な道具を鍛えているという様子に見える。上手くヨロイを乗りこなすと領主(らしき男)に誉められ、そのときは嬉しさを感じるが、後で「あくまで優秀な道具としてしか見られていない」と思い知らされて落ち込んだりする。 次の場面では、新型ヨロイのテストパイロットとして高蘭流が辛い実験に耐えている。領主やヨロイ鍛冶の言葉が断片的に聞こえ、「ヨロイによる高速機動」「高速機動に耐える為の乗り手と甲腔(コックピット)」といったセリフの羅列が響く。 最期に、真っ赤な顔で怒り狂う領主が、抱衣の衿を掴んで首を絞めるようにして高蘭流を責めている場面になる。領主のセリフとして、「ヨロイ乗りも甲腔も完成したのに、機体開発に失敗とはどういうことか」「“臥”が裏切らんと、何故言える?」「もう間に合わん。これ以上の時間をかけていては、完成前に、怪しんだ他国が連合して“阿”を襲うに決まっている」といった声が響く。 そして領主は、掴んでいた衿を離して高蘭流をドサリと床に落とすと、「高速機動ができぬのなら、お前に存在価値は無い。せめて次の計画の役に立ってみせろ」と冷たい言葉を投げかける。 この内容に関しては、全てオープンで行い、導入1のPCを通して他のPCにも伝わるように誘導すること。長い長い夢から覚醒した導入1のPCは、現実には一瞬たりとも過ぎていないことに気付く。 |
対応方法 | 展開 |
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阿に味方する & 入国する |
PCが最後まで高蘭流に付き添う事を希望する場合、「“阿”の技官」または「テストパイロットの付き添い/護衛」というような名目で許される。“臥”では、既に“阿”が持って来た甲腔を埋め込む為の機体を準備しており、“高速機動が可能なヨロイ”の組み上げは短時間で終了する。その間に、高蘭流は普段と違った明るい調子で他の乗り手とコミュニケーションを持ち、気安く話し掛けられる環境を築き上げる。ここまで付き添って来たPCには、その様子が少々、演技臭く感じられる。 機体組み上げが完了するとすぐに、ヨロイ駐機場にて調整と接合実験が行われる事になる。ヨロイ駐機場には“臥”の他のヨロイも乗り手が接合した状態で待機していて、ここでも高蘭流は意識的にヨロイ乗りたちに通信で話し掛ける。戦闘中などであれば明鏡を介した通信には一種のフィルターが掛けられて明鏡に悪影響が及ぼされないような手段が施されているが、このときは詳細なデータを採る必要がある事などから、ファイアーウォールの類を介さない状態で明鏡がリンクされる。それを悪用して、高蘭流は他の明鏡にウィルスを流し、接合できないようにしてしまう。 高蘭流がウィルスを流すと、他の乗り手たちはヨロイから強制排出される。暫く混乱が続くが、やがて原因が高蘭流にあると気付かれる。当初の混乱を利用すれば、PCと高蘭流が脱出を試みる事は充分に可能である。“臥”の城門で適当な敵とのクライマックス戦闘を演出する事。 その後、“臥”の戦力は「ヨロイが多く、サムライが少ない」という構成なので、目論見通りに“阿”による無血併合が成功する。 |
臥に味方する & 入国する |
適当なロールプレイを行えば、PCが高蘭流に付き添って“臥”に入国した上で「明鏡にウィルスを流す作戦を止めよう」という説得に高蘭流は応じる。 電撃戦の為に“阿”の軍隊は既に国境越えをしており、“阿”と“臥”の開戦は既に防ぐことができないが、PCが全てを“臥”の政府関係者に明かして全面協力を約束するならば、すぐに捕縛されるような事は無い。まず、厳重な監視の下で“高速機動が可能なヨロイ”の組み上げと接合実験が大急ぎで行われ、その次にPCと高蘭流が参戦する事が求められる。 合戦に、PCおよび高蘭流は遊撃部隊(裏切を警戒して正規部隊には組み入れられない)として加わり、「相手方の重要なNPCを倒してしまう」か、または「ヨロイやサムライなどの特別な戦力に関して、自国側は被害ゼロ、敵国側は壊滅となるようにする」かのどちらかの作戦を取らなければならない。 「相手方の重要なNPCを倒してしまう」場合、ルール的に説明すると、「合戦の第1ターンの戦闘フェイズに“対戦相手判定”に6成功以上して、“将軍(重要なNPC)”と戦うようにして、そのフェイズの内に(3ラウンド以内に)倒す」ことで目的を達せられる。倒せば、第1ターン終了フェイズをもって合戦自体も終わる。合戦が第2ターンに入ってしまうようならば、“戦力を削らずに戦を終わらせる”とはならず作戦は失敗する。 なお、“将軍(重要なNPC)”として登場するキャラクターのデータに関しては、マスターに委ねる。特殊な装備を持った機面ヨロイなどとすると面白いかもしれない。 ちなみに、「手持ちの気合で“対戦相手判定”に6成功以上する」「戦闘フェイズにて“正念場宣言”を行って気合を稼ぐ。その後、追加行動を繰り返して攻撃する」などとすれば、それほど達成は難しく無い。“将軍(重要なNPC)”は少なくともPCと同等の能力にするべきだし、それに護衛として強力なサムライを付けて「“将軍(重要なNPC)”は倒したが、気合を使い果たしたところで強力な敵の攻撃を受ける」などとして緊張感を演出した方が良い。 「ヨロイやサムライなどの特別な戦力に関して、自国側は被害ゼロ、敵国側は壊滅となるようにする」場合、合戦ルールを無視して、両国のヨロイやサムライが全て登場する戦闘を起こす。双方共に金剛機はいない。ヨロイやサムライなどに関しては適当な数を出して、“臥”の側はプレイヤーに操らせて良い。PCの方が戦力は大きいが、1体の損害も許されないので苦戦するようなバランスにする事。 何れの場合も、上手く行けば“臥”は“阿”を併合して、高蘭流以外の“ヨロイ乗り・傀儡”を招集して高速機動可能なヨロイ部隊を編成するなどして、第三国からの干渉から身を守る力を手に入れる事が出来る。 失敗した場合、近い将来に両国が滅亡する事になる。展開次第では、PCたちは恨まれて襲われるなどする。 |
阿に味方する & 入国しない |
適当なロールプレイを行い、かつ「近い将来の両国の滅亡」を防ぐ事をPCが約束するならば、命令に背いて“臥”に入国しないように高蘭流を説得する事もできる。 “阿”と“臥”の開戦は既に防ぐことができないので、「近い将来の両国の滅亡」を防ぐ為には、戦力の潰し合いが起こらないようにした上で併合されるように仕向けなければならない。この為には、PCが傭兵として“阿”に参戦して、相手方の重要なNPCを倒して、結果的に「無血で併合」に近い状態に持ち込むしか無い。PCが売り込めば、遊撃部隊(裏切を警戒して正規部隊には組み入れられない)としてならば雇ってもらえる。ルール的な扱いは、上段の「相手方の重要なNPCを倒してしまう場合」に準じる。 なお、“高速機動が可能なヨロイ”という切り札が存在しない以上、「ヨロイやサムライなどの特別な戦力に関して、自国側は被害ゼロ、敵国側は壊滅となるようにする」という作戦では意味を成さない。 |
臥に味方する & 入国しない |
ロールプレイ次第では、「身勝手で非道な作戦を取る“阿”の領主の下では、民草の幸せはない」などと言って“臥”が勝つ方向で展開させる事を高蘭流に納得させられる。原則的に上段の「阿に味方する&入国しない」に準じる展開になる。 |
干渉しない | 高蘭流は“臥”に入り、当初の計画通り“臥”の明鏡にウィルスを流して起動できないようにしてしまう。“臥”の戦力は「ヨロイが多く、サムライが少ない」という構成なので、目論見通りに“阿”による無血併合が成功する。 しかし、高蘭流がどうなったかについては、PCは何も知ることはできない。少なくとも、導入1のPCは夢を見ることはなくなる。 |
入国させない | 両国の滅亡を防ぐ手段をPCが提示しない場合、高蘭流は当初の“阿”の計画に背く事を承服しない。しかし高蘭流自身に戦闘力は無いので、無理に拘束すれば“臥”への入国を阻止できる。 高蘭流が計画を成功させなかった場合、やがて合戦が始まり、“阿”と“臥”は戦力を削り合った末に痛み分けに終わる。近い将来、両国が滅亡することが確定した事になる。 特にPCがフォローしないならば、高蘭流は罪悪感から廃人になってしまう。導入1のPCが、彼女の心を救う為に「高蘭流と一緒に暮らす」という選択(つまり、NPC化するという事)を取るならば、「一向に回復の兆しを見せないが、それでもいつの日か高蘭流が笑顔を取り戻す希望は残されている」といった余韻を持たせたエンディングにする。 |
誘拐する | 他のPCが「干渉しない」という対応方法を選択した場合、導入2のPCは独力で容易に甲腔を奪取したり、高蘭流を誘拐したりする事ができる。そうして“阿”と“臥”が滅亡すると、やはり高蘭流は生きる気力を失い屍のようになり、誘拐された先で“高速機動が可能なヨロイ”の実験に協力する事はない。導入2のPCが叱責されるような事は無いが、依頼した国が“高速機動が可能なヨロイ”を得る事は無く、任務は事実上の失敗となる。高蘭流は、処刑されるか幽閉されるか、何れにしろ未来は無い。 |
その他 | その他、プレイヤーからの別の発案があればそれを採用しても良い。ただし、余りに楽な方法でハッピーエンドに結び付くというのは不自然なので、マスターはよくよく吟味して欲しい。 |