No.
タイトル
システム
登録日
改稿日
0084
神輿のある村
戦霊伝
00/07/30
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はじめに
このシナリオは、『戦国霊異伝』使用を想定して書かれた。
しかし、『天羅万象』など和風伝奇RPGならば使用可能である。
登場NPCおよび重要事項
土地神
:
由来不明の古い神社に住まう(封じられている)神。年に1回、夏祭のときに神社から神輿に乗り移って、村に加護を与えてきた。ところが山賊の襲撃というイレギュラーな事態により、村の広場で外に解放されてしまい、災厄を撒き散らす事になる。
事前状況
山間のとある寒村の近くにある神社には、実際にそれなりの力がある土地神が宿っていた。神社の由来を正確に覚えている村人はいなかったが、ありがたい存在として長い間、慕われてきた。
この寒村では年に1回、夏祭が開かれ、ほとんど全ての村人(と言っても100人程度だが)が参加する。祭の一環として、以下の神事が執り行われる。
@夏祭の前に、神輿を造る材料などの準備を済ませておく。
A夏祭前日の夜、男衆が神輿の材料や大工道具を持って神社に行く。神社は村から山道を30分ほど登ったところにある。
B夏祭当日早朝の日の出と共に、急いで神輿を製作する。この作業に伴って土地神が神社から神輿に乗り移る。
C神輿を担いで村中の家々や田畑を練り歩く。
D神輿を広場に置いて、その回りで盆踊りなどレクリエーションを楽しむ。夜になったら夏祭は閉会する。
E男衆によって神輿が神社前に運ばれる。ここで神輿は壊され、残骸を薪にして焚火を行う。これに伴って土地神は神輿から神社に戻る。
F男衆は、焚火を囲んで夜通し酒を酌み交わし合う。
この神事の御利益がどの程度なのかは分からないが、少なくとも村人たちは土地神のお陰で安寧に暮らしていられると信じていた。
そんな寒村の、ある年の夏祭のとき、上記Dにあるように広場で村人が踊りなどを楽しんでいる最中に、山賊が襲いかかってきた。山賊の方に特別な意図は無く、食料調達と“憂さ晴らし”だけが目的だった。その“憂さ晴らし”の結果、村人は皆殺しにされ、神輿は広場にて壊されて放置された。
土地神とは、精神エネルギー生命体とでも呼ぶべき存在である。神社と神輿はその制御装置であり、「神輿を造る/壊す」という行為は装置の操作方法に当たる。寒村の広場にて神輿が壊されたというのはイレギュラーな事態であり、そのせいで土地神は制御不能状態で解放されてしまった。
土地神が解放された瞬間は、その場にいた者が寒気を感じたくらいで特に何も起こらなかった。山賊は村を制圧した後で酒宴を開き、その後は各々、村人の家に入り込んだり、広場で酔い潰れてそのまま眠ったりと勝手気侭にしていた。そして翌朝の日の出と共に、納められるべき場所に納められなかった土地神が暴走状態になる。
土地神は、広場に憑り付く地縛霊となった。元々の土地神は、「1年の間に貯えた自然の精気を、村人や作物に“おすそ分け”する」という機能を持っていた。暴走地縛霊状態になった土地神は、一方的に他者から精気を吸い上げて自己に貯えるだけの存在になった。その影響で広場内の草は全て枯れ、雑魚寝していた山賊も精気を吸い取られて衰弱死した。貯えたパワーで憑り付く範囲を広げた土地神は、広場近くの民家で寝ていた山賊も殺し、そうして影響力を強めて行った。
昼になり、ようやく山賊たちも異常な事態に気付いた。広場の方に様子を見に行った者の多くは、立ち入った瞬間にパタパタと倒れた。そうして山賊はリーダーや幹部を含む大多数が衰弱死し、残った僅かの者は半狂乱で逃亡した。
導入
PCは知り合い同士で、一緒に旅をしているものとする。
夕刻に差し掛かる頃、とある山道で、蒼白な顔で倒れている男をPCは見付ける。男は一見して荒事に従事している者だと分かるが、如何にも起き抜けに取るもの取らずに逃げ出してきたという風体で、意識が混濁しており、「呪いだ、呪いだ」とうわごとを言う。この男は、上記“事前状況”の山賊の下っ端である。介抱すれば容態が落ち着くが、事情を聞くのは、少なくとも一晩寝かせて翌朝にならなければ無理そうである。
PCが野宿するかどうか迷っていると、道標があり、近くに村があると分かる。
以降、PCは事件に関わり合いを持つものとして進める。
本編
「助けた男は、道標にある村で何か恐い目に遭ったのかもしれない」という見当は付くだろうが、それでもPCは村に向かわざるを得ないだろう。
村では生きている人間は誰もいない。農民風の者は斬り殺されていて、山賊風の者は干からびたミイラか老人のようになって死んでいる。
この時点で土地神の影響は、中央にある広場を中心に村の総面積の半ばほどに達していてる。土地神が憑り付いている場所にいた山賊たちは、既に全員が精気を吸い尽くされて死亡している。精気を吸い取る対象が何も無い状況でもゆっくりながら影響範囲を広げていて、さらに生き物などから精気を吸い取る事ができる状況では拡大速度がスピードアップする。
土地神の憑り付いた地域に立ち入ると、脱力感を覚え、一定の割合で体力を吸い取られる。個人差もあるが、1時間もすれば衰弱死してしまう。また、適当な個人判定を行い、失敗すると気絶してしまう。気絶しても、誰かに土地神の影響の外へ運び出してもらえれば、すぐに目を覚ます事ができる。この辺り、PCのデータや人数を鑑みて、間違っても「PC全員が判定に失敗して全滅した」という展開にならないように調整する事。
PCが意識を保ったまま村を見て回れば、「夏祭の最中に山賊の襲撃があり、村人が殺され、その後に山賊が変死した」という事が見て取れる。
このような怪異を引き起こしかねないモノを捜し求めるならば、壊された神輿の残骸を見付ける。しかし神輿は、最近になって素人の手で作られた安っぽいもので、怪異の直接的原因になりそうな迫力とか雰囲気は無い。その他は、特に目を引く物はない。
村外れには、つい最近に木を切り倒して製材した作業の跡が残っている。量から考えて、神輿の材料にしたというのが妥当な推理と思える。
村の周囲に目を向けるならば、PCが使っていた街道以外に山道が1本あるのに気付く。山道を辿って上り坂を30分ほど進めば祠に行き着く。この祠は、何百年も前に建てられたらしい由緒を感じるもので、神主などはいないが鳥居など付帯設備も備え、立派な神社になっている。祠の中を調べても特に何も見付からないし、荒らされたと様子もない。
翌朝になれば、助けた男が目を覚ます。すっかり脅えていて、積極的に目撃した事を話す。それによると、「村人は『夏祭の間は神輿の中に神様がいるので、ここで壊すのだけは勘弁して欲しい』と真剣に訴えていた。自分たちは全く取り合わずに破壊したが、きっとそのせいで呪いを受けたに違いない」と言う。
この男の処分に関してはPC次第だが、今の所は腑抜けていて逆らうような事はしない。
術などを使って探れば、妖怪とも霊体ともつかない気配を感じるが、正統的な方法で成仏させようといった試みは全て失敗する。勿論、剣など物理的な攻撃手段も効かない。
結末
PCが村の広場で神輿を組み立て、それを担いで神社まで行き、祠の前で壊せば事件は解決する。
広場にいると精気を吸い取られるので、1日の内に神輿の組み立て作業に従事できる時間は限られる。適当な判定を要求して、作業に要した日数を決める。日数を掛け過ぎれば、土地神が影響を及ぼす範囲が野山にまで広がり、そうすると動物や木々の精気を吸って致命的な速度で拡大する事になる。
クライマックスの演出の為に、
@土地神に精気を吸わせない為に、村に近づく獣を倒す。
A妖気に誘われて現れた鬼・悪霊を倒す。
B仲間を引き連れて様子見に戻って来た山賊を倒す。
などのイベントを挟んでも良い。プレイヤーの様子やセッションのボリュームを鑑みてマスターの方で決めて欲しい。
さいごに
神輿とは、神社から神社へ“神”を乗り移らせる乗り物という役割を担う宗教用具なのだそうである。その話から、このシナリオを思い付いた。
このシナリオは、『戦国霊異伝』で1回、『天羅万象』で1回行った事があるが、どちらの場合も特に違和感は無かった。ファンタジーへの置き換えも可能だが、雰囲気を考えれば和風伝奇物が適しているだろう。ただ、背景世界設定を重視するならば、神道の扱いからして『戦国霊異伝』の方が相応しい。
セッションの成否は、「土地神が解放された場所で神輿を再建して、神社に神を戻す」という唯一の解答にプレイヤーが気付くかどうかに掛かっている。
最初のセッションではプレイヤーが解答に至らず、楽しんでもらえなかった。2度目のときは手直しを考えたが、「ベタベタなヒントを出して強制誘導するようでは、角を矯めて牛を殺すようなものだ」と思いそのまま使った。結果、2度目は上手くいき、楽しいセッションとなった。
その辺りの機微を考えてマスタリングして欲しい。
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