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0077 降魔核問題 GA 00/07/01



はじめに

 このシナリオは、『ギア・アンティーク〜ルネッサンス』の使用を想定して書かれた。
 しかし、他のスチームパンクや類する世界背景のRPGでも使用可能である。



登場NPCおよび重要事項

シャトーロレーヌ フィラム王国辺境の、汚染地域に隣接した町。住民は、経験から上手くモンスターと付き合うノウハウを生み出していたが、つい最近になってそのノウハウが役に立たなくなってきている。
研究所 フィラム王国の一部の権力者が、子飼いの研究者にやらせている降魔エンジンの研究所。シャトーロレーヌの近くに作られた事から、住民生活に影響を与えてしまった。



事前状況

 マキロニー地方の東部には、大昔に降魔核が落ちた“汚染地帯”が広がっている。この地域では、生物も非生物もその存在を歪められ、奇形化の末にモンスターとなってしまう。
 汚染地帯では、降魔の力を受けて奇妙な性質を持つに至った鉱石である“降魔鉱石”が存在して、ストーカーと呼ばれる鉱夫たちが採取している。降魔鉱石の“発熱吸熱可逆反応”という特異な性質を利用して、燃料補給の必要の無い内燃機関である“降魔エンジン”を作り出す事ができる。しかし、降魔エンジンを搭載した戦車等は絶対的な性能を誇るが、何かの切っ掛けで不具合があると、搭乗員ごとモンスター化してしまうという重大な欠点があった。
 降魔エンジンの研究と実用化においては、ヴァルモン帝国の独壇場だった。それに不満と危惧を抱くフィラム王国の一部の権力者は、子飼いの狂的科学者に降魔エンジンの研究を命じた。

 フィラム王国の狂的科学者は、万一の事故を考え、降魔エンジンの研究所を汚染地域の縁に作った。すぐ近くにシャトーロレーヌという町があるので補給にも便利だし、最悪の事態に陥っても「ほんの少し汚染地域が広がるだけ」だからという論理である。
 しかし、降魔エンジン研究所設立の影響は、シャトーロレーヌにすぐに現れた。
 汚染地域に隣接しているシャトーロレーヌに住む人々は、長い時間をかけて「安全に暮らす為の生活の知恵」を編み出していた。行って良い場所と悪い場所を割り出し、必要な場所には城壁を作ったり見張りを置いたりした。アンデッド(降魔汚染された死体)を遠ざける香も広く普及して町を守っていた。
 どのように降魔エンジン研究所が影響したのかは分からないが、その設立を境にして、モンスターたちの性質が変化したのだ。
 例えば、「従来は安全とされていた場所にモンスターが現れた」「従来は突破されなかった城壁を越えられた」「香が効かなくなった」「新種が現れた」といった変化が見られるようになったのである。

 ところで、このモンスターの性質の変化の被害を受けた者たちが他にもいた。ユーレンブルグの“汚染地域突破侵攻特務連隊”である。
 フィラム王国は、汚染地域に隣接した場所には碌な軍隊を置かなかった。常識で考えれば、汚染地域を通って軍隊が侵攻するのは不可能であり、こんな所に多くの守備兵を置くのは明らかに用兵の誤りだからである。
 ユーレンブルグは、この常識の盲点を突いた奇襲作戦を考えた。まず、シャトーロレーヌにスパイを派遣して、モンスターを避けるノウハウを探り出した。そしてそれを応用して、ついに「ユーレンブルグからフィラム王国(シャトーロレーヌ)まで通じる、汚染地域内の安全な“道”」を見付けた。そうして、その“道”を通って奇襲を掛ける為の部隊である“汚染地域突破侵攻特務連隊”が組織された。
 “汚染地域突破侵攻特務連隊”を結成した当初の訓練段階では“道”は完璧で、既にフィラム王国東部は手に入れたも同然と皮算用するほどだった。しかし、時間が経つに連れて次第に“アクシデント”が増え始め、とうとう「十分な戦力と士気を保ったままでシャトーロレーヌまで侵攻するのは不可能」と判断せざるを得ないまでになった。
 既に計画には多額の資金が投じられていて、今更、「やはり不可能だった」では済ませられない。計画の責任者は、再度、シャトーロレーヌにスパイを放って情報を集めた。その結果、降魔エンジン研究所の存在を知り、これが原因だと判断して潰す算段を考えた。
 降魔エンジン研究所は、一応はフィラム王国政府に所属する機関であり、真っ正直なテロを行えば、ユーレンブルグの奇襲作戦まで露呈しかねず、それでは意味が無い。そこで計画の責任者は、シャトーロレーヌの住民を焚き付けて降魔エンジン研究所を排斥する運動を起こさせる事にした。



導入1:スパイ

 フィラム王国が秘密裏に降魔エンジンの研究を進めているという噂は、諸外国の諜報機関にも伝わっている。
 ヴァルモン帝国やカーグラード王国出身の適当な経歴のPCは、自国の諜報機関の命を受けて、この噂を確かめにシャトーロレーヌに潜入する事になる。
 PCは、降魔エンジン研究所がシャトーロレーヌの近隣にあり、町の流通機構を通して補給をしている事のみ知っている。位置や規模などは、自力で調査しなければならない。
 なお、PCには大きな現場裁量権が与えられていて、可能ならば「試作品や研究データの奪取」まで目指しても良いし、無理ならば「より確度の高い情報の収集を行う」のみでも構わない。プレイヤーが与えられた任務を無理難題と感じたり、逆に軽く見過ぎたりといった極端な事態にならないように、マスターは調整して演出する事。



導入2:テロリスト

 ユーレンブルグの工作員によるリークが成果を現わし、最近はシャトーロレーヌの一般市民も「フィラム王国による降魔エンジン研究所の噂」を囁き合い始めている。自然発生的な抗議デモなども起こっているが、ユーレンブルグの工作員はこれを煽り、「市民主導によるテロ活動」にまで過激化させようとしている。
 その為に、抗議組織のリーダーに祭り上げた何も知らない人間を通じてPC(ユーレンブルグ出身者は除く)を雇い、降魔エンジン研究所の所在の調査と破壊を依頼する。破壊活動に関しては、必要ならば市民の協力が得られる事になっていて、こちらもプレイヤーが与えられた任務を無理難題と感じたり、逆に軽く見過ぎたりといった極端な事態にならないように、マスターは調整して演出する事。
 また、抗議組織リーダーと最初にPCが出会ったとき、「活動に協力している匿名のスポンサー」として、ユーレンブルグの工作員を登場させ、伏線を張っておく事。



導入3:その他

 PCは、シャトーロレーヌの動向について関係のある立場にいる。
 例えば、投資を行っている会社がシャトーロレーヌにあり、この町の景気が自分の財産に直結している。その関係で町を訪れ、調査活動を行っている内に、上記のPCなどと接触して事件に関わって行くものとする。



本編

 舞台となるシャトーロレーヌの町まで、それぞれPCは自動車や飛行船で訪れるものとする。たまたま町に入る直前に同道したというように展開する。
 PCが町に入るか入らないかという所で、アンデッド(P.182)が住人を襲っている現場に出くわす。アンデッドはPCが確実に勝利できる数しかおらず、PCにも襲い掛かってくる。PCがアンデッドを倒すと、助かった住人は礼を言い、「今まで有効だったモンスター避けの流儀が、近頃、急に通用しなくなった」という事情を説明する。
 街中では、住民がデモを行っているのを目撃する。「政府は危険な研究を止めろ!」などと書かれたプラカードを持ち、警官隊と睨み合いを続け、険悪な雰囲気が漂っている。

 以下に、町にある各施設の名称と、そこで調べる事のできる内容を記す。

抗議組織  導入2のPCに仕事を依頼した組織。構成員はアマチュア活動家に過ぎず、ただ、スポンサーと紹介された男だけは油断ならない気配を感じる。売り込むならば、他の導入のPCも協力を願い出られる。
 ここでは、「フィラム王国が作った秘密の降魔エンジン研究所が、汚染地域に入ってすぐの所にあるらしい。研究所で必要な物資は、この町で調達されていると推察されている」という話を聞かされる。
 PCが望むならば、蒸気自動車程度の物は貸与してくれる。
投資先会社  社長に最近の町の様子を説明され、このままでは業績の悪化は免れないと訴えられる。PCが事態の打開に動いてくれるならば、有利なインサイダー情報を教えると言う。
駐屯軍  数人の武官が詰める徴募センターがあるくらいで、事実上、兵隊は存在しない。理由を聞けば、「汚染地帯が障壁になっているので必要ない」と説明してくれる。
警察  通常の犯罪の取り締まり以外にも、汚染地域から迷い出て来るモンスター退治なども行っている。最近はモンスターの数が増え、さらにデモ隊の取り締まりなども行わなければならない為に、殺人的な忙しさとなっている。
 なかなかPCは相手にしてもらえないが、上手く交渉するとモンスターの動向の変遷に関するレポートを見せてもらえる。それによると、変化が始まったのは最近で、幾何級数的に危険が増していると分かる。
新聞社  警察と同様に、ここでもモンスターの動向の変遷に関するレポートを見せてもらう事ができる。
 また、上司と喧嘩して社屋を飛び出す若手記者と出くわす。この若手記者は、「今ではすっかり降魔エンジン研究所の実在は事実として扱われているが、その情報ソースに関しては全く明らかになっていない」という事実や、「真相が何であるにしろ、モンスターによる被害が増加しているのは間違い無い。新聞社は政府への抗議活動を煽るばかりだが、対決姿勢よりも軍隊の派遣依頼の嘆願こそ、市民は行うべきだ」という意見を載せようとして、上司に反対され腐っている。PCが上手く水を向ければ、これを話してくれる。
 若手記者の話を聞いて、新聞社の張り込みなどを行うならば、抵抗組織のスポンサー(=ユーレンブルグの工作員)が出入りしているのを目撃する。
商店・工場  研究所では、降魔エンジンの試作部品などをシャトーロレーヌの町の工場に発注している。その他、防毒マスクやらフィルターやら普通の人は買わない物、厳重に封印された保存食とミネラルウォーターなどを定期購入している。
 商店・工場主は、原則的に顧客の秘密は漏らさないが、上手く交渉したり、忍び込んで伝票や試作設計図を盗み見るなどすれば、怪しい人物が浮かび上がる。商店・工場を張り込んで、品物を受け取りに来た怪しい人物を尾行すれば、汚染地域に入ったすぐのところにある研究所を見付ける事ができる。

 抵抗組織のスポンサー(=ユーレンブルグの工作員)は、現段階では独力で動いているので、各所でデモやテロを扇動している。資金として本国から金塊を持ち込んでいるのだが、PCが上手く立ち回るならば「金の成分を調べ、ユーレンブルグで精製されたものと分かる」などと展開させても良い。

 降魔エンジン研究所は、地図上では汚染地域に区分けされるギリギリの所にある。大型トレーラー数台を適当な窪地に運び入れ、急造の地下施設にしてある。
 研究所には、二級技術資格を持つ研究者数名と、護衛兼買い出し係であるPCレベルの強さの兵士2名がいる。兵士が倒されると、研究者は降伏する。
 試作中の降魔エンジンが何基もあり、どれも「安定している」とは言い難い。シャトーロレーヌの異変について、研究者たちは「不安定な降魔エンジンの影響かもしれないし、違うかもしれない」としか言えず、それにも関わらず悪い事をしているという意識が無い。降伏した研究者たちは、自らの安全が保証されるならばPCの指示に従うが、降魔エンジンを分解しても降魔鉱石が“発熱吸熱可逆反応サイクル”を刻むのは止まらない。
 研究者たちは、「シャトーロレーヌの異変が、試作降魔エンジンが原因だと仮定するならば、全ての降魔鉱石を汚染地帯の奥深くまで運ばなければならないだろう」と意見する。

 試作降魔エンジンを抱えて汚染地域の奥に進むと、強力なモンスターに襲われるなどする。
 さらに奥に進むと、数名の兵士が野営しているのを見付ける。彼らはユーレンブルグの“汚染地域突破侵攻特務連隊”に所属する偵察分隊で、PCの存在に気付くと口封じの為に襲い掛かって来る。



結末

 ユーレンブルグ“汚染地域突破侵攻特務連隊”所属の偵察分隊を倒し、彼らの持つ地図を調べれば、「特定の香を焚き、特定の時刻に、特定の経路を辿る事で比較的安全に汚染地域を通過できる“道”」が存在する事が分かる。
 この地図を検討して、シャトーロレーヌから十分に離れていて、かつ“道”の上となる場所に試作降魔エンジンを捨ててくれば、「シャトーロレーヌでのモンスターの異常行動」が収まりつつ、ユーレンブルグの侵攻も阻止できる。

 試作降魔エンジンを研究所に放置したり、持ち帰ったりすれば、やがてシャトーロレーヌ(ないし持ち帰った先の町)はモンスターのせいで衰退する。
 試作降魔エンジンを、“道”とは無関係な場所に捨てれば、ほどなくシャトーロレーヌはユーレンブルグ“汚染地域突破侵攻特務連隊”の侵略を受けてしまう。



さいごに

 暖かい所でないと生きていけない海生哺乳類が、マイアミの発電所の近くにコロニーを作っていたのだが、発電所が操業を数日間休止したら全滅してしまったというニュースがあった。元ネタになりそうに思い、「鹿を保護する為にコヨーテを狩ったら、増えた鹿が木の芽を食い尽くして、樹木が全滅して、その後で鹿も死んだ」という食物連鎖の話と混ぜ合わせてイジっている内に、こんなストーリーのシナリオが出来上がった。

 調査段階でプレイヤーの興味を引き、後半に戦闘で盛り上げる方向でマスタリングして欲しい。




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