No. タイトル システム 登録日 改稿日
0076 ドロイド探偵 N◎VA 00/06/10



はじめに

 このシナリオは、『トーキョーN◎VAレボリューション』の使用を想定して書かれた。
 しかし、他のサイバーパンクや他の類する世界背景のRPGでも使用可能である。



登場NPCおよび重要事項

クリス 人型ドロイド(ロボット)。フェイト(探偵)として、人間に勝るとも劣らない働きをするという謳い文句でNIK(探偵協会)に試験導入された。些か教科書的な判断しか下せないきらいはあるものの、なかなか優秀である。実は、アヤカシ化したコンピュータを中枢部品に使っているので、量産は効かない。
フレデリック 狂的タタラ(発明家)。人間に近い革新的なドロイド(ロボット)の研究をライフワークにしているが、誰も期待していない。某大企業が宝くじを買うつもりで、捨扶持研究費を渡している。今回、たまたまクリスの試作に成功した。基本的に“勘違い人間”である。
シュウ・皆口 NIK会長。ルールブックP99参照。



事前状況

 狂的発明家フレデリックは、より人間に近い革新的なドロイド(ロボット)の研究をライフワークにしていた。一応、ある大企業から捨扶持研究費を与えられてはいたが、実用になる成果は出ないだろうというのが周囲の観測だった。
 そんなフレデリック博士だが、今回、1つの試作品を完成させた。それは、クリスと名付けられた人型ドロイドで、フェイト(探偵)として人間並みに働く能力を持っていた。
 ただし、クリスの中枢部品としてアヤカシ化したコンピュータを使っているので、量産は効かない。フレデリック博士は、その事実に気付いておらず、2体目以降の“人間に近いドロイド”が起動しないので首を捻っている。そこで、クリスを社会に出してデータを取ってみようと思い付いた。
 そういう訳で、フレデリック博士は、NIK会長シュウ・皆口に自分のドロイドを売り込んだ。NIK会長は、クリスとの面談を経て、彼が電脳神のような機械を越えた存在であり、ドロイドと言うよりアヤカシと呼ぶべき存在だと悟る。フレデリック博士は、説明を受けてもその事実を理解せず、結局、NIK会長はクリスをNIK直属のフェイトとして雇い入れる事にした。
 一応、形式上はクリスはNIKで1年間の試用を受けるという事になった。会長は、クリスの自我の発達を慮って、「正当な評価を下す為に、試用期間中は開発者のフレデリック博士がクリスと接触するのを禁止する」という条項を付け加えた。

 クリスが人間では無い事に関しては、当面、秘密にされる事になった。そして、NIK本拠地ビルに常駐して、NIKが受けた捜査依頼から適当なものが回されるという事になった。
 ところで、NIKという組織は私立探偵の互助組織であり、構成員は原則的に“個人営業の私立探偵”である。NIKを仲介して依頼がなされる事も珍しくは無いが、クリスのように自分の事務所も持たずにNIK仲介の仕事だけをする新入りというのは例外的な存在であり、非常に目立った。「会長のお気に入りだ」という噂もすぐに流れ、少なくないフェイトたちは、クリスの事を調べ始めた。
 フェイトたちは、流石に本職だけあって、すぐにクリスの正体を掴んだ。フレデリック博士はクリス絡みの事件の法廷は必ず傍聴したし、傍目にもクリスの関係者と分かったので、口軽く問われるままに何もかもを話してしまった。そして、フェイトたちは、「このままではクリスのようなドロイドが量産され、自分たちは職を失ってしまう」と危機感を抱いた。
 そこでフェイトたちは、「クリスは無能である」と評価されるよう、偽装工作に乗り出した。

 クリスは、最初の事件を見事に解決していた。教科書的だが丁寧な捜査を細かく行い、自らの力で鑑識の真似事もして、ウェブ(ネット)方面にも強いので、非常に優秀なフェイトとして賞賛を集めた。
 しかし、そこから人間のフェイトたちの妨害が入った。
 あるときは、採取した証拠を保管庫ですり替え、採用されないようにした。犯人に協力して嘘のアリバイを作ったり、「犯行を証明する言い逃れのできない証拠」を「どうとでも解釈できるただの遺留品」に貶めたりした。最初からクリスを陥れる為だけの事件を起こしたりもした。
 そうして、クリスは連続してミスを犯し、今や「最初の成功は、会長が手を回して花を持たせただけで、やはり無能なのだ」という噂が流れるまでになっていた。



導入

 PCは最初から知り合い同士であるとして、導入は1つしか設けない。
 PCの中にフェイトがいる事が望ましい。いない場合は、PCを事件に関わりあわせるNPCのフェイトをコネとして設定する事。
 
 PCは、たまたま何かの事情があって、ある裁判を傍聴している。検察側は、事実上、クリスの指示で動いているようなもので、この事はフェイトのPC(またはコネ)は知っている。裁判は弁護側の勝利で終わるのだが、傍聴席にエキセントリックな雰囲気の白衣の老人(=フレデリック)がいて、いつまでも席を立たずに「また敗訴か。どこの“機能”がおかしいのだろう? 故障だろうか?」などと独り言を呟いている。
 この目立つ老人(=フレデリック)にPCが近づき話し掛けると、フレデリックは「秘密なのだが」と前置きしつつ、ペラペラとクリスがドロイドである事を明かす。
 その上で、「クリスに何か不調でもあったのではないかと心配でならない」「しかし、NIK会長との約束で、クリスがNIK直属として雇われている間は干渉できない」「自分が精魂込めたドロイドに異常が起こるとは考え難い。クリスは定期的にNIKのコンピュータで検診を受けているのだが、異常があるとすればその検診用コンピュータだろう」と語る。
 ここでPCは、自発的または依頼を受けてクリスの不調の原因を探る事になるとして進める。報酬として、相場の額が提示される。



本編

 NIKがクリスの検診に使用しているコンピュータは、フェイトから集めたあらゆる情報をインプットしたデータベースで、外部からはアクセスできないようになっている。
 フェイトないしNIKの鑑札を持つ者ならばこのコンピュータを利用できるが、クリスの検診をしているプログラムを調べるにはそれなりの技能判定をしなければならない。成功すると、何の異常も無いと分かる。
 クリス自身に会って話をすると、表面的には平静を装っているが内心は穏やかではない事が見て取れる。クリスは無意識下で「自分は機械なのだから、動揺なんてする筈はない」と言い聞かせて、それで素っ気無く振る舞っているのである。この辺りは、言動から察する事ができる。適当なロールプレイを行えばクリスを調べる事もできるが、やはり異常は見付からない。

 クリスがミスをしたとされる事件は、要点を以下の3つのタイプに分類できる。

@証拠の不採用
 推理を成立させる為に鍵となる証拠が、裁判の時点で却下される。例えば、凶器とされる刃物についていた血液や指紋が、事件関係者のものとは証明できないとされる。

A新解釈の登場
 「証拠が示す事実は、容疑者が犯人である事を示している」という論法で告発したが、裁判で別の解釈が提示される。例えば、「被害者女性のベッドから、容疑者男性の精液が入ったコンドームが見付かった」→「実は、被害者女性は多数の男性と性的関係があった」となったり、「容疑者は、被害者と面識が無いと主張しているが、何度も電話をかけた記録が残っていた」→「容疑者の携帯電話のコードが盗まれていて、第三者が勝手に電話回線を使っていた」となったなど。

B真犯人が判明する
 裁判直前になって、真犯人が判明する。例えば、「遺産目的で、子が親を殺したという証拠があった」→「被害者一家に恨む者が、子が容疑者となるような偽装工作を施していた」など。

 @は、人間のフェイトたちが証拠品をすり変えているのである。
 Aは、人間のフェイトが犯人と接触して、無実になる為の偽装工作に協力したり入れ知恵したりしているのである。
 Bは、クリスを罠にはめる為に、人間のフェイトが仕組んだのである。“真犯人”は、いずれも外国に逃亡している。

 これらについては、NIKに提出された捜査記録を読んだ上で、事件現場を調べたり聞き込みしたりして、適当な技能判定でそれなりの達成値を出せば、カラクリのヒントは分かる。

 クリスは失敗は自分のせいだと思っていて、捜査方針をより地道に変えつつある。当初はシャーロック・ホームズのようなアクロバット推理を駆使していたが、今では絶対確実な証拠の積み重ねしか行わず、よって立証できず捜査を打ち切る割合も増えている。

 今でもクリスへの妨害工作は行われているのだが、そういう状況なので、主に@の方法が採られている。人間のフェイトたちは、SSS(警察)分署、NIK本拠ビル、その他に忍び込むといったリスクを犯してでも証拠のすり変えを強行している。
 適当な頃合いを見計らって、これらの侵入にPCが気付くイベントを起こす。人間のフェイトの構成を戦闘系と非戦闘系に分け、「戦闘系を倒せば自動的に非戦闘系を捕える事ができる」などとしておいて、戦闘を経てPCが実行犯を生け捕ると展開するように誘導する。



結末

 PCが真相を推理した上で、証拠すり変えの実行犯を逮捕すれば、事件は解決する。
 実行犯を引き渡して、NIK会長に相談すれば、関わった人間のフェイトが調査される展開となる。その後、クリスの正体と量産が効かない旨が公表され、事態は収まる。



さいごに

 元ネタは、能田達規のコミック『おまかせ!ピース電器店』第163話『ロボロボポリスの巻』である。単行本の第18巻に収録されている。
 コミックの方は、「ロボット警官の暴走事故が相次ぐ。しかし真相は、人間の警官の不正をロボットが報告しようとする度に、人間の警官が『暴走した』と偽って破壊していたのだった」というストーリーで、なかなか目の付け所の良い捻りの効いたものだった。
 RPGのシナリオに向いていると思ったが、元ネタそのままではネタバレ確実だと思い、“警官”を“探偵”に変えてみた。しかし、引用率が高い為に、実際のセッションではカモフラージュとして余り役に立たなかった。その辺り、プレイヤーに確認を取るか、敢えて黙したまま進めるか、マスターが判断して欲しい。




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