No. タイトル システム 登録日 改稿日
0070 留学番長 番長学園 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『番長学園!』の使用を想定して書かれた。



登場NPCおよび重要事項

百人番長。2年前の戦いで死んだ春日井高校支配番長の弟。復讐を果たした上で“神器”という力を手に入れる為に、春日井高校に戻って来た。
校長 一般人。春日井高校校長。2年前の戦いを画策した“大人たち”の一派に属する。弟の帰還を知り、身を守る為にPCを招いた。
守護者 百人番長。落合池の番人。2年前の戦いで死んだ2人の支配番長の遺体を今でも守っている。
3年生 十人番長。一般生徒の振りをしている番長能力者。厭戦感と罪悪感から、PCに情報を曖昧な形で与えるという矛盾した行動を取る。



事前状況

 中部地方に、学生の頂点に立つ豪厳高校の支配地域から外れた、春日井高校という名の学校があった。春日井高校は、この世界の普通の高校とは少し異なった存在だった。
 まず、学区が異常に広い。普通なら十数校はあって良い地域に春日井高校1つしか無い。
 次に、生徒の殆ど全てが一般生徒で、番長能力者が存在しない。

 実は2年前までこの地域には複数の高校が存在していた。中庸を重んじる気風の中部地方らしく、各校の番格は睨み合いを続けながらも戦いに発展する事は無かった。
 しかしあるとき、謎の老人が現れ、各校の支配番長たちに「この地に“神器”と呼ばれる、使い手の番長位を上げる効果を持つ古の太刀が封印されている」と教え、その封印の解き方や使用方法を伝え歩いた。
 複数存在する“神器”を手にしたそれぞれの支配番長たちは、それを好機と捉え、戦端を開いた。しかし、蓋を開けてみればほぼ各校に1つの割合で“神器”が存在するという有り様で、当初の戦いは自然と小競り合いになった。
 ところで、通常の方法では滅びない“神器”も、“神器”同士を同程度の力量の使い手が打ち合わせれば破壊されてしまう。“神器”は相打つ形で次々と消滅して数を減らし、それと反比例して戦いの激しさは“小競り合い”から、次第に怨み辛みが重なる泥沼状態へと変貌した。

 最期には抜きんでた力を持つ2人の支配番長が残った。一方は春日井高校支配番長である女性、もう一方は東高校支配番長である男性だった。

 この段階に置いて戦いは過熱し、何時の間にか全ての番長は二大勢力に分かれ、最終決戦前夜の様相を呈していた。
 そんな中、二大勢力の長である春日井高校支配番長と東高校支配番長は、それぞれ「この戦いは誰かの陰謀なのではないか?」と思い至り、どちらからとも無く極秘裏に接触し、密談を重ねた。2人の支配番長は、和平を語る間に、愛し合う関係に進んで行った。

 しかし、二大勢力に分かれて睨み合う番長能力者たちの互いを憎む気持ちは既に抑えられないレベルに達していた。2人の支配番長は、「“神器”を伝えた老人の企みではないか?」「老人は、番長能力者の存在自体を嫌う大人たちの手先だったのではないか?」との考えに至るが、そんな推理を配下に語る事すら憚れる空気になっていた。
 そして、最終決戦が勃発した。
 決戦は苛烈を極め、次々と再起不能者が出て、それどころかあってはならない“戦死者”まで出かねないほどだった。その最中、2人の支配番長は1つの決心をする。
 2人の支配番長は戦闘を一時止め、最前線地域になっていた落合池にて支配番長同士の一騎打ちを行う事を宣言した。全軍注視の中、2人は事の真相と戦いの無意味さを語り、その証として互いを“神器”で貫き合って果てた。
 2人の支配番長の遺体が池の底に消えていくのを目の当たりにした番長能力者たちは、それを見て憑き物が落ちたかのように戦意を失った。何の証拠も無かったが、皆は支配番長が語った真相を信じ、勝者の無いまま決戦は幕を閉じた。

 その後、ある者は失意から、或いは治療の為にこの地を去った。その他、2人の支配番長の遺体が沈む落合池を守る為にそこに住み着く事にした者や、番長能力を隠して一般生徒として過ごす事を決める者もいた。
 “大人たち”の当初の企みからは外れたが、しかし実質的にはその思惑通り、「番長のいない高校(世界)」が実現した。

 そして現在。
 春日井高校支配番長の弟が、転出先の関東地方から、部下を連れてこの地に戻ってきた。弟は、大まかな事情を把握していて、その恨みを晴らす為にも、かつて姉が使用していた“神器”を自分のものにしようと考えている。

 “大人たち”の一派に属する春日井高校校長は、弟の帰還を察知して、1つの手を打った。
 “正義、不殺、友情”を重んじる番長学園から、期間限定の交換留学生を呼んでガードマンの代わりにさせ、用が済んだらお引き取り願おうと考えたのだ。



導入

 上記“事前状況”の春日井高校校長の招きで、PCは春日井高校にやって来る。
 理由付けは、「単位を落としてしまい、補習代わりに春日井高校に短期留学生として行く事になった」とか、「旅行/バイト気分で」とか、何でも構わないのでプレイヤーに適当に考えてもらう事。
 この導入には、全員が乗るものとして進める。



本編

 PCたちは、電車を乗り継いで春日井高校最寄りの駅まで旅する。

 春日井高校最寄りの駅前にて、上からコートを羽織って学生服を着ている事を隠した不審な学生がレンタカーを借りているのをPCは目撃する。彼らは、弟とその配下だが、この時点では何もしようがない。レンタカー屋で上手く振る舞えば、弟の免許証のコピーを盗み見るなどして、弟の氏名と「関東出身である」という事が分かる。
 やがて駅前に学校からの迎えのバスが来る。
 春日井高校に着くと、まず校長から留学期間中の生活の説明を受ける。回りくどい言い方をされるが、要は「衣食住完全保証。授業に出なくても単位がもらえる」という内容で、些か話が上手すぎると感じられる。宿泊施設として校舎内にある奇麗な個室があてがわれ、そこまで一般生徒が案内してくれる。一般生徒たちは、番長能力者であるPCへの不信感を隠さず、それどころか挑発じみた発言を繰り返す。
 校長および一般生徒の態度についてPCが疑問に思っていると、適当な場所(食堂や銭湯など)で訳知りな顔の3年生(番長能力を隠して一般生徒の振りをしている、かつての決戦参加者)が近づいて「何か聞きたそうだな?」などと言って来る。PCが疑問を口にすると、「落合池に行って聞いてみろ」とだけ答え、それ以降は態度を変えて何も喋らない。

 PCが落合池に行くと、“聖地の守護者”を名乗る百人番長が立ち塞がり、池に近寄らせてくれない。“守護者”は、2年前に何かあったらしい事を口にするが基本的に何も話さない。PCたちは番長位が低いので、基本的には立ち去るしかない筈だが、もし番長フレームを使用してでも戦おうとPCがするならば、“守護者”は応戦する。“守護者”は百人番長に相応しい能力値と十分な量の番長力を持ち、必要ならば番長フレームも使用する。PCが攻撃を諦めると、「真実を知ろうともせず、ただ感情に任せて戦いに望んでも、何も得られないぞ」と静かに諭す。
 こっそり忍び寄って池に入ろうとする場合は、適当な能力で“守護者”と対抗判定を行い、PCが勝ったならば池に入る事ができる。または、複数のPCがバラバラになって池を目指し、素早く池に入るならば、“守護者”も全てを止める事はできない。
 池に浅く潜ったくらいでは何も見付からない。無理してでも深く潜るとプレイヤー宣言したならば、池の底に、互いの胸を刀で貫き合っている学生服の男女を見掛ける。そこでPCは息が続かなくなる。適当な能力で達成値40が出ない限り、一時的に意識を失い、気が付くと“守護者”または仲間のPCに介抱されているという展開になる。

 “守護者”と会った上で学校に戻り、上記の3年生を問い詰めると、“神器”の話、それに起因する戦いの話、決戦に至った事と、2人の支配番長が命を懸けて戦いを止めた話をする。「それ以降、ほとんどの番長能力者がいなくなり、春日井高校がこの地方唯一の学校になった」と言って話を締め括られる。
 駅前のレンタカー屋で弟の氏名を調べていた場合、春日井高校支配番長だった女性と同じ姓だと気付く。

 その日の夜、校内に弟の配下である十人番長が侵入する。「校長への復讐」と「3年生を締め上げて、“神器”は今でも落合池にあると確認する」のが目的である。
 基本的にPCはこの侵入に気付く。適当に戦闘を起こして、PCの圧勝で終わらせる。PCの数に応じて、弟の部下の数を調整する事。
 弟の部下を手酷く拷問などすれば、校内潜入の目的や、弟の居場所を自白する。

 弟は、“守護者”の上手を行く百人番長である。
 PCが戦闘を仕掛けて来るなら、積極的に応じる。十人番長であるPCには、辛い戦いになるだろう。

 部下が戻って来ないと、弟は諦めて独りで落合池に向かう。PCが、落合池周辺で張り込みをしているならば、“守護者”と共闘できる。この場合、弟は以下の2つの制限を被るものとする。

@番長フレームおよび番長力を使用しない。
A最初の2ラウンドは、“守護者”との戦いに熱中していて、PCには手出ししない。

 “守護者”は、2ラウンド目の終わりに倒れ、以降、何があっても戦闘シーン中には復活しない。



結末

 弟が“神器”を得ると、千人番長扱いとなり、行き掛けの駄賃に校長らを殺害してこの地方を去る。

 PCが勝利した場合、“守護者”は「思い出よりも、“神器”を消滅させる事の方が重要だ」と言い、2人の支配番長の遺体引き上げをPCに依頼する。
 寄り添い合う2人の遺体は、まるで生きているかのようだが、体に刺さった二降りの太刀を引き抜くと、遺体は灰になって消滅する。
 “神器”も、PC同士がぶつけ合えば、消滅する。

 校長への対応は、プレイヤー次第で決めて欲しい。



さいごに

 元ネタは川上稔の『奏(騒)楽都市OSAKA』である。元ネタの複数のプロットから1つを抜き出し、単純化した。
 このシナリオの為に抜き出したエピソードはステロなので、それほど読んでいるプレイヤーがいるかどうかを意識する必要は無いだろう。




シナリオ書庫に戻る

TOPページに戻る