No.
タイトル
システム
登録日
改稿日
0069
私は死んでいない
N◎VA
00/04/01
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はじめに
このシナリオは、『トーキョーN◎VAレボリューション』の使用を想定して書かれた。
しかし、他のサイバーパンクや他の類する世界背景のRPGでも使用可能である。
『トーキョーN◎VAレボリューション』を使用の場合、『グランド×クロス』P.135で提案されているPC同士の円構造コネを持ち合う事。
登場NPCおよび重要事項
サカキ
:
トーキョーの評議会議員。40代の若さで次期議長を狙う野心家。
アヤコ
:
サカキの妻。30歳代前半。政治家の伴侶として内助の功を果たすできた女性。
マイク
:
サカキの専属ボディーガード。昔はフリーランスだった。
マライア
:
マイクの妻。今は専業主婦だが、昔は夫と組んでいた。
事前状況
サカキ&アヤコ夫妻も、マイク&マライア夫妻も、世間的には仲睦まじい夫婦であり、サカキ自身およびマライア自身もそう信じていた。
しかし実は、アヤコとマイクは不倫関係にあった。
ある日、アヤコとマイクは、それぞれ適当な言い訳を連れ合いにしておいて、不倫旅行に出掛けるが、乗っていた飛行機が離陸直後に墜落し、機体はトーキョー沖に沈む。乗客は全滅で、2人とも死亡してしまう。
飛行機の座席は“マイク&マライア夫婦”の名で予約してあり、事故後の報道でもその名が流れた。
最初に不信に思ったのは、当のマライアだった。夫が自分の分の座席も予約して、そして“事故”で死んだと言う事実に、整合性のある説明を思い付く事ができなかったのだ。
「仕事の都合で座席が2つ必要で、特に考えなく夫婦の名前で予約して、そして運悪く事故に巻き込まれただけ」という可能性もあった。しかしマライアは、脳天気にそのように断定して、「自分は生きていますよ」と表明する気にはなれなかった。
マライアが夫(=マイク)とチームを組んでフリーランスのボディガードをやっていた頃、2人はサカキを助け、とある悪徳政治家をトーキョーにいられなくした事があった。
その元悪徳政治家を筆頭に、夫婦双方に恨みを持ちそうな人物がいない訳でも無い。マライアが引退してから月日が経つし、他の乗客を巻き込んでまで暗殺するか疑問だったが、その仮定も捨て切れなかった。
結局、マライアは敢えて死んだふりをして、真相の究明に乗り出した。
しかし、現役を退いて久しいので独力での行動は難しい。そこで、昔、関係のあったPCに協力を仰ぐ事にした。
導入
PCから1人、マライアの元恋人(ないし、淡い関係にあったステディー)だった者を選ぶ。マライアは、そのPCのコネを持っていて、真相究明の為の捜査依頼を行う。
また、マライアへのコネを持っているPCも1人いる。そのPCは、飛行機事故のニュースを聞いて驚き、「遺体と対面しに行く」「何の気無しに、マライアが行き付けだった店に行ってみる」といった行動を取る。その結果、“偶然”に、身を隠して行動するマライアと出くわすという展開になる。ルール的には、最初の1回に限り、マライアがいるシーンに、判定無しで登場できるものとする。
その他のPCは、この2つの関係を中心にして円構造コネを持っていて、適宜、登場して事件に関わるように誘導する。
以降、PCはこの路線に乗ったものとして進める。
本編
依頼に当たってマライアは「目的は真相の究明である。特に証拠まで求めるつもりは無く、PCが『事故だ』と言うなら信じる。真相究明の為に自分の命が危険にさらされても(囮にされるとか)構わない」と言明する。
この決意表明は、その後も何度も繰り返し強調する。
マライアは、自分の知る限りの事を告げる。この際に、「数回しか会った事が無いが、サカキには10歳近く離れた若い妻がいる」という話をさり気なく織り交ぜておく事。
仮に、プレイヤーが「真相をでっち上げて嘘の報告をする」という行動に出ればセッションは何の盛り上がりも無く終了するが、そうはならないものとして進める。
以下に、調査するであろう事象について記す。
@サカキと対立して、トーキョーを追放された元悪徳政治家を調べる。
コネなどを用いて情報を集めても、元悪徳政治家本人ないしその手の者がトーキョーに戻ったという噂は聞かれない。幾ら調べても進展は無い。
A事故調査委員会の係官の所に行く。
トーキョーのすぐ近くの海に墜落した事もあり、機体の残骸は早い時期に引き上げられ、館山港の巨大倉庫内にて事故原因が調べられている。
この事故調査委員会の元へ行って、自分の身元を明かした上で「マイク&マライア夫妻の友人だ」などと告げけば、遺体や遺品を見せてもらう事ができる。PCが強く求めない限り、マライアは同行しない。
係員の隙を見て飛行機の残骸を調べる事もできる。<究極鑑定>&<超スピード作業>や<霊査>などで調べれば、飛行機の墜落原因は間違い無く事故だという事が分かる。
遺体の1つはマイク自身だが、乗客名簿上はマライアとされている遺体は、PCには見覚えの無い女である。この女はアヤコなのだが、表舞台に立つ人では無かったので、PCには分からなかったのである。
写真撮影は禁じられているが、アイ・オヴ・ザ・タイガーのマイクロレコーダー(および外部出力が可能なスロット)を使うなどすれば、後で撮影した映像をマライアに見せる事ができる。マライアは、マイクの遺体に関しては本人だと追認する。アヤコの遺体に関しては、「どこかで見た人である気もするけれども、どうも思い出せない」と言う。
マライアはアヤコとは数回しか会った事が無い。「この女性の遺体はアヤコなのではないか?」と聞かれれば「そう言えば」と追認できるが、自分の方から思い付く事は無い。
Bマイクの自家用車を調べる。
マイクは、自分の車の物入れに、特徴的な形の鍵を隠している。これはトーキョーの大手系列の賃貸マンションの部屋に使われている物で、車の自動運行システムを調べれば、この系列のマンションが1ヶ所登録されている事が分かる。マンションに行き、鍵の合う部屋に入ると、そこはいかにも密会の為の部屋という雰囲気を漂わせている。
部屋を調べると、マイクと謎の女性(=アヤコ)のツーショット写真を見付ける。この写真では、2人は親密そうにしている。
Cサカキに事情を聞きに行く。
この頃には、サカキは「妻(=アヤコ)がボディーガード(=マイク)と不倫旅行に出て、事故にあって死んだ」という事を知る。
評議会議員選挙も近く、議長の座を狙っているサカキは、こんなスキャンダルが表沙汰にされるのを防がねばならない。しかし今更、“マイク&マライア夫妻”の名を被害者名簿から消す事は既に不可能であり、例えマライアを殺してでも揉み消す気でいる。
PCが接触して来ると、マライアが同行しているか否か(マライアと行動を共にしていると話したか否か)に関わらず、サカキは事情を察してしまう。適当に応対して帰して、複数の配下の者(マイクの部下に当たり、マライアとも顔見知り)に跡を付けさせる。
配下の者は、できれば穏便に済ませたいと願っているものの、雇い主を裏切る気は無い。追跡の成否にもよるが、マライアを発見したらまずは戦闘態勢を取ってから交渉する。まかれた場合は、上記の“館山の倉庫”や“賃貸マンション”などで張り込みを行う。
結末
「マイクとアヤコは不倫旅行に出発するところだった」という事実にPCが至らない限り、結末はつかない。
「マイクは、謎の女性と不倫旅行に出発するところだった」というところで推理が止まってしまった場合でも、「サカキが挙動不審だ」としてその周囲を探るならば、頃合いを見計らって「妻のアヤコが病で伏せっている」という情報を出す事。
マライアは真相を知ると激しいショックを受ける。今後の事を自分で決められず、PCにすがるようにして「どうすれば良いか?」と聞いて来る。
「真相を公表するべきだ」とアドバイスするならば、マライアは毅然とした態度を取り戻し、「トーキー(レポーター)とコンタクトを取りたいので仲介してくれ」と頼む。サカキの配下の妨害を潜り抜け、真相が世間に広まれば、遠からず“謎の女性”の正体がアヤコであるとの確認も取れてしまう。サカキは失脚する。
「隠すべきだ」とアドバイスするならば、マライアは後の手配全てをPCに委ねる。サカキは、マライアの新しい身分を用意して、金を握らせる。
「自分で決めろ」と突き放すならば、各所を夢遊病のように巡り出す。いずれ、サカキの配下に見付かり、謀殺される事になる。
さいごに
元ネタはウォーレン・アドラーの『ランダム・ハーツ』である。ハリソン・フォード主演で映画化され、これを観てシナリオを思い付いた。
一応、シナリオ化に当たって男女の配役を逆転させ、話も変えたが、引用率は高い。プレイヤーが元ネタを知っているならば、序盤で真相に至り、セッションが崩壊する可能性もある。その辺り、プレイヤーに確認を取るか、敢えて黙したまま進めるか、マスターが判断して欲しい。
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