No. タイトル システム 登録日 改稿日
0068 不可能殺人と自転車泥棒 N◎VA 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『トーキョーN◎VAレボリューション』の使用を想定して書かれた。
 しかし、他のサイバーパンクでも使用可能である。

 『トーキョーN◎VAレボリューション』を使用の場合、『グランド×クロス』P.135で提案されているPC同士の円構造コネを持ち合う事。



登場NPCおよび重要事項

地上げ犯罪集団 夢島難民街の地上げを企む組織。リーダーは謎の人物で、計画に必要となる行政官、警察署長、ヤクザ組長、不動産会社社長といった人物をあっという間にまとめ上げてしまった。
B不動産社長 A不動産社長に暗殺された。地上げ犯罪集団の計画と偶然に絡んだ所為で、一見すると不可能犯罪になってしまった。
泥棒 地上げ犯罪集団の計画と偶然に絡んだ所為で、盗んだ宝石を無くしてしまう。その宝石を捜し出す為の行動が、謎の失踪事件を生み出してしまった。



事前状況と導入

 トーキョーの木更タタラ街の北に夢島と呼ばれる難民街がある。公有地なのだが難民が住みついて久しく、法律的には居住権が発生してしまっている。この夢島を“地上げ”しようと企む犯罪集団がいた。

 犯罪集団の計画は以下のようなものだった。

 概要は、「外国人排斥を訴えるテロリストが、夢島にBC兵器を大量散布して2度と人が住めない土地にしてしまった」かのように見せ掛け、しかる後、住民が退避して居住権を喪失した街区を再開発するというもの。
 その為に、夢島地区とその周辺の広範囲に特殊な爆弾を仕掛ける。これは普通のプラスチック爆弾なのだが、爆発するとドロドロした液体などが撒き散らされ、いかにも“汚染された”ように見える(実際は無害)。
 犯罪集団の仲間には、夢島を管轄する木更タタラ街の行政庁の補佐官、SSS(警察)の木更津署長、木更タタラ街をシマとしている紅蓮会(ヤクザ)のボス、木更タタラ街に大きな営業権を持つ不動産屋社長が含まれている。“テロ”が発生すると、すぐに息のかかった警官が「BC兵器が使用された」として住人を強制的に立ち退かせて(それでもグズる相手にはヤクザが脅して)、補佐官が「汚染されて資産価値の無くなった夢島地区」を「民間に払い下」げ、それを買い取った不動産屋が「最新の技術で人が住めるように再開発」して「高く売る」という手はずになっている。

 爆弾は広範囲の場所に仕掛けなければならない。その手段として、犯罪集団は“放置自転車”を利用する事にした。行政庁補佐官の職権を使って“放置自転車撤去団体”を作り、駅前に置かれた自転車などを撤去して爆弾を仕掛け、“撤去自転車保管場所”と称する適当な所に再配置した。

 ところでここで、2つの別の事件が起きた。

 1つ目は殺人事件だった。犯罪集団所属の不動産屋(A不動産とする)は、同じシマで活動する別の会社(B不動産)が邪魔だった。そこでB不動産のワンマン社長に暗殺者を送って殺し、B不動産を乗っ取る事にした。
 この殺人計画は、犯罪集団の計画とは無関係だった為、奇妙な現象を引き起こしてしまった。
 暗殺は、深夜の立体駐車場の4階で行われた。
 この立体駐車場は地上6階建てで、深夜は各フロア入口のシャッターが閉じられるので出入りができない。ただし4階だけはシャッターその他の防犯施設が壊れたまま放置されていて、それで何時の間にか自転車置場になってしまっている。スロープは建物の外にあるので、深夜でも出入りは可能である。
 この暗殺には、目撃者がいた。目撃者は酔っ払っていて、前後の記憶があやふやだが、殺人が行われた時の記憶にだけは自信があった。目撃者は「深夜、立体駐車場で目が覚めると、目の前で殺人が行われていた。加害者の顔も、被害者の顔もハッキリ見て覚えている。場所が立体駐車場だった事と、周囲に自転車が無かった事も間違い無い(よって現場は、立体駐車場の4階以外のどこかである)。自分が目を覚ましている事に気付かれたら殺されると思い、寝たふりをしたら本当に寝入ってしまった。翌朝、既に死体は無く、帰宅して夕方まで眠り、それから警察に通報した」と証言した。
 警察は当初、目撃者から事情聴取だけして放っておいたが、後日、被害者の死体が木更津湖から発見され、殺害方法などが証言と一致した。そこで急遽、容疑者(暗殺者)を手配し、逮捕に漕ぎ着けた。
 しかしこの容疑者には、事件当日の深夜にアリバイがあった。目撃者の話が本当ならば、立体駐車場のシャッターが開く翌朝まで容疑者は外に出る事はできなかったハズで、不可能犯罪という事になってしまう。
 実は、立体駐車場4階の自転車は、たまたま犯行直前に撤去され、犯行直後に再搬入されていたのだった。
 しかしそんな事を知る者は無く、警察の捜査も終了してしまう。暗殺者も放免され、被害者のB不動産社長と懇意にしていた音羽組(ヤクザ)組長は、PCに真相の究明を依頼する。

 2つ目は、失踪事件(ないし盗難事件)だった。
 とある泥棒が、盗んだ宝石を自転車の中に隠して帰宅する途中、一瞬の油断からその自転車を盗まれてしまった。宝石の価値も去る事ながら、泥棒である自分が泥棒された事でプライドを傷つけられ、奪還を決意する。
 件の“放置自転車撤去団体”の職員は、退職した老人やフリーターで構成され、事件について何も知らず行政庁からの指示通りに自転車を撤去したり再配置したりしていた。泥棒はニセの履歴書でそこに勤めに入った。
 泥棒は(表面的には)真面目に働き、裏で盗まれた自転車を探した。あるとき、とうとう目的の自転車を発見して宝石を回収したが、喜んでいる間に回収に使っていた軽トラックが盗まれた事に気付いた。泥棒は少し考えた末に、面倒を避けてそのまま逃亡する事にした。
 後日、軽トラックだけが見付かり、若い職員(=泥棒)が失踪するという事態になった。仲間意識を持っていた他の職員は、仲介者を通してPCを雇い捜査を依頼する。



導入のまとめ

 上記“事前状況と導入”にある通り、導入は2つある。以下にまとめる。プレイヤーにどちらかを選ばせる事。

事件内容 依頼人
@ 殺人事件捜査 音羽組組長
A 失踪事件捜査 “放置自転車撤去団体”の職員有志



本編@:殺人事件捜査

 聞き込みその他の捜査を行えば、「被害者が経営していたB不動産とA不動産はライバル関係で、双方の社長とも“夢島再開発計画立案会”なる謎の会のメンバーだった」「社長亡き後のB不動産の権益は、A不動産が得ている」といった情報を得る。
 B不動産社屋へ潜入して、DAK(コンピュータ)などから情報を引き出すと、「“夢島再開発計画立案会”のメンバーに同地区の行政庁補佐官、警察署長、ヤクザの幹部が入っている」「暗殺者のプロフィールや雇い方などのファイルがあった」事などが分かる。
 マスターはこれらの捜査に際して、チンピラや警備員など適切な障害を設定する事。
 ここで、不可能犯罪トリックの推理の答えをプレイヤーに出してもらうと良い。それで新たに、「誰が何の目的で大量の放置自転車を出したり入れたりしたのか?」という疑問が湧く事になるだろう。



本編A:失踪事件捜査

 若い職員(=泥棒)が偽装の為に借りていたアパートを調べると、「別の住所からアパートに転送された郵便物」を発見する。そこにはホワイトエリアの高級マンションの住所が記されている。様子を伺えば、若い職員(=泥棒)の存在を確認できる。
 捜査を行うと、「自転車回収は行政庁からの指示に盲目的に従ってっている。行政庁には何か裏の意図を感じる」「行政庁は、指示書の破棄を命じているが、たまたま若い職員(=泥棒)に与えられた指示書が事務所に残っていた。その順路で聞き込みを行ったり、マヤカシが<霊視>などすると、若い職員が特定の車種の自転車を何台も金鋸で分解して、その中の1台から何か小さな包みを取り出していたと分かる」「軽トラックは、目的の物を見付けて喜んでいる隙に盗まれ、それに気付いた若い職員はそのまま逃亡したようだ」などの情報を得る。



本編B:合流

 最終的にPC一同は、近所で最もたくさんの自転車が放置されていて、最近大規模な盗難があったと噂される、件の立体駐車場4階に集まる事になるだろう。この際、PCの円構造コネを積極的に利用してもらうと良い。
 ここの自転車全てには爆弾が仕掛けられている。自転車を分解などして、爆弾の存在に気付かないと(適当な製作技能などで判定する)、そこに置いてある自転車の全ての爆弾が爆発する。爆発した場合、アーマーや<見切り>等が無効な“10+山札1枚”のダメージを被る。
 これを切っ掛けに調べれば、夢島およびその周辺の放置自転車に「遠隔操作で起爆し、特殊なペイントを撒き散らす爆弾」が仕掛けられていると分かる。

 若い職員(=泥棒)と接触を取ろうとすると、彼はPCを脅迫者か何かだと思い、会う場所を指定してそこで罠を張り暗殺しようとする。
 倒して住居を調べれば宝石が見付かり、盗品と分かる。捕えた場合、比較的簡単に自白が得られる。



結末

 地上げ犯罪組織の計画には、行政官、警察所長、ヤクザ組長、不動産業会社社長の全てが欠かせない。大きな組織だが、ありとあらゆるNPCを傘下に収めている訳では無い。
 ここで、「放置自転車に仕掛けられた爆弾の責任を追及して“放置自転車撤去団体”担当である行政官を追い詰める」とか「計画について、犯罪組織対抗する関係にあるヤクザに申し出て、抗争を起こさせる」「A不動産社長を襲う」など幾つか地上げ犯罪組織を追い詰める手段がある。
 PCが爆弾の撤去に加えて、それらの妨害活動を行った場合、地上げ犯罪組織は計画失敗を悟り、<アンタッチャブル>を使って証拠を消しつつ撤収する。



さいごに

 元ネタは山田正紀の『SAKURA〜六方面喪失課』である。
 「様々な事件を落ちこぼれ刑事がそれぞれ独力で(互いに仲が悪いので)解決するが、それらは水面下で進む1つの地上げ犯罪と関係していた」というお話で、ベテランの作品だけあって面白く読み進める事ができたが、物語を構成する要素(部品)の繋がりが悪くてまとまらず、辻褄も合ってなかった。
 それを整理・簡略化し、整合性を持つ様にまとめる事でシナリオ化した。プレイヤーに読んでいる人がいても、ピンと来たときには推理結果は出ている筈なので、問題にはならないだろう。

 シナリオとしてはオチが弱いと自分でも思うが、セッションでプレイヤーに「何を以って事件解決とするか?」を自分自身で決めさせ、その方向で収束したという感慨を持たせるように演出して欲しい。




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