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0062 詐欺の原因 N◎VA 00/04/01 01/09/03



はじめに

 このシナリオは、『トーキョーN◎VAレボリューション』の使用を想定して書かれた。
 しかし、『シャドウラン』など魔法が存在する他のサイバーパンクでも使用可能である。

 『トーキョーN◎VAレボリューション』を使用の場合、『グランド×クロス』P.135で提案されているPC同士の円構造コネを持ち合う事。



登場NPCおよび重要事項

女性ニューロ ときには違法行為も行うが、外道な真似はしない生粋のニューロ。自由恋愛の末に自らシングル・マザーの道を選んだが、ハッキング中にお腹の中に胎児を抱えて脳死した。
胎児 脳死した母体の中で生き続けている。マヤカシの才能を持ち、極限状態の為に本能的に能力を使えるようになっている。
男性タタラ 女性ニューロの気紛れに振り回されている恋人。胎児の父親。事件当初は、何も知らない。
バディ 女性ニューロが使用していた自律プログラム。機械なので、常識に欠ける。詐欺で得た金で胎児を生かそうとしている。



事前状況

 妊娠中のとある女性ニューロが、イントロンしての非合法活動中に、ハッキング先の反撃を受けて脳死した。
 女性ニューロの住居はバレず、DAK(ホームコンピュータ)やバディ(自律プログラムやそれを搭載したロボット)も機能していて、何より胎児も生き残っていた。

 残されたバディは、特殊仕様(タタラの<入魂>や<オーバーテクノロジー>を受けている)の為、市販品では考えられないような“完全自律判断機能”まで持っているが、しかしそこは機械の悲しさで、人間の指示を受けずに取った独自の行動は、どこか間が抜けていた。
 主である女性ニューロの死に際して、バディは「住居や正体が誰にもバレ無いようにする」という命令を遵守したまま、「胎児を生かす」事を目的に定めて自律活動を始めた。
 2つの目的を同時に果たす為に、バディは誰にも助けを求めず独力で胎児の延命を図った。
 バディが自由に使える預金が無かったので、ウェブ(ネット)を利用したケチな詐欺で金を稼ぎ、それでライフサポート・システム(イントロンしたまま生きる為の装備。これがあると、食事や排泄の為にアウトロンしなくても良い)のメンテナンス用品を購入して宅配してもらい、女性ニューロの脳死体を生かし続けた。
 当然、そのような行動は結論の繰り延べに過ぎない。ライフサポート・システムがあるからと言っていつまでも脳死状態を保つ事ができるとは限らないし、最期に臨月を迎えれば破綻する。しかし、バディにそんな常識は無かった。

 ところで、女性ニューロの腹の中にいる胎児は、実はマヤカシ×3で、母親の胎内にいる状態で特技や神業を使う事ができた。
 論理的な思考などはできないが、周囲の人間の発する意識を読み取り、害意を持つ者には攻撃を加える。
 しかし今のままでは身の破滅に繋がる事は本能的に分かっていて、救ってくれる人間の登場を待っている。



導入

 PCたちは偶然、上記“事前状況”にある「バディによるケチな詐欺被害」を受ける。
 例えば、「商品を買ったが、振り込み先を指示する文章がハッキングによって書き換えられていて、業者に代金が届かなかった」とか「大手企業の購入プラットホームに不正規なリンクが張られていて、その先はハッカーが用意した詐欺の為のページだった」といったようなものである。
 これを、PCに社会戦がかかったものとして対応してもらう。社会戦を仕掛けたバディの能力値は低く設定して、さらにPCが対決に負けても実害が及ばないように調整する事。

 ここでPCは「実害は被らなかったが、詐欺への対応に煩わされて休日を潰されるなど腹立たしい思いをした」という事になり、それで「犯人を捜し出そう」と展開するものとする。プレイヤーが望むならば、他の被害者から解決の依頼があったとしても良いが、何れも被害額は些少である事を強調しておく事。以降、PCが犯人探しに乗り出すものとして進める。



本編

 女性ニューロ(バディ)の足跡を辿るには、以下の2つの方法がある。

@通り名からクロマクと接触する。
 “導入”の社会戦で反撃に成功すると、1人のニューロの通り名が判明する。本名、年齢、性別、住所など全てが不明だが、捜査のとっかりにはなる。
 このニューロのウェブでの評判は「非合法な事も行うが、外道な仕事は受けない」「ケチな詐欺で小銭稼ぎをするような人物ではない」というもので、犯人像と一致しない。この評判は事ある毎に繰り返し、PCに「何らかの事情がある」と思うように誘導する事。
 適当な社会技能やコネの判定に成功すれば、通り名からこの謎のニューロに仕事を仲介しているクロマクを割り出す事ができる。
 クロマクも、女性ニューロと連絡が取れなくて困っている。
 接触する為の言い訳としてクロマクに「腕が良いとの評判を聞いたので、ぜひ件のニューロに依頼したい仕事がある」などと言うと、「そのニューロは他の仕事で忙しい」という理由で断られる。
 正直に詐欺の捜査の話をすれば、確認した上で「実は前の仕事の途中から連絡が取れなくなった」と明かし、ウェブのアドレスを教える。特殊技能や<社会:ウェブ>などに成功すれば、謎のニューロの住居が分かる。

Aバディの足跡を辿る。
 バディは詐欺で得た金を自分の口座に入金して、そこからライフサポート・システムのメンテナンス用品を買い、宅配してもらっている。詐欺が行われているウェブの近辺で張り込み、<トレース>を使用するなどしてバディの跡を付ければ、宅配先の住所が分かる。

 その他、プレイヤーから捜査方法が提案されるならば、積極的に採用して構わない。どのような方法を取るにしろ、「苦労の末にPCが女性ニューロの住居に辿り着く」と展開しなければならないので、判定に失敗した場合などは、何らかのペナルティー(新たに社会戦を仕掛けられるなど)を与えた上で再挑戦させる事。
 なお、警察などに訴えても民事不介入を理由に助けてくれない。

 レッドエリアの高層マンションの最上階の1フロアが、女性ニューロの住居になっている。
 バディは高層マンションの全てのカメラやエレベータ等の制御を掌握している。最上階の下の数フロアは無人で、近づく人間は全て排除するようにプログラムされている。PCの侵入に対して、エレベータを落としたり、トループ扱いの武装したドロイドが襲い掛かるなどするが、PCは確実に無傷で済むレベルでしかない。
 しかし、このときのPCの殺気に応じて胎児も行動を起こし、<憑依>でPCを操ろうとする。失敗したり、肉体の支配権を取り戻されたりすればそれ以上の干渉はしない。やがてPCは女性ニューロの部屋に辿り着く。

 この部屋でも、侵入者に電撃を与える罠(<知覚>で判定に失敗すると山札から1枚のダメージを被る)や固定銃座が存在する。これらも戦力的には大した事は無いが、PCの殺気に反応して、胎児が<幻覚>で精神攻撃を仕掛けて来る。

 「実は戦力的に弱い罠が発動」→「PCが対応を取る」→「その際のPCの殺気に反応して、胎児が精神攻撃を仕掛ける」という流れになっているので、手順を間違えないように気を付ける事。また、1つの罠につき1台のバディが統括しているので、<電脳神>1回では1つの罠しか無効化できない。

 部屋の入口から女性ニューロのライフサポート・システムまで2カット移動しなければならない。
 ライフサポート・システムから中の者の顔だけが見える。前に立ったPCは、横たわるニューロが女性で、顔色や機器の表示からして脳死している事に気付く。
 その後で、胎児は神業<守護神>を使い、母体とライフサポート・システム一式ごと、テレポートして逃げる。<守護神>は原則的に自分自身しか救えない神業だが、胎児が生き残る為には母体とライフサポート・システムが必要不可欠であり、“結果論としてマヤカシ本人が助かる”ようなサポートまで及ぶ効果を持つので、全てを持って行った訳である。

 注意!! ここで一区切り入れて、プレイヤーに事態を整理させる事。

@女性ニューロは、評判や能力から考えてニューロ×3であると思われる。

APCに<憑依>や精神攻撃を仕掛けてきたマヤカシの本体は、ライフサポート・システムの中にいた。<憑依>という奥義を使用した事や、実力から推してマヤカシ×3であると思われる。

Bマヤカシの神業<守護神>では、マヤカシ自身が犠牲にならない限り他人を救えない。それにも関わらず女性ニューロは<守護神>で逃亡した。

 ルールの知識不足の為に、プレイヤーがこれらを認識していないようならば、ここで教えておき、もう一度、考えてもらう。

 ライフサポート・システムが消えた部屋を調べると、以下の3つが判明する。

@例の詐欺はバディが自律的に行っていて、それで得た金でライフサポート・システムのメンテナンス用品を宅配で買っていた。

A女性ニューロはハッキング中に脳死した。

B女性ニューロは、プライベートで非常に親しく付き合っていた男性タタラがいる。

 部屋にあるトロン(コンピュータ)を壊すなり電源を切るなりすれば、二度とバディによる詐欺は起こらない。もし、PCがこれ以上の関わりを持つ気を起こさないならば、セッションはここで終了する。謎も解けず終いとなる。
 部屋には金目の物も無いし、NPCから捜査を依頼されていた場合も「謎が解けない以上、依頼料は払えない」と言われるので、報酬は無い。

 最期まで事件の行く末を見守ろうという場合は、次に女性ニューロと親しかった男性タタラと接触を取る事になるだろう。
 男性タタラは、木更タタラ街で個人経営の改造屋を営んでいる。「とても腕が良いが、ここ1ヵ月ばかりはスランプでとんでもない失敗を繰り返している」という評判で、PCが店に行くと確かに溜息ばかりで仕事が手についていない。
 男性タタラから話を聞くのは、実に簡単である。PCが客の振りをして近づくなどして、ちょっと話を向ければ、立て板に水の如く(PCが途中で辟易するくらい)訳を話し始める。
 それによると男性タタラは、「ウェブ(ネット)にて、どこに住んでいるかも分からないミステリアスなニューロの女性と知り合い、その内に実際に会うようになり恋に落ちた。彼女が自分の方を訪ねる形で逢瀬を重ねる内に懐妊を告げられ、しかし『産むけれども結婚の意志は無い。赤ん坊が産まれた後も、ときどきは訪ねに来る関係にしたい』と言われた」と話す。
 それから1ヶ月経ち、そろそろ産月なのだと言い、「私はどうすれば良いのでしょうか?」とPCに相談までする。

 ここまで聞けば、PCは事件の真相を知る事になるだろう。



結末

 男性タタラに全てを話し、テレポート先の心当たりを訊ねると、「ひょっとすると彼女と旅行した湖畔の別荘かもしれない」と思い付く。男性タタラはそこへ赴くと言い、PCに助力を願い出る。
 その場所に行くと、別荘を押し潰すような形でライフサポート・システム一式が見える。

 PCたちが近づくと、胎児は泣き叫ぶかのように<幻覚>で精神攻撃を仕掛ける。
 男性タタラがライフサポート・システムの側に着くまでの時間に、胎児はPC全員に1回ずつ精神攻撃を仕掛ける。
 それから男性タタラは自分自身の手で新生児を取り上げるが、その間にさらにPCは1回ずつ精神攻撃を受ける。
 それを耐え切れば、そこで精神攻撃は収まる。
 赤ん坊は無事に産まれれ、病院に入れられる。男性タタラはPCに充分な額のお礼をする。

 途中でPCが我慢できなくなり、ライフサポート・システムに攻撃を仕掛けるようならば、胎児は再び<守護神>でテレポートする。再挑戦の機会があるかどうかなどは、マスターが判断して欲しい。展開によっては、PCを恨んで復讐しようとする。



さいごに

 元ネタは『幽霊飴伝説』とか『飴買い幽霊』とかの名で知られる民話である。「我が子の為に飴を買いに来る女幽霊が」という話だが、もし御存知無いならば、こちらを参照されると良いだろう。
 私は子供の頃からこの民話を知っていたが、あるとき地下鉄で東京都交通局の『沿線より道マップ』という車内吊りチラシに載っていたのを改めて読んで、ふと閃いた。発想とは、そういう切っ掛けでも生まれるものである。

 実際のセッションで用いたときは、プレイヤーがハッピーエンドから離れる方向へ、方向へと進むので困惑した。どうしてもプレイヤーが乗ってこれない場合は、バットエンドにしても良いかもしれない。




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