No. タイトル システム 登録日 改稿日
0059 真珠の港町 SW 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『ソードワールド』の使用を想定して書かれた。冒険者レベル3を対象とする。
 しかし、汎用ファンタジーとして使用可能である。



登場NPCおよび重要事項

網元 港町の盗賊ギルド長の顔も持つ。上位ギルドに秘密で半魚人族と組み、利益を得ようとしている。
プリンセス マーマン族のプリンセス。いわゆるお嬢様で、敵である半魚人族が人間と組んだとの噂を確かめようと人間化薬を飲んで地上に出た所を捕まった。



事前状況

 とある田舎に港町があった。三方を山に囲まれ、もう一方は海という地形にあり、近隣都市から徒歩で10日間はかかる。主産業は真珠の採取、加工、販売で、それに細々とした漁業が行われている。地形の関係から、他の都市との交通機関として主に海路が利用されている。街道も一応は存在するが、利用する者が少ない事から荒れ果て、陸路での旅を困難にしている。

 真珠の採取や加工はそれぞれ港町の住人が個人営業で行っている。しかし流通に関しては網元の老人が一手に引き受け、大きな利益を挙げている。網元の老人は、盗賊ギルドのボスという裏の顔も持ち、真珠の独占流通を妨げようとする者にはそれなりの制裁を加えていた。

 港町には小さなチャザ神殿があり、1人の司祭が住んでいたが、色々あって薬物中毒になり、麻薬をくれる網元の言いなりになっていた。最近では司祭はチャザ神の声が聞こえなくなってきている。

 古代魔法王国滅亡期に、この地に“何か”が落ちた事からクレーターができ、そこからこんな地形になったと噂されている。また、港町の湾内には古代魔法王国時代の魔法アイテムが眠っているとも噂されている。この情報は、近隣都市の魔術師ギルドで聞く事ができる。

 また、港町のある周辺海域には“マーマン族”と“半魚人族”が密かに隠れ住んでいる。この2つの海の種族は昔から「人間族とは非接触・不干渉」「互いには小競り合いを繰り返す関係」にあった。

 最近、半魚人族は海底から「海をしけさせる」という魔法アイテムをサルベージしていた。しかし自力では使用方法が解明できず、そこで半魚人族は禁忌を破り、人間族と同盟を結ぶ事にする。港町の網元(実は盗賊ギルドの長でもある)と接触し、「魔法アイテム使用法解読の手伝い」を頼み、さらに毒食らわば皿までとばかり「武器防具などの加工品や、秘伝の魔法薬の原料」の取り引きを持ち掛ける。半魚人側はその見返りとして「真珠の採取の代行」「魔法アイテムを用いて網元が望むときに海をしけさせる事」に応じる事になった。
 網元は、堕落したチャザ司祭などを使って魔法アイテムの使い方を調べる一方、“海をしけさせるアイテム”と対になる“海を凪ぎさせるアイテム”の存在を突き止め、現物を発見し、使い方も知った上で、切り札として秘匿する。
 そうして半魚人族に「海をしけさせるアイテム」や様々な人間族の物品が渡り、それによってマーマン族はどんどん押されていく事になる。

 さらに、半魚人族は秘伝の「地上で活動できる様になる薬」を調合して、その薬を「人間族の住む地上に興味を持つマーマン族のプリンセス」に渡し、うかうかと飲んで浜辺に現れたところを誘拐する事にも成功した。これらのアドバンテージによって、マーマン族の全面降伏は時間の問題となっていた。
 しかしあるとき、唐突かつ発作的に改心したチャザ司祭により捕えられていたマーマン・プリンセスは逃げ出してしまう。プリンセスは薬の副作用で人間の子供の容姿をしていて、言葉が理解できなくなって(よって知能が退行した状態に)なってしまっている。

 ところで、港町の盗賊ギルドは末端組織であり、近隣の大都市の盗賊ギルドの傘下の1つに過ぎなかった。港町の盗賊ギルドがあるレベル以上の“仕事”をする場合には、この上位ギルドに報告する義務があるのだが、ギルド長(=網元)は今回の事件について報告を入れなかった。しかし、金と物の流れから上位ギルドは「何かやっている」と気付き、調査員を送る事にする。



導入

 シーフのPCは、自分の所属する盗賊ギルド経由で、上記“事前状況”にある上位ギルドの指令を受け、港町の盗賊ギルドが勝手にやっている仕事について調査に赴くことになる。PCは港町の盗賊ギルドの構成人数や、符丁の幾つかを教えられる。
 その他のPCは、シーフPCの誘いに応じてこの依頼を受けるものとする。港町の盗賊ギルドには魔法の使い手はおらず、PCの総力で当たれば勝てる程度であり、依頼として無茶な話では無い。報酬も相場より多めで、PCは問題無く受けるものとして進める。



本編

 出発地の町で、港町の情報を集めると、以下の話が聞ける。

行商人  港町は真珠がほぼ唯一の換金産業で、網元が牛耳っている。
 海路が発達していて、陸路で行くのは困難。しかし2ヵ月ほど前から港町周辺海域限定でしけが続いていて、腕に覚えのある船長の船以外は寄港していない。
チャザ神殿  港町の神殿の司祭から、最近、定期報告書が届かない。ついでと言っては何だが、調べてきて欲しい。
魔術師ギルド  情報料を要求される。
 古代魔法王国滅亡期に、港町のある場所に“何か”が落ちた事からクレーターができ、そこから今の地形になったらしい。また、港町の湾内には古代魔法王国時代の魔法アイテムが眠っているとも噂されている。
 何か魔法アイテムを得たなら適価で引き取るし、しけの原因が魔法的なものならその報告書を提出するだけでも手間賃を払うと持ち掛けられる。

 基本的にPCは、陸路で港町まで行く事になる。どうしても海路に拘るようならばそれでも構わないが、まず船を出してくれる人を見付けるだけでも苦労するし、しかも結局は港町の近くで沈没してしまう事になる。

 港町には、主に以下の4ヶ所がある。

宿屋  主は、船が外から来た客を珍しがる。部屋を取り、食事を注文するならば、
「怪しい“しけ”のせいか、海辺で釣った魚の味がヘンだと噂されている」
「真珠の流通は網元が独占している」
など知っている事を話してくれる。
チャザ神殿  荒れ果てていて、長い間、人が住んでいた様子が無い。くまなく探せば、麻薬が入っていたと思われる空の薬袋が見付かる。
真珠の問屋  簡単な加工や、小売も行っている。網元を非常に怖がっていて、正面からでは碌な話が聞けない。
 客を装えば、「最近、網元は、既存の海女を介さず真珠を手に入れ、問屋を通さず外部に卸そうとしている節がある」というグチをポロッと漏らす。
網元の館  町で最も大きな目立つ屋敷。護衛や使用人もいる。PCが面会を申し込んでも断られる。
盗賊ギルド  一見ただの民家だが、壁に符丁が記されていて、盗賊ギルドの隠れ家だと分かる。
 中にはギルド長はいない。普通のシーフの振りをして、「冒険者関係の仕事で来た。普通の盗みはしないつもりだが、一応、義理を通しに来た」などと挨拶するならば、若頭が対応する。
 基本的に「半魚人族との取り引きにを嗅ぎ付け調査に来た上位ギルドの手の者ではないか?」という事だけを気にしている。その為、当たり障りの無い会話の中でも、若頭が緊張している様子がPCに分かる。
海岸線沿い  洞窟を見付ける。洞窟の中には隠し扉とチャザ司祭の死体を見付ける。隠し扉の先には登り階段があり、地形的に見て網元の館に続いていると推理できる。発見時は引き潮だが、満ち潮になれば階段部分も水路になるとも分かる。

 盗賊ギルドに行ったかどうかに関わらず、PCが適当に港町の様子を見歩いて暫く経つと、ギルドの下っ端の監視が付くようになる。見咎めて文句を言っても、「余所から来たお客さんを護衛しているだけです」と居直った説明をする。まくのは簡単だが、ずっと山中に身を潜めでもしない限り、いずれ再び監視が付く。
 ある程度の時間が過ぎた頃合いに海辺に行くと、偶然、上記“事前状況”のマーマン族プリンセスと出会う。
 マーマン族のプリンセスの姿は、汚らしい服を着て言葉を発しない金髪の人間の女の子という様子である。PCが保護するならば、ついてくる。
 シーフの監視者がこの少女を目撃した場合、捜索していたプリンセスがPCと一緒にいるのに驚き、報告に戻ろうとする。PCが下っ端を捕まえて尋問すれば、「この海域には半魚人族とマーマン族がいて、網元は半魚人族と手を組んだ。この娘は薬で人間になったマーマン族のプリンセスで捕虜にしていたのだが、夕べチャザ司祭が連れて逃げたのだ」と話す。

 <ディスペル・マジック>をかければ、プリンセスは元の姿に戻る。その状態では空気中で呼吸ができないので注意の事。



結末

 元の姿に戻ったプリンセスは、PCに助力を求める。
 網元が“海を凪させるアイテム”を隠し持っている事を言い、それで“しけさせるアイテム”を無効化すればマーマン族は力を取り戻し、元の冷戦状態に戻り、半魚人族も人間と関わり合う余裕を無くすと言う。

 網元と交渉しようとする場合、騙し討ちにするするつもりで人間化薬を飲んだ半魚人族のファイターを連れて来る。能力的にはマーマンと同等である。

 網元の館に侵入する場合、海岸の洞窟から入る事になるだろう。警備体制や罠などの設定については、マスターに一任する。適当な障害をクリアーすると、目的の魔法アイテムを手にする事ができる。

 その後、PCは、シーフの追撃や湾岸を守る半魚人戦士を倒してシケの中心地まで行き、2つのアイテムを干渉させて無効化させる事も任される。その為に、プリンセスはPCに<ウォーター・ウォーキング>などの精霊魔法をかけて援助する。
 しけが収まった後、プリンセスがマーマン族の元に戻れば、万事解決である。PCは礼として、深海からしか取れないという珍しい真珠をもらう。

 網元(=ギルドの長)に関しては、いかように処分しても咎められる事はない。上位ギルドは報告を受けると、約束の報酬を支払う。



さいごに

 ありがちなネタを繋げて作ったシナリオ。明朗に進めれば良いと思う。




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