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0054 妖の森 天羅万象 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『天羅万象』専用である。



登場NPCおよび重要事項

軍隊 妖の森の中心にオニ族の匠の村がある事を知り、技術者を確保する為に進駐してきた。
族長の娘 唯一、軍隊から逃れたオニ族の少女。心に深い傷を負って、昏睡状態でいる。
寒村 妖の森のすぐ外にある人間の村。余りに辺境に位置するので中央から徴税吏が来る事も無いし、妖の森が中立地帯代わりになっていて周辺国が攻め入る事も無いので戦争の被害も受けずに済み、案外に暮らし易かったが、最近になって急に妖が村に入るようになり悩んでいる。
オニ族の匠の村 オニ族の隠れ里。“銃槍”“珠刀”といった武器を生産する“匠の村”であり、秘密の道を通して外部に運び、それらを売り捌く事で成り立っていた。



事前状況

 とある辺境に、妖の森があった。毒の無い腐海(宮崎駿の『風の谷のナウシカ』に出てくるやつ)みたいな場所で、森の中は巨大昆虫が闊歩して、森の奥深くまで入って出てきた者はいなかった。
 妖の森のすぐ外に、とある寒村があった。一応、とある国に属しているのだが、余りに辺境に位置するので中央から徴税吏が来る事も無いし、森が中立地帯代わりになっていて周辺国が攻め入る事も無いので戦争の被害も受けずに済み、案外に暮らし易かった。
 村の開拓当初はともかく、現在では巨大昆虫の生息地域や習性も掴んでいるので、妖に食われるなどの被害もまず出なかった。ところがある頃から急に、巨大昆虫たちが生息範囲を広げ出してきた為、村人が襲われるという事件が起き始めていた。

 実は、妖の森の中心部にはオニ族の隠れ里があった。過去に色々とあって、今では“銃槍”“珠刀”といった武器を生産する“匠の村”となっていて、秘密の道を通して外部に運び、それらを売り捌く事で成り立っていた。また、彼らは、神通力で巨大昆虫を操る事ができ、それで孤高を保ってきた。

 しかし秘密はいつかバレるもので、とある国がオニ族の匠の村の存在に気付いてしまった。その国は秘密裏に軍隊(サムライ、銃槍使いなどPCレベルの使い手を含む、総勢2千人の部隊)を派遣し、村に奇襲をかけて占領。その後、技術者や持ち運びができる製造道具などを自国に運ぶべく、強制移民を行わせていた。
 軍隊は、オニ族が神通力で巨大昆虫を操っている事も知っていて、それができないようにした。そのせいで巨大昆虫たちは無制御状態になり、さらに兵隊たちに追い立てられる事で生息範囲を森の外周に求め始めたのだった。



導入

 上記“事前状況”にある地方に、PCたちがたまたま立ち寄っていた事から事件に関わる。
 PCは、妖の森の外周で巨大昆虫に襲われる。撃退した後で、近くにあった寒村に入る。
 寒村では、いかにも戦闘能力がありそうな者が幾人もいるPC一行を歓迎する。村長宅に招かれて「とにかく今夜はゆっくりして下さい」などと酒まで振る舞われる。
 一方で、寒村の人々はいかにも貧しそうな様子が見て取れる。また、村の片隅にある小さな寺(住職はいない)では線香の匂いがきつく立ち込め、たくさんの位牌が並び、泣き崩れる未亡人風の女までいて、最近、たくさんの人が死んだらしいと察せられる。
 PCたちが聞けばすぐに、聞かなくとも翌日の朝食の席で、村の窮状を訴えられる。
 村人は、村の成り立ちの歴史を語った上で、「2週間前から巨大昆虫が村の近くまで来る様になってしまった」「1週間前に見掛けた武者(実は偵察中の兵隊)に援助を請うたが断られ、しかもつい激興して『人非人』となじった者が斬り殺された」といった話をする。そしてPCに「大したお礼はできないが、どうか巨大昆虫の異常の原因を調べて、何とかして欲しい」と依頼する。
 以降、PCはこの依頼を受けるか、さもなくば独自の立場で事件に関わるものとして進める。



本編

 以下に、妖の森の簡単な地図を記す。移動は縦横のみで、斜めには動けないものとする。

@ A B C D
E F G H I
J K L M N
O P Q R S

 以下に詳細を示す。

番号 場所 備考
@ 寒村  出発点である寒村。昔は絶対に巨大昆虫が来る事は無かったのに、最近はときどき現れるようになった。
AE 妖の森外周a  必ず巨大昆虫に襲われる(能力は下段参照)。
 戦闘終了後、暫く移動すると、巨大昆虫が1人のオニの少女を看病しているのに出くわす。少女は族長の娘で、単身逃げ出す事に成功したのだが、余りに凄惨な場面を見たショックから昏睡状態に陥っている。PCが近づくと、巨大昆虫は大人しく去る。<神通力>、<胡蝶の夢>、<幻覚能力>などを用いれば少女を癒す事ができる。その際、戦火に追われる少女の心のイメージをPCは垣間見る事になる。
BCD
IJ
N〜S
妖の森外周b  昔は巨大昆虫はここまで来る事は無かったのだが、今はこの近辺を根城にしている。内側の地域にはいない。
 巨大昆虫は全能力値6、戦闘技能中級。<神通力>を上級で使える者ならば、巨大昆虫を一定時間操る事ができる。
 PCが該当地域に侵入する度に、50%の確率でPCの2倍の数が現れる。また、PCが血の臭いをさせている場合は3倍が現れる。
FGH サムライ部隊  アーキタイプのサムライと同等の能力を持つ敵兵が、それぞれPCの数の半分いる。侵入者を警戒して潜んでいる。侵入者が逃亡した場合は追撃しないが、伝令を出してその旨を上官に報告する。
KM 銃槍使い部隊  アーキタイプの銃槍使いと同等の能力を持つ敵兵が、それぞれPCの数の半分いる。交代で常に上空を警戒していて、FGHKLMを飛行するモノは全て攻撃する。
 また、地上を歩いてKMに侵入する者も攻撃する。侵入者が逃亡した場合は追撃しないが、伝令を出してその旨を上官に報告する。
L オニ族匠の村  オニ族の匠の村。今は、人間の軍隊(PCと同等の能力を持つ敵兵がPCと同数、および雑兵2千人)が駐留している。オニ族の技術者が強制移住の為の準備(鍛冶道具の荷造りなど)をさせられている。

 族長の娘は、父親から託された宝刀を持っている。この宝刀は、「性能的には普通の射率6の珠刀だが、使用者が高速移動して複数の敵に対して近接戦闘を仕掛ける事ができる。ルール的には投擲武器と同様の処理を行う」という特殊能力を持ち、族長の証でもある。
 族長の娘をPCが助けた場合、彼女は適当なPC(オニ族やサムライなど)に宝刀を手渡し、匠の村に起こった事を説明して、救助を願う。

 族長の娘の話では、オニ族技術者の強制移住はまだ準備段階で、急げば救出できると言う。また、族長の娘は<神通力>を上級で持っているので、人質さえ取られなければ巨大昆虫を使って2千人の雑兵は押さえられるとも言う。



結末

 PCがオニ族救出に動くならば、「敵兵が事態を把握する前に奇襲をかける」「囚われている技術者と連絡を取って連携する」などの作戦が必要になる。プレイヤーが妥当な作戦を立てたかどうか、マスターが判断して適切に処理して欲しい。

 オニ族の問題が解決されれば、巨大昆虫の生態も元に戻り、寒村の問題も解決される。



さいごに

 マンション工事で追われたらしいカラスが、それまで姿を見せた事の無かった公園に大量に集まるという出来事があり、その辺りの実体験から思い付いたシナリオである。
 オニ族の匠の村や、技術者を強制移住させようとする軍隊の話は、小川一水の『アマリアロード・ストーリー』からいただいた。プレイヤーが読んでいても問題にはならないだろう。




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