No. タイトル システム 登録日 改稿日
0047 再婚できない理由 BK 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『Bea−Kid’s』の使用を想定して書かれた。
 しかし、汎用ファンタジーその他として使用可能である。



登場NPCおよび重要事項

未亡人 亡夫の遺産を基金にして養護施設を運営しているキツイ性格の女性。亡夫の遺言で再婚できない。
未亡人が受け継いだ遺産を狙い、未亡人に男をあてがおうと企む。
真言魔術師 金の為に甥に協力して、秘蔵の“人形”を提供した。
人形 古代文明と喪失真言魔術の結晶。特定の人間そっくりに化ける能力を持つ。今まで幾つもの任務をこなしてきたが、今回は動作に不具合を起こす。その為か、本物よりも人当たりの良い性格になった。



事前状況

 とある田舎町に大きな養護施設があり、無料あるいは低料金で病人や障害者を受け入れていた。施設の院長は20代半ばの女性で、未亡人だった。
 彼女は亡夫の遺産で養護施設を運営していたが、遺言で「未亡人が再婚ないし恋人ができれば相続権を失う」となっていた。
 亡夫には甥がいて、甥には借金の返済に当てる為にも、何としてもその遺産を欲しがっていた。未亡人を殺しても、遺産は未亡人の実家の方の親戚に行くので自分の得にはならない。未亡人が男を作る事によって始めて、莫大な遺産を得る事ができる。
 甥は最初、自分自身が未亡人を口説いたり、それが叶わないとプロのホストを雇って未亡人を誘惑させたりするが、どうしても上手く行かない。そんなあるとき、甥は1人の真言魔術師に出会う。真言魔術師は古代文明の遺品に自らの秘術を加えた特殊な人形を所有していた。人形は誰にでも化け、記憶をコピーして影武者になる事ができた。
 甥は莫大な成功報酬を約束して真言魔術師を雇い、未亡人を拉致して人形とすりかえた。そうして、人形に浮気をさせ、遺産を横取りしようと考えた。しかし、ここで事故が起こった。人形は自分を本物と思い込み、それ以外の事(浮気をしろという指令とか)は忘れてしまったのだ。
 それから10日間が過ぎ、人形は「10日前の記憶が丸1日無い」「その後、誰かに見張られている気がする」「誰かに乱暴されて、そのときのストーカーに付きまとわれているのでは?」と思い悩む状態に陥る。
 未亡人は、厳し過ぎる性格から町の人に敬遠されていて、しかも浮気した場合に財産を失うという弱みもあるから、なかなか相談できる人もいなかった。



導入

 PCは、何らかの理由で未亡人(本人だと思い込んでいる人形)の相談を受け、「未亡人の記憶が無い日に何が起こったか?」を調査する事になるとする。礼金は、相場以上の額が約束される。

 PCの立場はプレイヤーに自由に決めさせて良い。養護施設関係者でも流れ者でも良いし、調査するPCの知り合いという立場でも良い。しかし、このときより以前は、PCと未亡人は面識は無いものとする事。



本編

 未亡人が再婚したり恋人を作ったりできない理由は有名で、未亡人自身の口から積極的に説明される事は無いが、ちょっと聞き込みをすればすぐに分かる。聞き込みの後で未亡人に確認を取れば、その事実を認める。
 また、町には「未亡人の働きかけで作られた条例のせいで娼婦をおけなくなった酒場の店主」とか、「未亡人の教条主義的な考え方に辟易としている養護施設の看護婦たち」など、未亡人を嫌う者が多くいる。
 他の町の人間もゴシップ好きで、この状況で「未亡人には10日前の記憶が無い」などと知られれば問題になるとプレイヤーが理解できるようにイベントを組む事。ただし、PCが直接話し合う限りは、「何故、この女性はこんなにも嫌われているのだろう?」と疑問に思うような性格を見せる。

 調査開始後、適当な難易度の技能判定に成功したならば、小型写真機を持って未亡人を付け回すストーカーの存在に気付く。
 ストーカーの正体は真言魔術師の部下であり、未亡人(=人形)がスキャンダルを起こすのを待って写真撮影するつもりだった。人形の不調の事は知らないが、「なかなか指令を実行しなくておかしい」とは思い始めている。
 そういう理由で、ストーカーは穏便な行動しか取らない。
 ストーカーを見張ると、定期的に電報を打っているのに気付く。別の町に真言魔術師と甥が待機していて、彼らに報告を入れ指示を仰いでいるのである。
 電信技士を買収すればその文面を読む事ができる。そこには、「目標はなかなか浮気を実行しない。問題が生じている可能性がある」などとあり、その調査と対応の為にストーカーのボス(=真言魔術師)が町に来ると分かる。また、甥はその別の町に残る事と、甥のいる家の住所も分かる。

 やがて真言魔術師と部下が町にやってきて、未亡人の前に姿を現わす。真言魔術師たちは最初にいきなり、未亡人に対して何かアンテナの付いた機械を向けてスイッチを押すが何も変化は無い。真言魔術師は、「停止コードも受け付けんか。修理が必要だな」と独り言を口にする。

 真言魔術師は、未亡人(=人形)を連れ去ろうとする。PCが妨害するならば、戦闘になる。
 真言魔術師は、実は体に人形をまとっていて、肉体耐久値が熊族と同等だけある。戦闘になれば最初に盾の呪文を使用して絶大な防御力を有した上で、手下に補助魔法を使うといった戦法を取る。
 未亡人(=人形)は真言魔術師の顔を見た事が切っ掛けとなって記憶を取り戻しそうになる。さらに戦闘に巻き込まれたショックで意識を失う。



結末

 PCが敗北しても、真言魔術師たちは止めを刺したりせずにすぐに逃亡する。逃げた先の住所は分かっているのだから奇襲も可能だし、最終的にPCが勝利したものとして進める。

 PCが意識の戻らない未亡人=人形を調べるならば、どうやら人間では無いと分かる。適当な難易度の<真言魔術>判定に成功すれば、人形の変身能力についてなど性能に関する事は分かるが、治す事はできない。無理をすると、煙を吐いて死んで=壊れてしまう。

 PCが迅速に行動すれば、別の町にあるアジトに捕えられている本物の未亡人を救出し、隠れている甥を捕まえる事ができる。
 本物の未亡人はキツイ性格で、助けられても礼も言わない。自分から礼金を払おうなどとは言い出さないし、PCが切り出すと何とか払わずに済まそうとする。

 何らかの理由で別の町にあるアジトに行くのに時間をかけてしまった場合、甥は借金取りに追い詰められて自殺してしまっているし、未亡人も監禁されたまま何日も放置されて衰弱死してしまっている事になる。



さいごに

 塩野七生の『イタリア遺聞』の中で、イタリアの自治都市にて「再婚したら財産を没収されるという条項付で未亡人が遺産を受け継ぐ」という事がよくあったと紹介されている。このシナリオは、そこから思い付いた。
 それをプレイヤーが知っていても、セッション自体には問題を与えないだろう。




シナリオ書庫に戻る

TOPページに戻る