No. タイトル システム 登録日 改稿日
0045 風水警察 メガテン 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『真・女神転生/覚醒編』専用である。

 5〜6人の5レベルPCが参加する事を想定しているが、事前に敵の強さや数についてはマスターが調節して欲しい。



登場NPCおよび重要事項

風水警察 長々しい正式名称があるが、誰も彼もが“風水警察”と呼ぶ政府の特別行政官。超常能力に依らない対悪魔戦術を開発する為の実験組織で、舞台となる村で風水学と悪魔出現度の因果関係を調べている。地元住民の評判は最悪。
少女 両親と死別してから大きな館に独りで住み、悪魔だけを友達とする自閉症気味の少女。天然サマナー。
ダークサマナー 舞台となる村を“悪魔養殖場”としていたサマナー。“風水警察”の実験を迷惑に思っている。
村会議員 裏の事情を何も知らず、風水警察を厄介者と決め付けている村の名士。PCの雇い主となる。
山間の村 無国籍な風景の村。風水的に目茶苦茶な場所で、その為か悪魔事件が頻出している。



事前状況

 とある地方の山間の村で、試験的に特別な行政法が施行されていた。
 その村は明治以降、欧米人の保養地になったり、華僑系企業のリゾート開発が入ったり、昭和のバブル時代にハイテク・ビルが建てられたりと全く統一的な流れの無い開発がされていた。寺、社、教会も2つずつあり、風水的に見ると魔の巣窟となり易い地形で、現に、この村では多数の悪魔が確認されていた。

 ここでとある政府関係者が「超常能力を持つ人間の数には限りがある。全ての悪魔事件に対して、これら超常能力者を用いなければならないとすると、とても効率が悪い。しかし、もし、家屋の位置や地形などを変える事によって風水的に悪魔の出現を抑えられるならば、治安維持に非常に役に立つ。ここはひとつ、実験してみよう」と思い付き、実行に移した。件の村は、実験地として最適で、政府関係者によってその実験の為の“特別地域”に指定された。
 村には強権を持つ役人が派遣され、彼が取り壊すと言えばどんな建物でも取り壊されたし、埋めると言われればどんな池、川でも埋められた。そんな役人を地元の人間は“風水警察”と呼んで誹った。
 風水警察は風水学をほぼ完全に修めていたが、それが実際に役に立つかどうかは未知数だった。実際のところ、中長期的に彼らの活動は悪魔の抑制に繋がっていた。地脈・龍脈の変化によりマグネタイトが不足し、悪魔は次々と現世にとどまれなくなったのだ。しかし、超常能力者の派手な悪魔退治と異なり、一般市民の目にはなかなか成果は分かり難かった。

 さて、ここに1人の“少女”とダーク・サマナーがいた。

 “少女”は村で生まれ育った住人で、両親を亡くして以来、大きな館に1人で住んでいた。自閉症気味のこの“少女”は悪魔と心を通わせる特異な能力を持ち、人間との関係は最小に止め、悪魔たちを友達として付き合う“天然サマナー”だった。
 “少女”は、悪魔たちがマグネタイト不足で弱って行くのが手に取るように分かった。そんな悪魔たちをできる限り生き長らえさせようと、“少女”は東京まで行ってマグネタイトを購入してきて、悪魔に食わせていた。

 ダーク・サマナーは外部の人間だが、この村を一種の悪魔養殖場にしていた。普段は連れ歩かない二軍の仲魔を放し飼いにして、一定期間毎に様子を見に来て、力をつけていたら契約するなどといった事をしていた。
 ダークサマナーもまた、風水警察の活動が成果を現わしている事に気付いていた。苦々しく思ってはいたが、単純に風水警察の連中を皆殺しにすれば済む問題では無い。そんなとき、ダークサマナーは“少女”の存在を知り、騙して利用しようと思い、親切ごかして近づいて無償でマグネタイトを提供した。

 今まで、村では「こういう行動を取らなければ悪魔に遭わない」といった生活の知恵が、慣習という形で存在した。
 しかし、風水警察の活動で悪魔の行動パターンが変化して、現れる地域、時刻、条件も変わった為に、地元民の目には「昔より事態は悪くなった」と映った。それでも、邪魔が入らなければやがて悪魔自体の数が減り、風水警察の正しさが証明される事になっただろう。しかし、“少女”とダークサマナーが悪魔に餌付けをして生き残らせた為に、風水警察の評判はどんどん悪くなった。



導入

 PCはパーティーを組んでいて、田舎にある山間の村の村会議員から仕事の依頼を受ける。
 PCは村に到着してそうそう、マグネタイト不足でスライム(P.276)と化した悪魔に襲われる。その後、村会議員から、彼の立場から見た“風水警察”の説明を受ける。
 村の人間にとって、ただでさえ風水警察の活動により立ち退きを迫られたりと面白くない。その上、“生兵法”のせいで悪魔が性悪化しているとしたらたまったものでは無い。そう思った村会議員の1人は、個人的に悪魔退治を生業にする者たち(つまりPC)を東京から呼び、「風水警察の活動によって悪魔が狂暴化している」とのレポートを作成して欲しいと依頼する。

 常識的な範囲で、報酬などの交渉には応じる。以降、PCが依頼を受けたものとして進める。



本編

 村は大まかに分けて、以下の11地区に分かれている。以下にそこで起こるイベントを説明する。
 表中の指示に従うと矛盾が起こる場合(時間がそぐわなかったり、何度も同じ場所を訪れたりなど)は、マスターが適宜、修正する事。

寺1  風水警察が建物を取り壊す指示を出している現場に出くわす。住職が文句を言うのも聞かず、外部の業者に取り壊し作業をさせたりしている。風水警察の男は、その手の筋には教科書として有名な和綴じの本を持っていて、やっている事も風水学の教科書的に正しい事である。適当なクラスのPCが見れば、それが分かる
寺2  廃寺。夜中に散歩している“少女”と出くわす。長い黒髪と黒い洋服が何処か人形を連想させ、全く物怖じしない態度とあいまってPCに強い印象を与える。この段階では、問題となる行動は何も取らない
神社1  やる気の無いバイト巫女がいる。彼女は意外に事情通で、ハッキリと対象を絞った聞き方をされれば大抵の事に答えてくれる。
 「この村でマグネタイトを所有している者に心当たりがないか?」と訊けば、「数ヶ月前、たまにこの村にやってくる異様な風体の男(=ダークサマナー)が“少女”に、物陰で何か袋を渡しているのを目撃した。そのとき、『マグネタイト』という単語を含む会話を交わしていた」と教えてくれる。
 “少女”について訊けば、「両親と死別して、高校にも進学せず大きな家に引きこもって暮らしている。夜中に散歩する趣味がある。また、数ヶ月前、珍しくも東京まで出掛けたようだ」と話してくれる
神社2  昼間は特に何も起こらない。夜は空腹で狂暴になったジャックランタン(P.238)に襲われる(仲魔にする余地はない)
教会1  牧師は留守だったが、ここでマグネタイト1単位を発見する。悪魔が落としたのでは無く、その手の店で購入したモノを誰か人間がこぼしたものらしいと分かる
教会2  へアリージャック(P.240)と出くわす。仲魔判定に成功したり、適当な交渉を行った場合、話を聞く事ができる。ヘアリージャックによると、「最近、マグネタイト不足で困っている悪魔に、マグネタイトを配っている人間(=“少女”)がいる」との事で、その人間は悪魔に慕われているらしいと分かる。容姿を尋ねると「黒い服を着た長髪の人間」と説明されるが、この条件には“少女”もダークサマナーも共に当てはまる
外人別荘地区  PCが洋館に忍び込み、探索しているとクイックシルバー(P.274)が現れて戦闘になる。クイックシルバーは英語圏にしか現れない貴婦人の悪霊であり、「Don't touch my dress!」などとと叫ぶだけで交渉の余地は無い
旧華僑地区  今でも中華風の面影が残る街区。真っ先に風水警察の手が入った地域であり、ここではマグネタイトの流出が激しい為に、仲魔を外に出していられるのは15分間(通常の1/4)だけである。ここでも、何者かの手によって悪魔に餌付けがなされた痕跡が見付かる
バブルの廃虚  田舎に似つかわしくないハイテク・ビル。事故が多発した事もあってテナントが入らず、無人になっている。一見、電気も通っていて小奇麗に見えるが、実はグレムリン(P.265)とポルターガイスト(P.274)の巣窟と化している。PCが奥に入るまで何事も起こらないが、引き返そうとすると襲い掛かって来る。急に防火シャッターが閉まったり、物が飛んで来るなどの演出を含ませた戦闘を行う事
ドイツ風ホテル  昼は廃ビルだが、夜には営業しているホテル。従業員は全てナハトコボルト(P.247)の変装で、夜にここの客室で眠ると精神攻撃を受ける。ナハトコボルトは、マグネタイトを補充する為に人間を脅かしているので、出会っても戦わずに十二分な量のマグネタイトをあげれば判定無しに仲魔になってくれる
地元民居住区  風水警察が来る前までは、明るい内に悪魔が出現する事は無かった。今では、スライム(P.276)を中心に低レベルの狂った悪魔が時折、現れる。依頼主の家、“少女”の館、雑貨屋などはここにある。また、人通りの多い場所(戦闘や荒事を起こす訳にはいかない場所)にて、明らかに怪しい風体のCOMP使い(=ダークサマナー)を見掛ける

 風水警察は、基本的にPCを相手にしない。煩く聞かれれば風水に関する講義をしてくれるが、どんな状況でも自分は法律に守られていると思い込んだ上での言動を取る。暴力的な手段に出られれば、逃亡する。
 表にある11ヶ所全てを回った(或いはそれに準じるだけの行動をPCが取ったとマスターが判断した)場合、次のイベントに移行する。

 まず、適当な場所にて、“少女”が悪魔に餌付けをしている現場をPCは目撃する。“少女”は呆けようとするが、強く追求されると「友達である悪魔の為にやっている」「最初は東京までマグネタイトを買いに行っていたが、最近は親切な男の人がタダで分けてくれる」と白状する。
 その“タダでマグネタイトを分けてくれる男の人”について追求すれば、容貌は“地元民居住区”で見掛けたCOMP使いと同じで、“バブルの廃虚”にあるハイテク・ビルの中にいると分かる。

 “少女”の言った通りの場所に行くと、ダークサマナーが待ち受けている。
 ダークサマナーは、正直に「風水警察の実験は見当外れだったと思わせるように小細工を仕掛けようとしている」と明かし、PCにも協力を求める。PCが明確な言葉で同意を口にしない限り、戦闘になる。
 ダークサマナーは、適当なレベルの仲魔を前衛に立てて、自分は後ろから銃を撃つ。データに関しては、マスターが決めて欲しい。



結末

 ダークサマナーに協力するならば、1〜2ヶ月の内に悪魔が人を襲い始めるようになり、風水警察は実験失敗として撤退する。“少女”も、友達と信じていた悪魔の凶行に落胆して、ますます心を閉ざしてしまう。PCは、ダークサマナーから皮肉な微笑みと共に礼を言われるが、やがて敵対する予感を抱く。

 ダークサマナーを倒した場合、やがて村から悪魔が消えて、風水警察は実験は成功だったとのレポートを携えて意気揚々と東京に引き上げる。
 “少女”は友達である悪魔を失った事で落胆し、心を閉ざしてしまう。もし、PCが“少女”の“天然サマナー”としての能力に注目してそれなりのフォローをするならば、別の人生が開ける事になる。



さいごに

 カナダのフランス語地域では、“言語警察”と呼ばれる役人がいる。フランス語浸透の為に、英語の看板などを取り締まっていて、住民の評判は良くないそうだ。この話をニュースで聞いて、このシナリオを思い付いた。
 “少女”については、井辻朱美の『幽霊屋敷のコトン』の主人公をイメージしている。ただし内容に関しては引用は無い。




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