No. タイトル システム 登録日 改稿日
0044 砂漠のオアシス BK 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『Bea−Kid’s』専用である。



登場NPCおよび重要事項

反政府組織 古代文明の遺産である宇宙船を掘り出し、ミサイルにして首都攻撃しようと企んでいる。
不良軍隊 正規軍兵士だが、中央の目が届かないのを良い事に汚職・横領の限りを尽くしている。反政府組織にも協力している。中隊規模の人数がいる。
軍属の男 不良軍隊の横領を暴こうとしている男。
少年 スーパーコンピュータでも何年もかかる計算を、直感的に一瞬で解く才能を持つ少年。反政府組織に誘拐された。
賞金稼ぎ 少年に亡き弟の姿を重ねていて、密かに同情を寄せていた事から、少年捜索に乗り出す。
砂漠の町 獣人族も住む事の無かった過酷な砂漠の中央にできたオアシスの町。有数の穀倉地帯であり、住人は豊かに暮らしている。



事前状況

 古代文明時代には恒星間航行も可能だった宇宙船が、とある砂漠の下に埋まっていた。太古の昔に宇宙船が墜落する事でできた地である為に、非常に特異な風景で、獣人族たちは「悪魔の住処に違いない」と考えた。「悪魔の呪いを避ける為」に、獣人族たちは、この砂漠に立ち入らず、それどころか敢えて地名さえ付けなかった。
 時代が下り、大陸に移住してきた人間族の一団が、この名も無き砂漠に探検に入った。冒険の果てに、とうとう宇宙船を発見し、さらに偶然から機関部をアイドリング状態に立ち上げる事までしたが、それ以上は何の成果も無く、入口を塞いで去った。
 その後、さらに数百年が経つと、宇宙船の機関部から流れ出る排出物が肥料になり、吹き上げる風が雨を呼び、周囲は肥沃な土地となった。そして「何故、砂漠の中央部だけ突出的に肥沃な土地があるのか?」という疑問に対する答えが無いまま他の地方から人間族が移住して、現在では有数の穀倉地帯となった。地勢的に穀物が高く売れた事もあり、住民は豊かになった。

 さて、ここにとある反政府組織があった。組織は宇宙船の存在を知り、「宇宙船を弾道ミサイルにしてグーデリアン国首都を攻撃する」という計画を思い付いた。折り良く、砂漠の街に駐屯する不良軍隊を仲間に引き込んでいたので彼らを実行部隊とした。不良軍隊は秘密裏の調査の末に宇宙船の入口を発見し中に入る事はできたが、宇宙船を動かす為にはコンピュータにパスワードを入力しなければならなかった。
 計画は頓挫するかと思われたが、そんなとき、反政府組織は「どんな複雑な数学問題でも瞬時に解いてしまうサーカスの芸人の少年」の存在を知り、利用できると考えた。数学パズルを瞬間的に解けるならば、パスワードを解く事もできるかもしれないと思い付いたのだ。

 サーカス芸人の少年は、自閉症だが特殊な才能に恵まれていて、スーパーコンピュータが何年もかかる計算を、直感的に一瞬で解く事ができた。
 しかしサーカス団団長にしてみれば、少年の芸は地味で客受けも低く、利用価値は低いと考えていた。何者かによって少年が誘拐されても、世間体を考えて小額の賞金は懸けたが、事実上、少年を見捨てる事にした。

 とある賞金稼ぎは、たまたまサーカスで見かけた少年に亡き弟の姿を重ねていて、密かに同情を寄せていた。懸けられた賞金ではとても割には合わなかったが、賞金稼ぎは少年の捜索を始めた。そして「砂漠の町で少年に似た子供を見掛けた」という情報を掴み、そこに赴いた。


 ところで、グーデリアン国には、「政府組織の横領を内部告発すると、それによって未然に防がれた損失の数%を貰える」という法律(通称、リンカーン法)がある。この法律の告発者にとって、裁判の結果は正に死命を分ける。横領の事実が認定されれば、告発者は莫大な金をもらって悠々と余生を過ごせる。されなければ、まともな再就職の道を絶たれた上に報復の影に脅えなければならない。だから、絶対確実な証拠を得てから正式に告発する者が多かった。
 ここに、この法律に基づいて上記の“不良軍隊”を告発しようとしている軍属の男がいる。裁判になったら横領の有力な証拠となり得る帳簿を所持しているが、それだけでは不安でより確実な物証を得ようと考えた。そしてその為に、荒事に慣れた者(=PC)を雇おうと考えた。



導入

 砂漠の真中に肥沃な農村が広がり、農民たちは豊かで、最新のトラクターを所有したりしている。オアシスの中央の町はちょっとした規模で、他の地方に穀物を輸出する事で莫大な利益を得ている。PCには、この町の異色さを強調しておく。

 導入は3パターン設ける。

@人格者PC向け。賞金稼ぎから、少年捜索の協力を依頼される。報酬は、食費程度しか出ない。プレイヤーがこの導入に気乗り薄なようなら、少年の話だけを聞かせた上で、誰も受けないとなっても構わない。
 砂漠の町に着いた後で少年は逃げ出す事に成功している。見知らぬ町で、残飯を漁りながら浮浪児として暮らしている。

A一般的なPC向け。軍属の男から協力を依頼される。まず、上記“事前状況”にある“リンカーン法”の説明と、不良軍隊の汚職・横領について話される。そして、「帳簿類だけでは証拠として不安だ。より確実な物証が欲しいが、自分には張り込みも戦闘もできない」と言って調査協力および護衛を依頼される。
 少なくともPCの一部はこの依頼を受けるように誘導する。
 既に軍属の挙動が怪しいと不良軍隊にバレていて、適当なタイミングで襲撃を受けるなどする。リンカーン法で認めているのは“内部告発”だけなので、この依頼人がいなければ金は手に入らない。PCに莫大過ぎる報酬を渡さない為に、それらの襲撃で依頼者が死んでしまうとしても良い。

B獣人族または科学者PC向け。「砂漠の町が成立し得る秘密」を探ろうとする。
 PCは、ある程度の期間をかけて、「精霊に話を聞く」または「地質や風向きを調査する」といった行動を取っている。その結果、「この辺りの風の吹き方は自然現象ではあり得ない」「自然にはあり得ない窒素系肥料が大地に含まれている。微量だが、その自然ならざる風にも肥料が含まれている」「“風”は、“町の近くの小さな山(宇宙船のある位置)”から吹いている」「その山には最近、不良軍隊が出入りしている」という事実を調べて知った。また、「砂漠の町のあるオアシスは、人間族が入植した後に生まれた」という歴史も知っている。

 導入@と導入AのPCは、原則的に互いの動向を把握している。導入Bは、少なくとも今回は別行動を取っている。



1日目

 不良軍隊は、部隊を大まかに3つに分けている。
 1つ目は、町の近くの小さな山にある宇宙船の出入口を密かに見張っている。戦闘力は、PCより少し落ちる程度である。
 2つ目は、道路や駅馬車などに非常線を張り、町に出入りする子供を見張っている。砂漠の町なので街道が少ないので1ヶ所当たりの数も多く、PCが子供を連れて強行突破するのは明らかに不可能。
 3つ目は、小部隊に別れ、「浮浪児の保護活動」と称して少年を捜索している。1つのグループは数が少なく、短期戦闘を心掛ければPCは余裕で勝てる。
 不良軍隊の配置別戦力に関しては、明確な言葉でプレイヤーに伝えておく事。
 また、兵士たちは横柄に振る舞っていて、町の人は眉を顰めつつも我慢している。故に、PCが聞き込みを行う際には協力的に振る舞ってくれる。

@少年の捜査

 賞金稼ぎは少年と知己で、癖や好みも知っている。PCが賞金稼ぎと共に探せば、少年の方も気を許すので夜更けになった頃に接触できる。
 不良軍隊が少年を探す理由については心当たりが無いが、ただ、その特殊能力に用があるらしいと言う。


A不良軍隊の汚職捜査

 不良軍隊は町の郊外に司令所と宿舎を持っている。交代制で各部署と行き来しているので、夜まで見張ったり尾行したりすれば、その行動を把握できる。
 不良軍隊が守備している“町の近くの小さな山のとある地点”では、いつも怪しげな風鳴り音が聞こえる。この風鳴り音は宇宙船の排気音である。
 命令も無く兵員を勝手に派遣する事は横領の一種である。これらの作戦計画書、目撃者の証言があれば、汚職・横領の証拠になる。さらにその行動の動機まで判明すれば完璧で、軍属の男はその調査を求める。


B町の秘密の調査

 導入Bを選んだPCは、原理的に他の導入のPCの協力を得なければ調査が行き詰まるだろう。そこで、導入Aが宇宙船の埋まっている山に来た時点で、関わりを持つように誘導する事。



2日目

 2日目になってもPCが少年と接触していない場合、賞金稼ぎは殺され、少年は不良軍隊に見付かって連れ去られてしまう。町の人から話を聞けば、“山”の方へ行ったと分かる。

 不良軍隊兵士は全員、自分たちが反政府組織についたという事実を認識している。しかし末端兵士は、宇宙船の存在や「何故、少年が必要なのか?」については知らない。知っているのは、“山”を守備している特務兵士か、司令所にいる幹部のみである。
 PCが危険を冒して司令所に忍び込むか、または“山”の守備兵を捕虜にして尋問した場合、“首都攻撃計画”を聞き出す事ができる。
 不良軍隊は、宇宙船による首都攻撃計画を当てにしている。これが失敗すれば指揮官は士気を失い、それにつられて末端兵士も離反する。

 最終的にPCが“山”へ向かうように誘導する事。



結末

 少年が不良軍隊に連れ去られ、それから一定期間が経つと、宇宙船は飛び立ち、テロは成功する。首都に命中したかどうかなど、世界のその後の行く末は各マスターが決める事。

 PCが少年の特殊能力を用いて宇宙船内に入った場合、導入BのPCは、砂漠の町は、この宇宙船のお陰でオアシスになったと看破する。宇宙船を破壊すれば、僅かな期間で作物は実らなくなり、この地方を重大な危機が襲う事になる。しかし不良軍隊は即時瓦解する。

 宇宙船を破壊しない場合、少年を連れている限り、PCは不良軍隊の執拗な追求、波状攻撃を受ける事になる。PCを二手に分けて、一方が少年を守っている間に、他方が「不良軍隊の汚職・横領の証拠」を持って中央政府に訴えれば、やがて救援がやって来て解決する。



さいごに

 海外ニュースで知った3つのネタ(砂漠のオアシス化実験、アメリカに実在する「内部告発者に償金を払う」法律、自閉症の人の特異能力)を複合して考えたシナリオ。

 プレイヤーが次の行動に迷わないように親切気味に誘導して、要所は戦闘で緊張感を持たせて欲しい。




シナリオ書庫に戻る

TOPページに戻る