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0043 能楽面の伝説 天羅万象 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『天羅万象』専用である。
 プレイヤー人数は、4人を想定している。4人以外の場合、“さいごに”の指示に従う事。



登場NPCおよび重要事項

小国の領主 ヨロイが謎の機能休止状態に陥り、その解決の為に伝説の能楽面を復活させようとする。
小国の姫 伝説の“能楽面探索パーティー”に倣い、男装して伝説の能楽面の探索に加わる。
元神宮家の男 ある事情により、神宮家を追放され、有能な部下と共に天羅を流浪する事になった男。再起を誓い、己の力を増す為に様々な事をしている。
小国 国力は小さいが、大国並みの数のヨロイを保有している為に、独立を保っている。
大国 小国の隣の国。併合できて当然としか思えない小国が目の上のタンコブで気に食わないと思っている。



事前状況

 以下、プレイヤー数が4人だと仮定して書く。
 プレイヤー数が3人または5人である場合、文中の数字を辻褄が合うものに置き換えて読む事。

 その昔、神秘の力を持つ5枚の能楽面(猿楽面)があった。いつ、誰が打った面なのかは分からない。ただ、“資格を有する”6人が集まり、その中の5人が面を付けると残りの1人が全てを統べ、異能力を発揮できた。

 ずっと昔、とある小国は存亡の危機に際して、この5つの面を探し出し、使用する事で救われた事があった。能楽面の異能力の具体的な内容は伝わっていないが、その後、神宮家の要請で面は封印され、事実も隠蔽された。その代価であるかの様に小国には過分な量の明鏡が下賜され、国力にそぐわない数のヨロイを有する様になった。
 小国の隣には大国があったが、その大量のヨロイによって、小国は独立を維持する事ができた。

 時代は下り現代。とある事情により、神宮家を追放され、有能な部下と共に天羅を流浪する事になった男がいた。男は能楽面の伝説を知り、それを手に入れれば己の地位回復に役立つと考えた。
 しかし能楽面がある地下遺跡の封印は、小国の領主一族にしか解けない特殊な物だった。そこで元神宮寺家の男は一計を案じた。ヨロイの駐機場に忍び込み、全ての明鏡を機能休止状態にしてしまった。こうしておけば領主が能楽面を得る為に動くと踏み、手に入れたところで横から奪おうと考えた。

 実は、領主一族も、過去の伝説については、あやふやな内容しか記されていない古文書1冊しか資料を持っていない。古文書は物語形式なのだが、古代の文法で抽象的・形而学的に記されているので内容がよく把握できない。辛うじて、『能楽面入手の経緯の章』と『能楽面を入手した6人が国を救う話の章』があり、国を救うのにヨロイが関係すると読み取れるのみである。
 元神宮寺家の男の目論見通り、領主は、明鏡を再起動させる為に、伝説の能楽面入手を試みる事になった。

 伝説の能楽面を手に入れる為に、「能楽面入手の章」に記された物語にそのまま従って一種のお芝居をしてみる事になった。そこで古文書にある“資格を有する6人”を集める事にする。とにかく古文書の登場人物と同じアーキタイプと性別を持つ実力者が集められた。
 その結果、2人のNPCと4人のPCが集められた。



導入

 PCの立場は、以下から自由に選ばせる事。選ばれないものがあっても良い。

@純粋な流れ者。たまたま雇われただけで裏の背景は無い。

A流れ者の振りをしているが、実は小国に仕える家臣。今回の事件は絶対機密なので、念の為に仲間にも“流れ者”だと触れ回っている。

B流れ者の振りをしているが、実は大国のスパイ。内情を探る良い機会だと小国に雇われ、ヨロイが休眠状態になったと知った。簡単には帰国もできないし、“伝説の能楽面”なる謎も気になるので暫くは大人しくしているつもりでいる。

 3通りの導入がある事は全プレイヤーに明示するが、誰が何を選んだかは秘密にする事。

 その他、伝説の能楽面探索の一行には以下の2人のNPCも加わる。

●若武者。実は男装した小国の姫。古文書には記されていないが、伝説では姫が若武者に身をやつして同行した事だけは分かっているのでそれに倣った。

●流れ者。潜在的な自殺願望者。PCだけでは事態が膠着する場合も考えられるので、その場合にストーリーを回転させる役回りとする。



本編

 小国の領主によって集められた形の6人は「2週間後に行われる年に1回の大規模な演習にヨロイが参加しなければ、すぐに大国に異変を察知され、こんな小国など滅ぼされてしまう」「大国と小国の中立地帯に入口がある地下遺跡に行って、面を取ってきて欲しい」と事情を説明される。

 PCは依頼を受けるものとして話を進める。

 適当な難易度の<事情通>などの技能判定に成功すれば、「異能者集団(元神宮寺家の男)が国元で暗躍しているらしい」との噂を知る。

 <芸事:知力>を行えば、古文書の内容を読み解く事ができる。
 2個成功で、「登場する能楽面は5枚なのに、『6人全員が面を付けた』と表記されている」点に気付く。
 4個成功で、「古文書の話に登場する若武者は、姫の変装だ」と分かる。

 PCが強く望めば、依頼を受けた城下町での聞き込み調査を行う時間を与えられる。実力者に聞き込みをしようとした場合、「相手はPCを追っ払おうとするが、若武者が何か耳元で囁くと途端に態度を改めて何でも話す」などのイベントが起こる。
 “怪しい異能集団”の噂は聞けるが、詳細は分からない。大国の動向も掴めない。
 PCが事前調査に拘り過ぎないように誘導する事。

 城下町を旅立ち、1日半ほど経つと、地下遺跡のある村に到着する。村人たちは、先祖代々、遺跡を守って暮らしている。領主からの書状を見せれば、入口に案内される。
 入口付近では、戦闘用傀儡(元神宮寺家の男の配下)が張り込みをしている。この傀儡が壊されると元神宮寺家の男に知らせが行くので、どのように展開しても、PCが地下遺跡に入った事は伝わってしまう。

 地下遺跡の中は、異次元に繋がっていて、「どこまでも続く一本道」になっている。心力チェックに成功すると、「気付いたら何時の間にか能楽面が壁に掛けてある部屋にいた」となる。

 面は以下の5種類ある。

@祖父(おおじ)  老人役の面。
A乙(おと)  若い醜女の面。瓢の神・蛤の精にも用いる。
B嘯(うそぶき)  うそぶくように口を突き出した面。蚊の精・案山子にも用いる。ひょっとこ(火男=火吹き男)面の原形である。
C賢徳(けんとく)  視線が外れていて歯をあらわにした異様な相で、牛・馬・犬・茸の精に用いる。
D武悪(ぶあく)  大きな眼は下り目で口を妙に食いしばった滑稽味のある鬼・閻魔の面。

 同時に2枚以上に触る事はできない。また、5枚の面が全て各人に付けられないと何も起こらない。
 ここでPCが着用を躊躇う場合、「地下遺跡の出入口からすぐ出た所に、元神宮寺家の男に雇われたサムライたちが集結しているのに気付く。農民たちは皆殺しにされ、外に出れば、PCたちも確実に殺されるだろうと分かる」という押しを入れる。
 それでも躊躇うようならば、若武者が正体を現わして、領主の姫として命令/お願いをする。

 どの面を付けるかで、プレイヤーを悩ませる事。
 しかし、実はどの面を付けても関係無い。問題は「誰が面を付けなかったか」である。
 能・狂言において面を付けないで演じる事を“直面(ひためん)”と言う。直面の役は、常に主人公である。
 上記表内の記述については、<芸事:知力>で2個成功すれば知っていた事になる。
 “直面(ひためん)”については、<芸事:知力>で4個成功で知っていた事になる。
 いずれの場合も、分かったプレイヤーにだけ筆談でこっそりと教える事。

 5つの面を付けた瞬間、6人の脳の中にまず伝説の人物たちの記憶が流入する。それに続いて、今回の探索行全員の記憶を共有する事になる。よって、これまでプレイヤーが秘匿していた情報がある場合、ここで全て明かす。気持ち、願望、行動指針などもそれぞれのプレイヤーに説明させる事。
 流れ者NPCに自殺願望がある事も説明する。
 姫には、基本的に二心はない。

 直面の役の者は、1アクションだけ、どんな奇跡でも起こせる。「遠方までテレポートする」とか「機能休止したヨロイを復帰させる」などの事もできるし、武器として使うならば、現代で言う小型戦術核爆弾クラスの破壊を引き起こす事ができる。
 一度決めた配役は変えられない。5人が面を付けていないと奇跡は発動しない。面を付けている者を直接害する奇跡は起こせない。奇跡を1つ起こす毎に、面を外すチャンスが1回ある(同意なしに連続使用はできない)。

 姫(若武者)が直面役だった場合、最初の奇跡で全員を小国のヨロイ格納庫にテレポートさせる。その後、ヨロイの復帰の為に再使用させてくれとPCたちにお願いする。
 流れ者NPCが直面だった場合、周囲全て(PC以外)を吹っ飛ばしてしまう。その後は、PCの話の持っていき方次第では言う通りの使い方をしてくれるが、原則的に危険な方向の使用しか望まない。
 PCが直面役だった場合、そのプレイヤーの望み通りにさせる。



結末

 状況的に不自然でないならば、“元神宮寺家の男”が能楽面を奪う為にPCに戦闘を仕掛けるように展開させる。その他、大国のシノビ部隊が登場するなどの展開も考えられる。
 その辺りの戦闘を切っ掛けにして、オチに導いて欲しい。

 能楽面の力を使わなければ、遠からず小国は滅びる。



さいごに

 文中に挙げた能楽面(猿楽面)の種類は5種類で、直面を入れると6つの役割がある。NPCが2人いるから、PCは4人でなければならない計算になる。
 プレイヤー数が4人より少ない場合、その分だけ適当な能楽面を削る事。
 逆に多い場合、“猿面”を追加するなどして、能楽面の数を増やす事。興味があれば、百科事典などで面について調べても良いだろう。
 或いは、“爆弾役NPC”を、マスターから指示があったら従ってもらうという条件でプレイヤーに任せても良い。姫はNPCにするべきだろう。

 元ネタは、山田正紀の『仮面戦記』と『ペルソナ』である。
 『仮面戦記』は「依頼された主人公たちが、3つ集まると大軍だろうとテレポートさせる力を持つ面を探す」という話である。この面の内の1つが実は、主人公に同行した姫自身の“直面”で……と展開する。1〜3巻が出ているが、未完。
 『ペルソナ』からは、「仮装していない唯一の人物がキー」というアイディアを頂いた。

 発想の源は山田正紀の2冊の小説だが、内容は充分に異なっているので、プレイヤーが読んでいても問題にならないだろう。




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