No. タイトル システム 登録日 改稿日
0039 聖地巡礼 SW 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『ソードワールド』の使用を想定して書かれた。
 しかし、汎用ファンタジーとして使用可能である。



登場NPCおよび重要事項

アルト カーディスの司祭復活の為に誘拐され、仮腹に使われている女性。臨月が近くお腹が大きい。ファリスの聖女。心の奥底では抵抗しているのだが、どうしても逃げ出す気力が湧かないでいる。
狂信的なカーディス原理主義者。PCを上回るレベルのファイター&ダーク・プリースト。闇の救世主の誕生の為ならば、自分自身の命も含めて全てを犠牲にしても眉一つ動かさない。
闇の救世主 かつてカーディスの大司祭だった者が、転生して赤子となって蘇った。



事前状況

 破滅神カーディスの信者たちが、彼らにとっての救世主を誕生させようとしていた。かつての大司祭の魂を呼び戻し、さらなる力ある存在として自分たちの指導者の地位に就いてもらうという計画だった。
 力のある救世主となる赤子を産む儀式を行うには、ファリスの大神殿の祭壇の上でファリスの聖女の腹を使って産まれなければならなかった。
 まず、カーディス信者は策略と魔法でファリスの聖女であるアルトを確保し、懐妊させた。その後、巡礼として、“センス・イービルを防ぐ護符”を持ち、夫役の工作員と共にアルトをファリス大神殿に送り込んだ。



導入

 PCは仲間同士である。
 PCから1人、“アルトの元恋人”役を決めておく。

 PC一行は、たまたま大神殿のある町に用があり向かっている。旅の途中で“夫とアルト”と同道する。アルトは、元恋人のPCに気付くも、何も知らないふうを装う。“夫婦”は、「最初の子供の洗礼式を、ぜひ大神殿で執り行いたいので」と旅行の目的を説明する。
 大神殿のある町に着き、宿の手配をしている最中に、夫役の工作員の目が届かない所で、アルトは元恋人PCにそっと持っていた上記の“センス・イービルを防ぐ護符”を手渡す。今の彼女にできる反抗は、その程度しかなかったのである。

 翌日になり、巡礼たちが順番に祭壇に上がって洗礼を受けるという祭事が執り行われる。
 アルトも祭壇に上がり、そしてそこで「急に産気付き、この場で出産する」となった。そして出産の瞬間、大地震が起こり、町は崩壊する。夫役の工作員は“闇の救世主”を抱えて逃げる。

 基本的にここまでの展開は強制イベントである。プレイヤーが不満を持った場合は、マスターとして話し合って欲しい。



本編

 アルトが祭壇が上がる日に、PCが何処にいるか明確にさせる事。分離行動でも構わない。

 ファリス信者PCまたはファリス信者に変装したPCは、他の巡礼に混じって祭壇のある建物に行く事ができる。地震が起きたときに祭壇の近くにいたPCは、赤子を抱えて逃げる夫を追い掛けるチャンスがある。適当な判定を行い、成功すれば足止めできる。夫は赤子を人質にする振りをするが、PCが構わずに仕掛ければ戦闘になる。

 祭壇のある建物にいなかったPCも、「アルトたちを心配して」とか「祭壇のある建物が、被害が最も大きいので救助の手助けを行う為に」などの理由で現場に行くように誘導する。
 祭壇の近くには、血まみれのアルトが瀕死で横たわっている。
 元恋人のPCに対して、アルトは最期に「ゴメンなさい。こんな事なら、あなたと一緒になっていれば良かったわ。私の魂は汚れてしまったから、御許には行けないけど、あなたに看取られて最期が迎えられて私は幸せよ。あの子は……男の子かしら? 女の子かしら?……子供に罪は無いの。あの男を殺して。あの子を救って。私の魂を救って。私は、あなたを……」と言い残して死ぬ。

 ファリス神殿は混乱していて、PCが夫の追跡を依頼してもなかなか聞いてくれない。
 大神殿の町には、カーディス教団の工作員が潜入していて、ファリス神官兵士の追手を防ぐ目的で、町民の煽動などをしている。PCが町を出ようとすると、「群集がPCたちに援助(魔法治療とか食料とか)を強要する」などの妨害がある。扇動の効果もあって、簡単な脅しは群集に通用しない。ここでPCが手持ちの食料のほとんど全てを置いていかざるを得なくなる状況に追い込む。
 群集の説得に成功した後、町を出てすぐにPCを危険と判断した工作員の攻撃を受ける。敵の強さはマスター判断で決める。場合によってはこのシーンを省いても良い。

 原則的に、PCたちは山中を逃げる夫に追い付くという展開に誘導する。レンジャー技能での追跡の達成値や、大神殿のある町での手際の善し悪しによって、戦闘の難易度を変える。
 最高最良の場合は、夫が油断している隙に赤子を取り返し、さらに不意打ちを掛ける事ができる。
 最悪の場合は、PC側が不意打ちを受ける。
 通常の場合は、夫が赤子の身柄を確保した状態でPCと対峙する事になる。
 赤子は急速な成長を遂げていて、既に言葉を覚え始めている。交渉する場合、夫はPCに対して金銭の類を渡す約束ならばするが、赤子を渡す事は絶対に無い。理由を聞く場合は、値踏みするような視線を投げかけ、「どうせもう戦闘するしかないな」と覚悟を決めた上で詳細な説明をする。

 ほとんどの場合、PCは夫と戦闘する事になるだろう。夫の冒険者レベルや戦法に関しては、「何人かが犠牲になるが、PCが勝利する」という結末になるように調整する事。
 戦闘終了後、亡くなった(傷ついた)仲間を悼むPCの気持ちを察したかのように、赤子は<リザレクション>などの呪文で倒れた者を癒す。PCの言動次第では、夫も生き返らせる。

 夫と戦闘を行った山中から人里に出る為には数日かかるが、その間も赤子は急速な成長を続け、それに連れて前世の記憶を取り戻す。幼児と呼ぶべき年齢になった頃から表情が曇りがちになり、ときどきPCに探るような目を向けてくる。

 やっと最寄の町に出たPCは、そこで、遅れ馳せながら真実に気付いたファリス神殿が「急速に成長する女の赤子を連れた1人または複数人の異教徒」に追手をかけた事を知る。



結末

 赤子=闇の救世主を奪取するまでの時間次第で、その後のファリス神殿の追手をかわす難易度を変える。
 ファリス神殿は、基本的に闇の救世主を殺す事で解決する。この場合(またはPCが手にかけた場合)、危機は次の時代へ残される事になる。将来的に、闇の司祭復活計画は再び試みられるからである。

 闇の司祭は、PCの行動を見ながら1日1歳程度のペースで成長している。闇の司祭が20歳に相当するまで守り切れば、良かれ悪しかれ事件は終わる。それまでの間、ファリス神聖騎士団の先行部隊がPCを襲ったり、手配書を見た村人がPCをペテンにかけようとするなどのイベントが起こる。
 PCが人道的な手段で闇の救世主を守り通したならば、カーディス高司祭として破滅をもたらす事に迷いを抱くようになる。その結果、魔法でPCを安全な所までテレポートさせ、不器用な笑顔で「ありがとう」と言い残して去る。

 その他、PCの“教育”が極端だった場合でも原則的にPCは助けてもらえるが、それに応じたオチをマスター判断で付ける事。



さいごに

 一応はオリジナルのストーリーなのだが、考えてみると『ロードス島戦記』のレイリア出生の秘密のエピソードの影響を受けている事は否定できない。或いは、レイリアの1つ前の前世のエピソードと位置付けてエンディングを演出すると面白いかもしれない。




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