No. タイトル システム 登録日 改稿日
0038 殺人酋長ドン・ガーン BK 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『Bea−Kid’s』専用である。



登場NPCおよび重要事項

ミリー 10才の少女。人間と獣人とのハーフで精霊と会話する事ができるが、シャーマンでは無い。複雑な性格の持ち主で、絶大的なカリスマがある。ルール的には交渉系の技能を最高ランクで有する。
ミリーの父親 資産家。ミリーの事を本当に愛しているが、イマイチ常識に欠けるので、育て方を間違えた。自分の創作上の人物ドン・ガーンの名を騙った連続殺人事件が起こっている事に戸惑っている。この“お話”は文章化した事が無いので、ミリーにドン・ガーンの話を聞いた異常者が犯人だと思っている。この事は町の人には秘密にしているが、PCが好意的に接すれば話し、解決を依頼する。ただしPCにもミリーが実子で無い事は隠し通そうとする。
狂った精霊 今は滅びた獣人の1部族の祖先霊。精神の均衡が失われているが、風の精霊としての力は健在。ミリーが欲する事を欲する。
写真屋の青年 発明家兼ガンスミス。ロリコン。ミリーは精霊と出会う前、彼をドン・ガーンに仕立て上げようと考えていた。ミリーに「あなたが本当のドン・ガーンになれるかどうか、ここ数日が勝負よ」などとけしかけられ、着実に“ニセのドン・ガーン役”に近づいている。見方によっては「真言魔術師かも」と誤解されそうな雰囲気を漂わせている。
雑貨屋の老人 ドン・ガーン候補の1人だったが、ボケのせいでイマイチ、ミリーの暗示が及び難い。どこをどう思い違えたのか、自分を「ドン・ガーンと唯一渡り合える古強者」と見なし始めたので、ミリーのシナリオに適合しなくなり、殺害リストに入ってしまった。
娼館の女たち 父親が常連客な事もあってここもミリーの行動半径内であり、女たちの何人かはミリーの信奉者になっている。連続殺人の一翼を担っていたが、犯行のバリエーションに乏しいので早々とミリーに見切られ、ドン・ガーン候補から外された。主は妖艶な初老の婦人だが、彼女は何も知らない。



事前状況

 とある田舎町があった。街道沿いにあるので隊商の往来は激しいが、しょせん高速のパーキングエリアに毛の生えた町に過ぎない様な所だった。
 この田舎町にミリーという10才の少女が住んでいた。実は人間と獣人のハーフなのだが、色々あって生まれてすぐに両親が死亡し、今はその両親の親友だった資産家の中年男性に、実子として育てられている。
 ミリーは夢見がちな性格で、超天才的な煽動家で、残酷な性癖だった。お話が大好きで、父親が創作した「人間に自分の部族を滅ぼされた獣人族の酋長ドン・ガーンが、復讐鬼となって残酷な方法で人間を殺しまくる話」を特に好んだ。ミリーは現実と虚構の区別を自らの意志でごちゃ混ぜにする性向があり、「虚構の存在ドン・ガーンを実在させる」挙に出た。そうなれば、退屈で作り物じみた“現実”とサヨナラできるから。
 ミリーは町中を1人でうろつき回り、老若男女様々な“親友”を作るのが得意だった。そして心の弱い“親友”を見付けると、その者の“自由意志”をミリーが好む形に操る事ができた。ミリーは彼らが「ドン・ガーンになりたい」と思う様に仕向け、「連続殺人事件が起こし、現場に『獣人族酋長ドン・ガーン』と署名されたメモを残す」という犯行に駆り立てさせた。

 最近のミリーのお気に入りの“親友”は、町の外の祠跡で休眠していた“狂った精霊”だった。先天的な能力で精霊と会話できたミリーは、卓越した話術と魅力で精霊をその気にさせ、殺人を行わせた。この精霊こそドン・ガーンに相応しいと確信したミリーは、保安官の追求も厳しくなってきたし、計画を最終段階に移そうと決意する。
 ミリーはまず、精霊を使って他の“ドン・ガーン候補”を1人を除いて消そうと考える。そして残った1人を真犯人に仕立てた上で、最期のシナリオとして「ドン・ガーンの正体は町の住人だった。しかしドン・ガーンが処刑されたそのとき、皆の前に真のドン・ガーンが現れ、1人の可憐な少女(ミリー)をさらって町を去る」という事件を起こす事にする。

 上記“登場NPCおよび重要事項”を再読の事。



導入

 PCは、隊商の護衛または荒野の案内人として舞台となる町に来る。

 町の保安官、助手、戦闘力のある町人NPCは「町の外に逃亡したドン・ガーン」を追って外に出ている。PCは当初、彼らと出会い、殺人鬼の話を聞く。協力の申し出は丁重に断られる。
 話を聞いた獣人族PCは、「獣人族の命名法則から言ってドン・ガーンなどという名はあり得ない」と分かる。これをNPCに話しても、意味を理解してもらえない。
 セッション中は原則的に、保安官たちは町に戻って来ない。

 隊商は町に暫くいる。隊商の長は、「もし次の町への護衛・案内もするならば滞在費は出す。仕事を継続するかどうかの返事は後で良い」と言う事にして、PCが町に居続ける理由と、去る必要性が出たらあっさり去れる方便も残しておく。



本編

 PCが町に滞在する数日間の間に、以下のようなイベントが起こる。適当に各PCに割り振る事。

●1日目

 ミリーは、新しくやって来たPCに興味を抱き、積極的に「ドン・ガーンのお話」を話す。少女の口調は「お気に入りのホラー映画について語る」といった様子で、恐怖感は全く見られない。話の後、ミリーは町の外に出る(精霊に会う為)。

 昼間に酒場で、町の子供を集めてパーティーが行われる。珍しい話をしてくれなどという依頼がPCに来て、承知すれば参加する事になる。
 ミリーも参加しているが、同年代の子供には興味を持てない様子が見て取れる。写真屋の青年も来ていて子供の写真を撮影しているのだが、彼とミリーは内緒話をしている。内緒話を盗み聞きすると、まるで娼婦と男性客を思わせるような危うい会話を交わしていると分かる。
 ここでミリーの父親も登場させて、PCに印象付けておく事。彼は、町の外れの屋敷で娘と2人で暮らし、放任主義だが娘について心配している。PCが好意的に接すれば、この時点で「ドン・ガーンの話は自分の創作だ。ミリーからドン・ガーンの話を聞いた異常者が犯人だと思っている」という話をする。

 その夜、娼館で幾人かの娼婦が狂った精霊によって殺される。

●2日目

 保安官不在の状態で起きた殺人事件に、町は恐怖に陥る。ろくな調査もできないので、PCが買って出るならば任せられる。
 調べると、犯人は空を飛べでもしなければ侵入できそうに無いところから入り、人間離れした力で殺されたと分かる。

 雑貨屋の店主は、「かつてドン・ガーンと激闘した」と明らかなホラ話を延々とする変わり者の老人で、PCと会うエピソードを設けておく。この老人が昼間に殺されるのだが、やはり空を飛べるか透明になれるのでもない限り、目撃者なしに犯行を実行するのは不可能という状況になっている。

 写真屋の青年は、こっそり犯行現場に行って写真を撮るなどの挙動不審な行動を取る。彼は自分が殺人事件の犯人=ドン・ガーンだと思い込んでいて、その思い込みをより強固にする為に自分から疑われるような事をしている。PCが問い詰めれば、「自分がドン・ガーンだ」と“自白”する。

 ミリーの跡をつければ、夜になってから狂った精霊に会う為に祠に行くのを見付ける。2人は会話しているが、声を出しているのはミリーだけで、精霊はテレパシーか何かを使っているらしい。ミリーは2件の殺人の労をねぎらい、保安官が戻って来たときの“ラストシーン”の相談をしている。
 狂った精霊のデータに関しては、PCが総力を尽くせば倒せるレベルにする。魔術の支援が無いとダメージが通らないと設定しても良い。

 ミリーの父親と会い、よほど常識外れな態度を取らない限り、この時点ならば「ドン・ガーンの話は自分の創作だ」という話を積極的して相談する。狂った精霊の話などをするならば、ミリーの実の両親の話をする。ミリーを救う為なら積極的に協力するが、害する話ならば命を懸けても妨害する。



結末

 精霊が倒されて後が無くなれば、ミリーは涙ながらにPCが望むような謝罪の言葉を口にする。本心では無いが、嘘を見抜くのはほぼ不可能(交渉系技能値14)である。

 保安官たちは、事件の収拾が間に合うような時期には帰って来ない。PCが不干渉の立場を取るならば、基本的にミリーの思い通りに進む。



さいごに

 ジャン・ヴォートランの『パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない』を読んでいて思い付いたシナリオだが、元ネタと言うほどには引用率は高くない。読んでいたプレイヤーでも、そうと言われなければ似ているとは気付き難いと思う。




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