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0037 獣人族の誇り BK 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『Bea−Kid’s』専用である。



登場NPCおよび重要事項

リーダー 獣人族を解放のレジスタンス組織リーダー。真言魔術アイテムの使用すら辞さずに反乱の準備を進めてきたが、それでも人間族には勝てないと悟り、絶望している。
大佐 例え奴隷としてでも獣人が同じ町に住む事を我慢ならない極端な差別主義者。舞台となる地方の方面軍再考指揮官。獣人族の反乱を察知して、それを機に独自判断で獣人族を絶滅させようと企む。



事前状況

 とある地方は、20年前、人間族対獣人族の戦争において人間が大勝し、それ以後、この地に残った獣人は人間の町で2級市民として暮らす事を強いられていた。獣人族の子供は“特殊学校”で人間の歴史と言葉のみを教えられ、大人は肉体労働や召使いくらいしか職を与えられなかった。反抗して殺された獣人や、余所へ逃げ延びた獣人もいたが、一定数の獣人は2級市民としての立場に甘んじる事に慣れ、社会は安定してしまった。
 この地方の獣人たちは、そういった理由で精霊との接触が断たれてしまっている。こうした“堕ちた獣人”は、本来の力(獣人族のボーナス項目)を振るう事ができず、ファイターやシャーマンにもなれない。

 一方、「精霊を騙して“堕ちた獣人”が精霊と接触できる様にする」という古の真言魔術が存在した。元は人間が精霊魔法を使える様になる事を目的に開発が進められた魔術なのだが、そこまでには至らずに放置されていた術理論を、現代の真言魔術師が発掘していた。その真言魔術師は様々な手管を尽くして“堕ちた獣人”を集めては実験を繰り返していたのだが、その中の1人は、上記の地方の出身だった。真言魔術によりシャーマンとしての力を手に入れた彼は、「この魔術を使えば同族に誇りを取り戻させる事ができる」と考える。それで真言魔術師に協力する振りをして、アイテムを駆使してその真言魔術を用いる方法を習得すると、彼は真言魔術師を殺して逃亡。上記の地方にレジスタンスを組織し、リーダーの座に就いた。

 リーダーとなった男は少しずつ仲間を増やし、さらには数万人の獣人が一気に精霊と接触する力を得る新たな方法の研究も進めていた。この研究が完成し、大規模な儀式魔術を行う日をXデーとして、反乱を起こす計画まで決めた。レジスタンスの組織員は全獣人の過半数を越え、Xデーに獣人たちが“ゴーストダンス”を舞う事により、彼らは精霊の加護を取り戻す。
 しかし、事態が進むに連れてリーダーは「例え、全ての獣人が精霊の加護を得られる様になったとしても、人間には勝てないのでは?」と思い悩む様になる。だが、今更、流れは止められない。やがてリーダーは「今の社会体制のままで生き残るより、いっそ一花咲かせて散る方が、この地方の獣人も幸せに違いない。そしてこの反乱事件での我々の死が礎となり、他の地方で戦っている同士を勇気付け、遠い将来の最終的な勝利に結び付くに違いない」と考えて自分を納得させるに至った。

 そして人間の方も、軍部が獣人の反乱計画に気付いていた。この地方の方面軍の最高指揮官である“大佐”は、狂信的なまでに獣人を嫌っていて、例え2級市民(奴隷)としてでも人間の町に獣人が同居しているなどという現状に強く不満を持っていた。そこで「敢えてXデーを迎えさせて反乱を起こさせ、それを口実に全獣人を滅死させる」という計画を立てる。
 その為にも、レジスタンスに参加する獣人は多ければ多いほど良いので、流れ者を雇って「不審な獣人を狩る」仕事をさせ、敢えて獣人の不満を煽るなどの細工をする。



導入

 導入は3パターン設ける。適合するPCがいない場合、マスター判断で適当な者に割り振る事。

@賞金稼ぎなどをしているPC用。上記“事前状況”にある町にて「真言魔術アイテムを買い漁る男がいて、多数の密売人が訪れている」との情報を得て、彼らを捕まえる為にやって来る。この真言魔術アイテムの買い主はリーダーである。

A真言魔術師PC用。上記“事前状況”でリーダーに殺された真言魔術師の知り合いで、たまたま彼の住居を訪れた折りに彼の白骨死体を発見する。死体を調べると、魔術装置で録画された遺言映像が再生される。それによると、「自分を殺して“堕ちた獣人が精霊の加護を取り戻す事ができる真言魔術”を盗んで逃げた男を捕まえ、呪文を封じて欲しい。礼として、僅かだが自分の隠し財産を譲る。アイテムの中には発信機になる物を混ぜておいたので、それを辿って欲しい」との事で、探知器アイテムで追跡すると、上記“事前説明”にある町に到着する。目標が町にいるのは確かだが、精度の問題でそれ以上は分からない。

B獣人族PC用。「死んだと思っていた息子が舞台となる町で生きているとの噂を聞いたので確かめて来て欲しい」との依頼を、獣人の老夫婦から受けて町に来る。その息子とは、実はレジスタンスのリーダーである。



本編

 まず、町の異常さをプレイヤーに伝えて把握させる事。獣人族の惨めさを象徴するようなエピソードを入れて欲しい。

 3つの導入のどれも、探している人物は同じである。
 @では、真言魔術アイテムの売り主の1人を比較的簡単に捕まえる事ができるようにして、その男の口から「買い主はフードで顔を隠していたが、獣人族だった。容姿はこんな感じだった」とリーダーの似顔絵を手に入れる事ができる。
 AとBの導入でも一昔前の容姿は分かっていて、似顔絵などが手に入れる事もできる。
 酒場で出くわしたPCが「偶然にも自分たちが同じ男を探している可能性が高いと気付いて行動を共にする」とするとスムーズに進むだろう。

 酒場などでは、軍隊が「不審な獣人を狩る特務警備隊員」の徴募が行われている。詳しく内容を聞くと、明らかに「獣人族を苛めて歩くだけで金がもらえる」というもので、少なくない人間のチンピラが応募している。

 リーダーの似顔絵を持って聞き込みを行えば、人間も獣人も「知らない」と答えられる。しかし、獣人族の中にはレジスタンスの構成員がいて、1日後には何らかのアクションが帰って来る。
 導入@およびAに関しては、基本的にレジスタンスの部下が様子を探りに来る。会話から、似顔絵の人物はリーダーだと知るが、よほど上手く交渉しない限り、戦闘となる。部下のデータは弱く設定する事。
 導入Bの獣人族PCが誠意ある様子で聞き込みを行うならば、リーダー自らが秘密裏に接触を取って来る。リーダーは、反乱計画がある事を明かし、「両親には自分は死んだと伝えて欲しい」と言う。その科白に対して「反乱の成功確率は低いと思っているのか?」とPCが問うならば、暫く無言でいた後で「今の社会体制のままで生き残るより、いっそ一花咲かせて散る方が、この地方の獣人も幸せに違いない。そしてこの反乱事件での我々の死が礎となり、他の地方で戦っている同士を勇気付け、遠い将来の最終的な勝利に結び付くに違いない」との自説を語る。それ以上は、何を言っても聞かずにPCの元を去る。

 軍隊の動向を探るならば、駐屯基地から、町の近くにある森へ頻繁に伝令兵が行き来しているのに気付く。森を探ると、大隊規模の兵員が密かに待機しているのに気付く。兵員の数が多いので、すぐにPCが逃げ帰るならば特に技能判定は必要ないとする。
 また、PCが見ている場所で“大佐”が演説をするシーンを入れて、この“大佐”の異常さとカリスマ性を強調する。



結末

 PCが不干渉の立場を取るならば、Xデーには反乱が起こる。町に住む獣人族の半数近くが加わり、魔術によって力を取り戻した事もあって人間のチンピラなどを圧倒するが、頃合いを見計らって完全装備の軍隊が突入して、鎮圧される。軍隊は、反乱に加わらなかった者も含めて全ての獣人族を処刑する。逃れる事ができたのはごく僅かとなる。

 導入BのPCが協力を決意するならば、リーダーの暗殺も可能である。そうなると、反乱は実行に移されない。

 リーダーに全面的に協力して、その破滅願望ともいえる考え方を正し、森にいる大隊規模の軍隊の話をするならば、反乱を成功に導く事も可能となる。
 森への奇襲、“大佐”の暗殺などの作戦をプレイヤーに立てさせる事。



さいごに

 アメリカに実在した「インディアン学校」の話からこのシナリオを思い付いた。インディアン学校とは、インディアンの子供に白人の教育を受けさせる事で同化させようという政策で、「白人の教育」と言いつつも差別的に扱われていた。

 インディアンの虐殺については、ハリウッド映画でも『ソルジャー・ブルー』以降は特に珍しいテーマでは無くなった。ジョン・ウェイン時代の不自然極まりない西部劇しか知らないというプレイヤーがいる場合には、幾らか説明をしておいた方が良いかもしれない。
 もっとも、現代の西部劇映画も、当事者(の子孫)であるインディアンの映画関係者たちに言わせれば不自然なのだそうである。




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