No. タイトル システム 登録日 改稿日
0031 誘拐の目的は N◎VA 00/04/01 01/09/03



はじめに

 このシナリオは、『トーキョーN◎VA 2nd』のテクニカル・ルールの使用を想定して書かれた。
 しかし、『レボリューション』や他のサイバーパンクでも使用可能である。
 『レボリューション』を使用する場合、PCの人数によっては神業の数で問題が生じる場合がある。参加PC全員で使用できる神業の数を6〜9個程度に制限するハウスルールを導入した方が良いだろう。



登場NPCおよび重要事項

エリーゼ 双子の片割れの娘。中学生。自分が双子がいると知らずに父親に育てられた。ニューロ・タタラ系。
リア 双子の片割れの娘。中学生。自分が双子がいると知らずに母親に育てられた。戦闘系。
父親 中小企業の社長。新たな事業に乗り出そうとしている。
母親 フリーランスの護衛ないし暗殺者。娘を仕込んで一緒に仕事をしていたが、最後の仕事で死亡した。



事前状況

 その昔、とある事件絡みで知り合った男(エグゼグ系キャラ)と女(カブト系キャラ)が大恋愛の末に結婚し、一組の一卵性双生児の女の子をもうけた。しかしその恋愛は、いわゆる「危険な状況下で陥った恋」に過ぎなかったのか、子供が産まれてほどなくして男女は別れてしまった。双子は父と母が1人づつ養育する事になり、娘には「父(母)は死んだ」と告げ、双子の片割れの存在も教えなかった。

 長じて、中小企業の社長である父親の元で育った娘(エリーゼ)はトーキョーでお嬢様学校に通い何不自由なく暮らしていたが、最近、父親が会社の秘書と再婚したがっていて、それがどうもしっくりこないと思っている。
 母親の元で育った娘(リア)は母親と共にフリーランスの護衛ないし暗殺者として暮らすようになったが、とある仕事で母親が死に、途方に暮れてトーキョーに流れて来た。そんな頃、トーキョーの森林公園で偶然にも双子は出会う。最初は他人の空似かとも思った姉妹だが、話をするうちに真実に気付き、そして「母親を捨てた上に、軽薄にも再婚しようとしている父親が許せない」という結論に達する。

 父親の会社は今、新たな事業に乗り出そうとして資産の多くを一時的に現金化していた。この現金が無くなれば会社は大ダメージを受ける事になり、父親も再婚どころではなくなるだろうと思われる。そこで双子は狂言誘拐でこの現金を奪い、再婚阻止&母親の復讐としようと企む。

 エリーゼはニューロ・タタラ系の技能が得意だったので、自宅のDAK(ホームコンピュータ)に仕掛けをして会話を盗聴できる様にしたり差出人不明のメールが出せる様にしたりした。メールで届いた脅迫状を読んだ父親は、要求された身代金の額が会社の手持ちの現金総額と一致する事から、「会社の内情を知る内部またはライバル会社の犯行」と思い、警察には届けず、クロマク経由でPCに事件の解決を依頼する。



導入

 基本的にPCのコネ経由で誘拐事件解決を依頼されるとする。捜査をPCが独力で行わなければならない自然な言い訳が立つならば、どんな導入でも構わない。



本編

 父親からPCが依頼内容を聞くシーンで、父親と秘書が親密であると描写する事。問われれば、「前妻は死んだ」「秘書との再婚を考えている」事を話す。また、身代金額が会社の手持ちの現金総額と一致するといった話もする。

 エリーゼの通学路などで聞き込みなどを行っても、女の子が拉致された所を目撃した人などはいない。

 エリーゼの私室を調べると、“森林公園で自分を撮った写真”が隠されているのを見付ける。明らかに誰かに撮影してもらったスナップ写真で、父親が買い与えた記憶の無い露出度の高い服を着ていたりする(実はリアの写真)。その他、愛用の化粧品が無くなっていたりする。

 エリーゼの学校の友達に話を聞くと、「一ヶ月前に学校行事で森林公園へ写生に行ったのだけど、エリーゼは集合時間まで行方不明で、課題も提出できなかった。口振りから誰かと会っていたらしいのだが、詳細は聞いていない。その後も、その人物と学校をサボってまで会い続けていたらしい」とか「その人物と会った日以来、性格が変わってしまったように思う時があった」などの話が聞ける。
 ちなみに、一ヶ月前の森林公園でエリーゼとリアは出会い、その後も頻繁に会い続け、ときどき入れ替わっていたのである。
 ただし、エリーゼとリアが同時に目撃された事は無いので、この段階で“双子”と分かる事は絶対に無い。

 その他、これが狂言誘拐でないかとの推理に基づく調査をPCがしたならば、裏付けるないし矛盾しない回答をする事。
 逆に、狂言誘拐だとプレイヤーが思わない場合は、もう少し露骨なヒントを出して気付くように誘導する事。

 父親に「狂言誘拐の疑いが強い」と証拠(状況証拠で充分)を添えて告げた場合、「エリーゼが最重要なのは言うまでもないが、会社も生き甲斐の1つであり、また社員とその家族への責任も負っている。その辺りを汲んで、よしなに対応して欲しい」と言われる。

 身代金受け渡し場所は、引き渡し直前になってからスラム地区の埠頭が指定される。1人で来いとしか言われない。
 姿を現したのは、“ボイスチェンジャーで声を変えた、覆面の小柄な人物”である。ちなみにリアである。
 どのように話が進むかはPC次第だが、リアはPCと同レベルの戦闘系キャラであり、必要な技能は一通り持っている。
 また、必要ならば縛られ脅されている振りをしているエリーゼが登場する。

 PCが「エリーゼに双子の姉妹(またはカゲムシャ)がいるのではないか?」と推理した上で父親を問い詰めれば、事情を説明する。



結末

 PCが強気一辺倒で攻める場合、エリーゼ&リアは戦闘または逃亡する。場合によっては姉妹を殺してしまうという最悪の展開もあり得るだろう。
 大人しく金を渡してしまう場合、姉妹はすぐにその金を海に捨ててしまう。姉妹は満足かもしれないが、しこりを残すエンディングとなる。

 「エリーゼに双子の姉妹(またはカゲムシャ)がいる」という推理が出た上で、さらにプレイヤーが真面目なロールプレイで心のこもったセリフを吐くならば(そしてそのセリフに参加者が納得できるならば)、それで姉妹が説得されるエンディングでも構わない。
 父親は、娘がそこまで思い詰めるならば再婚に関しては諦めても構わないと考える。その辺りのNPCの心情の駆け引きの機微はマスター判断に委ねる。

 その他、金の引き渡し場面でトリックを用いて「金を捨てたと思わせて、実は回収した」として、「姉妹はそれで納得。父親にこっそり金を返して、会社も救われるようにする」といった方向で解決を目指す事もできるだろう。



さいごに

 元ネタはエーリヒ・ケストナーの『ふたりのロッテ』である。終盤までPCが双子だと気付く事は無いだろうし、双子と気付いた後ならば、むしろ元ネタを意識の片隅に置いてプレイしてもらった方が望ましいので、問題にはならないだろう。

 母親を故人と設定して、よりを戻すというオチを封じたが、マスターが望むならば変更して欲しい。
 ただ、映画『ミセス・ダウト』の「よりを戻さない」というラストシーンを評価する人が多い事とかを鑑みると、『ふたりのロッテ』そのままのオチは脳天気過ぎると白けられる危険性はあると思う。




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