No. タイトル システム 登録日 改稿日
0030 族長の息子 BK 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『Bea−Kid’s』の使用を想定して書かれた。
 しかし、他の西部劇物または汎用ファンタジーとして使用可能である。



登場NPCおよび重要事項

現族長 奥地にある獣人族のとある一部族の族長。かつては流浪の傭兵団長だったが、部下と共に当時戦争中だったこの部族を救い、前族長の娘(未亡人)と結婚して族長となった。義理の息子がいる。長い間、実子に恵まれなかったが、つい最近になって妻が男の子を出産して、この実子に跡目を継がせたいと思うようになる。
義理の息子 成人の儀を控えた十代半ば。現族長の妻の前夫の子供。つまり現族長とは血の繋がりは無い。



事前状況

 あるところに、国を追われ、部下と共に傭兵団として流浪する獣人族の一団がいた。傭兵団の長は何とか安住の地を見付け出そうとしていたが、そんなとき、他部族との争いで滅亡寸前のとある獣人族と出会った。傭兵団はその獣人族に力を貸し、そのお陰で敵部族は退けられ、滅亡寸前だった部族は安寧を得た。傭兵団の長は族長の娘と結婚し、年老いた舅に代わって族長の座に就いた。前族長の娘には亡夫との間に幼い息子がいたが、その子も族長の養子となった。

 時は流れ、前族長は病死し、現族長の義理の息子が成人の儀を迎える歳になった頃、現族長の妻が男の子を出産した。諦め掛けていた自分の実の息子を得て、族長は義理の息子を亡き者にしようと企む。
 ちょうど、義理の息子は成人の儀の為、森で1ヵ月間、独りで過ごさなければならない。現族長は、これを利用した二段構えの策を練る。

 まず、義理の息子には、一種の発信機になっているタリスマンを持たせて位置を把握できるようにする。
 そして、子飼いの部下を通じて後腐れの無いゴロツキ(獣人族)を雇い、敵対部族に変装させて義理の息子を襲わせる。上手く死ねば、子飼いの部下にゴロツキを討伐させる。
 万一にも義理の息子が生き残ったとしても、やはり子飼いの部下にゴロツキごと殺させる。
 しかる後に、「最近は大人しくなっている敵対部族が領内に侵入して、成人の儀の最中だった義理の息子を襲った」ように偽装する。

 そうして、森で独りいる義理の息子に、ゴロツキたちが襲い掛かる。



導入

 上記“事前状況”にある、義理の息子がゴロツキに襲われる場面に、たまたま最初の襲撃にPCが出くわす。ゴロツキはPCが楽勝できるレベルに設定する。
 この襲撃に於いて、PCは義理の息子を救う為に自発的に行動するとして進める。



本編

 義理の息子は、片言の人間族語を話せる。人間族のPCに対して自発的には詳しい事情説明はしないが、助けてくれた礼をしたいので、自分の里まで来て欲しいと言う。獣人族のPCには、「成人の儀の最中だった」「襲って来たのがは“最近は成りを潜めていた敵対部族”らしい」「その警告の為に一緒に里に来て助言を欲しい。礼もしたい」と言う。

 里までは丸一日かかり、現在は既に昼過ぎなので、途中で一泊して翌日に着くだろうと義理の息子は説明する。道中、獣人族語で親身に話をすれば、「自分は族長の義理の息子だ。次期族長になる事が決まっているので、自らを厳しく律し鍛えたいと思っている。最近、弟が産まれたので、ますます責任ある立場になったと感じている」など立ち入った事も聞かせてくれる。それに付随して、昔、養父率いる傭兵団が里を救ったときの話も得意げに話す。

 夜になって休んでいると刺客第2波が襲って来る。義理の息子の位置が移動している事からその生存を知っており、可能な限り奇襲をかけようとする。
 刺客第2波はデータ的に手強いように設定して、PCの存在に驚いて適当なところで撤退するような展開にする事。

 刺客第2波は、一応の変装はしていたものの義理の息子の目には“養父の子飼いの部下”である事は一目瞭然である。これ以降、義理の息子は口数が少なくなり、PCの目にも明らかに何かを隠していると分かる。ただ、持っていたタリスマンを差し出して、「もしかするとこれを頼りに自分たちの位置を探っているかもしれない」とだけ打ち明ける。

 タリスマン(発信機)を逆用した作戦を立てるならば、刺客第2波をやり過ごして里に入る事ができる。特に作戦を練らないならば、刺客第2波の再襲撃を受ける展開にする。

 里に到着した時点でプレイヤーは真相についての見当はついているだろうから、それの裏取りを行うだろう。
 里の民に聞けば、義理の息子から聞いた昔話や現族長の家庭事情について嘘は無いと分かる。
 義理の息子に「信用できる人は誰か?」と聞けば、教育係の男と、母親を挙げる。



結末

 基本的に、義理の息子は対応を迷っていて、PCの助言を待っている。何も言わないようならば、適当なPCに対してアドバイスを求めるとしても良い。
 「黙って里を出るべきだ」とアドバイスした場合、義理の息子はそれに従う。特に問題も無くシナリオ終了とする。

 「信用できるNPCを巻き込んで、大々的に真相を明かし、現族長を糾弾すべきだ」とアドバイスした場合、教育係や母親などに「現族長の子飼いの部下が、自分を襲った」と話す。証拠(「戦闘中に○○の左腕に傷を負わせた」などの話で良い)を求められるが、その証拠を確かめてみようというふうに話が進む。
 結局、現族長に言い逃れる手段は無い。現族長は、「全て無かった事にしよう」と取り引きを持ち掛ける。取り引きに応じない場合は、刺客第2波の残存戦力及び現族長との戦闘になる。

 「現族長だけに真相を知っている旨をこっそり伝え、改心を迫るべきだ」とアドバイスした場合、PCのフォロー次第で「義理の息子は殺され、PCが犯人にされる」となったり、「取り引きを持ち掛けられる(見掛けの上では改心する)」となる。無血での退位の要求には応じない。

 或いは例えば、「現族長の妻は浮気していて、腹の中の子も実子では無い」と母親に言わせて現族長の動機を失わせるなど、プレイヤーの独創的なアイディアが出れば優先して採用する事。



さいごに

 元ネタは、阿刀田高の『新トロイア物語』である。これは歴史的事実として20世紀に実証されたトロイア戦争に取材した小説で、このラストシーンの「不死とは云々」の個所を読んで、「仮にこんな事件に遭ったとしたら、主人公アイネイアスは、もっと違った事を考えるだろう」と考えた事から思い付いた。

 ギリシア神話が大元だし、知っているプレイヤーは多いかもしれないが、「元ネタかもしれない」と思う頃には終盤なので問題にはならないだろう。




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