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0026 リアリティ爆弾 TORG 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『TORG』専用である。



登場NPCおよび重要事項

社長 故人。会社の為に不発リアリティ爆弾を不法に処理していた。
重役 故人。後悔から幽霊となって現世に止まっている。社長の命令で不発リアリティ爆弾の不法処理を実行していた。その不発弾のせいで人が死に、そんな事を自分にさせた社長を恨んでいた。
都市 かつてはコアアース連合軍とナイル帝国軍の最前線だったが今は、コアアース側が完全支配している街。建設の過程で見付かった大量の不発リアリティ爆弾は秘密裏に処理された。
昔は故・社長の別荘しか無かったが、今では住人も増えた。都市から車で数時間のところにあり、ここで小型のリアリティ爆弾が爆発しても、都市は影響を被らない。
荒野 まだ開発の進んでいない都市外輪部。都市が拡大するに連れて、荒野は狭くなる。重役は、ここに不発ポシビリティ爆弾を投棄した。



事前状況

 ナイル帝国軍は、コアアースを侵略するとき「最初に“リアリティ爆弾”を落としてナイル帝国の世界法則にしてから戦いを仕掛ける」という戦術をよく取った。
 “リアリティ爆弾”による世界法則の変化は数時間持続する。異なる世界法則に晒されたオーズ(一般人)は、一定の割合で保有するポシビリティを吸い取られる。全ての保有ポシビリティが吸い取られると、その世界法則の住人に“変身”する事もある。さらに、“変身”してポシビリティがゼロの状態で再び世界法則が変化すれば、そのオーズ(一般人)は死んでしまう。
 あるところに、かつてコアアース連合軍とナイル帝国軍が争う最前線だったが、今はコアアース側が完全支配している地域がある。
 とある建設会社は、元は荒野だったこの場所を小都市にまで一手に開発する事で急成長を遂げたのだが、企業誘致や住民増加の為には“安全”を売り文句にする必要があった。しかし都市開発中にナイル帝国が残した“不発リアリティー爆弾”が何発も発見されてしまう。こんなモノが残っているのが住民に知れれば建設会社の将来は無いので、社長は作業員に口止めして政府には報告せず、親しい重役に爆弾を街に隣接する荒野に投棄させた。重役は爆弾の処理や投棄などの経験が無いので爆弾の何発かは爆発し、街外れに住む人間の何人かは運悪く複数回の“リアリティー・ウォッシュ”を受け、“ポシビリティを持たない状態での変身”により死亡してしまう。
 事件その物は“謎の変死”として真相が表に出る事は無かったが、重役は社長と自分自身が許せず、悩んだ末に1つの罰と復讐を思い付く。

 社長が田舎に邸宅を構えて悠々自適に暮らすと言い出したので、重役はその建設責任者に名乗り出て、こっそり社長宅地下に“不発リアリティー爆弾”を2ヶ所に(1発ずつ計2発)仕掛け、変死した人々と同じ境遇に陥らせてやろうと考える。そうして社長宅完成の後、退職して行方をくらまし、全財産を慈善団体に寄付して、残りの人生を不遇に送って死ぬ。

 そして数年が過ぎる。かつては社長宅しか無かった田舎の村にも他の住民が住む様になり、また、社長自身は病死してしまう。



導入

 たまたま、上記“事前状況”にある村にPCが立ち寄ったとき、偶然、1発目の“不発リアリティー爆弾”が爆発する。PCが適当な技能判定で調査すると、明らかに航空機から落として使う形式のナイル帝国製爆弾が社長宅の隣接施設に不自然に(投下されて不発だったのでは無く、故意に誰かが埋めたとしか思えない状況で)埋まっていたと分かる。

 リアリティ爆弾で死ぬのは、“保有ポシビリティがゼロのオーズ(一般人)だけ”である。この設定に関しては、強調して伝え、後でプレイヤーが「知らない」などと言わないようにする。
 ストームナイトであるPCはリアリティ爆弾の影響を受けない。
 村人はオーズだが、爆弾の効果時間が終わってもポシビリティがゼロになる者が出なかったので、命に別状はない。

 ちなみに、時を置かずに2発目が爆発すれば、村人の多くは世界法則が「コアアース→ナイル帝国→コアアース」と変わる事で死んでしまう。ただし、これをわざわざマスターからプレイヤーに伝えたりしない事。プレイヤーからハッキリとした言葉で問われた場合のみ、「その通りだ」と答える。

 以降、PCが積極的に真実解明に動くものとして進める。



本編

 聞き込みをしたり、記録を調べたりすれば、「元々この村には社長宅しか無かった」「社長は病死し、未亡人は都市にいる」「社長宅の建設責任者は会社の元重役で、社長宅完成の直後に退職している」といった事が分かる。

 都市には“未亡人の新居”、“建設会社本社”、“元重役の墓”がある。
 “元重役の墓”には、元重役の幽霊が出没する。
 幽霊は社長の病死を知り、過去の自分の行為が無意味になったと悟ってはいるが、ただ大人しくPCに「爆弾は2発存在するという事実」「爆弾を埋めた場所」等を教えるにはどうも釈然としない。幽霊を説得するには、PCが自力(か少々のヒントのみ)で真相に辿り着き、それを語ってみせなければならない。

 村の住民を避難させるにしても、やはり真相を話さなければ納得してもらえない。それに、どの道、全住民の避難は不可能である。

 都市の新聞社なり図書館なりでリアリティー爆弾について調べれば、過去に“ポシビリティーを奪われた状態で変身した為に死亡したと思われる変死事件”があった事がわかる。

 一方、ある程度の時間が経つと、都市にナイル帝国の特務部隊が潜入して、1発目のリアリティ爆弾の爆発の理由の調査を始める。PCが特に隠密を心掛けて調査活動をしていなかった場合、彼らに存在が知られ、適当な時期に接触を求められる。
 ナイル帝国の特務部隊員はリアリティ爆弾を解体する技能を持つ。ナイル帝国への返却を約束するならば、解体作業を引き受けてくれるとの協定も結べる。



結末

 最低でも、PCが独力で「爆弾は2つある」と気付くような展開にして欲しい。そうなったならば、重役の幽霊の口を通して捜査のヒントを出し、真実に至り、それで幽霊から爆弾の位置を聞くという風に展開すればハッピーエンドとなるだろう。



さいごに

 元ネタは、真保裕一の『防壁』の一編。読んですぐ、「これは『TORG』の“リアリティ爆弾”で翻案するしかない」とピンと来た。
 引用率は高めだが、元ネタを知っているプレイヤーも「爆弾は2発」といったキーワードを耳にするまでは元ネタに気付かないだろう。キーワードを知った後ならば、プレイヤーが「元ネタはアレかな?」と考えて動いても問題無い。ただし、マスターからセッション途中でネタばらしをしたりしない事。




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