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0023 三流傀儡師の作品 天羅万象 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『天羅万象』専用である。



登場NPCおよび重要事項

殺された傀儡師 程度の低い同じ種類の傀儡を作る三流傀儡師。大量生産だけがしか能が無く、同業者には馬鹿にされている。しかし最近、式の感知能力を欺く傀儡を開発した事から、驚かれている。
傀儡師の娘(本物) そろそろ行き遅れと言われてしまう年頃の娘。世間では父親の身の回りの世話をしているだけと思われているが、実は傀儡術や陰陽術に通じ、父親をサポートしていた。“式の感知能力を欺く塗料(人の血が原料)”を開発したのもこの娘である。気が狂っている。
傀儡師の娘(偽物) 本物とそっくりで、自分を本物だと心から信じているが、実は傀儡。戦闘は勿論、傀儡製作などの技能も持っていない。「狂った傀儡が父を殺し、自分を監禁した」と思っている。彼女が本物か偽物かを見分ける為には、指を切り落とすくらいしないと分からない。



事前状況

 とある傀儡師がいた。
 彼は自分の娘にソックリの傀儡を大量生産しては売り捌いていた。男は傀儡師としては三流で、亡き妻(娘と瓜二つ)と同じ姿の傀儡を作る事しかできなかったのだ。
 父親の手伝いをさせられていた娘は、自分とそっくりな姿の傀儡が次々と売られて行く事から、アイデンティティーを喪失しかけていた。父親に愛されたい一心で傀儡術や陰陽術の腕を磨いた末に、“式の感知能力を欺く塗料(人の血が原料)”を開発してしまうが、その事がより一層、心の病の症状を進行させ、とうとう衝動的に最愛の父親を自らの手で殺してしまう。
 娘の狂った心は「狂った傀儡が牢から逃げ出し父親を殺して逃亡した」という自分にとって心地好い物語を作り上げ、それを真実にする為に策謀する。
 戦闘用になる傀儡は用意できなかったので、まず自分の手で「狂った傀儡による連続殺人事件」を起こす。その次に街に滞在する学者(PCの傀儡師か陰陽師、いなければ何か知力系キャラ)が自分の屋敷に来て“娘”を発見させ、“娘”の言動や工房の調査を通じて“自らが作り上げた真実”に辿り着くように仕向ける。最終的にPCが“狂傀儡”を倒し、PCが(引いては世間が)「血を求めた狂傀儡が連続殺人事件を起こしていたんだ」と信じればOK。その後で自分と“娘”が入れ代わる事ができれば良し、自分が殺されても「自分は狂った傀儡で、PCと一緒にいるのが人間なのだから万事問題無し」と考えている。



導入

 PCは、とある中規模の町に滞在していて、互いに知り合いである。

 PCの1人(傀儡師か陰陽師、いなければ何か知力系テンプレート)は、この町に住む傀儡師(「大量生産だけが能で、腕は三流だと言われている」との評判をPCは聞いている)から「相談があるので自宅兼工房に来て欲しい」との手紙を受け取る。

 それに応じてPCは傀儡師の家に赴く。



本編

 傀儡師の家は荒らされていて、玄関を入ってすぐのところで傀儡師は死んでいる。耳を澄ますと工房の方から助けを求める女の声が聞こえ、行ってみると簡易牢の中に娘が閉じ込められている。
 この娘は、実は傀儡だが、陰陽術を使っても人間としか思えず、本人もそう信じている。娘(偽)は、「製作した傀儡が狂い、自分をここに閉じ込めて逃げた。父が追い掛けたが、どうなったか心配だ」と言う。
 PCがどういう行動を取るにしろ、最終的に事件は番屋に届けられ、傀儡師の死を娘(偽)は知るだろう。番屋は単純に「狂った傀儡が作り主を殺して逃げた」と結論付ける。
 岡引(警官)が帰った後、娘(偽)はPCに、「実は余り知られていない事なのだが、父親の作品には、“式の感知能力でも人間と判別がつかないようにする塗料”が使われている。その塗料の製法は知らないが、原料は人間の血だとかで、不吉なものを感じる。傀儡の外見は自分そっくりでもあるし、どうして良いか分からない」と相談される。

 その後、PCが自発的に捜査に乗り出す気になれないようならば、岡引から捜査協力依頼があった事にしても良い。基本的にNPCの能力では、捜査も戦闘も心許ないので迷宮入りになりかねないとプレイヤーに理解させておく事。

 町の貧民街や遊郭では夜な夜な、娘(本物)が無差別殺人を繰り返している。基本的に娘(本物)は式を自分の体に憑依させてから襲い掛かる。
 PCは、聞き込み捜査や張り込みの末に娘(本物)と出会う事になる。最初の遭遇では、「娘(本物)はダメージを負い、<重傷>に入り、小指が千切れて落ちる。そこで娘(本物)は飛行能力を駆使して逃げる」などと展開するようにする事。その為に、遠距離攻撃手段を持たない戦闘系PCが単独でいるときに遭遇が起こるなどとすると良いだろう。
 千切れた小指が落ちているのを強調する事。落ちているのは、生身の女の指である。



結末

 本物の娘は発狂している。その第1の目的は「傀儡と自分は全く違う存在だと世間に認めさせる事ができた」と“自分が”思える状況を作る事にある。
 可能ならば、後で偽物とすりかわろうとするが、少しでも無理ならばやらない。本物自身が死んでも、世間が「父親の傀儡は血に狂った化物だ。しかし娘さんは心根の優しい人だ」と認識すれば満足なのである。
 狂っている故に、戦闘中などに上手く会話を行えば、その辺の事情を勝手に喋る。マスターは、その辺りの機微を調節する事。

 娘(本物)自体は、PCが総力を持って当たれば確実に勝てるレベルとする。
 娘(偽)は、心から自分を人間だと思っていて、真実を知らされれば場合によっては発狂する。



さいごに

 サプリメント『吸血姫』を読んでいたら思い付いたが、元ネタという訳では無い。

 ミステリ調に進み、プレイヤーが真実を知って動揺し、結末の付け方に迷うように進めて欲しい。




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