No.
タイトル
システム
登録日
改稿日
0021
荒野の劇場
BK
00/04/01
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はじめに
このシナリオは、『Bea−Kid’s』の使用を想定して書かれた。
しかし、汎用ファンタジーその他として使用可能である。
登場NPCおよび重要事項
監督
:
荒野の劇場で年1回の公演を行う劇団の舞台監督。マンネリ打破を狙い、未完成脚本を残して失踪する。
劇団関係者
:
監督失踪に慌てつつ、劇を完遂しようとする。
観客
:
基本的にお祭り好きなディレッタント。
事前状況
荒野のある場所に古代戦闘機械が休眠していた。知性ユニットと特殊なセンサーを搭載していて、人間社会が一定の文明レベルに達したら起動するように条件付けされていた。
数百年前、人間族の入植により条件付けが満たされる直前になった古代戦闘機械が起動しかけた。それを1人の真言魔術師が察知し、とある魔法装置によって古代戦闘機械を休眠させ続ける事に成功した。その魔法装置とは“劇場”の形をしていた。1年に1回、古代戦闘機械が反応しない文明レベルの時代を舞台にした“演劇”を“劇場”で“演じる”事で、それが“現実”だと誤認させる事ができたのだ。
時が下って現代、既に魔術は大幅にその力を失ったが、“劇場”は健在だった。いつの間にか、ここで演劇を行う事は半ば儀式化され、特定の劇団が定期公演を行っていたが、“演劇”をしなければならない真の意味を知っている人は監督と助監督の2人(それに後は政府高官)しかいなくなっていた。
公演は、「荒野の遺跡で1年に1回だけ行われる、歴史ある演劇」という事で知る人ぞ知る人気があった。毎年観に来る固定客もいて、公演の何日も前から“劇場”の横にテントを張ってパーティーを楽しみ、公演の後は打ち上げ会をやって別れる……というのが年中行事になっていた。
魔法は違法だが、真実を知る政府によって劇団は援助を受けていた。毎回、脚本は新作が用いられていたが、最近はマンネリ化のきらいがあった。政府の援助に、好意的な反応しか示さない固定ファンの存在というぬるま湯の環境が現状を生み出したのだと考えた監督は、ある打開策を考える。
その打開策とは、脚本を途中までしか用意せず、しかも公演当日は自分が失踪してしまうというものだった。監督が失踪して脚本も未完成となれば、残されたスタッフも出演者も緊張感を持ち自らの力で公演を成功に導いてくれると期待したのだ。助監督の性格から考えて、公演を中止する事も真実を公にする事も無いに違いないと読んでの事でもあった。
まず監督は、公演準備の段階から「緊張感を持たせる為に、今回は公演直前まで脚本の最後の章を配布しない」と宣言した。稽古はクライマックス前半までしか行われず、ラストシーンは直前に渡された脚本を元にアドリブを交えて行うように指示された。
そして本番の前日、いつまで経っても最終舞台稽古に現れない監督を控え室まで呼びに行くと、控え室は荒らされていて、監督は見当たらない。完成脚本は何処を探しても無く、壁には「南部連合の民は忘れない」などと書かれている。しかし全ては監督の自作自演である。
導入
PCは、「荒野の劇場での観劇を行うとある貴族一家の護衛に雇われた」とか「自発的に公演を観に行こうと思って」などの理由で、劇場のある場所まで行く。PCが到着したのは公演開始の24時間前で、適当な技能判定に成功すれば劇団関係者が何やら動揺しているのが分かる。
やがて劇団関係者はPCの元を訪れ、「脚本が未完成なままで監督が失踪した」と明かし、捜索を依頼する。
本編
監督は失踪に際して、「南部連合国残党のスパイに拉致された」かのように見える偽装を施した。劇場の裏口から続く馬車の轍の跡をつけると、荒野の途中でプッツリと途切れている。実は監督は、劇場に残されていた魔法アイテムを使って馬車の轍を偽装して、自分は観客に紛れている。
PCが戻って「行き先が分からない」旨を告げると、動揺した助監督は、他の劇団関係者やPCがいる前で“真実”を口にした挙げ句、「もうお終いだ。南部連合王国の陰謀のせいで封印は解け、古代戦闘機械が眠りから覚めてしまうんだ」と叫ぶと外に駆け出し、馬に乗ってこの地から逃げようとする。そして劇団関係者の多くがそれに追従する。基本的にPCには止めようが無いし、無理に止めてもとても仕事ができる状態では無い。
残った劇団関係者は、PCに対して、劇にも協力(俳優か裏方として)してくれるように要請する。
脚本は、人間がレストリア大陸に来る以前の時代を舞台にしていて、「荘園の農奴だった主人公が反乱を起こし、貴族たちの軍を打ち破って勝利を得る。主人公は『新たな王になってくれ』と要請されるが、そこで王になってしまっては結局は過ちを繰り返すだけではないかと悩む」という筋立てである。劇団関係者は、どうオチを付けるか悩んでいる。
結末
PCが監督捜索を続行する場合、「観客に紛れ込んでいるのではないか?」と推理しない限り絶対に見付からない。そう推理した上で聞き込みをすれば、テントに引きこもってパーティーに参加しない変わり者がいる事が分かり、それが監督である。
監督が見付かった場合、皆の前に出て謝罪するが、脚本のラストシーンは自分たち(PCが劇団を手伝っているならば、PCもその中に含む)で考えろと言い放つ。
監督が見付からない場合も時間が迫り、やはりPCはラストシーンに関する助言を求められる。
「主人公が王になる」といったラストシーンにした場合、何も問題は起こらずに今年の劇は終了する。「主人公は民主選挙制を導入する」といったラストシーンにした場合、文化レベルの進歩を感じた古代戦闘機械が目覚め掛けて身じろぎするが、再び眠りに就く。最後に監督が(隠れ続けていたなら出てきて)、「やはり劇の面白さは関係なく、ただ中世を舞台にすれば用が足りるのか」と嘆息する。
さいごに
元ネタは、我孫子武丸の小説『探偵映画』。監督失踪というプロットはそのままだが、これが元ネタだと100%の確信を抱けるプレイヤーはいないと思うので、突っ込みがあってもポーカーフェイスを貫いて欲しい。
盛り上げ方が難しいと思うが、助監督たちがパニックを起こすシーンで戦闘を織り交ぜてみるなど工夫して欲しい。
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