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0004 錬金術師の遺産 RM 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『ロールマスター』と『指輪物語RPG(MERP)』の使用を想定して書かれた。
 しかし、汎用ファンタジーとして使用可能である。

 錬金術師(魔法のアイテム製作を専門にする魔術師)と似たようなクラスが存在しないRPGの場合、錬金術師を「魔法アイテム収集家」などに変えても構わない。しかし、魔法アイテム自体が存在しないRPGではこのシナリオは使用できない。

 PC同士は親しい友人関係にある事が望ましい。



登場NPCおよび重要事項

錬金術師 故人。PCの1人の実の叔父。
ジス 魔術師。最初にPCたちを遺産の塔のある町に連れてきた男である。ジスは、死んだ練金術師が生命に関係した、新しく、特別な研究をしている事を知り、その研究成果を自分の物にしたいと欲している。だが、表立って犯罪行為をする気はなく、PCたちの隙を見てこっそり研究成果を知ろう(手に入れよう)としている。目的の研究がゴーレムだとは知らない。目的以外の物品、研究書には一切の関心を持っていない。



事前状況

 PCの1人の親戚にあたる練金術師(魔法のアイテム製作を専門にする魔術師)が亡くなった。
 その練金術師は、寝起きは町にある家でしていたが、町から15分程歩いた所に塔を構えていて、そこで研究活動をしていた。塔の中には様々な魔法のアイテムがあり、その塔と、塔の中にある魔法のアイテムの一切合切を遺産として受け取る権利が、血縁者であるPCの1人にあった。
 実は叔父の塔その物が研究成果の巨大ゴーレムであるなど、事態は危険を孕んでいる。



導入

 あるとき、PCの1人(盗賊以外が望ましい)は、幼い頃に何度か遊んでもらった記憶のあるジスという名の魔術師と再会する。
 ジスは「PCの1人を探していた。近くにある小さな町に一緒に来てくれ」と言い、その理由を以下のようにPCに説明する。

 先日、PCの1人の親戚にあたる練金術師(魔法のアイテム制作を専門にする魔術師)が亡くなった。その練金術師は、寝起きは町にある家でしていたが、町から15分程歩いた所に塔を構えていて、そこで研究活動をしていた。塔の中には様々な魔法のアイテムがあるそうだ。その塔と、塔の中にある魔法のアイテムの一切合切を遺産として受け取る権利が、血縁者であるPCの1人にある。
 練金術師と知己である自分は、何か供養になる事をしたかった。それで、PCに遺産を渡す事が出来れば、練金術師も草葉の陰で喜ぶと思い、PCを探していた。
 塔の中には、盗賊よけの罠があり、解除されていないという事なので、注意が必要である。

 「PCが遺産を受け継ぐ事に同意し、罠などを回避する為に仲間(特に盗賊)の協力が必要なので同行してもらう」となるように誘導する事。以降、PCがこの誘いに乗ったものとして進める。

 目的の小さな町に行けば、町長の立ち会いの下で法的な手続きが済ませられ、塔の合鍵を手渡される。
 町には他に冒険者の類はおらず、PCの塔探索を助ける事のできる能力を持つNPCはジスのみである。ジスは同行を申し入れる。



本編

 塔の外見は3階建てで、1階と3階の部分は、2階の部分より張り出している。


●1階

 玄関ホール。部屋の奥に螺旋階段がある。下にはカーペットが敷かれていて、その他、外套掛けや、傘立て、小さなテーブルなどがある。
 この部屋を調べて、適当な技能判定に成功すると、カーペットの下の床に扉がある事が判る。その扉は部屋の中央にあり、玄関の鍵で開く。床の扉の鍵を開けようとすると、矢が飛んでくる罠が仕掛けてある。発見/解除をしないと、鍵を開けた者はダメージを与えられる。扉を開けると、下には地下室がある事が判るが、階段の類は存在しない。明かりで地下室を照らしてみると、一階の半分くらいの大きさの部屋になっていて、何か大きなキラキラ光る珠があるのが判る。


●地下室

 ロープ、魔法等を使えば、1階から下に降りる事ができる。
 部屋の中央には台座に据えられた、瑠璃色の巨大な宝石がある。魔術師系の魔法の心得がある者が宝石に触ると、奇妙な一体感を覚える。台座から宝石を剥がす事はとても困難である。それ以外には何もない。


●2階

 螺旋階段を登ると、扉があり、それを開けると2階の部屋に入れる。
 中には幾つかの魔法のアイテムがある。剣、矢、楯、その他、適当な魔法のアイテムを設定する事。


●2階と3階を繋ぐ階段

 これも螺旋階段だが、一段ごとに赤色の段と黒色の段が互い違いにある。
 赤い段にのっても、何も起こらない。
 黒い段にのると、槍が飛び出てくる。適当なダメージを与える事。
 明かりがあるならば、段の色の違いに気付くので、何か棒きれでつつくなどすれば、上記のカラクリが判明する。


●3階

 この扉の鍵穴に鍵を差し込んで回すと、扉は開くが、ノブが人の手の形になって、鍵を開けた者の手首をしっかりと掴む。足場が悪い(黒い段にはのれない所為で)事もあり、手と化したノブだけを破壊するのは無理である。
 扉が開いた状態で、鍵を掛け直せば、ノブの手は手首を放す。

 3階は、練金術師の研究室である。
 作りかけの魔法のアイテムや、練金術師の研究書などがある。少し探せば、金庫が見つかる。合鍵を使えば金庫は簡単に開く。
 金庫の中には、二冊の本が仕舞われている。タイトルは「製作研究ノート」と「操作法」である。

 「制作研究ノート」の方は、例え専門の魔術師でも、一朝一夕には内容を理解する事は出来ない。
 しかし、「操作法」の方は、2時間程度で理解できる。


●「操作法」の内容
 この本は、ゴーレムの操作方法が記述されている。
 “制御球”と呼称されているアイテムに触れて念じるとゴーレムが“起動”して、可動形態で出現するとある。
 魔法の心得のある者ならば、“制御球”とは地下室にあった“瑠璃色の巨大な宝石”を指すに違いないと見当が付く。
 その他、“制御球”を用いての具体的なゴーレム操作方法が記述されている。



結末

 魔術師系魔法の心得のある者が、地下室にある瑠璃色の巨大な宝石に触れながら、「操作法」の記述通りの事をすると、地下室はそのフロアごと2階、3階、屋根をぶち破って、4階に相当する天井の上に達する。
 それと同時に塔全体も、石製のはずなのにゴムのように軟らかくなる。そして、手足が伸び、人型の巨大ゴーレムとなる。
 PCが警戒してそのような事を行わなかった場合、隙を見てこっそりとジスがやってしまう。

 ゴーレムは、起動後ほどなく制御不能状態となり、勝手に疾走して止まらなくなる。運の悪い事に、その進路上には、町がある。
 結果的に町は甚大な被害を受け、起動させた者が誰であれ、PCの叔父の遺産をもって損害賠償をするのが筋だという事になる。賠償後には、ほとんど一銭も残らない。


 もし、PCが非常に賢く振る舞い、完璧にゴーレムの起動を防いだ場合は、「放っておけばいつゴーレムが起動するか分からない。安全な状態に解体するにはギルドなどの専門家に頼むしかなく、その費用を賄うには遺産のほとんどを処分しなければならない」として、どうあっても莫大な資産がPCの手に渡らないようにする事。ただしこの場合、魔法アイテムの1つや2つは残ったなどとして、プレイヤーの正しい行動に対するボーナスとすると良いだろう。



さいごに

 フリッツ・ライバーの『ファファード&グレイマウザー』の1編を読んでいて思い付いたのだが、元ネタと呼べる程の原型を保っていない。
 改めて読み返すと、むしろ『スレイヤーズ』に近いノリを感じるが、執筆時期から考えて直接の影響は受けていない筈である。




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