No. タイトル システム 登録日 改稿日
0003 雪山の魔物 SW 00/04/01



はじめに

 このシナリオは、『ソードワールド』の使用を想定して書かれた。
 しかし、汎用ファンタジーとして使用可能である。

 PCはいわゆる冒険者で、中級レベルである事を想定している。



登場NPCおよび重要事項

少年 山岳民族の少年。孤児で、若年にも関わらず一族で最も高い登山技術を持つが、周囲に溶け込めずにいる。
雪竜の子供 周囲の気温を下げる特殊能力を持つ雪竜の幼生体。



事前状況

 舞台となる山岳地方の今年の冬の寒さ、雪の量は異常だった。来年の作物への悪影響も心配だし、冬を越せずに死ぬ者の数も例年を遥かに上回るだろうと予想されている。
 この異常気象の原因は“雪竜の子供”である。本来は親竜とともにもっと奥地に棲んでいるのだが、とある事故で親竜が死に、子供の竜が比較的人里に近い場所に取り残されてしまったのだ。幼生体なので力は弱いが、その力を抑える術を学んでいない事もあって、異常気象を引き起こしてしまっている。
 雪竜の子供が取り残されている場所の近くに山岳民族が住む村があり、そこの少年が雪竜の子供を見付け密かに世話をしている。雪竜の子供は、一種のインプリティングで少年になついてしまっている。
 少年自身も親を亡くしているので雪竜の子供に同情しており、何があっても子供を守るつもりでいる。



導入

 季節は冬。場所は山岳地方の辺境の村。たまたま立ち寄った寒村で、PCたちは異常気象とその影響に関する話を聞かされる。
 村人たちは、この悪天候の原因は自然の物では無く、伝説に登場する“白い化物”のせいだと噂している。伝説では、この化物が現れたときに限って、特に風雪が強くなるという。「山頂付近で化物を見た」との目撃譚もあるが、直接見たという人物が見付からない。

 ここまで聞かされた後、PCたちは、事の次第の調査と、可能ならば諸悪の根源であるに違いない化け物の退治を依頼される。
 寒村故に、報酬は少な目しか提示されない。その代わり、依頼達成条件に関しては大幅に譲歩される。PCがゴネるならば、「高地にある山岳民族の村へ行って帰って、その間に見聞きした物事を報告するだけでも良い」とまで譲る。マスターは、村の窮状と条件の甘さを強調して、依頼を受けさせるようにする事。
 以降、PCが依頼を受けたものとして進める。



本編

 PCが案内人を頼むと、「麓近くはともかく、ある程度より上になると村人でも慣れた者はいない」と言われる。強引に要求すれば若者が立つが、調子良く登れる麓近くはともかく、登るにつれて登山技術の無さを露呈し、むしろPCの足手まといなので帰らせたほうが良いと分からせる事。
 登山の難易度は幾何級数的に上がる。適当な判定を行い、失敗したPCは凍傷などの為に適当なダメージを負ったり、能力値の減少を引き起こしたりする。ここまでNPCの村人を引き連れて来た場合、「高山病に罹って朦朧としていたところを滑落死した」と展開させても良い。
 PCたちの困窮の度合いがある程度深刻になった頃合で、朗らかな少年と出会う。少年は山に慣れた山岳民族の一員だと自己紹介して、様々な手助けや応急手当てをしてくれる。そして、近くにある高地の村に招かれる。

 高地の村でPCは歓迎される。“白い化物”に関する直接目撃譚を聞く事もでき、セージ技能判定に成功すれば、それが雪竜の幼生体だろうという事も分かる。
 山岳民族の人々は、「異常気象の解決は自分たちの望む事でもあるから」と、治療、休息、食料、防水毛布などの有形無形の援助を申し出られる。彼らは登山技術には絶対の自信があるが戦闘能力が不足していて、その点でPCに期待している。現在、雪竜幼生体の正確な位置を探り、不意を討つ為の準備をしていて、数日中には目処が立つとの話で、それにPCも加わって欲しいと言われる。

 そんな風に“白い化け物退治”の話をしているPCと大人たちを、出会った時とは打って変わった冷たい目で少年が見ているのに、PCは気付く。

 少年にとって、雪竜の保護は何を置いても優先させる第一目標になっている。山岳民族の大人たちは、“白い化け物”を殺す以外の考えを持たないので、少年は大人を信用していない。しかし、一風変わった余所者であるPCたちには「期待」している。
 少年が雪竜を守りたいと思っている事を看破し、その為に協力すると少年に申し出れば、少年はPCを全面的に信頼する。
 そうで無い場合は、大人と同一視して振る舞い、態度もよそよそしくなる。

 少年の信頼を得ていない状態で、大人の「雪竜退治」に協力する場合、少年は先回りして雪竜を逃がしてしまう。適当な場面で、適当な技能判定に成功したならば、少年を疑うに足るヒント(貯蔵庫から食料を盗んでこっそり村を抜け出しているとか、雪竜の逃げた後の現場に少年の持ち物が落ちていたとか)を出す。
 それでも気付かないか、気付いたが無視するならば、その内に少年が食料を盗んでいる事がバレて、拘禁・尋問される。
 気付いた事を大人に報告して判断をNPCに委ねる場合も基本的には同様の事態に陥る。
 拘禁からPCが助けない限り、やがて少年は死ぬ。その後、少年の死を感じ取った雪竜が村を襲い戦闘になる。モンスターデータは、通常のドラゴンより弱く変更して使用する事。PCが無傷で勝利したとしても、山岳民族は甚大な被害を受ける。

 少年の信頼を得た場合、素直にPCに全てを打ち明け、助けたいので知恵と力を貸して欲しいと言われる。
 この段階で少年を裏切った場合、やはり「少年死亡」→「雪竜幼生体と戦闘」となる。



結末

 結局、雪竜が人里近くにいる事が異常気象の原因なのである。しかし、少年にインプリティングされた雪竜は、母親に甘えるように、少年から離れない。
 この事にPCは気付いているので、プレイヤーに対してそれを強調して伝える事。

 解決法としては、

@上記の事を少年に納得させた上で、雪竜を連れて一緒に奥地へと旅する。
A上記の事を少年に納得させた上で、少年に「お前(雪竜)なんて嫌いだ! ほら! あっちへ行けよ! もう村の、僕の側へなんかくるな!!」と心にも無い事を言わせる。
B雪竜の目の前まで案内させた後で裏切り、少年を人質に取って無抵抗の雪竜を殺す。

などが考えられる。



さいごに

 特に元ネタは無いが、ステロタイプな話であり、記憶に残っていない複数のアニメなり特撮番組が遠因で思い付く事ができたのだろうと思う。
 PCが少年に同情しないようならば失敗である。プレイヤーの趣向を熟知しているならば、少年を「美少女」などにしても構わないが、個人的にはこの役回りは「少年」がぴったりだと信じている。




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