よく、視覚障害者は勘がいいとか、耳がいいとか、指先が敏感だとかいわれます。確かにそういう人はいるかもしれませんが、「視覚障害者は○○」というのはちょっと違います。視覚障害者はスーパーマンではありません。
日常の生活の中で、目が見えていればなんでもないことでも、私たち視覚障害者にとっては大変な場合があります。そのために周囲の音を注意深く聞いたり、周囲の匂いを注意深くかいだり、空気の流れを感じようとしたり、地面を踏む足の裏の状況を注意深く感じとったりしています。これを当たり前のように毎日繰り返しているうちに、敏感になってくることはあります。私は、塀から1メートルほど離れて塀に沿って歩いていて、塀が切れたのがわかり、角を曲がる手がかりにします。また、電柱があるのがわかることもあります。生活していく上でそれが必要だから、自然に身についたんだと思います。
でも、それは視覚障害者だけのことではありません。みなさんも、ふだんの生活の中でそのようなことを意識していれば、同じようになるはずです。目が見えている人で、目で読むのではなく、指で点字をすらすら読める人はたくさんいます。音楽家の人たちは音に対して敏感です。手の感覚に頼って仕事をする職人さんたちは、その感覚に対して敏感です。それらはそれぞれにとって必要な能力だから、毎日の積み重ねの中で自然に鍛えられていったのです。
これを読んでいるみなさん一人一人が違うように、視覚障害者の能力もそれぞれです。点字ブロックを踏んで手がかりにして歩こうとしても、点字ブロックの出っ張りをあまり感じられず、うまく歩けない視覚障害者もたくさんいます。点字を読めない視覚障害者だってたくさんいます。失明した時期、生活している環境、体の具合など、いろいろな要素によって変わってきます。「視覚障害者は○○だ」などと決めつけないでください。