【困ってしまうボランティア】


 私は視力がないため、よく人の手や目をかりることがあります。食事や買い物に行って、お店の店員さんにメニューを読んでもらったり物を探すのを手伝ってもらったり、歩いていてちょっと自信がなくなってしまい、通行人をつかまえて自分がいる位置や目的地への行き方などを尋ねたり、点訳(活字の文書を点字にする)や音訳(活字の文書を読み上げてテープなどに録音する)ボランティアのお世話になったりです。最近は親切な人が増え、助かることも多いのですが、でも・・・。時々困ってしまうこともあるのです。

 皆さんは、こんな経験はないでしょうか?一緒に食事をしていると、「これはうまいから食べろ」とうるさいぐらいに勧められることが。こちらがお腹いっぱいでも、それが嫌いでも関係なしにです。自分が良いと思うことは相手にとっても良いこと、自分にとって良くないことは相手にとっても良くないことだって決めつけてしまっているわけです。そんなとき、あなたも困ってしまうでしょ?

 電車から降りたときに、何も言わずに急に腕やつえを引っ張って改札のほうへ案内してくれた人がいました。いきなりそんなことされるとびっくりです。つえを使って地面の様子を見ながら歩いている私にとって、つえを引っ張られるということは、皆さんが歩いているときに目隠しされて引っ張られるのと同じことになります。
 駅やデパートなどで、トイレに入ろうと駅員さんや店員さんにトイレの場所を尋ねると、大抵は障害者用のトイレを案内されます。小便だけの場合、一般のトイレのほうが使いやすいのです。「障害者用じゃなくて普通のほうでいいです」って言っても障害者用のほうへ案内されてしまうこともあるのです。
 あるお店で、ハンバーグを食べようと注文しました。なかなかハンバーグは出てこず、「今冷ましていますのでお待ちください」だって。やけどの心配をしてくれたようです。アツアツのハンバーグを食べたいのになあ。

 これらの例は親切心から行われたものです。「私がしてあげるんだ」、「手伝いをするぞ」、「障害者には危ないから・・・」っていう思いばかりが出てしまっています。その気持ちは本当にありがたいのですが、でも、困ってしまうのです。

 決めつけないでください。何か手伝いをしようと思われた場合、まず一声かけてください。「何か手伝いますか?」など簡単でよいのです。「大丈夫です」っていう答えが返ってくることがあります。その場合、それ以上何もしてくれなくてよいのです。「これこれをしたいのでこうしてください」っていう答えが返ってきた場合、それをあなたができることならばしてください。手引きの仕方がわからない等そのやり方がわからない場合には、どうすればよいのかを尋ねてください。うまくコミュニケーションがとれれば、お互いに嫌な思いをすることもなくなるはずです。ボランティアをする場合には、必ず相手があることを忘れないようにしてください。


トップページへ