[橙の日記-1日目?-]

よく はれた ひ

 らんさまから にっきをかけばちぇんもかしこくなれる とおしえてもらったので
きょうから にっきをつけます。
 きょうは おひさまがきらきらだったので ひとりで おさんぽにでかけました。
ちぇんのめのまえにちょうちょさんが ひらひら だったので おにごっこをしました。
 ちょうちょさんを おいかけていたら おおきなみずうみにでました。みずうみのそ
ばには おともだちの チルノちゃんが かえるさんを かちんこちんにしてました。
 うしろから わっ、といったらチルノちゃんは びっくりして かえるさんを おと
してしまいました。 おちたかえるさんは こわれちゃいました。
 ひやひやの かえるさんは ちょっとおいしそうだったけど らんさまから おちた
ものはたべたらいけませんと いわれていたので たべませんでした。
 かわりに かえるさんをひろって おもいきりとおくへ ぶーんと なげました。
 そのあと チルノちゃんと だんまくごっこをしようとおもったけど チルノちゃん
が みずうみを かちんこちんにしてくれました。 ふたりで つめたいこおりのうえ
をつるつる。 つるつる。 くるくるして きゅーんとなりました。
 おようふくが ぬれちゃったので ちぇんは ひなたぼっこです。チルノちゃんは 
あついあつい いいながら きのしたで おやすみです。 ごろごろぽかぽか きもち
いいです。
 おひさまが あかくなったので チルノちゃんとばいばいしておうちにかえります。
あさにみた ちょうちょさんが またひらひら。 こんどはおいかけっこです。 ひら
ひら ちょうちょさんを おいかけてたら おうちにつきました。
 らんさまと ゆかりさまと みんなでごはんです。 きょうはちぇんのだいすきな 
おさかながでました。とてもおいしかったです。
 おつきさまがでたら おねむのじかんです。おつきさまをみてると ぐるぐるします。
だけど おねむのまえに にっき を つ け    ま


 音も無く、橙の部屋の襖が僅かに開かれる。行灯の灯は既に消え、暗い部屋の中から
は部屋の主の幼い寝息が聞こえてくる。
「まったく、書き物の途中で寝てしまうとは。だから食べ過ぎるとすぐ眠くなるといっ
たのに」
 やれやれ、といった風にその人影は音も無く部屋へ入っていく。
「あぁあぁもう。よだれが紙に落ちてるじゃないか。ふふっ、これでは大人になるのは
まだまだだな?」
 そう言うとすやすやと眠りこけている橙を抱え上げ、側に既に敷いてあった布団に降
ろしてやる。掛け布団をかけ、整えてやると橙は気持ちよさそうに喉を鳴らした。
 今頃夢の中で橙は今日あったことを思い返しているのだろう。藍の式とはいえ、橙は
まだまだ式としても幼い。例え今まで永く見てきたものであっても式となってからの視
点ではない。だから今は、式としての仕事はさせずに色々なものを見て、聞いて、感じ
ることが出来るように自由にさせている。
「あら、藍。まだいたの?」
 突然、そこに今までいなかった者の声がかかる。
「紫様。お起きになられましたか?」
「ううん、これから橙と一緒に寝ようと思ってたところ。全く、橙が気になるのは分か
るけど、自分ももう少し術を学びなさいな。あの蝶、次は貸さないわよ?」
 その言葉に藍は冷や汗を浮かべる。
「そんなぁ〜」
「ふふっ、私から見たら貴方だってまだまだお子様なのよ。じゃ、お休み〜」
 そう言って紫は橙の布団にもぞもぞと入り込んで目を閉じたかと思うとすぐに寝息を
立て始めた。
「……はぁ」
 後に残された藍はただため息。自分にあれこれ仕事させておいてこの人はこれだ。そ
うぼやきたくもなるが、主のために働くのが式である。
「さて」
 藍は立ち上がると静かに部屋を後にした。襖を閉める前にちらりと見た橙の顔は何と
も無邪気で、幸せそうだった。



 あしたも もっと いいひだと うれしいです
                               

                                 ちぇん


戻る