メルヘンヴェール1 前半
1.目覚め

砂を含んだ風に、王子が目覚めると、そこは見たこともない荒れ果てた世界だった。
「ここは…?」
起き上がろうとした王子は、自分の姿が何か異様なものに変わっていることに気がついた。
しかも身に着けているものは、姫にもらった魔法の腕輪「アルミラ」だけ。
「何もかもここへ飛ばされたときに失くしてしまったらしい。だが、この「アルミラ」さえあれば、どんな姿をしていても、姫は私に気づいてくれるはずだ。帰ろう。姫のもとへ」
…と、そのとき、風に吹き上げられた砂の中から、王子の剣「アキナケス」が現れた。
「あっ、あれは私の…。この剣さえあれば恐れるものは何もない。」
王子は「アキナケス」を手にとると、西へ向かって歩き出した。

2.魔獣ギアス

「太陽の神「フェーブス」よ、私は「フェリクス」の王子です。「フェリクス」へ帰る道を教えてもらうためにあなたを訪ねてきました。」
「「フェリクス」の王子とな。おまえ、人間ではないのか。」
「…気がついたときには、このような姿となって砂漠にいたのです。けれど、私はどうしても「フェリクス」に帰りたい。」
「だが王子とやら、わしはおまえを「フェリクス」に帰すすべを知らぬ。海の神「ネプトゥーヌス」を訪ねるがよい。」
「海の神?どうすれば会えるのです?」
「この地の南に住む女神「ディーバ」が、お前を導くだろう。だが、言うておくぞ。「ディーバ」と会うためには恐ろしい岩山を越えねばならぬ。岩山の入り口には、千年の長きにわたり魔獣が住みついており、わしとても岩山に入ることは難しいのだ。」
「その魔獣を倒せばよいと…?」
「おまえにあの魔獣が倒せるであろうか。よいか、王子とやら、命を無駄にするでないぞ。」
「ありがとう、「フェーブス」よ。」

3.霧の向こう

魔獣を倒した王子の前に、美しい精霊たちが現れた。
「ありがとう、「ヴェール」。あなたがあの「ギアス」を倒してくださったので、私達もふたたび自由に空を舞うことができるようになりました。心から礼を言います。」
「…「ヴェール」?なぜあなたは私に「ヴェール」と?」
「なぜ…?あなたは「ヴェール」族のお方ではないのですか。」
「私は「フェリクス」の王子。女神「ディーバ」を訪ねていくところなのだが…。精霊よ、教えてはもらえないだろうか。「ディーバ」はこの岩山のどこに?」
「「ディーバ」様がどこにおられるか、それは私たちの誰も知らないのです。あの女神様は人目を忍んでお暮らしになっていて、お館の門さえも霧に包まれているとか。ただ、あるものを持っている方にのみ門もその姿を現し、中に入ることが許されるそうです。」
「その、あるものとは?」
「さあ、それ以上のことは何も。」
「…自分で探すよりない、というわけか。」
「どうかお気をつけて。」

4.試練

「おまえ 何者だっ。」
「私は「フェリクス」の王子だ。女神「ディーバ」に会わせて欲しい。」
「なにをたわけたことを…。おまえのどこが王子に見える。さあ、さっさと帰れ。」
「先ほどから騒がしいようですが、どうかしましたか。」
「あっ、「ディーバ」さま。もうしわけございません。実はこの魔物が…。」
「私は魔物ではない。「ディーバ」よ、どうか私の話を聞いてほしい。」
「そなた…、「ヴェール」?」
「「ヴェール」…?いや、私は「フェリクス」の王子だ。気がついたときには、このような姿となって砂漠に倒れていた。私にすらなにがおきたのか、まるで解らないのだ。」
「誰がそのような嘘を信じますか。」
「嘘などではない。私の話を…。」
「そなたがまこと王子ならば、誇り高き「フェリクス」の王族の証をお見せなさい。この岩山に住む「アンシーリー・コート」という魔物たちを、そなた一人の力で追い払うことができますか。」
「私は王子だ。やりとげてみせる。」

5.海へ

「「ディーバ」よ…。どうか、私の話を聞いてほしい。」
「その前に…。そなた、「ヴェール」族を知っていますか。」
「「ヴェール」?またその名前だ。砂漠で出会った精霊たちも、私を「ヴェール」と呼んだ。そして「ディーバ」よ、あなたも初めに私を見たときにそう言った。だが、私にはなんのことか解らない。」
「「フェリクス」に古くから伝わる「ヴェール」伝説を聞いたことはあるでしょう?」
「それが私とどんな…?」
「よいですか。私は長い間「フェリクス」に暮らしました。「ヴェール」の一族にもたびたび出会ったものです。そなたは…、そなたは彼らと同じ姿をしている。それがなにを意味するか解りますね。」
「……。」
「ここは「フェリクス」の外、秩序など存在しない荒れ果てた世界です。私は誰にも煩わされたくなかった。それで「フェリクス」を出て、ここへ移り住みました。ここはそなたが…、「ヴェール」が居てはならないところです。「フェリクス」の外に居る「ヴェール」達はすべて罪を犯したものとされるのですよ。」
「罪…、だが、私は自分からここに来たのではない。気がついたときにはもう…。「ディーバ」よ、私は「フェリクス」に帰りたい。海の神「ネプトゥーヌス」ならば「フェリクス」への道を知っているはずだ。「ネプトゥーヌス」に会う方法を教えてほしい。」
「「ネプトゥーヌス」には南の彼方、海の果ての迷宮に行けば会えるでしょう。ただ、海を渡るためにはある薬が必要です。もっとも、そなたにとってそれを手に入れることは、そう難しくないでしょう。」
「ありがとう、「ディーバ」よ。」
「お待ちなさい、「ヴェール」。海へ行ったなら、仙人「ヤン・トモリ」をお訪ねなさい。彼の知恵は必ずやそなたの力となるでしょうから。」

メルヘンヴェール1 前半
原寸大(1728x640)のフィールドマップはコチラ(BMP形式、1〜5をZIP圧縮)
ちょっとだけ補足
・方位は
南
東 西
北
・1面はマップ右上の黄色いところを超えてさらに右へ進んだところが左下の真っ黒い夜の世界。
・3面中央のL字型のエリアは洞窟の中。あるアイテムを入手するまでは真っ暗。