この利己心にみちた世界にあって、
一人の人間が友となす事のできる、
唯一利己心とは無縁の存在、
決して彼を見棄てることのない、
忘恩も裏切りも知らぬ真実の友、
それは犬である。
犬は富めるときも貧しきときも
健やかなときも病めるときも、
彼の主人につきしたがう。
ただ主人の傍にいられるならば、
冬の風が吹き付け、
吹雪の荒れ狂う冷たい地面の上にも、
安んじて眠るだらう。
与えるべき食物を持たぬ、
その手にも口づけするだろう。
この残酷な世界との対峙のなかで生じた、
主人の傷口をなめようとするだろう。
まるで王子につかえるかのごとく、
彼は貧しき主人の眠りを守る。
他の友が皆去った後も、
彼はとどまる。
富が消え失せ、
名声が地に落ちようとも、
さながら天空を旅する太陽のように、
変わらぬ愛を持ち続けるのだ。