木村晃子作品 LaLa期


 お池にはまってプリンセス (デビュー前の漫画スクール受賞作)
 LaLa1982年8月号p391-406
 【扉】 第40回ララまんがスクールトップ賞受賞作「早苗の前に、突然、新しい世界が…!! さあ、勇気を出して飛び込むのだ(ハートマーク)」
 【おたよりください欄】「これからもガンバります。ヨロシク!!」
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 商業誌初掲載作と思われます。演劇衣裳を着ることでふだんの自分とは違う面を出す変身願望的な題材はその後の作品の「えらいやつら!」「すかんぴんウェディング」などでまた出てきます。「哀愁のダッシュマン(1)」の後書きにも作者自身も書いていますが、こういうのが好きなんですよね。
 選評(下に枠付きで入れておきます)にあるように、絵はまだ雑なところがちょっとありますが、ストーリーや雰囲気は作者らしいところが出ています。
 当時、この月のLaLaは持っていなかったのでしたが、「ぱふ」の漫画リストで存在を知り、わざわざ中野の「まんだらけ」に行って古本を買ったという覚えがあります。あの時はまだ「まんだらけ」もそんな有名ではなかったのだけれど。
【選評】
●ストーリー 生物室へ行こうとした主人公の早苗は、間違って演劇部の練習に巻き込まれてしまう。なかば強制的に入部させられるが、早苗は気後れしがち。そんなある日、ひとりで部室に行くと、衣装とシナリオが。夢中でひとり芝居を続けているうちに…
●評 絵は描線がきれいで描きなれた感じですが、背景と人物が混然とする箇所がやや見られ、雑な印象を受ける可能性があります。主人公の女の子は可愛く描けており好感が持てますが、もう少し表情を豊かにすることを心がけたほうが良いでしょう。
 ストーリーは、全体にわかりやすく、コマ運びもスムーズです。特に、劇中劇を利用したエンディングは、主人公の心理を表現する上で非常に効果的で、作者のセンスが感じられます。ただ、キャラクターに今ひとつ強い魅力がなく、ドラマを構成する上での決定的なヤマ場に欠けることが問題として残ります。


夢見るシャンソン人形 (デビュー前の漫画スクール佳作=掲載はなし)
 LaLa1982年12月号 p436,437
 ララまんがハイ・スクール ララ新人まんが賞第10回発表
 入選 該当作なし、佳作 「スケバンVSスケコマシ」清水玲子、「夢見るシャンソン人形」木村晃子、「センチメンタル・ドリーミング」藤波あお子
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 掲載されていないので、以下の選評で想像するだけです。ここで佳作を取ったことでプロデビューにつながったのでしょうか。同じ佳作で清水玲子さんがいますが、こちらはメジャーになりましたな〜。
 選評内で「大胆な構図なり画面構成を意識して、印象的な見せ場を工夫することが今後の課題」となっている点が意識され、後で「サリアーノン」で見開き2ページ1コマの画面や、「日暮町夢色小路」で浮代さんの後ろ姿を1ページアップで見せる画面につながっているのではと思います。
 「描線が荒れている」っていうのは、影の線をたくさん引いているやつのことなんでしょうか。

【選評】
 「夢見る…」は、描線が荒れているのが少々気になりますが、ストーリーは設定・小道具等がしゃれていて、手堅くまとまっています。ただ、キャラクターが地味で、表現もややおとなしい印象を受けるので、大胆な構図なり画面構成を意識して、印象的な見せ場を工夫することが今後の課題です。

 貧乏画学生のジョゼフは、友人のアンリと飲みに行った酒場で、チュチュという名の威勢のいい女の子に出会う。翌朝目をさましたジョゼフは、あろうことか、隣で眠っているチュチュを発見。ジョゼフの借りた部屋は、かつて彼女の恋人の部屋だったらしいのだ。その後も、夜中を過ぎる頃になると無意識のまま彼の部屋にやって来るチュチュに、ジョゼフはいつの間にか魅かれていくのだが…!?

 本当にありがとうございます(ハートマーク)わーん、うっれしいよお。この喜びをエネルギー源にして、ステキな作品いっぱい、みんなに読んでもらえるよう、これからもがんばって描きまくりたいと思うのであります。よろしくお願いします!!


想いははるか空の果て (デビュー作)
 LaLa1982年12月大増刊p301-324
 【扉】 プロ第1作「人はみな鳥のように自由に空を飛びたいと願い、そして人はみな想いを空にたくす…」
 【おたよりください欄】「プロ第1作!! 一生懸命頑張りますのでヨロシク。」
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《ストーリー》人間に興味を持つ鳥フラウ。捕まって飼われていた鳥クルーから、人間の話を聞く。いろいろな悩みや秘密を哀しい済んだ目で自分に語りかけてきたと言い、「人は想いを空に託す、かなえられなかった夢を空に捨てるという」とのクルーの話に、フラウは飛んでいる時にたまらなくせつない想いを感じていたのはそれかと判り、もしも生まれ変われるなら地上に住む人間になってみたいと願う。そして、猟師に撃たれ死んでしまうフラウ。生まれ変わり、飛鳥という名前の少女になり、なぜかはわからないが空を見てなつかしく思う。
 「プロ第1作」ということは「デビュー作」でいいのですよね。これはもう、私の中では大傑作です!!! なぜ単行本では収録されなかったのか謎です。
 人の「想い」を感じる鳥と、人とのふれ合いがせつせつと伝わってきます。

あなたしかみ・え・な・い
 LaLa1983年4月大増刊p417-448
 【扉】 ヤングコミック集合 春咲き娘売り出し中「わたしだけにみえる−− あなたのやさしさ すてきな微笑み わたしだけに……」
 【おたよりください欄】「発想も病気、本人も病気…どうせわたしは病の巣!?」
   (p335にカラー4分の1、p336に紹介)
 「一人暮らしの大学生、小百合さんが出逢った"ごくふつう"の男の子。ところが普通ではないところが1カ所?? 彼はなんと透明人間だったのだ!!」
 【主人公紹介】谷村小百合さん いけない一人住まいの女子大生 現実的でしっかり者 成績良 世話好きだがふりまわされがち 少し意地っぱり だけどかわいいとこもあるんだよ
 チャームポイントは空間をうめてくれる長い黒髪 顔は時たま美人に見える
 ↑このスカートめくってなぐられているやつは副主人公です く、暗い人ですがほっとけない
 【作者】まだぴっかぴかの漫画家1年生の木村晃子です。分裂症で多重人格で博愛趣味の私ですが、とにかくはりきっております。今回の作品は「発想が病気」と周囲の皆様の折紙つき…何しろ漫画にしてみたくて描いたお話です!!(web注:似顔絵はまだ濃い眉、逆三角目ではない)

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《ストーリー》大学生の小百合にだけ、なぜか見える透明人間の早瀬わたる(三浪)。発明狂の伯父の装置で透明になってしまったという。勢いで一緒に生活することになったが、そのおかげか明るくなったと友人から言われる。自分だけが彼を見ることができたのは、自分がすごい淋しがり屋で一人でいたくないから、その思いが透明でも見えたのだときづく小百合。
 「哀愁のダッシュマン」にまでつながる"面妖なシチュエーション"を描いた話。伯父さんは飯田橋博士の原型でしょう。

日暮町夢色小路
 LaLa1983年6月号p365-404
 【扉】「本誌初登場!」「君に話しておきたいことがある。僕の住んでる町のこと、…そして、浮代さんのこと−−」
 【2ページ目】「俺の幼い頃の心の風景は、夢色小路にある一軒の駄菓子屋と重なる。そして今も、その駄菓子屋は…そこにある。」
 【おたよりください欄】「タイトルが決まらなくて、四苦八苦していまいました。」
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 84年4月号『ぱふ』の「83年度まんがベストテン」で短編部門128位になっています。作者得意の「下町もの」の第1作になります。  「想い」のやりとりというのが作者の一大テーマなのではないでしょうか。
 浮代さんタイプの女性は、「ラム亭のちいママ」「聖母横丁のダンディ」でも出てきます。ひょっとして作者の理想でしょうか。

えらいやつら
 LaLa1983年9月大増刊p421-468
 【扉】「事の起こりは場末のディスコ しっぽ頭の猫目少女に見込まれたのが運のツキ−− それとも運の^つ^きはじめ??」(^は傍点)」「★お祭りさわぎの48ページ」
 【おたよりください欄】「この作品を読んで、私の人格を疑わないでください。」
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 初めてコメディに挑戦。実のところ、私の場合はセンチメンタル系の評価が高い分、コメディ系はその分評価が低かったりします。別に面白くないというわけではないのですが。この話については、あきらちゃんの猫目の描き方が気に入っています。
 帰省していた青森の本屋で立ち読みした覚えがあります。その後、東京に戻ってから雑誌を買ったのだったかな。

サリアーノン
 LaLa1984年2月大増刊p221-260
 【扉】ヤングスター最前線「甘き香りと共に夢色の言葉 夢色の時間へ わたしを誘(いざな)うきみは フェアリー?それとも……」
 【おたよりください欄】「最近、編集部では、"田端の乱暴者"と呼ばれてます!!」
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《ストーリー》旅に出た若者アレクが道に迷い、記憶喪失の娘と出会う。自分の書いたヒロインの名、サリアーノンと呼ぶことにし、雨のため、無人の山荘で数日間一緒に過ごす。雨が止んだら許嫁の元に出発するというアレクに実らぬ恋の想いを秘め、娘は消え去る。山荘を出て、一面に広がる花を見て、彼女は花の妖精だったのかと思うアレク。
 「サリアーノン」というのは、Thaliaタレイア(ギリシャ神話の3美神の1人。「花の盛り」という意味)に関係するかと思うのですが、どうでしょう。
ストーリー自体にひねりなどはなく、幻想譚という感じ。「想いははるか空の果て」にはまった私としては、これまた気に入っています。単行本未収録なのは、作者本人としては完成度が今ひとつと感じたのでしょうか。

えらいやつら・2
 LaLa1984年8月大増刊p263-318
 【扉】「きったはったの56ページ」「商店街に吹き荒れるちんどん屋の荒らし(ライブ・パフォーマンス)! 街娘も暴力団も浮浪者もLet's Dance!!」
 このお話は'83年9月大増刊に掲載された「えらいやつら」の続編です。毎度毎度のちんどんロックで、今や華町商店街の"アイドル"となってしまった泉達。彼を見つめる変なおっさん達と桃組のあねご。さあ今回もお祭り騒ぎが始まるぞ!
 【おたよりください欄】「親知らずを抜いて苦悶の日々…安息の時は何処に!!」
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 浮浪者のおじさんたちの描き方がちょっとぼやけているかな? と感じました。マイケルの「スリラー」をまねるところは面白いですけれどね。

あなたは見る窓辺の夢
 LaLa1984年10月大増刊p123-170
 【扉】 ヤングスター最前線「フランス街角物語48P」「見慣れたこの街角にも…… 今日もまた新しい恋と、別れが繰り返される。病弱なセシルが初めて知った恋の味は!?」
 【おたよりください欄】「原稿の海で泳ぎ原稿の山に登り、かくして夏は去った」
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 結末はO・ヘンリー「最後の一葉」をなぞったか。ちょっと無理があるかなとも思うが、気にしないことにしましょう。お兄さんを慕う脇役の女性が印象的。

此処らのガキんちょ
 LaLa1985年2月号p351-390
 【扉】「ボクらは下町純情少年団! 元気と人情がいっぱい」
 【おたよりください欄】「心暖まる下町のお正月!(下町純情マンガ家・てるこ)」
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ドリーミング・アイズ
 LaLaスペシャルWendy第2号AUTUMN1985 p107-187
 【扉】トワイライト・シティ物語81ページ
 「黄昏のビッグシティには、あいつのグリーンの髪がよく似合う…。雑誌編集者・千晶が出合ったエキセントリック・ラブ・サマー!!」
 【おたよりください欄】「原稿の山を築いて、私の長く熱い夏は終わりを告げたのだ」
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《ストーリー》芸能記者・千晶が出会った緑の髪の青年は殺人事件の有力容疑者となっていた。自分の夢が探せない青年は、真犯人と争いになり、相手を刺すと同時に自分も致命傷を負い死んでしまう。
 81ページを描くにはまだ早すぎたか、これについては失敗作かなと感じています。焦点がぼけて、ストーリーも盛り上がりに欠けるような。青年の方の考え・想いが今ひとつまとまらない感じなのです。
 「雨上がりの朝、公園の噴水のたもとに咲く虹色の花の香りをかぐと妖精になれる」などの小道具などは、しゃれているのですが。きついことを書いてしまいますが、正直なところでして…。

銀襴緞子
 LaLa1985年11月号p341-390
 【扉】ゴールデン・アイドル・コンテスト シンデレラ賞チャレンジ作品第5弾
 「古のロマンがよみがえる祭の夜 こづゑの心に生まれた愛の伝説 50ページ」

 【おたよりください欄】「私が仕事を終えて遊びに出ると、外はいつも嵐!!何故??」
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 新人漫画家による読者投票賞「'85シンデレラ賞」の作品。他は清水玲子、アベ浩子、望月玲子、安孫子三和と出て、結局は清水玲子がトップとなりました。
 もちろん私は木村晃子に投票しましたが、その時点でトップは難しいかなと思った覚えがあります。いい話なのだけれど、さらにパワーが出ていたらと感じました。この頃はもう身内がコンテストに出ているような気持ちでしたね。

(以降、鋭意作成にかかりますのでご容赦を。上記コメントもまだまだ増やすつもりでいます〈2004.01.03〉 コミックスに収録されていない作品の扉画像を入れました〈2004.01.18〉少々加筆〈2004.03.24〉)

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