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SF小説
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ロジャー・ゼラズニィ
Roger Zelazny
伝道の書に捧げる薔薇

訳:朝倉久志・峯岸久

  • ゼラズニイのSF短編アンソロジーが本書。サイエンスを基盤とした実に美しい幻想の世界が繰り広げられている。物語自体は含みを持たせた終わり方をする、いわば結末を読者に委ねる形のものが多い。ゼラズニイはこのほかにファンタジィ作品も書いているが、しっかりとした世界構築はSF作品と変わらないので、一読をお奨めする
  • 原題と邦題は全く違う短編から取られているのであるが、日本人の感性により響くのは邦題の『伝道の書に捧げる薔薇』(A Rose for Ecclesiastes)だろう。物語自体は火星の神秘的な宗教儀式を地球人で初めて垣間見た言語学者の詩人を幻惑する舞姫の美しさと、宗教にまつわる一つの予言を絡めた哀愁に満ちたロマンスなので、好き好きがあると思う。が、題名から与えられる印象の深さでは一番記憶に残る題ではないだろうか
  • ゼラズニイの作品には前向きな行動の中にも、どこかしら「滅びの哀愁」とでもいうような、何か「消滅」や「負」の方向へ向かう要素が含まれている(『十二月の鍵』、『この死すべき山』などに顕著である)ので、どうしても読後感に「含むもの」を感じてしまう。しかしながら発表から40年以上経った現在でも、その読後感を求めて次の作品を読んでしまう筆力は、さすがゼラズニイの黄金時代に書かれた作品群である
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