大人もぞっとする 初版『グリム童話』
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- グリム兄弟が収集したのは元々民話や伝説で、特に子供を意識したものではなかったそうです。そう思えば「昔話」である日本の民間伝承にも「人食い」話(かちかち山、瓜子姫)や「残酷な描写」(怪談)がありますから、洋の東西を問わず民間伝承と言うものは「恐怖」を用いて不道徳な行いを戒める役割を果たしていたのでしょう
- この本でも、普段は読まれない「わがままな子ども」や「兄と妹」を取り上げて、その部分を強調しています。が、解説の切り口や本文の書かれ方など「本当に原書から訳しているのか」と疑問に思う点が少々あります。シンデレラが「邪眼」の持ち主だとか、千匹皮のお姫様が実の父王と結婚するとか・・・。登場人物の心理描写まで書かれるに至ってはやり過ぎとしか言えません。「憎しみ」や「暗い悦びに歪んだ顔」などの表現が、民間伝承にあるとは思えませんから
- 原書を実際に読んだわけではないので言い過ぎなのかもしれませんが、かなりアレンジした作品のように見受けられます。「グリムの初版が残酷」というのであれば、原書の忠実な翻訳を掲載して欲しいと思うのです。同様の新解釈で桐生操の作品がありますが、こちらも内容は似たり寄ったりでした。「新解釈」なら「新解釈」と断って欲しいと思います。こういう話がオリジナルだと思う人が増えたらちょっと問題かもしれません
- 今年に入って「原書グリム」が話題になったので試しに買ってみましたが、はっきり言って後悔しています
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