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塩野 七生
Nanami Shiono
人びとのかたち
  • 塩野七生のショートエッセイ集。映画という馴染みやすい題材から、様々な人びとの生き方を切りとってゆく。映画は往年の名画から割合と最近のものまで幅広い。塩野氏がなぜイタリアへ渡ったのかとか、ご主人とのなれ染めなど、塩野氏の生き方もうかがえる
  • 読んでいてズシンときたのは、イタリア映画『山猫』のエッセイと『余暇の善用』と題されたエッセイ。1860年代のイタリア貴族の生き方を描いた『山猫』で、人間の「スタイル=品格」こそ生き方を決め周囲に影響力を及ぼすものだと見る著者が、『余暇の善用』では、知り合った若い女性の「面白みのなさ」を好奇心の欠如と分析する。つまり「面白みのなさ」は「スタイルの欠如」に通じるというのである。スタイル(=品格)は人間の生き方それ自体を形作るものである。善であれ悪であれスタイルの確固とした人間ほど人びとの記憶に強烈に残るもので、映画人であればグレタ・ガルボやオードリー・ヘップバーン、ジェームス・ディーン、歴史の中ではユリウス・カエサル(シーザー)や秦の始皇帝など、自らの「かたち」を強く印象付けた者は、人々が記憶するその「かたち」の中で生きつづけることが出来るのだ。人生とはまさにその人の生きた「かたち」なのである
  • もちろん取り上げられた映画には、彼らほど強烈な個性を持たずとも、自然体で自らのスタイルを持つ人や、スタイルを模索する人を扱った作品もバランス良く配され、その選択眼の広さを感じさせる。また映画を題材にした、母として親としての息子との接し方についても書かれていて、「人として生きることとは」を図らずも扱ったエッセイ集となっている
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