震える岩
霊験お初捕物控
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- 時代小説、推理小説のジャンルで注目されている著者による「捕物小説」第一作。「捕り物小説」といえば『銭形平次』や『鬼平犯科帳』などに代表されるように、主人公の強烈なキャラクターと確固たる時代設定で読ませる作品群である。そこに新たな作品を送り込もうとする場合、作者にはさらなる想像力が要求される
- この小説の主人公は「霊能力」を持つお初という少女である。このお初の能力が江戸市中に起きた不可解な事件を結びつけ、さらにその謎が「赤穂浪士による討ち入り」にまでつながってゆくあたり、読者を引きつけてやまない「つかみどころ」だらけの話となっている。もちろん本格的な時代推理小説として考えるならば、「超能力」を持つお初という設定はかなり突拍子もないものだろう。がやはり「捕り物小説」として考える限り、その荒唐無稽さは読者を引きつける強烈なインパクトになるのである
- また、付け加えるならば、この作品は宮部みゆきによる「赤穂浪士討ち入り」の新解釈でもある。なぜ浅野内匠頭は吉良上野介に斬りつけたのか、なぜ浪士たちは討ち入りを果たさねばならなかったのか。忠義とは、正義とは何か、忠義に隠れた人の心とは・・・。「忠誠心」という言葉が空虚に感じられる今、それが格段の重みを持っていた時代に思いを馳せるのは無意味なことではないと思う
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