夜叉ヶ池・天守物語
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- 泉鏡花の作品の中でも有名な2編。特に坂東玉三郎主演の映画「夜叉ヶ池」は記憶に新しい方も多いのでは
- これを読むと、日本にもちゃんと固有のファンタジーがあるんだとつくづく思い知らされます。好きな方には申し訳ないですけど、日本人の書く「ふぁんたじー」って、ふりふりドレスで眼の中に星をちりばめた王女様と、白馬に乗った王子様がお約束の困難を乗り越えて…、という話が多いじゃないですか。日本でファンタジーが「幼稚」「くだらない」といわれる原因とはそこにあるのではないかと思うんですよ
- 鏡花の作品には、そんな「ふぁんたじー」にはない「リアリティー」があるのです。それは例えば薄暗い天井裏に潜む気配だったり、森閑とした木々の中でそよぐ風の感覚であったり、日本人が生活の中で「感覚」として身につけている「現実感」なのです。「ふぁんたじー」にはそれがない。そこには小さい時に読んだ童話の挿絵のイメージ、西洋の模倣しか存在しないのではないかと私は思っています
- 最近でいえば「となりのトトロ」のような、日本の土に根ざしたファンタジーの感覚は大切にしていきたいと改めて思います。ところで活字は…という方には、波津彬子先生の「鏡花夢幻」(朝日ソノラマ・眠れぬ夜の奇妙な話コミックス・本体951円・ISBN4-257-90257-4 C0979)をお薦めします。この2作品と「海神別荘」が、波津先生の華麗なタッチで描かれています
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