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井狩 春男
Haruo Igari
返品のない月曜日
−僕の取次日記−

  • 本好きの方でも、出版社から書店へどうやって本が流通するかを知っている方は少ないのではないだろうか。書籍を一度でも「注文」したことのある方ならば、書店からもらう控の上に、「日販」や「東販」という文字が書かれていることにお気づきだろう。どちらも日本では大手の「取次」である
  • この取次というのは日本独自の制度だそうで、出版社と書店の間を文字通り『取り次ぐ』存在、ほかの業界で言えば「卸」にあたるもの。著者はこの取次という特殊な会社、中でも人文書を中心に取り扱う鈴木書店で働くサラリーマンであり、同社の書店向け情報誌『日刊まるすニュース』のただ一人の編集者でもある。本に携わる仕事をし、趣味も本を読むことである著者のエッセイからは、本という存在や自分の仕事に対する愛情が伝わってくる
  • どのエッセイを読んでも興味深い事柄ばかりであり、そして読み終わって書店で手にする本が、如何に多くの人の手を経てきたかを知った今、仇や疎かで本を扱えなくなった私がいるのである。特に活字離れに関するエッセイは、それを批判するわけでもなく、読み手と作り手の双方の立場から考えられたもので印象深い。ちなみに出版業界で「本」というと書籍(単行本)を指し、文庫本やノベルズ(新書版)とは形態上からも厳然と区別されているそうである。ということは文庫本をこよなく愛する私はもはや「本好き」とは名乗れないのかも知れない
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