阿刀田 高
Takashi Atouda
ギリシャ神話を 知っていますか
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- 阿刀田高の解説シリーズの第1作。ページ数は少ない(200P余)ながら、ギリシャ神話のメインストーリーを分かりやすくまとめています
- NHKの番組でもクノッソス宮殿で「アリアドネの糸」の話をしていたくらい造詣の深い氏の解説なので、飽きずに読めます。というより、ギリシャ神話にちなんだ舞台や文学作品を引き合いに話が進むので、ギリシャ神話が文芸に与えた影響がいかに強いかがよく分かるのです
- ギリシャ神話のオリジナルは長い…と思う方、オリジナルは知っているけれどそれ以上のことも知りたいという方に、お薦めします
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アラビアンナイトを 楽しむために
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- アラビアンナイト=千一夜物語というくらい話の長くて多い説話集もないでしょう。
それを290Pでまとめる(?)のだからすごい筆力です
- アラビアンナイトの話の中でも本当に文学的によく出来ているのは『船乗りシンドバッド』や『アリババと四十人の盗賊』などの何編かで、ほかは焦点の定まらない民話も多いそうです。
この中で取り上げられているのは、普段子供向けの話などではお目にかからない説話が多く、アラビアンナイトをまた別の視点から見るにはいいと思います
- アラブ世界の宗教に根ざした慣習なども取り上げられているので、今まで何かの話を読んで「どうして」と疑問に思ったことが解決するかも知れません
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あなたの知らない ガリバー旅行記
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- ガリバー旅行記といえば、小人の国の段が有名ですが、それ以外にも巨人の国や空飛ぶ国、馬の国など、ガリバー旅行記は四つのエピソードから成り立ってます
- 宮崎駿の「天空の城ラピュタ」だって、ガリバー旅行記に出てくる空飛ぶ島「ラピュータ国」が命名のもと(空飛ぶ島の仕組みとか良く似てる)だとうかがえます。もちろんいつもお世話になってる検索エンジンyahooも馬の国の家畜奴隷「ヤフー」からきてるそうですし
結構スウィフトのアイデアって影響力があって、今見ても斬新なのだなと感心する次第です
- そんな凝った話を書いたジョナサン・スウィフトとはどんな人物なのか、そして自分ならどんな話を書くだろうか、というところから書かれたのが本書。スウィフトのイメージとはみなさんどう思いますか?(私は揶揄好きの童話作家と思ってたんですけどね)いやその実際は…
詳しくは読んでください
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旧約聖書を知っていますか
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- 旧約聖書、それは世界三大宗教の2つキリスト教とイスラム教の原典であり、さらにはキリスト教の元であるユダヤ教の聖典。つまり中近東から西側にある地域の文化や風俗、慣習は押し並べて旧約聖書に根ざしているものが多いということ
- 良くいわれるのは「西洋文化の基礎の基礎=旧約聖書」。基礎の基礎というからには基礎って何というとこれが「新約聖書」な訳ですね。これにルネサンスで取りこまれるギリシャ・ローマの思想が加わっていわゆる「西洋文化」を成しているんだと私は理解しています
- ホテルなどに泊まるとベッドサイドに必ず「聖書」と「仏教聖典」が置かれてますよね。睡眠薬代わりに読む(大変良く効きます)のですが、大体最初の「誰それの息子が誰々で…」で彼岸の世界に飛んでます。この本はそういう冗長なところを省いてくれている上、エピソードも豊富なので気軽に読めます
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新約聖書を知っていますか
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- いよいよ解説シリーズの大詰め、新約聖書のエッセイです。新約聖書は「歴史書」「書簡」「預言書」からなっています。「歴史書」は使徒福音書(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4編)、「書簡」は「〜人への手紙」と題がつけられているもの、「預言書」は有名な「黙示録」です
- しかしこの本は冒頭から新約聖書の矛盾点を提示してくれます。というのもアダムから始まる系図の中でヨセフが生まれるのですが、ヨセフの妻マリアは処女懐胎しているのです。つまり旧約聖書や新約聖書の頭で「誰々の子は誰それで…」と書かれていても、マリアやイエスの血縁とは何の関係もないのですよ。実際イエスの神性の論拠としての系図であれば、その先はマリアにたどり着くのが正しいように思われるのです。当時はそれだけ女性が低く見られていたということでしょうか
- キリスト教者ではない著者が「キリスト教」を論じるのは大変なことです。人間は宗教がらみになるとコワイですから。これを読んで「違う!」と思われるクリスチャンの方もいると思いますが、私を含め「キリスト教者」でない方への入門書、軽い読み物として考えれば、とても分かりやすく、良く練られている本だと思います
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